No.190992

『舞い踊る季節の中で』 第98話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 彼女は舞う。 力を無くそうとも民の為に舞う事を止めない。
 彼女は想う。 口では大馬鹿だと評しながらも、泥の中を必死に歩み続ける姿に見たモノを。
 彼女は信じる。 己が主が派手な装飾に隠した奥に在る確かな想いを。

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2010-12-22 03:14:25 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:14476   閲覧ユーザー数:9890

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第98話 ~ 積雪に手折れる蓮は、それでも舞う事を止めない ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

雪蓮(孫策)視点:

 

 

 静かに少しずつ息を吐きだしてゆく。

 呼吸をしているのを忘れてしまう程にゆっくりと……。 そして同じようにして、息を吸い込んで行く。

 深過ぎず、浅過ぎず。勘に任せながらも、同時に身体に教え込んだ通りに動作を繰り返してゆく。

 何度も繰り返す動作。でも一度たりとも決して惰性では行わない。

 髪の先まで、体毛の一本一本まで意識するように隅々まで意識して行う。

 細心の注意を払いながら丁寧に行う呼吸に合わせるように、床を蹴るようにして上げたか脚は、その実は己の力だけで自分の頭上より高くまで上げ。 今度は逆に下げながら、その脚をゆっくりと横に回して反対側の手を前に突き出して行く。

 呼吸を、"氣"を、身体を動かす全てを幻視しながら、私は舞い踊ってゆく。

 

 手に握るは何時もの剣ではなく、少し前まで使っていた杖。

 もう孫呉の王の証である南海覇王は私の手には無い。 アレはもう妹、蓮華の物。

 多くの想いと責務と共にあるそれは、私には重すぎた剣。

 正直、今の蓮華では私の時以上に重いと感じていると思う。

 でも私は知っている。 あの娘ならきっとあの剣を自分の物にする事を。

 正直、その事に嫉妬が湧かない訳じゃない。 けど孫呉の王と言う言葉は、蓮華のために在る言葉だと私は思っている。

 あの娘は私を遠慮していると言うのもあって、今まで私を立てる事に専念して来たけど、王としての器はあの娘の方が遥かに上だと私は確信している。 私と蓮華の違い、それは。

 

 『 斬り開く者 』と『 築き上げる者 』

 

 この二言に尽きる。

 どちらも王として相応しい言葉。

 されど王として、どちらが相応しいか、そして強固かなど分かりきった事。

 だけど後者は文字通り築き上げて行くための時間が必要とする。

 なら、その時間を稼ぐのが姉である私の役目だと思っている。 そして、一刀と触れ合う事と王である事を意識した今、急速に成長し始めているとはいえ。その時間はまだまだ必要で、そのための時間を稼ぐ必要がある。

 だから、毒の影響で衰弱したからと言って、何時までも休んではいられない。

 王を蓮華に譲ったなら譲ったで、やるべき事。そしてやれる事が私にはある。

 そのためには、体力と身体を少しでも早く回復させ無ければいけない。

 

 そう思っている私は、今日も美羽が持ってきてくれたお菓子を食べた後。 部屋に付いている侍女に行って皿を下げさせると同時に、お腹が膨れたから昼寝をする旨を伝え下がらせた。

 そうして部屋の外には護衛の兵がいるものの、見張りの眼が無くなったのを確認した後。この所日課にしている舞いを舞う。

 本当はきちんと鍛錬でもしたい所だけど。 そんな派手な事をすれば忽ち冥琳が飛んで来て、私が何を言おうが四六時中監視の目が付くのは目に見えている。

 その点一刀が私の鍛錬用に教えてくれた舞いは、物音を立てる事無く弱った躰を鍛え直す事が出来る。 もし見られたとしても、咄嗟の誤魔化しも効く。

 そして予想外だったのが躰が弱った事で、この舞いの別の本質が見えてきた事。

 多分一刀が本当に教えたかったのは、此方の方だと言う事が今なら分かる。

 それ程までに、気が付いたそれは私の武の固定概念を変えてくれた。

 

