No.204482

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 廿話『魂魄・裏』

投稿50作品目になりました。
今回は2話連続投稿です。
前の話が未読の方は『前の作品へ>』をクリック。
拙い文章ですが、いつものように感想質問その他諸々、少しだけでもコメントしてくださると嬉しいです。
では、どうぞ。

2011-03-02 04:22:45 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:13387   閲覧ユーザー数:10842

忌々しい。

 

実に忌々しい。

 

もう一度言おう、実に忌々しい。

 

「何で私が、男の事なんて調べなきゃならないのよ……」

 

理由は単純。

 

華琳様の命令だから。

 

あの御方の歓びこそが私の歓び、なのだけれど……

 

「男なんて皆一緒よ!!結局は年中汚らわしい事しか考えてない、最低で下劣で醜悪で卑猥な奴ばっかりなのよ!!」

 

華琳様の、悪癖と分類してもいいだろうあの登用基準は少しだけ直して欲しい所である。

 

そして今回、その興味を持たれたのが、

 

「北条、白夜……」

 

草を使い調べさせて解った事は『何も解らなかった事』。

 

始めは草の質の低さかと思ったのだが、

 

「一切の記録が無い?どう考えてもおかしいじゃない……」

 

可能性として挙げられるのは、人柄のみが気に入られている、本当にただの『軍師見習い』か、

 

「それとも、存在が意図的に隠されているか……」

 

実に忌々しいけれど、華琳様が目を付けた以上前者である筈が無い。

 

それに、後者であるという事は、

 

「それだけの何かを、アイツは持ってるって事になる……」

 

そう呟いた、その時だった。

 

「荀彧様」

 

届けられた報告は、私の認識を更に改めさせられるものだった。

 

 

「な、によ、これ……」

 

そこに記されていたのは、明らかに異質で異様な事実。

 

見慣れぬ楽器というのは想像の範疇を越えないものの、その行為自体は直ぐに理解した。

 

弔問。慰霊。言い方こそ多々あるものの、敵兵すらも対象に含まれるそれはこの時世において禁忌とされる行為の一つ。

 

……そのはずなのに。

 

「どうして、頭なんて下げてるのよ……?」

 

奴は少なからずの兵士達を連れて来ていたという。

 

それだけに飽き足らず、兵士達が一人残らず、まるでそうするのがさも当然であるかのように膝をつき頭を垂れているなど、はっきり言って異常に他ならない。

 

意味が解らない。

 

意図が解らない。

 

権謀術数を役目とする私にはあってはならない事なのに。

 

目の前で起きている事象に処理が追い着かない。

 

これは私達や他の諸侯に対する何らかの策なのか、それとも……

 

「……今後、アイツから絶対に目を離さないで頂戴」

 

「御意」

 

目もくれずにそうとだけ告げて、私は再び思考に耽る。

 

先の汜水関において功績を上げられたのは劉備と孫策のみ。

 

ならば袁紹の性格からして、虎牢関において先鋒を任されるのは恐らく私達だ。

 

私がまず目を向けなければならないのは、次をどう切り抜けるかであって、アイツの事ではない。

 

でも、

 

「……何なのよ、アイツは」

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る真紅。

 

 

響き渡る悲鳴。

 

 

逃げ惑う人影。

 

 

刺し穿つ凶刃。

 

 

熱くて。

 

 

苦くて。

 

 

痛くて。

 

 

怖くて。

 

 

怯えて。

 

 

隠れて。

 

 

震えて。

 

 

塞いで。

 

 

襲い来る手に奪われて。

 

 

差し伸べる手に救われて。

 

 

何度も。

 

 

何度でも。

 

 

苦しんで。

 

 

苦しめられて。

 

 

そしてまた、このまま目が覚めるのだ―――――

 

 

 

「……あぁ、またですか」

 

開いた矢先に滲んでいる視界。

 

いつもより重く感じる身体。

 

人の記憶というものは、本当に憎たらしい。

 

忘れたくない事は次々に忘れる癖に、忘れたい事はいつまで経っても忘れてくれない。

 

