No.191988

魏乃章 劉馥伝? 5(終)

宇和さん

劉馥?を恋姫風に・・ssです。 突拍子も無い設定かつ、インスパ元の続編になりますので・・インスパ元を先にご覧ください。

2010-12-26 21:26:12 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2969   閲覧ユーザー数:2573

7年目

 

 

「ふぁ~ひろいですね~」

目の前に広がる広大な土地をみながら、ふくちゃんは感嘆の声を上げる。

「そうだね・・ここを灌漑して水を流せば豊かな土地になるよ」

 

俺たちは今楊州北部のとある地域の視察にきている。

新たな土地開発のためだ。

 

俺たちが合肥について7年、楊州北部つまり合肥周辺はかつての繁栄を取り戻しつつある。

特に合肥の人口は10万を越え、楊州でも相応の規模を持つ都市になった。

人心も安定し、笑顔あふれるとまでは言えないが・・将来を考えられるぐらいの余裕が住民に出て来た。

瓦礫山と飢民ばかりだった合肥の姿は、今からは想像し難い・・。

これも・・ふくちゃんの為政官としての才能と努力の賜物だ。

 

とはいえ、都市住民の人口増加で新たな問題が生まれた。

都市住民が日々必要とする食糧が不足傾向になりつつあるのだ。

 

俺たちは対孫家の最前線として、合肥を城塞都市とするため都市政策を重視し進めてきたが。

反面、都市が本質依存する農村を無視とは言わないが・・軽視していた。

 

その影響が今になって出始めたのだ。

農村人口は減少こそしていないものの、増加は殆どなく・・。

都市・農村人口の比率がかなり歪んでいた。

 

しかも、それに気づいたときにはすでに遅く。

土地を持たない流民は、南の孫家、北の曹家(中央)西の劉表家等の有力者に囲われており。

急激に農業人口を増やすことは不可能な状況だった。

 

だが・・食料はどうにかしなければならない。

その為、俺たちは中央で曹家が採用している屯田制度(平時は農民だが、有事は軍人となり戦う)を取り入れ。

合肥の都市軍人たちで周辺地域の更なる開拓を進める事とした。

 

今日は、その何度目かの視察の日だった。

 

 

「そうですね・・ここの開拓が成功すれば、住民はもっと豊かになれますね」

 

「うん・・ちょっと城より離れてるのが難だけど」

 

「たしかに・・それは在りますね」

 

「まあ・・緊急時駆け付けられる程度の距離だし、他にいい場所も無いしここに決まりだね」

 

「ですね~・・でも、そうなるとあの川が気になりますね」

ふくちゃんの目線の先には、天井川が流れていた。

 

「ああ・・水を流すにはやりやすそうだけど、氾濫した時が怖いね」

 

「そうですね・・ちゃんとした堤を作らないと」

 

「ああ、たしかに・・そうなると川の周辺も視察してみようか」

 

「はい・・なら結構距離もあるので分かれましょう」

 

「そうだね・・ならふくちゃんは南のほうを頼むよ」

 

「わかりました」

そう笑顔でふくちゃんは頷いた。

嗚呼・・やっぱり、ふくちゃんの可愛い笑顔を見るといつも苛めたくなる。

 

なので・・。

 

「でも・・気をつけてね(ニャ)」

 

「へっ?」

 

「この辺りの川には化け物がすんでるという噂が・・」

そんな嘘をつき、俺は脅すが・・。

 

「そうですか、気をつけますよ」

ふくちゃんは、あっさり流した。

 

 

・・俺は唖然として口をパクパクした。

だって、俺が脅せば100%泣く惰弱娘のふくちゃんが、泣かない所か俺を馬鹿にしたように受け流すとは!!驚天動地だ!!

