「そろそろいいですかー?」
「おー」
「さんきゅーな、クロノ」
「あぁ。役に立てたなら光栄だ」
自分の言葉が本音かどうか自身わからないまま、それでもクロノは言葉を切り返す。
体力バカとは言ったものだ。技術があるからよけい面倒。戦い馴れているとは言ったもので、彼らの言葉をリアルに感じた時間は、いい経験になった。
そう思わないと、心が折れる。
(相手は素人じゃない、しろうとじゃない・・・)
そうとう、いろいろハードな数分であったらしい。息を切らす程ではないが、プロである以上、時折ひやりとさせられたという「事実」が彼を思い詰めさせたのか。
「じゃぁ大輔頼む」
ヤマトのいうところの体力バカの大将、太一が後輩に声を振る。
彼は手のひらに収まる奇妙な形の機械を握りしめ、大きくうなづいた。
「おぃっす!あ、でもクロノいていいんですか?」
「そういえばそーだな。一応ほかの人はアースラスタッフでも閉め出したしなぁ」
今更のようにヤマトが首を傾げ、リーダーである太一の意見を目線で求める。だがその当人が話題を振ったのはなぜか別の人物。
「どうする?光子郎」
「僕に聞くんですか?一応リーダーは太一さんでしょう」
「でもおまえが一番クロノとはダチつきあいしてるだろ」
ふむ、とある意味人選を目の前でされているクロノにしてみれば今すぐきびすを返してじゃぁあとを頼むといいたいところだが。
果たして目のあった友人がにこりと目を細めた。
にこり、という擬音がバックに見えるのに、なぜか逃げたいと思う中、決定が下される。
「なら観ていていただきましょう。もちろん、黙っていただいてもらう意味で」
「理由を聴いていいかい?光子郎」
もちろん、自分を巻き込む理由だ。
それを聞けた自分にちょっと感動しながら、聞かなきゃよかった答えを受ける。
「もちろん。あなたが使うかもしれない駒の性能です。
よく目に焼き付けておいてください」
どういう意味か、わからない執務官ではなかった。
さんざっぱら、機会あるごとに彼はとんでもない勧誘を受けているのだ。
「だからどーして僕にクーデターを起こさせる気満々なんだ君は!!やってもトップにはいかないぞ、僕は」
「さて。大輔くん」
「はいっ」
「コーシロー!」
スルーするなそこで。
クロノのどっかずれてる自覚のない悲鳴にどちらかというと色々聞きたくない他メンバーが話を進めることにした。
というか、聞いていない、としか言いようがないのは光子郎の仲間連中も、なのである。
果たして大輔は改めてその手にあるモノをメインモニターにかざし、キーワードを言い放つ。
それは、魔法を操る者にはトリガーワードと響いたかもしれない。
「デジタルゲートオープン!」
「え」
ぐぉっ、とした奇妙な空気の流れ。
吐き出されたというよりも吸い込まれたような気配の中、本来相入れない筈の扉が、道が切り開かれる。
まさしく開けゴマ(オープンセサミ)。
太一とヤマトが無言で一度うなづきあい、仲間に告げる。
「行ってくる」
「もうアグモン・ガブモンは入り口付近に待機してるはずですから」
「了解」
そしてなんのためらいもなく、その道へと踏み入れる彼らを見送り、大きく深呼吸を一度したクロノは率直な感想を口にする。
「っ、直接、だな。確かに」
「もっと驚いてもいいと思いますよ、クロノさん」
大輔がニヤニヤとそんなことを言うが、黒衣の魔導師はできる限りの冷静を装って首を振った。
「プライドにかけて、それはない」
「そーっすか。あ」
その反応を別段面白がるでもなく受け入れた大輔だったが、収縮するゲートの隙間から飛び出してきた青と緑の影に意識をとられた。
「だーいちゅけー」
「けーんちゃーん」
それは彼らのパートナー。
もっとも信頼する、絶対の味方。
「チビモン」
「ワームモンもきたのか」
「きたー」
「えへへー」
姿そのまま、幼い様子で胸を張る二体。
事態を把握しているのかいないのか、それぞれパートナーへと飛び込んでいく。
ぽかん、としたのはクロノだ。
彼らの存在を知らぬではなかったからだが、話が違った。
「え?彼らはこちらにはこれないはずじゃ」
「例外ですよ。パートナーがいますから」
そういえばそんなようなことも言っていたようないないような。
記憶を探りながら、彼はその小さな生き物たちを眺める。
彼らは、実に素直だった。
「ダイスケがいるからオリげんきー」
