No.201313

仮面ライダーEINS 第二話 都市

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。

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2011-02-13 08:30:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:757   閲覧ユーザー数:736

Kamen Rider Eins

EPISODE2 都市

 

――2011年9月

――学園都市 理系学区 医療学部 14:28 p.m.

「はっ!」

 学園都市の少し入った路地で、明らかに異形である赤と青の怪人二体と赤い瞳の異形が戦いを繰り広げていた。

伸びてくる腕を掴み、放り投げる。もう一つの魔手はしっかりと正義の味方に躱され、これまたしっかりと裏拳が顔面に収まる。

明らかに二対一の状況であったが、赤い瞳の正義の味方は一人でもその状況を圧倒していた。

カウンター主体の堅実な、だが力量が相手より上でなければできない戦いだ。

彼の後ろには一人、守る義務がある市民がいるがそんなことは足かせではないらしい。

「どうした?この程度の性能で学園都市に喧嘩売りに来たのか?」

 明らかに軽い挑発だった。

二対一で圧倒されているのだ。逆上というより焦りが見える。

「これが……仮面ライダー!」

「そうだ。分かったならとっととお縄に付いてもらおうか。このままだとタダの弱いもの虐めだからな」

「なっ……貴様!!」

 ブチギレタ。

何の策も考えも考え無しに突っ込み始めた。戦いの中で冷静さを失うのは一番不味いことだ。それが弁論であってもスポーツであってもだ。

そして仮面ライダーと呼ばれた男は仮面の下で小さく笑った。

「阿呆が」

 腰に刺さっていたスライド式携帯電話を開き、コードを入力する。

 

9――9――9――

 

「ライダーキック」

『RIDERKICK!!』

 かけ声と共にベルトから電撃が発生し右足に流れ始める。同時に彼の足は熱を帯びエネルギーをぶつける用意が完成する。

突っ込んできた赤い怪人に右回し蹴りで迎撃する。

すぐさま体勢を立て直し、遅れて突っ込んできた青い方には突き出すように蹴り飛ばした。

最初の一人は回し蹴りをまともに受けそのまま動かなくなるが、もう一人のほうはそのまま吹き飛んだ。しかし動きは緩慢になっているものの、行動不能ではないらしい。

「焼付け刃ではこんなものか!?」

 仕留め損ねた。そもそも非殺傷用であるのが仇と出たか。すぐさまトドメを指すべく一気に近づくが、相手の行動の方が早かった。

逃げるべく人通りの多い道へと走っていく。正義の味方もそれを追うが、すでに姿は見えなくなっていた。

「逃がしたか・・・」

 少なくとも変身解除を大衆に見られるわけにはいかない。ベルトから携帯電話を抜き変身を解除した。

名残惜しいが今は狙われていた女性を助けるべきだ。

「災難だったな」

 赤い怪人は既に人の形に戻り地面に倒れている。僅か10tの威力しかない必殺技もスタンロッドよろしくの電流ごとぶつければ怪人といえどひとたまりもない。

完全に伸びきってしまっている敵の横では亜真菜がすっかりとへたり込んでしまっていた。

「・・・ほんとに雨無くん?」

「さあ、怪物かもしれないな」

 そう言って彼女に手をさしのべる。その手は人の血が通っている暖かい手だった。

「大丈夫、人の手だよ」

 

 

