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真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第64話

第64話です。

PC絶不調…ぼちぼちかなあ

2011-03-06 22:51:32 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:5513   閲覧ユーザー数:4954

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です

 

原作重視、歴史改変反対な方、ご注意ください

 

ある者は目頭を押さえて呻き声をあげ

 

ある者は焦燥し切った表情で空を見上げ

 

ある者は膝を抱え蹲る様にただ動かずにいた

 

ある者は互いの胸倉を掴み合い互いを罵り合っていた

 

だがそれを

 

誰もが止めるでもなく

 

隣に立つ者と係るのを拒絶するかのように

 

静かに

 

自分の殻に閉じこもるかのように

 

ただ

 

ただ

 

疲労から重く圧し掛かる自分の身体を労わるかのように

 

ただ

 

ただ

 

先ほどに心に叩き付けられた衝撃から自分の心を切り離すかのように

 

ただ

 

ただ

 

自身が吐く呼吸と

 

脈打つ自身の心臓の音に耳を傾けていた

 

ただ

 

ただ

 

時が流れるのを

 

これは悪い夢であると

 

眼を再び開ければそこに

 

夢から覚めた「夢」が

 

そこにあるのだと

 

 

「彼等」がそこに戻ってきたのは「何」が残っているかを知りたかった訳ではない

 

一目散に逃げ出した「彼等」が

 

その心臓が口から飛び出るのではないかと錯覚するまでに走り続けた「彼等」が

 

足が棒になるまでに駆け抜けた「彼等」の足が

 

一歩

 

また一歩と

 

今しがたに走り抜けた道を戻りだす

 

誰もが口を閉ざし

 

走り続け疲労困憊な足を引き摺るように

 

戻らねばならないと

 

未だ煙が収まらず

 

辺りからは木が燻された匂いに混じり死臭が立ち込める中を進み

 

彼等の足が止まる

 

彼等の目の前には

 

互いを守るかのように積み重なった人、人、人

 

「元」人にして

 

「元」同僚にして

 

その場に残った者たち

 

その場に残された者たち

 

それは一様に土気色に物言わず

 

つい先ほどまで戦場にあったその場所の中心で

 

折り重なるように絶命していた

 

松明に照らされた地面は赤黒く

 

すでに乾き土の色として成していた

 

折り重なる彼等の中心

 

彼等に周りを囲まれるかのように

 

その中に

 

首の無い死体

 

息絶えた何れもが甲冑に身を纏う中

 

一人

 

文官が纏う白い布を肩に掛けた

 

まるで戦場に似つかわしくない出で立ちの死体が一つ

 

膝を付き座った姿勢のまま

 

ただそこに佇んでいた

 

もはや歩くこともままならず

 

一人

 

また一人と

 

その場に座り込んでいく

 

その中を高覧はゆっくりと「悠」へ向けて歩みだした

 

一歩

 

また一歩踏み出す毎に

 

初めてあった日の事を思い出していた

 

 

 

 

その日私は

 

巷で名門と謳われる袁家の試験を受けに来ていた

 

武官、文官としても名が立つ家柄でもない極平凡な家に生まれた私が何故に名門を受けたからというと

 

世に名をはせようとしたからでも

 

自分に自身あるわけでもなく

 

つまりの所

 

「な…七連敗」

 

受けたところを片っ端から落ちていったからだ

 

(なんで?どうして?私ってそんなに魅力ない?…いやいやそうじゃなくて武官採用を受けに行ってるんだから!腕っ節を受けに行ってるんだから!)

 

否…自分でも判ってる

 

馬にも乗れなくて

 

剣も槍も扱えなくて

 

弓もさっぱり

 

詰まる所

 

(あんた才能無いのよ)

 

落ちたと報告の度に母親はガハハと笑っていたけど

 

だって

 

「しょうがないじゃない」

 

自分だって武官が向いてるとは到底思ってない

 

だけど

 

それ以上に文官の才も無い

 

親に通わせてもらっていた私塾も成績不振で破門を言い渡され

 

そもそもに本を読んでもその意味が判らない

 

文字が読めるのと

 

本が読めるというのは

 

別の意味だと気付いたのは三回連続で定期試験に不合格を言い渡された時

 

それならば

 

人並み以上には恵まれた体格を生かすためにも

 

進むべき道は武官

 

…と思っていたのに

 

(まさか自分がここまで運動音痴とは)

 

最後にと思って受けた西涼の一次試験で馬の背に跨る事も出来ずに不合格を言い渡された時はさすがに三日間喉に何も通らなかったが

 

(だがしかし!故にしかし!)

 

最後の最後、今度こそはと受けるは名門も名門!

