No.203114

真・恋姫†無双~天より来たりし戦士~第14話

マーチさん

やっと肩が治った・・・・

もう骨折はこりごりだな。体育でふざけるのは止めよう。


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2011-02-22 17:10:30 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2339   閲覧ユーザー数:1924

翌朝、蓮華は部隊を率いて出陣。その道中、甘寧の部隊と合流して部隊の規模は増大した。

 

 

孫権軍は進路を変更。孫権の姉、孫策が率いる部隊の元へ向かうのであった。

 

 

 

行軍中のこと。

 

 

 

 

「なぁ、甘寧」

 

 

「なんだ」

 

 

 

一刀に対して無愛想な態度の甘寧。

 

 

だが一刀は気にすることも無く会話を続ける。

 

 

「街の復興、援助したんだってな」

 

 

「ああ。それがどうした」

 

 

「街の様子はどうだ?」

 

 

「街としての機能は回復し、市民もなんとか立ち直っている。もう大丈夫だろう」

 

 

「そうか・・・・・・」

 

 

一刀は視線を落とした。

 

 

 

『戦いの傷』というものは、いつまでも残り続ける。

 

 

それに、その傷を癒すには並大抵の苦労じゃ成し得ないことだ。

 

 

 

「大丈夫だと、いいんだがな・・・・・」

 

 

 

一刀の小さな呟きは、誰にも聞かれる事はなかった。

 

 

「しかし・・・・・我々が軟禁状態となって早二年。まさか袁術公認で出陣出来るようになるとは思いませんでした」

 

「そうね、袁術が馬鹿で良かったわ」

 

 

 

甘寧と蓮華の会話が、周囲の者の耳にも届く。

 

 

 

「袁術が愚かだったお陰で姉様と合流出来る。・・・・・姉様、お元気かしら?」

 

「雪蓮様の事です。きっとお元気でいらっしゃる事でしょう」

 

 

「ふふっ、そうね」

 

 

行軍中だとは思えないような穏やかな雰囲気に包まれる。会話の内容はともかく、雰囲気だけは『女の子同士の会話』だ。

 

 

そんな彼女たちの会話とほぼ同時に、一刀も周泰と会話をしていた。

 

 

 

「なぁ周泰。蓮華の姉ちゃんってどんな人なんだ?」

 

 

「天真爛漫なお方ですっ!」

 

 

「へぇ・・・・(ガキっぽいって事か?)」

 

 

ニコニコと笑顔な周泰を見る限り、周泰にとっては『イイ人』なのだという事は推測できる。

 

 

「(ま、会ってみなきゃわかんねぇ・・・か)」

 

 

 

と、その時。

 

 

少し強めの向かい風が一刀たちを襲った。

 

 

 

「・・・・・!?」

 

 

その途端に一刀は表情を変え、自身の唇に指を当てた。

 

 

 

「気のせいか・・・・?」

 

 

「一刀様?どうかなさったので??」

 

 

「いや、少し嫌な臭いがしたもんでな」

 

 

「嫌な臭い??」

 

 

「ま、気にすんな。たぶん勘違いだ」

 

 

「?」

 

 

首を傾げる周泰に「何でもねぇから」と言って、その場を離れる一刀。

 

 

周囲を見渡しても、臭いを感じた者はいなさそうだ。

 

 

「(・・・・誰も気づいてねぇか。ま、気のせいならそれに越したことはねぇんだが)」

 

 

 

ほんの微かだが、『異変』を感知した一刀。

 

 

この時は、気づくはずも無かった。

 

 

はるか遠方で、とある集団が『火攻め』によって殲滅していたことなど・・・・

 

 

 

やがて、太陽が蒼い空に最も高く昇った。

 

 

するとその時、一兵士が蓮華たちに報告を入れる。

 

 

 

「報告します。前方に砂塵、及び『孫』の牙門旗を確認しました。」

 

 

その後、また別の兵士がやって来た。

 

 

「確認を取りました。前方の部隊は孫策様の部隊で間違いありません。」

 

 

「わかった。私は姉様の元に向かう。思春と周泰は私の護衛をお願い。一刀は私達について来て。部隊はこのまま前進して、姉様の部隊の後衛につくように」

 

 

蓮華は部隊に指示を送り、一刀たち三人を率いて部隊を離れた。

 

 

前方の部隊の中に入り込み、指揮官である孫策の元に向かう蓮華たち四人。

 

 

すると、その途中で一刀がある事に気づいた。

 

 

「おい蓮華。なんかこの部隊、負傷者がいるみてぇだけど」

 

 

「たしかに、言われてみれば・・・・」

 

 

このちょっとした疑問を解消するため、蓮華は近くの兵士に尋ねてみた。

 

 

「聞きたいことがあるのだが、お前たちの部隊に負傷者が多少見受けられる。何かあったのか?」

 

 

「は、はぁ。実は先程――――・・・」

 

