No.197524

真・逆行†無双 二章その6

テスタさん

スピード更新。
このまま勢い良く二章の最後までいけたらいいなぁ…

2011-01-24 00:34:46 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4582   閲覧ユーザー数:3811

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラ。

カラカラ。

 

音がする。

私の好きな音。

私の心を縛る音。

 

私は待っているのかもしれない。

この音を壊してくれる誰かを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ桂花、星」

 

「何か?」

 

「何よ?」

 

現在、俺と桂花に与えられた仕事部屋に

俺たち三人はいた。

 

「あの三人……いや、劉備さんのこと

どう思ったか聞いていい?」

 

「はぁ?別に何も感じなかったわね。

傍にいた関羽ならともかく、まぁ個人的には好きになれそうのない人格だったわね」

 

「人格?胸ではないのか?」

 

「ばっ、ばばばバカ言わないでよ!!

別に羨ましいなんて思ってないんだからね!!」

 

「「………」」

 

「ハッ!?」

 

自分の発言に気づいてか一瞬で顔を赤くする桂花。

うん、あの胸は凄かった。

正直揉んでみたいと思ったことは秘密だ。

 

だが、桂花が胸の大きさを気にしていると分かったからには

このままにはしておけないな!!

 

「桂花っ!」

 

「きゃっ!な、何よ?」

 

勢いよく桂花の肩を掴む。

普段なら殴ってでも振りほどいてくるが、

俺の勢いにまけ顔を赤くしながら聞いてくる。

 

桂花…俺の思いを聞けぇ!!

 

 

 

 

「俺は……ちっちゃい胸も大好きだ!!!」

 

 

 

 

ゲームの俺を見ろ!

守備範囲の広さに定評のある一刀だぜ!

 

「………」

 

「………」

 

「主……貴方という人は……」

 

「し……」

 

「し?」

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

いや、殺す!本気で殺す!!この生きているだけで大陸中の女性に悪影響しか

及ぼさない低脳なあんたを!今!ここで!殺す!!!」

 

「ちょ、おまっ!まて死ぬって!

短刀なんて刺さったらマジで死ぬってば!!?

くそっ!一体何がダメだったんだ!?」

 

「いや、全部ダメでしたよ主」

 

「マジで!?」

 

そんな感じで20分ほど桂花と追いかけっこをして遊んだ。

 

 

 

 

 

「はぁはぁ」

 

「で、星はどう思ったんだ?」

 

息を切らしている桂花を放置して星に尋ねる。

星も桂花を気にした様子もなく少し考える素振りをしてから答える。

 

「ふむ……主の期待している答えかは分かりませぬが、

似ている……と感じました」

 

「似ている?」

 

「ええ、主に」

 

似ている……か。

 

なんだろう。少し……複雑だ。

 

「劉備殿は人を魅せる力があるように思います。

そしてそれは主、貴方にも言えることだ」

 

俺にそんなものがあるとは思えないが、

劉備さんに関しては頷ける。

 

まぁ元々人徳の劉備として未来じゃ有名だし、

実際あって思ったことでもある。

 

軍議の時も白蓮の友人というのを抜きにしても

軍議が終わるころには殆どの人と打ち解けていた。

 

「しかし同じとは思いません。

私は主の方が好きですぞ」

 

「……ありがと、星」

 

その言葉は素直に嬉しい。

星は本来なら劉備さんに仕えていた筈の将。

もしかしたら劉備さんのところに行きたいなんて言うのかと心配していたんだ。

そんなこと言われたらダメなんて言えないしね。

 

「……アンタはどう思っているのよ?」

 

と、息が整った桂花が尋ねてくる。

 

「俺?……そうだな。

素直にいい人だと思ったよ。

きっとあの人はこれから世に出てくるよ」

 

「随分評価が高いのね。

……けど、それにしては随分と冷たかったじゃない」

 

「それは……」

 

桂花が言っているのは軍議が終わった後、

劉備さんが俺に話しかけてきた時のことだ。

 

 

 

 

 

「ちょっといいですか?北郷さん」

 

「劉備さん?と、え~と」

 

「私は桃花さまに使える関雲長といいます。御使い様」

 

「鈴々は張飛っていうのだ!