「すまん、取り逃がした」

 青い怪人を取り逃がした一騎は腰に差していた携帯電話で連絡を取っていた。

電話から聞こえる声は聞き慣れた相棒の声だ。

『手傷を負わせただけでも良しとしよう。ぶっつけ本番で二体にライダーキックをヒットさせた君の技術を褒めるべきだね』

「次はもう少し上手くやろう。ところで奴らの使ってたモノだが、最近流行っている細胞命令云々のやつか?」

 そう言って赤い怪人の体から排出されたアンプルを眺めていた。

変化していた男は既に連行され現場検証が行われている。端には質問を受けている亜真菜もいる。

『タイプセル(※)シリーズのアンプル。細胞に変質する命令を発し体を変質化させる……まあ充分と後進的な技術、いや時代遅れというべきだね』

 相棒のあまりにも酷い酷評に思わず小さく笑ってしまう。まあ確かに面白みのない技術だ。自分もそう評している。

「出所はつかめたか?」

 そういってアンプルを空にかざし中を空かすように眺める。中には粘性がある液体……どうやら血液のようだ。

『学園都市外からだね。喧嘩売られたらしいよ』

「なら高値で買い取ってやる。勉強していってもらおう」

 言葉は実に滑らかにそして軽く飛び出た。しかし発せられた言霊は異常までに重いものだった。

『奴のコードはジェミニ、タイプセル・ジェミニということにしておくよ。それと、被害女性だけどホテル確保したから』

「了解した。そっちはやつの足取りを追ってくれ」

『え、追わないの?』

「知り合いだから貸しを作っておく。それに張り付いていた方がお相手様からいらっしゃってくださるぞ?」

『何重敬語だよ……まあ了解』

 電話を終える。

あたりは厳戒態勢であり、少しでも物証がないか鑑識がしきりに動いている。そんな慌ただしく殺気立っている中、縮こまって聴取を受けている亜真菜に歩み寄った。

「聴取は?」

 聴取をしていた都市警察の人間に話しかけた。その内容は敬語ではなく一騎が上司ということが感じられた。

「終わりました。今は……」

「どうやらやっこさん、和泉に顔を見られたと思い込んでいるみたいだからな。VIP用のホテルが確保できた。和泉を今日はそこに放り込んで様子をみる。というわけで行くぞ、和泉」

「え、え?」

 何が起こっているか分からない。一騎は一応説明したつもりだったが、未だ混乱している亜真菜には付いていけない。

「なんだ、学園都市の四つ星ホテルだぞ?不服なら本部の五つ星までいくか?二時間かかるぞ?」

 いろいろ論点が違った。

「いや、何が何だか……」

「お前は襲われた。相手はお前に顔を見られたと思って口封じに来る。お前を守る。以上」

 彼をよく知る人から言わせれば彼らしいというだろう。最初に結論を、そして説明を僅かに付け加える。それが彼の話し方だった。

 

 

「しかし久しぶりだな」

 ホテルのロビー。

学園都市は様々な学会や発表会が行われる。そのため、会議室や講演堂などを備えたホテルが多数存在しているのも特徴だ。

理系区画の中でもかなり豪華でVIPが訪れるせいかやたらと頑丈なホテルになっているを選択したのだ。

「あの不良少年が更正してるとは思わなかったよ」

「言うな。まあ今でもやんちゃしていることには変わらないけどな」

 若い頃を知られているのは随分とくすぐったいものだ。

共に戦っている相棒も大人になってから知り合った。探せば見つかるかもしれないが、学園都市では旧友は知る限りはいなかった。

そんなことに思いを馳せていると、彼の携帯……変身に必要となるものが着信を知らせる。相手は旧友よりも繋がりが深い相棒からだ。

「どうした?」

『例の青いのが理系学区の機械学部に出現』

「急行する。現場には無理しないように伝えろ」

・・・

・・

 機械学区では青い怪人が警備部の人間に迫っていた。

警備は既に発砲している。日本でこれほど派手にドンパチ出来るのもこの学園都市だけだろう。

青い怪人は銃弾を体で受け止め、鉛玉を涼しい顔で受け止めて続けている。いや、その体は銃弾を受け止めているのではなく弾き返している。

その場にバイクの爆音が響き、学園都市の護り手が来たことをあたりに知らせた。

しかし護り手は怪人の姿を見た瞬間、驚愕の表情に変わったのだ。

「こいつ……違う!」

『何だって!?』

 確かに姿格好は似ている。しかし亜真菜を襲った怪人は生物的……しかし今目の前にいるのは機械的な、突き詰めて言うのであれば兵器的であった。

「ハル!今すぐホテルに緊急配備だ!」

『もうやってる!』

「しかもタイプスティール(※)とはやってくれる。時間がかかる相手じゃないか!」

 

4――9――1――3

――変身!!

 

 

 ホテルでは先ほどのタイプセル・ジェミニが亜真菜に迫っていた。

ホテルに配備されていた警備部が応戦していたが、室内戦ではせっかくの数を活かすことが出来ない。開けている場所なら数と全方向からの攻撃で撃退出来ていただろう。通路ではせいぜい銃口の数は二つ三つが限度だ。その銃口の後ろでは人間という名の壁を挟んで亜真菜がいた。

銃弾の嵐を悠々と進んでいるタイプセル・ジェミニは文字通り警備部の人間を蹴散らしていく。

そしてその悪手は無言で亜真菜に迫っていく。

「仮面ライダーはいない。これで任務に入れる……」

「おりゃぁぁあ!!」

 救世主は現れた。しかし今回はかっこよさは微塵も感じないドロップキックで。

しかし全体重で外力を与えていたためか、さすがのタイプセル・ジェミニもふっ飛ばされた。

「間に合ったぁ!!」

「雨無くん!」

 受け身まで見事に成功させた一騎が起き上がる。汗もびっしょりで息も上がっている。

「貴様……今は別働だと……」

 表情は変わらない。変えることが出来ない怪人だったが明らかに動揺と驚愕が篭もった声があがる。

対して仮面ライダーは不適な笑みを浮かべた。疲れは感じさせない。

「いろいろと実装していればひとっ飛びだったんだがな!階段を一気に登ってきたんだぞ。少しは紳士的対応を要求するぞ!」

 携帯電話の入力を終え、ベルトを召喚する。

 

――変身!!