 むろん無理はしない。 今の状態で無理をすれば全てが水の泡になりかねないし、華佗が見て見ぬ振りをしてくれなくなるに決まっている。 それでは意味が無いのだ。

 それに気をつけなければいけないのは、私の身の回りを世話をしている侍女。

 彼女に見られない様にするのはもちろんだけど、汗をかき過ぎるのも問題がある。

 私の着ている服を洗濯をしてくれる彼女が、汗で重くなった服に気が付かない訳が無い。

 まさか裸で鍛錬をする訳には行かないので、こればかりはどうしようもない。

 かと言って寝汗だと誤魔化すにも限度があり。 一度鍛錬で汗を掻き過ぎて不信がられた事があったので、適当に誤魔化したけど。……正直あの言い訳はあまり使いたくはない。 なにせ。

 

『 あんまり退屈だったから、ちょっと一人で慰めてたの。 できれば内緒にしておいて欲しいかな 』

 

 バツの悪そうな顔で言う私に、侍女は頬を染めながら、それ以来時折私の脱ぎ捨てた服に頬を染める事はあっても不信に思う様子を見せない事から、その無茶苦茶な言い訳を信じてくれたのは良いんだけど……はっきり言って流石の私でも、その言い訳は顔から火が出る想いだ。

 でも例え恥を掻こうとも、やれる事があるのに何時までも療養などしていられない。

 思った以上に言う事を聞いてくれない躰に、苛立ちを覚えない訳では無い。

 たった一度普通に舞うだけで息の上がる今の躰に、情けなさを覚えない日は無い。

 それでも、私の中に在る確かなモノが私を力付けてくれる。

 あの時より感じる温かな存在。

 それが私を穏やかにさせてくれる。

 私に今本当に見るべきものを見せてくれる。

 だから、私は衰弱した躰を動かす苦痛を忘れて躰を動かす。

 

 孫呉の宿願を果たす為…。

 

 民を守るため…。

 

 家族を守るため…。

 

 力になりたい人がいるから…。

 

 私は想いを胸に舞う…。

 

 一刀の教えてくれた舞を…。

 

 想いと共に舞う…。

 

 ………と供に在るために……。

 

 

 

詠(賈駆)視点:

 

 

 複数の瞳が注目する中。 誰一人声を上げる事無く、小さく細い指が最後の項をめくり上げる。

 それなりに広い部屋の中を、紙が立てる音以外は響かず。 文字を追う者達は、自らの呼吸すら気を遣いながらも、項の最期までその場で全員が読みきるその時まで、ただ只管に沈黙を守り続けた。

 そして、全てを読み終えたと誰とは無しに全員が察したと同時に、まるで何かを吐き出すかのように深く、長い息が吐き出される。

 それは一体何を意味していたのだろうか。 己への不満なのか、それとも見知らぬ誰かへの憐憫なのか…。

 ……もっとも、ボク以外の人間の意味など分かりきった物。 共通しているのが感嘆している事だ。

 認めたくはないがボクもある意味その意味では同意しても良い。

 でも、それ以上にボクは言いたい。 と言うかもう叫ぶっ。

 

「絶対この作者、頭の中に蛆が湧いているわよっ!

 ねぇ月。これで分かったでしょ。 こんなもの読む価値なんて無いんだから、もう二人に付き合うのは止めましょ」

 

 ボクの叫びと共に、月の方を優しく揺らしながらボクは月に懇願する。

 だけど月は、普段はのほほんとしているのに、納得いかない事には頑として譲らない所がある。

 そして、今回もそれが悪い方向に出てしまい。

 

「でも作品としてはとても面白いと思うよ。 構成もしっかりしているのはもちろんだけど、表現も情熱的で情緒に溢れているから話に引き込まれるし。 詠ちゃんの心配しているような事は分かるけど、その辺りは私もよく心得ているから心配ないよ」

 

 月が言いたい事は分かる。 確かに心理描写とか細かい上。高度な政治や軍事の世界を知っているかのような構成や展開は、勉強になる所があるのはボクも認めるけど……。

 

「あのね猫耳よ。それに尻尾や手袋だなんて、普通の考えじゃないわよっ。

 その上、そう言う関係があるとは言え。 部下に、そんなものを付けさせて悦に入るだなんて、考えれないわよっ。 下手すれば獣姦よ獣姦。 幾ら文章が巧いからって、こんな変態な思考の持ち主の本を読んでいたら、その考えに汚染されかねないわ」

「はわわ、やはり獣の様に激しい……」

「…あわわ、でもでも、それが良いと思う時も…」

 

