No.190922

名家一番! 第二席

第二話です。

ようやく一刀と猪々子が同じ場面に登場。
よろしければ、今回もお付き合い下さい。

2010-12-21 22:09:30 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3608   閲覧ユーザー数:3156

「待ちな!」

 

威勢のいい、よく通る声が俺の後ろから聞こえた。

 

次から次へと……、今度はなんだよ!?

 

 

一枠:現実は非常。連中の仲間が合流してきた。        

 

二枠:季節遅れのエイプリルフール。壮大なドッキリでした~! 

 

三枠:急展開。救いの女神が現れる。             

 

 

頼むっ! 二か三で……できれば二枠でお願いします、神様!

 

祈りを込め、声が聞こえてきた後ろに振り向くと、そこには馬にまたがった一人の少女がいた。

 

金色の鎧を身にまとい、翡翠(ひすい)色の短めの彼女の髪は陽の光を吸い薄く輝いていている。

 

その画がとても綺麗で、数瞬、彼女に見惚れてしまった。

 

年は俺と同じぐらいだろうか?

 

だけど、その身体から発せられる気炎が、彼女をとても大きく頼もしい人物にみせる。

 

「やぃやぃやぃ! 一人に対して三人で寄ってかかるたぁ、男の風上にも置けねぇ連中だ!

 

天と地、そして天に住まう神仙が許しても、このアタイが許さねぇ!」

 

なんか江戸っ子みたいな女の子だな……って! そんなことよりも、大穴の三枠キタコレ!?

 

少女の登場に面食らっているのは、俺だけでなく中年三人組も同様だったが、

 

「いきなり出てきたと思ったら、なんだてめぇは!」

 

「てめぇもひん剥いて、売り飛ばしてやろうか!?」

 

「んだっ、んだっ!」

 

三人組は口々に脅し文句を吐きかけた。

 

しかし少女は、三人の脅しなどどこ吹く風といった様子で涼しい顔をしている。

 

「おもしれぇ。アタイをひん剥けるもんならやってみな!」

 

少女は不敵に笑うと、自分が乗っていた馬を踏み台にし、天高く舞い上がる。

 

彼女の背から太陽の光が後光のように差し込み、天から救いの女神が本当に舞い降りてきたようだった。

 

 

 

――、ここまではね。

 

 

「必殺! 斬 山 刀 斬 山 斬 !!!!!!」

 

「え?……ざ、ざん? 今、なんて言った?」

 

彼女が叫んだ、必殺技であろう名前がよく聞きとれず、首をかしげていると、

 

少女が空から落下してきた。

 

地面にぶつかる寸前というところで、彼女は手に持っていた“何か”を勢いよく地面に振り下ろしたその瞬間、

 

とてつもない爆発音が辺りに木霊した。

 

「なんぞコレーーー!?」

 

少女の落下地点から、もうもうと土煙が立ち上っている。

 

土煙が徐々に晴れてくると、少女が立っている場所が大きく陥没しているのが見えた。

 

「んなっ……!?」

 

その光景を見て、地面にへたりこんでしまう。

 

彼女が振り下ろした“何か”とは剣だった。

 

 

 

しかし……、

 

それは剣と呼ぶにはあまりにも大きすぎた

大きく

分厚く

重く

そして

大雑把すぎた

 

それはまさに鉄塊だった……

 

 

 

「いやいやいや! どこかの狂戦士じゃあるまいし、あんなバカでかいのを振り回すとか――」

 

“ありえない”と言葉を続けたかったが、目の前の光景を見れば、認めざるを得ない。

 

天が遣わしたのは救いの女神でなく、全てを無に帰す破壊神だった。

 

母なる大地を陥没させた当の本人は、

 

「あっれー? 勢い余って外しちゃったよ」

 

と、呑気な声をあげている。

 

少女のすぐ横に目をやると、腰を抜かした三人組が陸に打ち上げられた魚のように、口をパクパクさせていた。

 

なるほど確かに外している。てか、外してくれてよかったよ。

 

もし命中していたら、土煙の代わりに三人の血肉を浴びることになっていただろうな……。

 

その惨状を想像してみて、身震いした。

 

「ぎゃあーーー!! 怪獣ぅーーー!!」

 

「おたすけぇーーー!!!」

 

「ひ、人殺しぃーーー!!」

 

三人組は、野太い悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

「はぁ!? こんなにも可愛らしいあたいが、怪獣だとぉぉ!? てめぇらの目は節穴かっ!」

 

怪獣といわれたことが、よほど癇に触ったのか、巨大な剣を振りかざし、三人組の後を追いかけていった。

 

少女と三人組が去り、一人とり残された俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。

 

「……な、なんだったんだあの娘?」

 

一応、俺のことを助けてくれた辺り、悪い人ではないだろうから、

 

“ここはドコ?”とか、“あなた本当に人間ですか?”とか、色々と情報を得ることができたかもしれないのに。

 

しかし、彼女は行ってしまった。

 

「これからどうしよう……」

 

どうやら、この辺りはあまり治安がよろしくないようだ。

 

下手に動いて、さっきの連中のような奴に絡まれでもしたら大変だしなぁ~。

 

「う~む……」

 

これからのことで、俺が頭を抱え込んで唸り声を上げていると、

 

「あ、あの。大丈夫ですか?」

 

ためらいがちに、誰かが俺に声をかけてきた。

 

さっきの少女が戻ってきたのかと思い、伏せていた顔を上げると、そこには見知らぬ少女が、俺を心配そうに見つめていた……。

 

あとがき

 

どうも皆様。濡れたタオルです。

名家一番!の第二話いかがだったでしょうか?

ちょっと短いですが、ここで切ったほうが良い次回への引きになるかなぁ? と思い、ここで切らせてもらいました。

 

コメントをくださった方、本当にありがとうございました。とても嬉しかったです。

 

コメントで、TINAMIでは袁家√少ないと書かれていたので調べてみたら、本当に少なくってワロタwww

少しでも袁家のトリオの良さをこのSSで引き出せるよう頑張ります。って、まだ肝心の人が登場してませんが……。

 

ここまで読んで頂き、多謝^^


 
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