 

変身はさせないと青い怪人が一気に彼に迫るが、合体を終了したベルトから白いリングが飛び出しはじき返される。伊達や酔狂でリングを出しているわけではないのだ。

そのリングが回転し一騎を光で包み始め、彼は仮面を被りアインツに変身した。

「さあ、尺の都合もあるが派手に行こう!」

 アインツがタイプセル・ジェミニを指さした。

もう既に勝てないのは分かっているはずだ。先ほど一対二で挟み撃ちという圧倒的優位から撃退させられたのだ。もはや余裕はない。

ならば敵が取る手段は二つ程度。闘争か逃走。

そしてタイプセル・ジェミニは闘争を選んだ。むしろ玉砕だ。

その真っ直ぐの拳は仮面ライダーまで届くことはなく、そして仮面ライダーから放たれる真っ直ぐな拳は吸い込まれるように相手に当たっていく。

仮面ライダーの攻撃は大振りだ。僅かな隙に大きな一撃を加えるだけでいい。防御力がそれなりにある以上ジャブは不必要と言わんばかりの攻め立て方だった。

後はさらに大きい一撃で相手を気絶させるだけでいい。相手の腹に一撃。その隙にコマンダーに入力する。

――9

そして回し蹴り

――9

さらに体を回転させ後ろ回し蹴り

――9

「ライダーキック」

『RIDERKICK!!』

 ベルトから電撃が右足に走りエネルギーが蓄積する。

対象は起き上がった。しかし次に起き上がるのは病院、運が良ければ留置場だ。

「おりゃぁぁあ!」

 かけ声とともに必殺の回し蹴りをタイプセル・ジェミニに直撃させた。

爆風が発生するほどの衝撃を受け吹き飛ばされたタイプセル・ジェミニは、既に破壊された状態のアンプルを排出し人間の姿に戻るのであった。

 

 

「災難だったな」

「あははっ、大丈夫だよ」

「学園都市を嫌いにならないでくれ」

「兎に角雨無くんが守ってくれるってことはよく分かったよ」

「それは……責任重大だな」

 また重荷を背負わされた。そう言いたげな一騎は亜真菜の家に案内している途中だった。もうそこに危険はなかった。亜真菜を脅かす危険はもうない。事件があったすぐあとにこうやって街中を歩けるのも、仮面ライダーの尽力があったおかけだった。

「それに……こんな物も見られるんだ」

 角を曲がったその先には桜並木が広がっていた。

「遺伝子技術が発達したせいでな、こうやって夏にも桜を見られるようになった。もっとも遺伝子移入の危険性もあるから一切学園都市からは出せないが……」

「……綺麗だよ」

 夏に見る桜も乙なものだろ。と一騎は亜真菜に向き直った。

「ようこそ、学園都市へ。俺はこの街を守る仮面ライダー、仮面ライダーアインツだ」

 

 

おまけ:仮面ライダー紹介

仮面ライダーアインツ(EINS)

学園都市で造られた第一号ライダー。

携帯電話アインツコマンダーで特殊コードを入力することで、ベルトであるアインツドライバーが装着者に腰に現れそこにアインツコマンダーと合体させることで変身できる。変身ベルトとしての総称はアインツギア。

腰に刺さったアインツコマンダーにコードを入力して様々な機能を発動させることができる。

相手を殺すことを考慮されておらず、無力化に重点を置いているため性能は低い。これほどの戦績をあげることができるのは装着者である雨無一騎によるところが大きい。

必殺技はコード999で発動するライダーキック。威力は10tと低めだが、同時に電流に似たエネルギーもぶつけるため数値以上の威力を持つ。必殺技も非殺傷である。

 

おまけ:怪人紹介

※1タイプセル・ジェミニ

タイプセルとは、アンプルを体に刺すことによってナノマシンを注入し体内の細胞を変質化させる命令を発生させ変身する怪人の種類である。

 

タイプセル・ジェミニとしては特別な能力もなく単なる強化人間である。赤い個体と青い個体が登場したがスペックの差は無い。

 

※2タイプスティール・シザース

タイプスティールとは、外骨格を転送し変身する怪人の種類である。

ちなみにシザースとは噛ませ犬の意味である……え、ジーザス?それも違うって?

 

 

おまけ:NG会話集

アインツ「尺の都合で三十分しかないんでな!」

亜真菜「尺?」

アインツ「行間か!?」

(※正しくは24分です)

 

 

おまけ:次回予告

――よう、相席でも構わないかな?

 

――君は純粋すぎる

 

――違う!止めるんじゃない!救ってみせる!!

 

EPISODE3 武器

 

 


 
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