 

出立の時には母親からこれが最後と言い渡された

 

戻ってきたらあんたは隣村の田吾作に嫁入りするのよと

 

(なんとしても受からねば)

 

嫁ぎ先(仮)の相手がどんな奴かは彼女も知らない…が

 

そんな手詰まりの人生

 

(まったく御免被るわ)

 

そう

 

(肩を落とすのも今日で最後)

 

そう

 

(試験に落ちて自棄食いするのもこれで最後)

 

そう

 

「私は今日この日より武官の道を進むのよ!」

 

空高く登る太陽に向けて拳を突き上げる

 

往来の真ん中でビシっと固まる彼女を

 

通りを行き交う人々は珍妙を見る眼で見ていた

 

 

「あの…採用試験は昨日で打ち切ったんですが」

「へ?」

 

意気揚々と門戸を叩くもひたすらに首を傾げる門兵達

 

「なあ…それって」

「うーん、確か」

 

あーでもないこーでもないと話す門兵の合間からひょっこり顔を出した男が言い放った一言に彼女の頭の中は真っ白になった

 

「え?だって試験日は今日だって…」

「文官のですよ」

「へ?」

 

ポリポリと頬を掻き苦笑いを浮かべるは悠

 

一昨日より試験管として武官採用のために城内を取り仕切っていた

 

その試験も先日に終わり、今日は文官の補欠選考にと名簿を手に歩いていたところ城門にて何やら門兵が騒いでいるのを見て寄ってみれば

 

「あー去年にもいたんですよねぇ、試験日を取り違えてくる人」

 

彼の明るい口調が耳に響き渡り

 

そして

 

その明るさに

 

「あのぉ…」

 

自身の情けなさに

 

「うぇ…うえぇぇぇ」

 

泣き出してしまった

 

 

 

「駄目だ…もう…歩けないよう」

 

 

すぐそこに「貴方」がいるのに

 

手を伸ばせば触れられる距離にいるのに

 

 

「とりあえず立ち上がって…」

 

散々に泣き喚いた後

 

悠は支えられて立ち上がる

 

「おお!?結構背が高いんですね?…自分と同じ視線の女性に初めて会いました」

 

はにかみながら覗き込んでくる彼の目を見て

 

彼女の顔が見る見るうちに赤く染まっていく

 

「さあ行きましょう」

「え?」

 

鼻を啜る彼女の手を引きズンズンと歩き出す

 

「ああああのあの!どっど何処に!?」

 

緊張するとすぐにどもる自分が恨めしい

 

なんというか

 

これ以上この人の前で恥ずかしい所を見られたくない自分がいた

 

 

「…こんなのってないよう」

 

好きだったのに

 

ずっと好きだったのに

 

「受かるかどうかは貴女しだい!…特別ですよ♪」

「いや!だっだから何処に!?」

 

男にしては細い…だが力強いその腕に惹かれるままに彼女も半ば引き摺られるように廊下を進んでいく

 

「いやあ丁度昨日で選別が終わって暇しているでしょうからね♪そのくらいの時間はあるはずです」

「時間って!?」

 

彼の言う事の意味が判らず高覧の頭の上に?マークがいくつも浮かんでいく

 

 

 

「うっ…うぇ」

 

手も足も動かせず

 

その場に両手を付く

 

砂利を握り締めた手のひらが赤く染まっていく

 

(違う…違う!)

 

掴みたいのはこんな物ではない

 

触れたいのはこんな物ではない

 

だのに

 

目の前の「貴方」に

 

「貴方だった」物を前に身体が言うことを聞かない

 

 

 

ぐんぐん歩く

 

風を切るように

 

すれ違う文官達が何事かと此方を見ている

 

(は…恥ずかしい)

 

まるで自分が見世物のように感じてしまい

 

その足が鉛のように重く彼女を後引くのだが

 

それでもお構いなしに

 

悠は歩いていく

 

「今の時間なら中庭で昼寝でもしてるのだと読みます!」

 

彼が何を言っているのかさっぱり判らない

 

もういいと

 

数分歩いただけで彼女はすでに全身汗だくに

 

自身の緊張が彼にも伝わるような気がした

 

だが汗にべっとりなその手も離さず

 

彼はずんずんと歩いていく

 

「ほら予感的中です!おーい…ひ」

 

 

「えらく待たせた…すまない」

 

 

ふと耳に入ったその声

 

彼女の視線の先

 

彼はかつて親友だった「物」に

 

今も紛うことなき親友である「それ」に

 

「悠」を前に膝を折り

 

「悠」の背に額を押し付け

 

いるはずの無い

 

来るはずの無い

 

 

中庭に立つ一本の木に背を任せ寝そべっていた彼が

 

悠の声に

 

面倒臭そうに顔だけを此方に向けた

 

「昼寝ですかぁ?」

「今まさに寝付いたところだ」

 

何処までも飄々と笑いかける悠とは対照的に

 

比呂は不機嫌そうに欠伸を噛み締めた

 

 

 

「ひ…ろ…将軍?」

 

彼が

 

其処にいた

 

 

あとがき

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

 

ねこじゃらしです

 

ここのところPCがえらくご機嫌斜めです

 

いよいよ7に乗り換えるか

 

さてさて

 

ようやくエアーさん合流

 

だがそこにかつての友はおらず、変わり果てた姿に

 

おせーよ

 

まじおせーよ

 

というわけで次回高覧にちょいとキレてもらいましょう

 

それでは次回の講釈で

 

 

 

 


 
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