博麗神社。それは幻想郷と外の世界との境にある神社。
その神社の中で、博麗霊夢は炬燵に入り……幾度目かの嘆息を吐いた。
掘り炬燵はぬくぬくとした優しい暖を彼女に与え、非常に居心地がいい。
だが、それこそが彼女の悩みの種だった。
「……出たくないんだけど」
炬燵の上に顎を乗せた状態で霊夢はぼやいた。
屋外からは物音一つしない。
雨戸を閉め切ってはいるが、それがどういう事なのかは霊夢にもよく分かっている。
どてら越しにも背中に伝わってくる強い冷え込みの中、外では雪がしんしんと降り続けている。今度の雪は当分の間、降り続けることだろう。
今頃、どれだけ積もっていることだろうか? 想像もしたくない。
「チルノを手懐けて雪かきやらせられないかなあ? それともにとりに頼んで炬燵を装備したまま動けないか相談して……いやいや、魔理沙に八卦路を使って貰って根こそぎ蒸発させるとか……」
ぶつぶつと呟きながら炬燵から出なくてすむ方法を色々と考えてみるが、結局はそれも炬燵から出て外に行かないことには話にならないわけなのだが。
「だいたい、雪かきしてもどうせ参拝客も来ないんだし……って、そういうわけにもいかないってのは私だって分かっているのよ? 分かっているんだから?」
しかし、それでも体は本能の赴くままに温もりを求め続けているわけで。
気合いを入れようとも、霊夢は炬燵から一歩も出ようとはしなかった。
……のではあるが。
「……ん?」
霊夢は眉をひそめた。炬燵の中の異変。
炬燵に入っているはずなのに、足下が若干肌寒い。
それはつまりどういう事か? すぐに霊夢には想像が付いた。
「ああ……流石に炭も限界かあ……やれやれ」
早朝から起きてずっとこの格好であったが、それだけの長時間使用していたなら、そろそろ炭が切れてもおかしくはない。
このままではあと数十分もしない内に、炬燵はただの布団付きちゃぶ台となることだろう。
霊夢は炬燵に入ってから、一番大きな溜息を吐いた。
炭を入れ替えるのにも、炬燵から出て炭を取りに行かないといけない。
「仕方ないわね」
霊夢は観念して炬燵から出た。
「炭を入れ直しても暖かくなるまで時間は掛かるし……その間に雪かきしましよ。外に出られなくなっても困るしね」
結局、人は何をするにも自分の意志で動くよりも、それ以外の事情でなければ動かないのだなあと、霊夢は我が事ながら思ったのだった。
ちなみに、これは雪かきを終えた数時間後に霊夢が思いついたことだが……。
もしも炭の切れることのない炬燵が出来たとしたら? それは恐るべき冬の驚異になることだろうと。
間違っても河童に頼んではいけない代物だと、その恐ろしい想像に彼女は身震いしたのだった。
―END―
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東方二次創作。冬ですね。こたつから出たくないですね。
そんなこと考えながら霊夢に自分の煩悩をつらつらと代弁させてみました。
まあ、東方三月精とか見る限り、霊夢はそんなに寒さに弱くないような気もしますが(苦笑)。