よろしくなのだ、御使いのお兄ちゃん!」

 

「!」

 

多分そうとは思ってたけどこの二人が関羽に張飛。

やっぱり二人も女の子なんだ……。

それにこの二人、凄く強い。

星ならともかく俺なんかじゃ足元にも及ばないだろうな。

 

「よろしくね、関羽さん、張飛さん。

知ってるみたいだけど俺の名前は北郷一刀。

御使いって呼ばれるより名前で呼んでくれると嬉しいな」

 

「「「っ!?」」」

 

普通に挨拶したつもりなのに、物凄く驚く三人。

あれ、何かしたっけ?

 

「……どうして私の名が関羽であると?」

 

「(それか!……仕方ない)え~と、それは俺が天の御使いだから……かな?」

 

本当のことなんて言えないし、いつもみたいに

天の御使いって誤魔化そう……。

 

うっ、後ろで桂花が睨んでいるのが分かる。

 

「すご~い!やっぱり本物の御使い様なんだ」

 

「ええ、服装に私の名を知っているところをみると

間違いないかと……」

 

「お兄ちゃん凄いのだ!」

 

なんか効果絶大―!!

なんだろう、大抵のことは天の御使いだからって言えば誤魔化せる気がする…。

 

「で、どうしたの?

俺に何か用かな?」

 

「あ、はい!私たち大陸を平和にしたいんです!」

 

「平和?」

 

「争いのない、皆笑い合って生きていける……そんな平和を造りたくて、

でも私たちだけじゃまだ何も出来なくて、そんな時北郷さんの噂を聞いたんです」

 

その瞳は強く輝いている。

本当に大陸の平和を望んでいるいい瞳をしていた。

 

「天から来た御使いで、その知識でこの街もずっと良くなったって……

それで私たち北郷さんに会おうってここへ来たんです。

そして会って核心しました。北郷さんは天の御使い様だって……」

 

それから劉備さんは俺に頭を下げ、

 

「お願いです!私たちと一緒に来てくれませんか?

北郷さんがいればきっと大陸を平和に出来ると思うんです!」

 

そう言った。

見ると関羽さんと張飛ちゃんも頭を下げている。

 

何かを成す時、何が必要なのだろう?

それは強い意志だ。

それを成す力があっても、

それを成そうとする強い意志がなければ成すことなんて出来ない。

 

三人からは、その強い意志が伺えた。

 

三人だけじゃなく、俺の後ろで桂花と星も俺の答えを気にしているのが分かる。

 

俺は、考えることなく驚くほど直ぐに自分の答えを口にだしていた。

 

「ごめん。俺と君は目指すものは一緒だ。

だけど、道は違うから。交わることはあっても、重なることはないよ」

 

それが俺の答えだった。

 

 

 

 

 

「あの時、劉備さんに言った通りだよ。

彼女とはきっと、道は重ならないって思ったから」

 

「そう。別にどうでもいいんだけどね」

 

「私たちは主に着いていくだけですから」

 

そう言う二人の表情は明るかった。

それが少し嬉しかった。

 

それから意識を切り替える。

 

軍議で敵が既にこっちと同等の兵を集めていることが

斥候により分かっている。

 

対決の時は近い。

俺は腰にさしてある一天を自然と握り締める。

 

机の上に置いてある風車だけが静かに佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚えているのはクルクルと廻る風車。

 

記憶も曖昧な頃。

私の目に焼きついた記憶。

 

『―――、何を見てるの?』

 

覚えていない名前を私に語りかけるのは、

おそらく母だろう人。

 

綺麗な顔をしていたが、少しやせ細っていたように見える。

私はそんな母の背に抱かれ、村の中を歩いている。

 

そして私の目に、ある物がいつも視界に入るのだ。

 

『フフ、―――はお父さんの作った風車が大好きなのね』

 

――風車。

そう、私の好きな物。

 

いつもお家の屋根の上にあった。

お父さんがつけたのだろうソレは、

毎日毎日カラカラと廻り続けていた。

 

私はその光景が大好きだった。

ゆったりと風を受け、風車は廻る。

優しく優しく、風車は廻っていた。

 

 

―目に焼きついて離れない。

 

 

そう例えどんな状況だろうと風車は廻る。

 

 

