No.196879

魏ED~if End~最後を何となくFFⅩっぽくしてみた。

テスタさん

題名通りです。
FFⅩっぽいエンドにしようとしたら、
めちゃくちゃ長くなってしまいました。

2011-01-20 15:03:05 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:6663   閲覧ユーザー数:5140

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成都を前に、睨み合う集団があった。

一つはその成都の主、劉備率いる蜀軍。

そしてその蜀軍に挑む、曹操率いる魏軍の二つの集団だ。

 

蜀に下った呉を退け、残る国は魏、呉の大国二つ。

この戦の決着により天下が決まる。

 

戦場になるこの地は、その嵐の前の静けさに包まれ緊張感に包まれていた。

そんな中、魏軍にいる俺こと北郷一刀はある覚悟を胸に、

俺の主、曹操……華琳の横に立つ。

 

華琳の傍には俺以外にもたくさんいた。

これまで共に戦ってきた仲間、春蘭と秋蘭に霞の武神、桂花と稟に風の三軍士、季衣と流琉の華琳親衛隊、凪に真桜それから沙和の三羽烏、みんな俺の大切な仲間で大切な人だ。

 

「いよいよだね、華琳」

 

「ええ、この戦で全てが決まるわ」

 

そう、全てが決まる。

長かった戦乱の時代が終わる。

 

だからこそ、今この時、俺は一つの決心をしていた。

 

「華琳……絶対勝とうな」

 

「ふっ、誰に言っているのかしら?」

 

「魏の覇王……いや、大陸の覇王の曹操にさ」

 

「分かってるじゃない。

ならその質問は聞かなくても分かるわよね?」

 

「……ああ」

 

華琳は劉備軍の方を向いたまま俺の言葉に答える。

 

後ろでは春蘭や桂花が何を当たり前のことを聞いているんだ?って俺に喰ってかかる。

それ以外のみんなは俺の言葉に頷いてくれた。

 

いつものやり取りに自然と口が緩むのが分かる。

 

「さて、そろそろ劉備との舌戦に行ってくるわ」

 

と、華琳が一歩動いたところで俺は華琳を呼びとめる。

こんな時にとは自分でも思うが、逆にこの時でしかないと思う自分もいるのだ。

 

「華琳」

 

「何?話なら勝った後に……」

 

「俺……今なら分かるんだ。

俺が華琳の元に落ちてきた意味が」

 

その言葉に華琳が足を止め、こちらへ振り返る。

後ろのみんなも俺の言葉にどうやら耳を傾けてくれたみたいだ。

 

「ずっと考えてきたんだ。俺がこの世界に来た意味をさ。

どうして俺が、華琳の傍にいるかって理由を」

 

そう、きっと理由があるはずなんだ。

俺が華琳の元にいる理由が……、そして見つけた。

 

「俺は、華琳が大陸を統一するのを見届けるためにこの世界に来たんだ」

 

「……?何を言っているのだお前は?」

 

春蘭がよく分からないといった声で話す。

だが、華琳に軍師たち三人は何かに気がついたのか目を軽く見開く。

 

おそらく本当に感づいたんだろう。

俺がこれから話す言葉に…。

 

「だから華琳、君が劉備に勝ち大陸の覇者となった時、俺は消える」

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

「何を……言っているのだ北郷?」

 

霞と秋蘭の戸惑う声。

 

「き、消えるってどういうことですか兄様!?」

 

「兄ちゃん……?」

 

流琉の叫びに季衣の良く分かっていない声。

凪たちは声を発することなく驚きに顔を染めている。

 

俺はみんなの疑問に答えるために口を開く。

 

「さよならってこと」

 

……………。

訪れる静寂。

その静寂を破ったのは春蘭だった。

 

「き、貴様!あれだけ世話になった華琳様の元を去るというのか!?」

 

「そうよアンタ!それはいくらなんでも勝手すぎるわよっ!!」

 

驚いたことに桂花までも怒ってくれる。

その事実に俺は自然と口元を緩める。

 

「っ!何笑ってるのよ、この全身孕ませ精液男!!」

 

桂花の怒声を横に、今度は風が俺の前へとやってきた。

 

「……もう、どうしようもないのですか?」

 

「……うん、ごめんな」

 

悲しそうな瞳をどうにかしたくて風の頭を撫でてみたけど、

そうしたら余計に瞳に悲しみの度合いが増えてしまった。

上手くいかないな……けど。

 

「みんなには勝手で悪いけどさ……これが俺の物語だから!」

 

「……本当に勝手ね」

 

「華琳……」

 

今まで黙っていた華琳が口を開く。

華琳の表情奥の感情は今の俺には残念ながら分からない。

 

でも、伝えなくちゃ…!