「そうなのか・・・・・・」
理屈ではないが、彼らにとってそれが真実ならそうなのだろう。
ほほえまし気にみていた実質指令官だったが、タイミングを見計らい、宣言する。
「ではそろそろ本題の方へ意識を」
「そうだな。こっちも準備OKだ」
画面越し、確かにそちらに存在している彼らがそうと宣言する。傍らには彼らのパートナーの姿も。
京の声が彼らに状況を説明する。
「Ω1・Ω2、メタライズ確認。パートナーエンゲージOK」
「どんな感じですか?太一さん、ヤマトさん」
画面越しだが、タイムラグなしで会話は成立すらしい。
先ほどのウォーミングアップからすれば幼戯にも等しい軽い運動をしながら、彼らがうなづく。
「問題ないな。アグモンたちも今のところ平気っぽい」
「がんばろうなー、たいちぃ」
「今度は僕らのリベンジだね、ヤマト」
「だな。」
それぞれのパートナーが決意も新たに言葉を交わす中、突如として通信音がセカンドブリッジに響く。
一瞬身を堅くした彼らだったが、光子郎がすぐに通信を押した。内線だから、通じたと知るのはすぐのことだ。
「ごめんね、通信開いてくれてたすかったぁ」
「どうしました?エイミィさん」
ほっとしたような声に、冷静で穏やかと言う不思議な声が答える。
ウィンドウモニターの一部が変化した。
困ったような、答えを知っているだろう彼らを探るような目で、名を呼ばれたオペレーターがキーボードを操り、モニターの変化が増える。
「うん。多分さっき情報喰いって言ってたから、コレ原因かなって」
地上の光景がそこにあった。
信号の混乱、それに伴った衝突事故。
電車の停滞。
自動ドアの停止や、逆に無人なのにも関わらずせわしない開閉。
街角の電光掲示板には、「LET'S PLAY!(遊ぼう)」の文字。
街角の監視カメラかなにかからのものなのか、ランダムに、だが明確な「異常」がそこにはあった。
まるで巨大な見えない子供が、辺り一面で暴れ回っている。
そんなイメージ。
「これは」
「下は大混乱だよ。コンピューターウィルスなのはわかってるみたいだけど、なにせ元が単なるポストペットが原因なんて、想像もしてないみたいだし。トラブルはほとんど、制御プログラムが喰い荒らされたのが原因みたい」
それが解っていたからといってどうにかできたとは考えにくいが、そこは指摘するべきではないだろう。
ふぅ、と光子郎は揶揄を唇に乗せる。
「何にでも変化の可能性と進化の欲はある。そういうことでしょう。
とりあえず、いたずらの時間の方は止められると思います。なにせ、本命登場ですからね」
「本命?」
えぇ。その場にいた全員の目線は、彼女にはみることができない「もう一つの世界」が映るモニターへと投げられた。
「きた、ケラモン」
「進化しちゃってるね」
「やることは一緒だろ」
「正論です」
果たして。同じ舞台へと出向いた方といえば。
「let's play!taichi and yamato!!」
熱烈な歓迎を受けていた。彼らの周りを、紫色の触手が飛び回る。
サイケチックなデザインのイメージに近いならば昔ながらの異星人。
「だが断る!」
「とは言うものの、こいつとガチるってだけで、十分奴にとっては遊んでもらってる認識なんだろうな・・・・・」
「せちがれぇ・・・・・・わりぃな、アグモン。つきあわせて」
「すまないなガブモン、手を借りる」
「あやまらないでタイチ。こういう奴を放っておくわけにはいかないよ」
「ヤマト。ボクは君の手助けができて、とても誇らしく思うよ」
「ありがとう、アグモン」
「サンキュ、ガブモン」
パートナーの言葉を受け、少年たちは決意する。
にらみつける先に存在するは、彼らからすれば、敵。
「いくぞ。俺たちはおまえほど、おまえに執着していねぇぞ、この愉快犯が」
「今度こそ、この悪縁を終わらせる」
構えたるは彼らのデジヴァイス。
命を預けてきた手の平に収まる小さな機械。
物言わぬとて、それらもまた、ともに旅してきた、ともに戦ってきた存在。
人・獣・機。
こういうものもまた三位一体というのか。
選ばれし子供としての、誇りと誓いが力を生む。
「アグモン!」
「応!アグモン進化ー グレイモン!!」
「ガブモン」
「ガブモン進化!ガルルモン!!」
宣言と共に力はあふれ、正に進化と呼ぶにふさわしい力の爆発と・・・交錯する情報のロンド。