―きっと網膜に刻み込まれてしまったんだ。

 

 

血と悲鳴と嫌悪感しか湧かない笑い声と炎の海。

盗賊たちに襲われていたとしても。

 

 

どうしてそうなったのかは分からない。

ただ記憶にある風景は、いつもの優しい景色ではなく

燃え盛り悲鳴が飛び交う地獄だった。

 

私はなす術もなく地面に転がっていた。

既に事切れた母の下で。

 

血が流れ、悲鳴が耳を襲った。

狂気にまみれた笑い声は私の脳を揺さぶる。

 

そんな地獄で私は何も出来ずにいた。

泣くことも助けを呼ぶことも、父や母を呼ぶことも。

 

ただ私はそんな地獄から逃げたくて空を見上げたのだ。

炎により赤黒く染まる大きな空を。

 

その時だ。アレが視界に入ったのは。

 

―風車。

 

私の家に刺さった私の好きな物。

それが静かに廻っていた。

 

こんな地獄でも、いつもと変わらず廻っていた。

優しく優しく、風車は廻っていた。

 

 

 

 

 

それから七日がたつ。

私はその間ずっと母の下にいた。

動く気なんてなれなかった。

いつ寝たのかも分からない、寝てなかったのかもしれない。

ただ私は七日の間、ずっと廻り続ける風車を見ているだけだった。

 

そんな私の耳に何かが近づいてくる音が聞こえた。

正体はここら一体を治めていた太守がいる軍だった。

 

軍の人が私を抱え、私は隣町まで運ばれた。

その途中何も反応を見せなかった私のことを気絶していたとでも思ったのだろう。

町につき私が始めて反応を見せたとき、彼等はこういった。

 

『君の村へは一日と立たず駆けつけた。

だがもう既に手遅れだったんだ』

 

と。

ちなみに村までは近くの邑にいる兵たちなら一日もせずにこれた距離にある。

だっていうのに彼等は何故そう言ったのか?

答えなくとも分かるだろう。

 

それにそれは絶対嘘なのだ。

だってその狂気の宴は次の夜まで続いていたのだから。

 

村人を殺しつくした盗賊は、捕らえた女の人たちを次々の犯していったのだ。

その宴が夜まで続いていた。

だからもし彼等が本当に助けにきてくれていたのなら、

彼女たちの命は助かっていた筈なのだ。

 

しかし残念ながら助けはこず、彼女たちは最後は盗賊に殺され命を散らした。

彼等は太守は嘘つきだった。

 

だけど……当時の私は別にそんなことはどうでもよかったのだ。

というか理解できなかっただけ……もう皆がいなくなったということしか分からなかった。

 

頭の中はがらんどう。

ただずっと目の奥で同じ光景が流れていた。

 

地獄の中で廻り続ける……風車が。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢!準備が整いやした」

 

沈んでいた意識を戻す。

策失敗してから数日、とうとうこの日が来た。

 

もう一度、最後の襲撃に出る。

 

「……泣いていたのかい?琥栗ちゃん」

 

私を起こしてくれた人が口調を変えて問いかけてくる。

この人は村が滅ぼされてから私を育ててくれた育ての親の親友だった人。

付き合いは多分この人が一番長いだろう。

 

「ううん……なんでもない。泣いてなんかないわ」

 

「そうかい……。それじゃあ行きやすか!お嬢!!」

 

「……うん」

 

自分の槍を持ち、皆の所へ向かう。

そこからの目的地は決まっている。

 

公孫賛を……天の御使いを滅ぼしにいく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラ。

カラカラ。

 

音がする。

私の好きな音。

私の心を縛る音。

 

私は待っているのかもしれない。

この音を壊してくれる誰かを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

というわけで二章その6でした。

今回は劉備と琥栗の過去がメインをお話でした。

シリアスだけなのはあれなので、一刀と桂花のじゃれあいをいれましたが、

正直いらなかった気もします。

 

そしていよいよ次回から一刀と琥栗の対決です。

どうなるか楽しみにしてもらえると嬉しいです。

 

あ、それと今回というか前回からコメント返しは同じくその話しのコメントで返すことにしました。

 

それではまた次回もよろしくお願いします。

 

意見や指摘、感想があれば何でも言って下さい。

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
35
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択