 

「・・ふっふふ~私だって娘がいる身!もう、そうそう泣きませんよ」

「どうだ!」と言わんばかりにふくちゃんが笑う。

 

「くっ・・み、みとめんぞ!つ、次を覚悟しておけ!」

そういいながら俺は、数名を連れて川の北に向かった。

 

 

1時間後

 

「(賽のが原の石崩し・・河童伝説・・あと他には)」

 

俺はあの後、視察しながらもふくちゃんを怖がらせるネタを考えている。

次、合流する際にはかならず泣かせないといけない・・だって、ふくちゃんを泣かすのが俺の存在意義だから。

 

はぁ~しかし・・あの惰弱娘のふくちゃんも成長するんだな~。

惰弱で駄目駄目娘の所は、死んでもどうにもならないと思ってたんだが。

 

でも・・ふくちゃん!君から惰弱を取ってたら何が残るんだ!

 

現状。

「優秀な文官」+「愛らしい見た目」+「やさしい心」+「それをすべて帳消する惰弱」=「駄目娘」

↑から惰弱をなくす。

「優秀な文官」+「愛らしい見た目」+「やさしい心」=「才色兼備」

 

あれ?なんかよくないか・・。

 

いや!いかん!ふくちゃんは「納豆」みたいな・・『いい娘なんだけど「あれ」がね~』と噂されるような。

駄目駄目娘じゃなくちゃならないんだ!

 

そう駄目じゃないとな・・。

そう考え付くと、自然俺はふくちゃんのかつての駄目駄目ぷりを思い出していた。

「ぐっふふふふ・・・」

 

 

「北郷殿!!」

そんな惚けていた俺の前に、ふくちゃんの傍にいる筈の文官が駆け寄ってきた。

 

「どうしました、そんなに慌てて?」

鬼気迫る顔をした、文官を見て俺はいやな予感がする。

 

 

「劉馥様が倒れられました!」

8年目 赤壁前

 

 

「ねえ・・・ふくちゃん」

「・・はい」

「・・『劉馥』を捨ててくれないか」

 

ふくちゃんが倒れてから数ヶ月。

あの日以来、ふくちゃんは倒れたり直ったりを繰り返し・・今では心身ともに明らかに衰弱していた。

 

 

正直、あと数ヶ月持たずふくちゃんは「死ぬ」。

俺は、冷静にそう考えていた。

 

なぜなら、俺は将来を知るものだから・・。

「赤壁の戦い」の「劉馥の死」は、歴史に裏づけされた運命だと知っているから。

 

 

今、隣州のケイ州で曹操と孫家が睨み合っている。

すなわち「赤壁の戦い」前の状態であり・・あと数ヶ月で「赤壁の戦い」は行われる。

 

だから『劉馥』のふくちゃんは数ヶ月持たずにかならず「死ぬ」。

でも・・それは『劉馥』の話、ふくちゃんが『劉馥』を捨てれば、・・ふくちゃんは生き残れるかもしれない。

 

 

「ふくちゃん、俺は君に生きてほしいんだ・・だから、『劉馥』を『合肥』全てを捨てて逃げようよ」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「大丈夫・・俺が支えるから・・ねっ?セイと3人で、新たな人生を進もう・・」

 

俺たちはかつて恐怖から『韓馥』運命から逃げた・・。

なら今回も逃げてもおかしくない・・だって、今ふくちゃんには命に関わる恐怖が襲ってきている。

だから・・怖がりのふくちゃんは逃げださないと「駄目」だ。

 

 

「ごめんなさい」

だが・・返事は拒否だった。

 

「ふ、ふくちゃん・・このままじゃ死ぬんだよ」

 

「・・わかってます」

 

「死んだら、すべてが真っ暗になるんだよ・・」

ちょっとした暗闇すら駄目じゃないか、ふくちゃんは・・。

 

「・・・」

 

「ほ、他にも・・あ、あれだよ死んだら土の中に埋められるんだよ、その後さらに腐っちゃうよ」

 

「・・・」

 

「こ、こわいよ・・い、いろいろと怖いんだよ・・だから逃げようよ、ねっ!」

 

「こ、こわいのは・・わ、わかってます、でも、逃げません」

 

「わかってない!!ふくちゃん死ぬのはこわいんだよ!!」

・・だから逃げないと!!