「本当に、ままならないですね……」

 

さて、お嬢様を寝静まらせた所までは覚えているんですが、

 

「流石に疲れが出たんでしょうか……?」

 

直ぐに顔を拭い、周囲の様子を窺う。

 

辺りは既に暗く、人影は見当たらない。

 

幸い、誰にも泣き顔は見られなかったようだ。

 

そう胸を撫で下ろした矢先の事だった。

 

「張勲様、ご報告したい事が」

 

「っ、ど、どうぞ」

 

天幕の外からの声は、私が秘密裏に孫呉に張らせておいた私兵のものだった。

 

動揺を悟られぬよう必死に声の震えを抑え、入る許可を伝える。

 

やがれ音も無く訪れた私兵の報告は、

 

「孫呉に、北条白夜に動きがありまして」

 

 

「―――――ご報告、有難う御座いました。引き続き調査をお願いします」

 

「御意」

 

私兵が姿を消した事を確認すると、私は水を一口嚥下した。

 

深く呼吸を繰り返し、器を傍らに置く。

 

よく見なければ気付かない程ではあるが、その水面は微かに波紋を描いていた。

 

敵味方問わず、死んでいった者達への弔い。

 

それは絶対に韓胤、ひいてはその後ろ盾である『あの連中』が決して認めない事。

 

そして、

 

 

『忘れてはいけませんよ、七乃。私達は、彼等なくして成り立たないのです』

 

 

蘇るのは、懐かしい声。

 

 

『文武どちらにしろ、本当に優れた官ってのは自分を傷つけちまうもんだと、あたしは思うんだよ』

 

 

沸き上がるのは、憧れた姿。

 

 

「北条、白夜さん……貴方は、もしかして、」

 

 

あの御二人と、同じ意志を?

 

 

あの御二人と、同じ夢を?

 

 

信じても、いいんですか?

 

 

望んでも、いいんですか?

 

 

願っても、いいんですか?

 

 

この悪夢を終わりを。

 

 

この日々からの脱却を。

 

 

「……私を、信じさせて下さい、北条さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――時は僅かに遡り、虎牢関

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上。何か質問は?

 

 

―――――……な~るほろ。おもろいやんか」

 

 

アンタにかかってるんだからね。くれぐれも急いで頂戴、霞。

 

 

―――――あいよ、賈駆っち。付け上がっとる連中に一泡吹かしたるわ、楽しみにしとき。

 

 

……このままで終わらせはしない。覚悟しなさい、袁紹本初。

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

お待ち下さっていた皆様(いるのかな……?)、『盲目』久々の更新です。

 

最近は文芸部の原稿やレポートばかり書いてたので、いつもと文章が違うな~なんて感じた方がいらっしゃったら御免なさい。

 

 

さて、今回は2話一気に更新させて戴きました。

 

出来ればこの二つは間を開けず一気に読んで欲しかったので。

 

白夜の姿を知った華雄、そして各陣営の反応はどうなっていくのか。

 

―――――え、公孫?馬?気にしない気にしないwwww

 

……え~、おっ、ふん、はぁ!!(咳払い)

 

いよいよ次回、虎牢関に入ります。

 

物語は大きく揺れ動き、ここからは長かった連合軍編も終わりが見えてくるかなぁ、と。

 

いや、長くなったのは俺の執筆スピードとリアル事情のせいなんですけどね?

 

是非に、楽しみにしていただけたらと思います。

 

 

それはそうと、とうとう今回の投稿で作品数が50を突破致しました!!

 

これも一重に読者の皆様のお陰でございます。

 

より一層の奮起と共に頑張りますので、どうぞこれからもよろしくお願いします!!

 

 

 

 

では次話でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

…………ゴーカ○ジャー、マジで堪らんとです!!

 

PS:以前文芸部で執筆した原稿を投稿してみました。

 

ちょっとしたSFな世界観で書いたお話です。

 

宜しければ『<次の作品へ』を押して読んでやって下さいませ。


 
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