 

「本当に勝手でごめん……でも華琳」

 

「……何?」

 

「俺なんかが理由にこの戦、負けるなんてことはないよね?」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

華琳を含むみんなの息を呑む音が聞こえる。

そうして暫くたち華琳は……

 

「…当たり前よ、この私を誰だと思っているのかしら?」

 

「誰よりも誇り高き王だよ」

 

「そうよ……私はこの大陸の覇者になる者、曹孟徳!!

貴方のためにどうして負けないといけないのかしら?」

 

「……ありがとう、華琳」

 

「…っ!……舌戦に行ってくるわ」

 

そう言って馬に乗り、華琳は舌戦へと向かっていった。

そして残った俺は……

 

 

 

 

「一刀ぉーーーーーーーー!!!」

 

「うぐっ!」

 

いきなり霞に胸倉を掴まれた。

 

「どういうことや消えるって!

そんな勝手なこと許される思うてるんか!?」

 

「霞……」

 

「隊長……」

 

「凪?」

 

今度は後ろから凪に抱きしめられる。

 

「さよならなんて嘘ですよね?」

 

「……ごめ「いやです」」

 

「でも「いやです」」

 

「な「いやですっ!!」」

 

「隊長と会えなくなるなんて絶対に嫌です!!」

 

「そうなのっ!隊長がいなくなったら沙和たちどうすればいいの!?」

 

「そうやっ!あれだけうち等を隊長の虜にしといて、消えるやなんてあんまりやで!!」

 

「沙和…真桜……」

 

「兄ちゃん!」

 

次は季衣が正面から抱き着いてくる。

 

「消えるなんて…さよならなんて嘘だよね!?」

 

「兄様……行かないで下さい!」

 

「僕、もっといい子になるよ!

なるから兄ちゃんも何処にも行かないで!!」

 

「季衣、流琉……」

 

「そうだぞ北郷!勝手に消えるなど絶対に許さんからな!

それに約束したではないか!

三人で華琳さまを支えると!共に生きていくと!!」

 

「春蘭……」

 

「はん、私はせいせいするわね!アンタのような変態が華琳様の前からいなくなってくれるなんてね!!

……でもきっとアンタがいなくなれば華琳様が悲しんでしまう。

華琳様を悲しめるなんてこの私が絶対に許さないんだからね!

だから……だから消えるなんて認めないわよ!!」

 

「桂花……」

 

改めてかみ締める。

俺はこんなにたくさんの大事な人に愛されているってことを。

絶対に泣かないって決めていたのに、目から涙がこぼれそうになるのをグッと堪えた。

 

「みんな…ありがとう。それから本当にすまない。

もう……どうしようもないんだ」

 

「詳しく……聞かせて貰えませんか?

出ないと、納得なんて出来ません。

…聞いても納得なんて出来ませんが」

 

「稟……」

 

「理由を……話してくれないか北郷」

 

「秋蘭……」

 

言わないわけにはいかないか……。

 

 

 

 

 

 

 

「……今の魏は俺の時代の歴史からかなり違っているんだ」

 

「それが一体何の関係があるというのだ?」

 

「みんな最近俺の体調が悪くなる時があったのを覚えているかな?」

 

俺の言葉にみんなと疑問をあげた春蘭も頷く。

 

「俺の体調が悪くなった時、それは俺の知る歴史から違う流れに変わった時なんだ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「俺の知る歴史では魏は確かに大陸を統一する。

けど、それを成し遂げるのは華琳じゃない。

その子孫たちなんだ」

 

「それは……本当なんですか?」

 

「そうだよ稟。

それに赤壁での戦い、あの戦いで魏は本当なら歴史的な大敗を帰していたんだ」

 

「そういえばあの戦はお兄さんのお陰で切り抜けられましたね~」

 

「歴史が変わっていくごとに体を襲う痛みは大きくなった。

そしてそれは今も続いていて、きっと華琳が大陸を統一するっていう決定的な歴史の違いが起こった時……俺はこの世界から消える」

 

「それは……天の国へ戻ってしまうということですか、一刀殿?」

 

「分からない。元の世界に戻るのか、それとも本当に消えてしまうのか。

ただ分かっていることがある。

それは俺がこの世界にいられなくなるってことだ」

 

俺の言葉を聞いたみんなはその顔を絶望に染めた。

多分、なんとかなると思っていたんだろう。

でも、もうどうにもならないんだ……。

 

「では……魏が負ければ隊長は消えないのですか?」

 

凪の言葉にその場のみんながハッとなる。

 

「それ本当なの兄ちゃん?