 

兵士から語られたのは、自分達は孫策が直接指揮する部隊に所属していること。

 

 

そして、先の戦闘で孫策が単騎で突撃を仕掛けたこと。

 

 

自分達は孫策を守るために、大慌てで敵陣に突入したことで陣形が上手く形成できなかったことで死傷者を予想外に出してしまったこと。

 

 

「(ってことは、さっきの異臭はもしかして・・・・・)」

 

 

一通り説明した兵士に、一刀はある質問をした。

 

 

「なぁ、その戦闘で『火』を使ったか?」

 

 

「ええ、火矢は使いました。そして敵を包囲し、『火攻め』によって敵を殲滅せしめました」

 

 

「・・・・そうか」

 

 

「一刀、どうしたの?」

 

 

「いや、ちょっと気になっただけだ」

 

 

あの微かな異臭の正体。

 

 

それはおそらく『人が焼けた』臭いだろう。

 

 

遠方の現場から、強風に運ばれて一刀の鼻まで到達したのだ。

 

 

「(アフリカ大陸に行った時、嫌って言うほど嗅いだからなぁ。だから俺の嗅覚だけが敏感に反応したのか)」

 

 

ちなみに一刀が唇に触れたのは、遺体から空中へと飛散した『脂肪』が付着しているかを確認するため。これはおそらく『反射』に近い、無意識下での行動だろう。

 

 

「?」

 

 

そんなこと知る由も無い蓮華達は、ただ首を傾げる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

「姉様!!今報告を聞きました!!!単騎で敵陣に突っ込むとはどういう事ですかっ!?!?」

 

 

一人の女性に対して怒りを爆発させる蓮華。

 

 

一刀は腕を組み、ボンヤリとその様子を眺める。

 

 

 

「姉様っつってる辺り、蓮華に怒鳴られてぐったりしてんのが孫策か?」

 

 

「そうだ」

 

 

一刀の問いに答えたのは甘寧。

 

 

「あのお方こそ、我らが孫呉の王だ」

 

 

「妹に叱られる王なんて聞いたことねぇんだけど」

 

 

「貴様・・・・・雪蓮様を侮辱したいのか?」

 

 

「んなつもりはねぇよ。むしろこういう『やり取り』を見るのは好きの方だ」

 

 

そう言いながら、甘寧の剣を手で下げつつ、一刀は蓮華たちの後ろを見やる。

 

 

すると、こちらを見る三人の女性の存在に気づいた。

 

 

『こちらを見る』といっても、警戒している様子はあまり感じられない。『観察している』という感じだ。

 

 

一刀もボヤ~ッと三人を眺める。

 

 

「(・・・デカッ)」

 

 

「一刀、こっちに来て」

 

 

「っ!?」

 

 

急に蓮華に呼び出され、一刀は小走りで彼女の元に向かう。

 

 

 

「姉様、紹介します。彼が『天の御使い』である・・・・」

 

 

「姓が北郷、名を一刀。敬語で話した方が良いですか?『孫呉の王』殿」

 

 

 

珍しく敬語を使う一刀に、蓮華は多少驚く。だが、一刀の表情からして敬意があるとも思えない。

 

 

すると一刀の問いに対して、彼に向かい合う女性がニコリと笑みを浮べる。

 

 

「私は普通に話してくれた方が嬉しいかなぁ。それと私の名は孫策、字は伯符よ。『孫呉の王』なんて呼び方はしないでね?」

 

 

「りょーかい」

 

 

一刀もフッと微笑み、そして手を差し出す。

 

 

「?」

 

 

「『握手』を知らねぇのか?ま、知らねぇんならいいや」

 

 

そう言って一刀は差し出した手を下げた。

 

 

 

 

すると、孫策の後ろにいた三人の女性が歩み寄ってきた。

 

 

「蓮華様、我らにもこの孺子を紹介してくだされ」

 

 

「(『孺子』だぁ?)」

 

 

三人の内の、銀の髪が特徴の女性が興味津々に一刀を眺める。

 

 

「彼は北郷一刀。『天の御使い』よ」

 

 

「ふむ、こんな孺子がのぅ・・・・」

 

 

一刀は少しムッとする。

 

 

『孺子』と言われたことが気に入らなかったのだ。

 

 

「アンタは?」

 

 

「儂は黄蓋、字は公覆じゃ。よろしくな、孺子」

 

 

ニカッと笑う黄蓋に対して、一刀は少し不満げな表情だ。

 

 

一刀は小さな仕返しを始める。

 

 

「・・・・黄蓋サン。いくら『若さ』が羨ましいからって、『自分よりずっと年下』の『若者』をガキ扱いすんのは良くねぇんじゃないか?」

 

 

『若い』に関係する言葉を特に強調した一刀の長い一言により、黄蓋の表情は一変する。

 

 

「む・・・・・そんなんじゃないわい!!」

 