 頭の中と鼻頭が熱くなる中、私はそれらを必死に我慢しながらも涙目に月を説得する。 後ろで二人が何か言っているがこの際無視する。 関わるべきものではないとボクの本能が訴えているし。 理性も関わらいのが一番と結論付け。 感情は関わりたくないと意見が一致している。

 大体何でなのよ。この話の主人公の特徴って、思わずあいつを思い出しちゃったじゃない。 その上猫耳に尻尾で甘えるような姿って……うっ、本当に鼻がヤバイわ。

 とにかく、碌でもなく恥ずべき妄想を脳裏から必死に追いやっていると。 何故か顔を真っ赤にして、此方をチラチラ見ながら下を俯いている月が言い難そうに。

 

「……あの、詠ちゃん。 私は普通に話を楽しんで居ただけで、……その…其処まで想像して読んで居た訳では……。 詠ちゃん。 …其処まで想像してたんだ。 ……その…凄いね」

 

 月のその言葉に、ボクは更に頭の中を真っ白になるぐらい沸騰させる。

 羞恥心のあまりに眩暈を起こし、ユラユラと揺れる視界の中を、同じく顔を真っ赤にして帽子を目深にかぶりながらも此方を覗き見ている雛里の姿が…。

 まるで百里先に居る友を見つけたかのように目を輝かす、朱里の笑みが目に映った事で、ボクは羞恥心の海の中で藻屑になりかけていた自尊心が、まるで嵐波を物ともせずに泳ぎ渡りボクを支えてくれる。

 

「違うわよっ! 其処の二人も勘違いしないでよねっ!」

「へぅっ」

「はわわ」

「あわわ」

 

 全てを吹き飛ばすかのようなボクの気合の声に、事の元凶である二人どころか月まで脅かしてしまう。 とにかく月には脅かしてしまった事を謝ったけど、二人には当然のことながら謝る気は無い。

 そもそもこの二人がこんな本を買ってこなければ、こんな読書会なんてしなくても済む訳だし。

 軍師の性で、必要以上に考え込まずに済んだ訳なんだから。

 ………それにしても、つい想像しちゃったけど。 あんな格好で子猫みたいに怯える彼奴って……そんな事あり得ないって分かっているのに、違和感ない所が怖いわね。

 

「…でも、あと少しだね」

「そうだね雛里ちゃん。 今度あの本を…」

 

 まだ勘違いしている二人を、ボクは親の仇を見るつもりで睨み付けてやると、二人とも何時もの悲鳴を上げながら、やっと変な事を考えるのを止めてくれる。 ……もっとも今だけだろうけどね。

 それにしても、つい勝手に考えちゃったとは言え、彼奴が関わると調子が狂うわ。

 たった三日一緒に居ただけと言うのにね。 訳が分からないわよ。

 でも、彼奴の事だから相変わらず無自覚に、あの笑顔を浮かべているんでしょうね。

 背負った罪に苦しみながら……。それを隠しながら、這い蹲ってでも前に歩み続けているに違いない。

 

「…詠ちゃん?」

 

 月の心配げな声と視線に、ボクは何でも無いかのような顔で逆に尋ね返す事でその場を誤魔化す。

 そして月が何かを言う前に、休憩は終わりとばかりに手を叩いて朱里達に仕事を促すと、皆まだ仕事中だと思いだしたかのように、それぞれ仕事に戻って行き。 月は茶器の片づけは自分がやると言って、ボクを置いて、隣の部屋へと消えて行く。

 そんな月の背中に心の中で謝りながらも、ボクは再び竹簡に目を通しながら思い悩んでしまう。

 月には話せない。 彼奴の苦しみは彼奴だけの物。

 月がその事を知れば、きっと月は彼奴を憐れんで苦しむ事になる。

 今の状況では、そんな物は百害あって、何の利も無い事。

 月には彼奴は優しい恩人だって事だけで十分なのよ。

 彼奴の苦しみを知る必要はないし。 それは彼奴の想いを穢す事になりかねない。

 だから月は月で彼奴に感謝していれば良いだけ。

 

 なにより、この事は知る者が少ない方が良い。

 例え月でも、彼奴の秘密を知る事で何かの拍子で話題になり、それを桃香達に知られるのは防がなければいけない。

 桃香達には感謝しているが、彼奴にはもっと感謝している。

 だからこそ彼奴の弱点となるこの事は、例え桃香達でも知られる訳には行かない。

 そして知られちゃいけないのよ。

 