負ければ兄ちゃんは消えなくてすむの!?」

 

「何言ってるのよアンタたち!?

華琳様に敗北を与えるつもり!?」

 

「だってそうしないと兄ちゃんが消えちゃうんだよ!?」

 

「だからっていくらなんでも…!「無理だよ」」

 

「兄ちゃん?」

 

「凪、季衣……もう無理なんだ。

まだ決定的に変わってはいないけど、もう十分に歴史が変わりすぎた。

今日を負けたとしても近いうちに俺は消える」

 

「そんな……」

 

へたへたと、季衣が座り込む。

俺はそんな季衣の頭をゆっくり撫でる。

 

「それにね季衣、桂花も言ったけど俺のために華琳に……魏に敗北を与えるつもりか?」

 

「でも……」

 

「そんなの俺は望まない。

俺は俺が消えるからこそみんなに勝って貰いたい。

俺なんかのためにそんなことはしないでくれ、凪もだ」

 

「隊長……!」

 

俺は一度みんなを見渡す。

 

「みんな、この戦負けないよな?

華琳のために、これからくる平和のために、

俺なんかのために負けたりしないよな?」

 

俺は華琳に言った言葉を今度はみんなに向けて言う。

 

「もし、少しでも俺のことを想ってくれるなら勝ってくれ。

勝って、俺を安心して天の国へと還してくれ。

本当に勝手で悪いとは思う、でもお願いだ。

今まで戦ってきた仲間で、華琳と一緒に平和を掴もう!!」

 

結局、俺の言葉に誰からも返事は返ってくることはなかった。

 

でも、舌戦から帰ってきた華琳が言った言葉に……

 

「みんな……勝つわよ」

 

「「「「「「「「おう!!(はい!!)」」」」」」」」

 

大きな声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは最終決戦というにはあまりに一方的な展開だった。

 

華琳の……魏の兵たちが蜀の軍を呑み込んでいくのが分かる。

まさに一方的な展開だ。

 

「凄い……」

 

「当たり前よ。私の愛すべき兵たちが、

あの子に……蜀に劣るわけがないもの」

 

俺の横に立つ華琳が戦場へ視線を向けたまま言う。

 

「ああ……その通りだね」

 

「それに……負けられない理由がこの土壇場で

一つ増えたんだもの」

 

「………」

 

その言葉に何も返せなくなる。

同時に思う。

俺の選択は正解だったのだろうか、と。

 

何も言わずに消えるのはどうしても嫌だった。

きっと皆もそう思う筈。

だから話したんだ。俺が消えることを……。

 

でもその結果、魏の統一が決まるこの戦で

皆にあんな顔をさせて戦わせる結果になった。

 

俺が……言ったせいで。

 

「目を逸らすな!」

 

「っ!」

 

戦場から目を逸らしかけた俺に向かって、

華琳が怒りの目を向けて怒鳴る。

 

「この戦に目を背ける……それは貴方が一番しては駄目なことよ」

 

「………うん」

 

そうだ。

例えどんな結果になったとしても悔いは残る。

 

愛しい彼女たちの前から消えなきゃいけない現実が、

悔いが残らないわけがない。

 

だから少しでも悔いが残らないようにって

俺は皆に告白することを決めたんだ!

 

「ごめん華琳。俺はこの戦、最後まで見届けるよ」

 

「ええ……それでいいわ」

 

一度だけ優しい、だけど寂しそうに笑みを浮かべ

華琳は視線を戦場へ戻す。

 

「見なさい一刀。

道が開けてきたわ」

 

「これは……」

 

無意識だろうか?