 

「あぁそうかい。そりゃ失礼しました」

 

 

「仕返しだ」と言わんばかりに憎らしい笑みを浮べる一刀。

 

 

「この孺子・・・・・・・っ!」

 

 

「そんな顔すんなって。シワがまた増えちまうぞ?」

 

 

「はいはい、そこまでよ」と、銀髪の女性の隣に立つ黒髪の女性が仲裁に入る。

 

 

「まずは互いに名乗ろう。我が名は周瑜、字は公瑾だ。こっちは・・・・」

 

 

周瑜が名乗ったのを皮切りに、もう一人も名乗る。

 

 

「私は陸遜、字は伯言ですぅ~」

 

 

 

「俺は北郷一刀。姓が北郷で名が一刀・・・・って、さっきの会話聞いてたよな?」

 

 

 

全員が名乗り終わった所で、周瑜が再び一刀に話しかける。

 

 

 

「早速だが、北郷よ。蓮華様の手紙によれば、お前は我が孫呉に協力してくれるそうだな」

 

 

周瑜の鋭い眼が、一刀の黒い瞳を捉える。

 

 

「ああ。そうだよ」

 

 

「では、具体的に何をしてくれるのだ?それについては記載が無かったのでな、ぜひ答えてもらいたい」

 

 

「そうだな・・・・」

 

 

少し間をおいて、一刀はポツポツと返答し始める。

 

 

「まずは俺の『天の御使い』という名を好きなように利用させてやる、孫呉の意思になるべく同調する、技術・情報の提供とか・・・・・ま、『天の御使い』と言う名の傭兵を雇ったと思ってくれりゃいいさ」

 

 

「傭兵、ねぇ」

 

 

「ああ。まぁ『穀潰し』にゃならねぇ位の働きはするさ」

 

 

「そうか。では精々頑張ってくれ」

 

 

「ただし、俺は孫呉と『契約』した身だ。わかるか?俺との『契約』ってのは相互の利益が前提なんだ。ソイツを踏まえた上でやってくれねぇと・・・・」

 

 

「ふふっ・・・・こっちも『愛想』をつかされないように気をつけるさ」

 

 

 

 

 

 

孫策たちの部隊と蓮華たちの部隊が合流したことにより、再編成が行われた。

 

 

その間、一刀は用意された天幕の中で待機していた。

 

 

「ねむ・・・・・ちょっと寝よっかな」

 

 

「一刀さ~ん」

 

 

「?」

 

 

天幕に入ってきたのは陸遜だった。

 

 

「おう、陸遜か。どうした」

 

 

「編成が終わったので、一刀さんにお伝えしに来ました~」

 

 

間延びした陸孫の声に、どこか心地よさを感じる一刀。

 

 

「そうか。で、俺も配置が変わるのか?」

 

 

「はい~。一刀さんは、え~と・・・・孫策様の部隊と同行してください~」

 

 

「孫策の部隊?蓮華の部隊じゃなくて??」

 

 

「あらあら、蓮華様の部隊が良かったんですかぁ~?」

 

 

「別に」

 

 

クスクスと笑う陸遜をよそに、一刀は「よっこらせ」と立ち上がって天幕から出ようとする。

 

 

「ありゃ?一刀さんの背中のソレってなんですか~?」

 

 

「弩を改造したヤツ」

 

 

「弩?ずいぶん風変わりな弩ですね~」

 

 

「使いやすいように色々いじったからな。」

 

 

「それって、『天の知識』を使っているんですか~?」

 

 

「あー・・・・まぁそうだな」

 

 

すると、陸遜は目を輝かせて一刀に詰め寄る。

 

 

「ねぇ一刀さ~ん、できれば私にも『天の知識』を教えて欲しいんですぅ~」

 

 

「お、おい!!」

 

 

陸遜は一刀の背に手を回して抱きつく。

 

 

「私、新しい『知識』がたまらなく欲しいんですよぉ。だ~か~ら~・・・・」

 

 

「わ、わかった!わかったから離れろ!!」

 

 

グイと陸遜の肩を押して離す一刀。彼の顔は赤みを帯びており、また心拍は急速に上がっていた。

 

 

「ホントですかぁ?『約束』ですよ~?」

 

 

「わーったよ。で、孫策はどこだ?早めに合流しておきたいんだけど」

 

 

「あ、孫策様なら左に真っ直ぐ行った所にある天幕に居ると思いますよ~?」

 

 

「そうか」

 

 

一刀は足早に天幕から出た。

 

 

「『ったく、あーいうのを『色仕掛け』っていうのか?女は恐ろしいモンだ・・・・・)」

 

 

スタスタ・・・と向かう先は孫策の天幕。

 

 

「(孫策ん所で少し休ませてもらうか・・・・)」

 

 

心身の疲労を解消すべく、一刀は孫策の元へ急ぐのであった。

 


 
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