 

 

 彼奴がどうしようもない大馬鹿で……。

 

 そして、その優しさ故に一歩間違えれば危険な奴だなんてね……。

 

 ……きっと大丈夫。

 

 心の中で呟く言葉と共に、脳裏に浮かぶ長い黒髪の少女。

 

 彼奴に支えてくれる娘がいる限り、…きっと大丈夫よ。

 

 

 

斗詩(顔良)視点:

 

 

「ほーっ、ほっほほほほっ。 猪々子さん、斗詩さん生意気な小娘を懲らしめに行くから準備をなさい」

「よっしゃーっ、最近暴れられなくて鬱憤が溜まってたんだ。 さすが姫、アタイの気持ちが良く分かってる」

「ほーっ、ほっほほほっ。 当然ですわ。 部下の心を汲んで差し上げるのも、高貴なる者の務めですわ」

「ちょ、ちょっと待ってください麗羽様ー」

 

 麗羽様と文ちゃんの言葉に、私は制止の声を上げる。

 公孫賛さんに逃げられたものの。その地である幽州を初め河北四州を、ほぼ手中に収めたものの。

 それは仮初の物。 今だ袁家の支配に入る事を良しとしない豪族達が多く。 表立ってでは無いものの抵抗が未だ続いている。

 そんな状態故に袁家の老人達は、反抗勢力達に背中から襲われる事を必要以上に恐れ。反抗勢力を始末し終えるまで、私達に曹操さんの所に攻め込む事を禁じている。

 

 以前曹操さんの所にその命令を無視して攻め込んだのだけど、それが失敗した事により。 流石の麗羽様でも、これを無視する訳には行かなくなっている。

 口さがなく言ってしまえば、あの人達からしてみれば、袁家の当主等幾らでも替えの効く存在。

 古く名家であると言う事はそれだけ血筋も多く。 当主たる器等持たなくても自分達の都合が良ければ、麗羽様を当主の座から引きずり落とし、あっさりと別の者をその座に据えてしまう。

 その事は物心つく前より見てきた麗羽様がよく分かってらっしゃるはず。 河北四州を治めたぐらいでは腐りきった袁家を立て直すだけの力を得る事等出来ないと言う事は。

 

 麗羽様の焦る気持ちは分からない事はありませんが、此処は無理を通すべき時ではないし。 何より…。

 

「あの方達がアレ以来、兵の三分の二を抑え込んでしまった以上、命令を無視して出陣しても曹操さんに勝ち目はないです。 麗羽様もう一度再考していただけないでしょうか」

 

 私の必死の懇願に、麗羽様は私を呆れる様な目で見たと思ったら。

 

「何を言っているんです。 私が何時、華琳さんの所に行くと言いましたか?」

「えっ?」

「小生意気にも中山靖王劉勝の末裔を名乗り、民を誑かしている小娘から民を開放しに行くと言っているんです。 あそこならば、手勢で十分御釣りが来る程ですわ」

 

 確かにあそこならば、動かせる兵力だけで十分でしょうけど。

 正直、曹操さんを討てば、自然と吸収できてしまうような土地を攻め込む意味があるのだろうかと思いつつ。 これで暫く大人しくしてくれるならばと、溜息を隠して麗羽様の命に従う旨を伝える。

 ……はっきり言って、弱い者虐めだからしたくないんですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第98話 ~ 積雪に手折れる蓮は、それでも舞う事を止めない ~ を此処にお送りしました。

 

 明命に餓えている皆様。 今回も明命が出てこなかった事をお詫びいたします。

 もっとも何時もの事なので今更ですので、それはこれくらいにして。

 久しぶりの雪蓮視点と詠視点、そして、かなり久しぶりの斗詩視点で今話を送りました~。

 斗詩視点はともかく、二人の今の想いは如何でしたでしょうか? 想像が膨らむ一助になればと思っています。

 

 そして麗羽の今回の一言で、ついにこの-群雄割拠編-の最期の話へと移行していきますが、原作と違い雪蓮が生きている事がどう影響して行くかは、今は秘密です。

 

 孔明と鳳統の計略は賈駆と董卓を陥れる事が出来るのか(w

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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