戦闘開始のまさにその向こうで、バックボーンが首を傾げる。
「オメガモンにならなくていいんですかね?」
「そうなると逆に小回りが利かないでしょうから、取り逃がしたらまた面倒ですし。それに」
「なにか心配ごとでも?」
「いえ。杞憂なら、いいんですがね」
京は光子郎が言葉を濁したのは、「中継」がらみかと思った。
どこか非現実的で、だがたしかにあったあの画面越しの時間が、自分を冒険に誘った、始まりのきっかけだったからだ。
それを思って、ふと首を傾げる。
「奴のことはともかく、この世界にもあるんですかね、デジタルワールド」
「この世界"の"デジタルワールドですか。可能性は捨て切れませんが、だったら僕らのDWに手を出してくる理由はないですからねぇ。
それに前に太一さんがおっしゃっていたように、この世界からも直接、現在のように"ぼくらの"DWへとアクセス出来ることを考えると、デジタルワールド自体が数多の世界と繋がっているかもしれない」
確かに現状では様々な可能性が見れてとれる。
「灯台もと暗しとか」
大輔ののんきな一言にみんなが苦笑いをする。
正しい表現かもしれないが、あまたの次元を越える技術を持ちながら、その隣の世界を把握できないとはなんとも間の抜けた話だ。
だが光子郎は少し考えて、やはりないかもしれませんと首を振る。
「デジモンは常にパートナーの絶対的な味方です。
たとえその行動が間違っているとわかっていても、パートナーのそばにいることを選ぶことができる存在。
それに変わるものが、この世界にはありますからね」
曖昧な表現だったが、それをよく知っているだけに賢が思い当たった。
もっとも、彼らが目撃しているのは殆どがストレージだから本人たちも説得力を冠していることを自覚はしていないのだが。
「あ、デバイスでしたっけ。魔法の杖」
「つまりこの世界では本来の意味でデジモンは不要なのかもしれません」
「本来じゃない意味で、先だっての侵略があったと考えているんですか?」
ぽんぽんと交わされる会話はクロノだけではなく、エイミイを通してアースラブリッジには届いているだろう。
デジモンの本質を知らない彼らには、その話の流れを理解することは難しかっただろうが、そこに彼らがDWを守ろうとする意志を見るに至るのだと悟ることは容易。
不明瞭な上層部にもつながるかとそんなことは想像もせず。
「えぇ。本来ではなく、この場合根本ですかね。まぁ可能性ですが」
結局、情報が不足気味で曖昧な判断が限界でしかないのだけれど。
とまぁそんな憶測を待機組がやってた反面で、久しぶりの対デジモン戦にオメガ班は思った以上に苦戦していた。
相手の動きはひどくトリッキーで、いかんせん捕まえるのが難しい。
足場があってないような電脳空間は、まさに奴のフィールドだ。
しかも相手は「遊んでいる」のだ。
彼らを翻弄することに動きをさいている。
「くっそ、ワープ進化するか」
「成長期相手に完全体か」
「っせぇな、奴が進化すればどのみちそんなのいってられないぞ」
「それもそうだけどな」
舌打ちをし、再びデジヴァイスを構える太一にグレイモンもその意志に応じる意志を見せる。
だが気まぐれなそいつは突然ぴたり、と動きを止め、思わぬ言葉を言い放った。
「おなか減った」
「へ?」
ぽかん、とする二人と一匹にぷいっ、と背を向けるケラモン。
「なっ!!待てっ」
それから聞いてもいないのに、
「ごはん食べてくるー」
などと宣言し、すい、、と電脳の海にこぎだした。
どう考えても進化する気満々です、本当に以下略。
「ちぃ、追うぞ」
「あぁ」
さすがにこれで進化が云々とかは言っていられない。
一気に片を付けるべく、スピードをねらってガルルモンへのワープ進化を展開しようとしたヤマトとそれを察した太一だったが、その目の前に突然、あるはずのないものが現れた。
「壁?!」
それは炎でできた、壁。
電脳空間においてのそれはあくまでも見た目の問題だろうが、どう考えても喜び勇んで突っ込んでいく代物ではない。
京が悲鳴に近い状況の報告をあげる。
「ファイアウォール発生!はじかれちゃいます!!」
「なっ、やつがコンピュータープログラムを組むとは思えないのに」
賢の意見はもっともで、そのことに油断していたと光子郎は唇をかむ。
「誰かが、かばった?」
憶測にはすぎないだろうが、いかんせん「いるはずのないそんざい」を連れてきた誰かがいるのは確かなのだ。