いや、みんなの気持ちがそうさせたのか。

華琳の目の前には一本の道が出来ていた。

劉備さんへと続く一本の道が。

 

「みんな……」

 

「ここまでして貰って行かない訳には行かないわね」

 

今度こそ本当に嬉しそうに笑い、華琳は叫ぶ。

 

「桂花!絶影を!!」

 

「はっ!」

 

用意していたとばかりに―実際用意していたんだろう―桂花が

華琳の馬、絶影をつれてくる。

 

この一本道はみんなのメッセージなんだろう。

この戦にけりをつけるのは華琳だっていう…。

 

「一刀……私がいいたい事、分かるわね?」

 

「もちろんさ」

 

そう言って俺も華琳の後ろに座るように絶影に乗る。

 

「ちゃんと見届けるよ。

華琳が天下を取る所を」

 

「ええ、目に焼き付けなさい。

私の……物語を!!」

 

その言葉と同時に俺たちは一本の黒い矢となって、

蜀本陣へと放たれた。

 

そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は……優しすぎたのよ」

 

華琳の一撃が劉備さんの剣を弾く。

勝負は……決まった。

 

結果を見れば明らかだ。

魏の大勝……。

 

魏が、勝ったんだ!

 

「どう……して?平和を望む気持ちは

私だって負けないのに……!

どうしてここまで差がついちゃうの!?」

 

「……そうね、大陸の平和を望む気持ちは

そう変わらないでしょうね。

でも……貴方たちには無いものが今日の私たちにはあったのよ」

 

「何……ですか?それは…」

 

「……愛、よ」

 

そう言って微笑む華琳は、今までで一番綺麗だった。

 

ああ、これで俺は――。

 

 

 

 

 

その後、華琳が天下三分を持ち出し

魏、呉、蜀に平和が訪れた。

 

それは同時に俺の物語が終わりの迎えようとしているってことで……

 

「「「北郷!!」」」

 

「一刀!」

 

「一刀殿!!」

 

「お兄さん!」

 

「兄ちゃん!!」「兄さま!!」

 

「「「隊長!!!」」」

 

戦が終わったが分かったんだろう。

皆が俺の所へ駆け寄ってくる。

 

蜀や呉の人たちは何が何だ?って顔をしてるけど、

今の俺は嬉しさでいっぱいだった。

 

「よかった。皆ともう一度話せて」

 

「兄ちゃん!僕ら勝ったよ!!

ちゃんと勝ったよ!」

 

「うん、ありがとう季衣。

皆の姿、ちゃんと俺…見てたよ。

これで俺は笑っていける」

 

「……嫌です!行かないで下さい!」

 

「ごめん凪そういうわけにはいかないんだ」

 

「「嫌だ!!」」

 

季衣と凪が俺に向かって駆け寄ってきて、

そして抱きつこうとして――すり抜けた。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「は、はは……」

 

自然と乾いた笑みが零れる。

そうか、もう俺は彼女たちに触れることも……。

 

「何で……どうして!?

兄ちゃんそこにいるのに……どうして触れないの!!?」

 

「お願いです隊長!

もう一度……私を抱きしめて……」

 

二人は泣いていた。

 

俺は下唇を噛み、涙を必死で堪える。

今ここで……俺が泣いてどうする!!

 

「季衣……季衣にはいつも元気を貰ってたよ。

その明るさで俺は随分と救われたんだ」

 

「兄ちゃん……」

 

「凪……凪みたいな優秀な子が俺の部下になってくれて

誇りに思っている。

本当にありがとう」

 

「隊長……」

 

涙を長し俺を見上げる二人から視線を外し、

俺は他の皆を見る。

 

「流琉……流琉の料理は本当においしかったなぁ。

天の国でも流琉以上の料理を作れる人はいないよ。

それが食べれなくなるのは残念でしかたがないよ」

 

「兄さま……だったら帰らないで下さい!」

 

「そうや!ずっと此処におったらええやん!!」

 

「ごめん霜、もう時間がないんだ」

 

「……お兄さん」

 

「風……」

 

風がおぼつかない足取りで近づいてくる。

それでもその目は強く俺を見ていた。

 

「お兄さんは最低です……」

 

「え?」

 

「風をお兄さんに惚れさせておいて自分は消えちゃうなんて…お兄さんは最低です……」

 

そう言う風の顔は涙でぬれていた。

 

「ゴメン……本当にゴメン」

 

「謝って欲しくはないですね」

 

「稟……」

 

