戦場。
それは人々が争い、幾多の命が散っていく場所。
そしてその後に当事者達は敗者と勝者に分たれる。
しかしそれは結果としてのこと。
その戦いの最中にいる者たちにはあてはまらない。
たとえ劣勢であり、回りの者が逃げ出し始めていても戦い続ける者はいる。
ある者は生き残る為。
ある者は己が誇りの為。
またある者は己が仕える主君の為に。
そして関ヶ原と呼ばれるこの戦場の一角にもまた一人己が信念と主君と定めた主の為に命の灯火を最後まで輝かせようとする者がいた。
ブンッ!
人の身の丈はありそうな大刀が振るわれ兵士の数人が吹き飛ばされ血の雨を振りまいていく。
周囲にいる兵達は先刻より広がるこの光景に恐れ慄きその大刀を操るたった一人の男を離れて包囲したまま動けない。
その男は全身を返り血で赤く染め、その形相と相まってあたかも鬼神のような様相をしていた。
「どうした!?この島左近の首を取ろうって奴はもういねえのか!?」
咆哮にも似たような叫びに周囲の兵は委縮するばかりで誰も動かない。
戦場の激戦地の中にいるというのに静まり返り、離れた場での声だけが響くという妙な空間で男・左近は必死で顔を取りつくろっていた。
(マズイな・・・目がかすんできやがった。ちっ、俺もヤキが回ったもんだ)
その気迫に圧倒されてまだ周囲の兵に気付かれてはいないが左近の顔は蒼白だった。
一見格好つけるように腰に当てられた左手も良く見ると何かを抑えつけるようにしていてその下からは血が流れ出ている。
(くそ!鉄砲の傷が開いてきやがった。俺もここまでか・・・)
既に自身が率いていた部隊もバラバラになっている。
増援も期待できない。
何故なら左近は主君を逃す為に自ら殿《しんがり》となったのだから。
(ま、俺の最期としては上出来ですがね)
左近は己が最期を見定めると左手を腰から放して両手で大刀を構える。
「そっちがこねえって言うんならこちらから行かせて貰うぜ!!」
絶叫するように叫ぶと左近は両手で大刀を構えた姿勢で駆けだした。
脇腹から血が溢れだすがそれでも左近は止まることはなかった。
その脳裏に不器用で理想家で冷たいと思われているがその実熱血な主君の姿がよぎる。
(殿、済みませんが俺はここまでです。無事に逃げきって下さいよ!)
左近はそのまま敵の群れに突撃し・・・姿を消した。
徳川家康に過ぎたるものと謳われた本多忠勝と並んで石田三成に過ぎたるものと謳われた家臣、島左近。
その男の行方は時が過ぎても分からず、戦場で散ったとも山奥に隠棲したとも噂された。
だがその戦に従軍したある兵士は語る。
『鬼神の如き形相をした男は自分の前で消えるようにいなくなった』と。
かくして鬼神と呼ばれた男は歴史の表舞台から消える。
その行方は知られぬままに。
とある空間
周囲全てが次々と変化する七色の空間の中ただ一つ浮かぶ大岩。
その上に身長が2mを軽く超え、仰々しい鎧を纏った青い肌の男が両手を広げて立っている。
そしてその傍には同じく青白い肌をし、露出の高い服を纏った妖しい女が控えていた。
「むう・・・」
「あれ?どーしたんですかあ?遠呂智様あ?」
それまで同じ姿勢を取っていた男が小声を漏らし、それに女が目ざとく反応する。
「欠片を一つこぼした・・・」
何かを落としたのにまるで落胆を感じられない様子で男が答える。
「どーしますう?私が拾ってきましょうかあ?」
間を置かずに返される言葉に男は少し顔を傾け考える仕草をしたがすぐ顔を前に戻した。
「いや、よい。せっかく宴が始まるのだ。興を冷ますこともあるまい」
まるで何事もなかったかのように男が歩を進めるといつの間にか周囲の空間は消え失せ、目の前には万を軽く超えている異形の姿をした者達の軍隊が整然と一面に並んでいた。
男は自身の得ものである大鎌を掲げる。
「さあ、宴の始まりだ!!」
周囲が男の言葉に応える歓声で沸きかえる中で女は一人で思考にふけっていた。
(見た感じ結構イイ男だったんだけどな~。最後は若返っていたし~。ま、他にもイイ男はいっぱいいるし一人くらいいっか~♪)
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初投稿作品です。
戦国無双とのクロスで島左近が主人公です。
ヒロインはハムさんになります。
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