なら、おかしくない。
しかも相手は、網を張るように、罠を仕掛けるように、様々を仕掛けてきた存在だ。
太一たちの存在こそ、むしろ予定外であったことが考えられる。
なら、助太刀もまた、自然。
「太一さんっ!ヤマトさんっ!」
大輔の絶叫がまるで後押しするように。
ウォールをよけた太一たちが、彼らの見ていた画面から突然ロストした。
「うわっ」
「いでっ」
果たしてそんな風に自分たちがイリュージョンをやらかしていたなどと知らない当人たちは、唖然、としていた。
冷たい床と電気の光の中に放り出されたことが、一瞬理解できなかったのだ。
「っつー、どこだ、ここ」
「なんか壁みたいなのがでて・・・ミッドチルダだよな?」
「たぶんな。はじかれてどっかのモニターからか転がり落ちたみてぇ」
という状況におちいっていたからだ。
いくつものモニターが辺りにはあったが、どれから出てきたかというのはすぐにわかった。
それがどう役に立つかはともかく、うちの一つに、パートナーたちが画面越しに心配そうに自分たちを見ていたからだ。
「たいちぃ」
「やまと、だいじょうぶ?」
「あぁなんとか」
進化が解けてしまって、今の姿はアグモンたちだ。
突然の展開に彼らは困ったが、やるべきことはすぐにわかっていた。
「とはいえ俺たちじゃこっからは戻れないな。携帯はもとより、デジヴァイスの方も反応なしか」
「まいった。自力でせめて外まででるしかないな。
悪い、アグモンたちは一度本部に戻ってくれ。
位置を確認できたら誰か人をよこしてくれると助かる。俺たちはなんとか自分で外にでるよ。そうすればなんとか回収してもらえるだろ」
クロノあたりに。
すっかりタクシー扱いである。
あぁでも瞬間移動の魔法とかあるはずだし。
まぁそのあたりは話にあんまり関係ないだろう。
ただまた迷惑をかけるなぁとそれくらいのことで。
「りょーかい」
「気をつけて」
「おまえ等もな」
いかんせん相手は一人でないと言うことがはっきりしていたから。
果たして、彼らはまず状況把握と周囲を見渡した。
「さって。んで?どこよここ」
「それがわかるなら途方には暮れてない。
なんとなく、監視システムって感じだけど」
改めてみる、無数のモニター
そこにあったいくつかを見て、少年等は眉をひそめる。
「・・・・・・なぁ、太一」
「んー。少なくとも、たのしい場所じゃぁなさそうだな」
彼らが釘付けになっていた画面では、趣味の悪いそれがまるで冗談のように映し出されていた。
===========
というわけでこんな話
思ったよか長くなったのでその分時間もかかりました。あぅ。
独自解釈全開及び02ED?なにそれ仕様
だが私は謝らない!
どれくらい謝らないかってーと、ふたり●オンドゥルのカリスマ所長くらい謝らない。
デジモンは、大人になるのに必要な歩行器具位の存在であっていいと思うんだくらいで書いてます
あと作中でも言ってますがパートナーデジモン=味方です
んで、これは個人的なもんですが、味方と仲間は違うもんだと考えてます
味方はどこまでもついてきてくれる、その相手のためにある存在(無印のガブモンとか、02のワームモンとか相当いい例:逆らったのは賢にじゃなくてカイザーにだよ!とかいいわけしてみる)
でも仲間は、間違ったときには拳で殴ってもその間違いを正してくれる存在
そんな思考があったりなかったりしながら、次回いよいよ味噌連中及び、戦乙女参戦、予定
いやぁね、自分がリアルで「味方」って言われた時にすごいゾッとしたんだ。そんだけ。っつーか人生を敵味方で分けたくないよ俺。
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デジモンアドベンチャー×リリカルなのは。俺得シリーズも比較的大詰め。そしてなんだかんだと戦闘シーンが丸つぶれ。ぬぅ、やはりあかほり作品を見て育っただけにその辺りのスキル低いと総消ししたのが原因かと。巧く戦闘シーンがかけるようになりたいです、といいたいところだが、基本的にデジ戦て撃ち合いみたいな傾向があるから結局あかほり節のが読みやすいのかなぁとか思いつつ。独自解釈率があがりますので注意。デジモン全開なので4thと真逆にマジ魔法組空気ですが彼女たちの出番はまだまだこれからですのでご了承を。ところで結婚式の祝辞って何言やえぇんや?