「魏が……私が貴方にどれだけ助けられてきたか…

そんな貴方に謝られたくはないです」

 

「うん……ありがとう稟」

 

「……御武運を」

 

その言葉に力強く頷く。

 

 

 

 

 

 

 

「恩知らず」

 

「桂花……」

 

「華琳様に拾っていただいた恩を返すことなく消えるなんて、本当に恩知らずの変態ね。

まぁ私はアンタなんかいなくなって清々するけど」

 

桂花は相変わらずだな。

それが逆に俺を救ってくれる。

 

「うん、桂花は俺のこと嫌いだろうけどさ。

俺は桂花のこと大好きだったよ」

 

「っ!だったら…!!だったら……」

 

桂花はそれっきり顔を伏せ口を閉ざす。

 

「北郷……」

 

「秋蘭……」

 

「お前に助けてもらった命、無駄にはしない。

本当に感謝しているぞ」

 

「秋蘭が死ぬのが嫌だっただけだよ。

だから気にしないで」

 

「お前という奴は……いや、ありがとう北郷」

 

「うん」

 

それは俺のセリフだよ秋蘭。

今まで本当にありがとう……。

 

「北郷――――――――!!!!」

 

瞬間、俺は大剣で一刀される。

まぁすり抜けるから怪我はないんだけど。

 

そして俺を切りつけたのは……

 

「春蘭……」

 

「本当に……本当にもう、ダメなのだな……」

 

「うん」

 

「裏切り者……」

 

「華琳を頼むよ」

 

「っキサマに……言われなくても…私は華琳様の剣だ!」

 

「それでこそ春蘭、安心して逝ける」

 

「っ!……北郷」

 

肩を落とす春蘭の横を通り過ぎ、

残る二人へと歩く。

 

「沙和…真桜……」

 

「隊長……」

 

「ホンマに行ってしまうん?」

 

「ああ」

 

一呼吸、二人の顔をじっくりと見る。

目に焼き付けるように。

 

「真桜、カラクリばかりに精を出すんじゃんなくて仕事しろよ?

沙和も凪をあんまり困らせるんじゃないぞ?」

 

「たい……ちょ…!」

 

「~~~~~」

 

涙を堪え頷く二人を見た後、

俺は振り返る。

 

そこには王が背中を向けてたっていた。

 

 

 

 

 

「華琳……」

 

「あら、まだ居たの?

とっくに帰ったのかと思ったわ」

 

「ははっ、天も最後に華琳たちと話す時間をくれたみたいだ」

 

「そう……」

 

華琳は決して振り返らない。

勝手に消える俺の顔を見たくないって意味だろうか?

それとも、顔を見られない理由が他にもあるのか……。

 

「…決定的に違ってしまったわね」

 

「うん……俺の知ってる歴史と」

 

「本当は嘘なんでしょ?

魏が負けても貴方は消えるという話」

 

「…………ばれてたか」

 

後ろで魏の皆が息を飲むのが分かる。

ごめん、嘘ついちゃったよ俺。

 

「許子将に言われていたでしょ?大局には逆らうな、

逆らえば身の破滅……とね。

そしてその言葉に従うなら、大局……つまり貴方の知る歴史からきったとき、貴方は消える。

だからきっと魏が負けていれば、一刀……貴方は消えなかった」

 

「そう……かもしれないね。

でも、そんなこと俺は嫌だった。

例え俺が消えても、華琳が天下を掴む未来であって欲しかった。

そして君は勝ってくれた」

 

「当たり前よ。私は私の欲しいものを求めて……

歩むべき道を歩んだだけ。誰に恥じることも、悔いることもしない。

だから私はこの結果に後悔なんて抱いていない」

 

華琳……本当に君は。

 

「……ああ、それでいい」

 

「一刀、あなたは後悔していない?」

 

「してたら定軍山や赤壁の事を話したりしないよ。それに前に華琳も

言っていただろ?役目を果たして死ねた人間は誇らしいって」

 

「ええ」

 

「だから華琳……君に逢えてよかった」

 

俺の偽らざる本当に気持ち。

華琳に皆に出会えて本当に良かった。

 

「当たり前よ。私を誰だと思っているの?」

 

「曹孟徳。誇り高き魏の……いや大陸の覇王」

 

「そうよ。それでいいわ」

 

口元が自然と緩む。

愛しい気持ちで心臓が溢れかえる。

 

