「魏の種馬」と名高い北郷一刀。女の子を落とすために西へ東へ大忙し。
そんなある日のことでした。事の始まりは彼の一言からでした。
「そういや、そろそろバレンタインじゃなかったかな?」
「馬恋対陰? なによそれ」
魏の覇王、華琳は飲もうとしていた湯呑みを口元から話すと不思議そうに尋ねてきました。
「ああ、バレンタインってのは好きな女の子が好きな男の子にチョコを渡す日のこと」
「へぇ、天の国には変な習慣があるわね。で、チョコって何?」
「お菓子だよ。茶色で甘いお菓子。知らないか?」
「聞いたことないわね」
「まぁ、そうだよな」
この時期はまだ、チョコは渡って来ていませんから仕方がありません。その時、ふと華琳は不思議に思いました。
「でも、何故女性が男性に贈るのかしら? 別に男性が女性に贈るのでもいいと思うのだけれど?
それにわざわざその、チョコ? っていう物に限定する理由もないわ。手に入らなかったら駄目じゃない」
その疑問に一刀は何でもないように答えます。
「ああ、それ何だけど。元々は親しい間柄の人にカード、手紙の様な物や花を贈るのが最初だったらしいんだけど
それが俺達の国じゃ、どこをどうしたのか好きな女性が男性にチョコを贈る習慣になったんだよ。
それにチョコ自体は簡単に手に入るものだしね。簡単に浸透したらしい」
「へぇ。天の国はほんと裕福なのね。同じ嗜好品が年中、しかも誰でも手に入れることが出来るのだから。
それで、毎年もらってたのに、今年は貰えなくて残念に思ってたのかしら?」
意地悪そうに、少しむくれながら言う華琳に一刀は笑いながら否定します。
「いや、もらってなかったよ。貰っても義理チョコだったし。あ、義理チョコってのはただの友人に渡すチョコのこと」
「何よ。結局貰ってるじゃない」
「いや、やっぱり 義理としてもらう物よりも本命を貰った時の感動は違う!」
何故か熱く語る一刀に何を考えたのか、顔を赤くする華琳。
「と、ところでそれっていつなのかしら?」
「うん? 大体だけど、あと一週間程度じゃないか? 多分だけど」
カレンダーなんてものはありませんし、ここの日付が太陰暦の場合、あったとしてもずれが起きてしまいます。
「……そう」
いつもなら「そんなあやふやな情報はいらないわ」とでもいいそうな華琳は何かを考えています。
「どうしたんだ、華琳?」
「……決めたわ」
にやり、と不敵な笑みを浮かべる華琳に一刀は嫌な予感を得ます。
「一刀。その馬恋対陰? を来週にするわよ」
「……は?」
「何よ。これは決定。城に居る人達全員に伝えなさい。『好きな人が居るものは手紙、もしくは花を贈るように』と。
ちなみに、これは義務よ。もし、贈らないということは好きな人が居ないということとみなすわ」
「おい、華琳!? いっとくが俺の世界じゃ義務じゃないぞ?」
「知らないわよ。ともかく、これは決定よ」
「分かったよ。城の人達全員に伝えるよう手配するよ」
「それじゃ、私はそろそろ戻るわ。一刀。『頑張ってね』」
「まぁ、頑張るのは俺よりも知らせる人達だけど」
その時、一刀は何か違和感を感じましたが気のせいだろうと思いました。
まさか、それが嵐の前触れだと気付くことはありませんでした。
オリジナルを呼んでくれたかたお久しぶりです。読んでない方初めまして。くらのです。
バレンタインだということに気が付いたのは夜の11時。へ、チョコ? はっ。気が付いたのが11時ですよ? 結果なんて分かり切ってますよね。
さて、まだまだ序章です。これから徐々に魏のメンバーが出てきます。各キャラの個性が出た作品が出せればな、と思います。
それでは皆さん。またお会いしましょう。
是非、感想をお願いします。
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バレンタインです。前のあとがきの宣言通りに恋姫を。上手く皆のキャラの特徴が出せればな、と。楽しんでくれれば幸いです。