 

「わかってます!!こ、こわいですよ!!死ぬなんて・・こわいですよ!!!」

ふくちゃんが声を荒げる・・。

 

「・・な、なら」

 

「でも・・それでも私は此処にいたいんです」

ふくちゃんが呟くように、それでもハッキリとした意思がある声で・・。

 

「キ州の民、張バクさん・・多くの人を見捨てて、逃げ続けた怖がりの私が・・」

ふくちゃんは目を伏せながら言葉を続ける。

 

「そ、そんな怖がりなわたしが、死ぬことよりもここを今を失うほうが怖いんです・・」

 

伏せた目を、俺に向ける。

「あなたと生きて、セイが生まれた・・幸せなこの場所を」

 

その目には涙が溜まっているが、決して流れてはいない。

「だ、だから・・こわいけど・・死ぬのは怖いけど・・泣かないんです、ここにいるためなら怖くないんです!!」

 

 

そういえば病状が深刻になってきた以降、ふくちゃんが泣いたところを俺はみた事が無い。

人一倍こわがりなふくちゃんが、ここに居たいため死の恐怖をこらえているのだ。

 

「(・・・ここにいたいから)」

 

 

俺はふくちゃん・・中毒者だ。

ふくちゃんが望むなら・・俺のふくちゃんを失う「怖さ」なんて無視して、彼女の望みをかなえよう。

 

でも・・一つだけやる事があるな。

「わかったよ・・ふくちゃん、・・だからさ、泣き虫に戻っていいよ・・・泣き虫が我慢しつづけるのは辛いでしょ」

 

「・・・いいの」

 

「うん」

 

「あ、ありがとう・・も、もう実は・・が・が・・がまんで・・きなしゃひょうで・・・・・・・・びっ・・びっ・・・・・・びっ・・・・・・・びっ!・・・ぐずっ・・・びっ・・・・・」

ふくちゃんはぐずり始めるが・・なかなか泣かない。

 

「どうしたの、ふくちゃん・・久々だから泣き方忘れた?」

俺は安心させるため、おどけてみせる。

 

「・・・・・・びっ・・びっええええええええええええええええええええええええんんんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」

 

 

「嗚呼・・・・や、やっぱり・・・ふく・ちゃん・・の・・・な、・・泣き顔は・・可愛いなーーーーーー・・・・・・・・」

 

 

数時間後

「・・一刀さん、わたしは死ぬまで分を泣きましたよ」

ふくちゃんは涙の跡を残しながら、精一杯の笑みをみせる・・。

 

 

「あとは・・笑顔のぶんだけです」

 

 

 

 

 

数ヵ月後・・ふくちゃんは「死んだ」。

数年後、俺は娘のセイと共に合肥の城壁から城下を見下ろしている。

 

「にえええええええええーーーん!!た、高いよ!!こわいよ!!お父様!!」

 

「むふふふ・・」

さすがはふくちゃんの娘だ・・惰弱可愛いな~。

 

「お、おりましょうよ~お父様」

そうセイはいってきたが・・涙を溜めちょっとかわいそうだが・・。

 

「駄目だよセイ~この場所だけはしっかり見ておけ」

 

「・・な、なぜですか」

 

「お前のお母さんの大切な場所だからな・・」

 

そう行った後、セイは徐々に城下をみはじめる。

物心がついた時からいない母を求めてか・・セイは母の名を出せばちょとだけ頑張ってくれる。

 

やっぱり・・ふくちゃんの娘だ~やさしい娘だ。

俺はそんな娘の頭を撫でながら・・話を始めだす。

 

 

「ここは、最初はなにもなかったんだぞ・・」

 

 

ふくちゃん伝 終

クリスマスプレゼントなのに・・死に別れで終わり。

クリスマステロみたいなssですね。

 

ハッピー物を期待していた方には謝罪します。

一応「W袁家」では、ふくちゃんは幸せ駄目駄目で生き延びる予定なので。

そちらをご期待ください。


 
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