それと同時に身体が更に薄くなった。

 

「そろそろ、限界みたいだ」

 

「……そう」

 

俺はさっきからこっちを見ていた劉備さんと孫策さんに視線を向ける。

 

「劉備さん。孫策さん。これから華琳をよろしくお願いします。

三人で力を合わせればきっと素晴らしい国になるはずですから」

 

「はいっ!」

 

「…もちろんよ。任せなさい」

 

「ありがとうございます」

 

事情もよく分かってないだろうに優しく頷いてくれた二人に最大の感謝をそして……

 

「じゃあそろそろ逝くよ」

 

 

 

 

 

 

「……かず「逝かないで下さい!!」」

 

凪の声。

それに被るように魏の皆から逝かないでと声がかかる。

胸が締め付けられた。

でもそれを抑えて俺は歩き出す。

 

「……酷い男ね。こんなにたくさんの女を泣かすなんて」

 

いまだ俺に背を向けたままの華琳。

そこを目指して歩いていく。

 

「俺だってこんなことしたいわけじゃないよ」

 

「だったら……帰らなければいいじゃない」

 

一瞬、足が止まる。

 

気がつけば凪たち魏のメンバーも華琳を見ていた。

おそらく、華琳から俺を引き止める言葉が出ると思っていなかったんだろう。

 

「……そういうわけにもいかないよ」

 

止めていた足を再び進める。

 

「どうして?」

 

「俺の役目はこれで終わりだろうから」

 

一歩一歩かみ締めながら彼女に近づく。

 

「……お終いにしなければいいじゃない」

 

「それは無理だよ。華琳の夢は叶ったことで、華琳の物語りは終焉を迎えたんだ。

その物語を見ていた俺も、終焉を迎えなくちゃいけない……」

 

今にも泣き出しそうな心に鞭打って、華琳に近づく。

 

「……本当に酷い男」

 

「ごめん、でももう終わりみたいだから」

 

「恨んでやる」

 

「うん」

 

「絶対許してなんてあげないわ」

 

「うん」

 

「…許して欲しい?」

 

「…それはもちろん」

 

「だったら」

 

華琳との距離……残り僅か一歩。

 

「……逝かないで」

 

「ごめんよ……華琳」

 

「……一刀」

 

そこで足を止める。

 

「さよなら………誇り高き王……」

 

「……一刀っ」

 

「さよなら……寂しがりやの女の子……」

 

そして抱きしめた。

 

「~~~~~~っ、一刀……!」

 

もう触れられない筈なのに、確かに透けているのに、

この両手には、確かに華琳の暖かさがあった。

 

それをかみ締めて俺は……

 

「さよなら。………………愛していたよ、華琳……」

 

華琳の体をすり抜けて歩き出す。

そして少しずつスピードを上げ走りだす。

 

 

 

 

俺は絶対忘れない。

愛する人たちと駆け抜けたこの日々を。

愛する人たちを。

 

この先、俺がどうなるかなんて分からない。

日本に戻るのか、そのまま消えてしまうのか……。

 

でも、絶対にこの思いだけは消えない。

消させない。

 

俺の名前は北郷一刀。

大国魏にて警備隊長を務め、覇王曹孟得とこの乱世を駆け抜けた。

 

 

 

 

―――天の御使い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天の御使いである北郷一刀が消えて暫くすると、

覇王・曹操の号令により魏はまだ上げていなかった勝ち鬨を上げた。

 

それはまさに天へと届かんとする大きな鬨であった。

だがそれを聞いた蜀と呉の者をこう言ったと言う。

 

あれは泣き声だったと。

 

愛しい者を無くした者たちの、

大きな大きな泣き声だったと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

FFⅩみたいな感じのエンドを目指したらこんなんになりました。

いやぁ、魏ルートの誰にも言わずに消えた一刀くんも鬼畜っちゃ鬼畜でしたが、

FFⅩの主人公もラストバトルにまさかのカミングアウト。

これも十分鬼畜だなぁ。と書きながら思いました。

 

でも華琳様てきにはやっぱり正規エンドのがよかったんでしょうね。

まぁこんなエンドもあってもいいかなとか思い書きました。

 

とにかく最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

まぁ今回は完全な自己満足から書いた作品ですが……

 

ではまたいずれノシ

 

 

 

 


 
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