No.190192

真・恋姫†無双~天より来たりし戦士~ 第8話

マーチさん


スランプを感じつつも新章突入です。


今回は序章的な感じです。

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2010-12-17 22:28:37 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3243   閲覧ユーザー数:2678

ある日の午後。

 

 

 

一刀は蓮華に『話がある』との事で呼び出された。

 

 

 

「蓮華、『話』ってのはなんだ?」

 

 

「一刀に、『ある任務』を頼みたいの。」

 

 

「任務?」

 

 

蓮華は机の上に地図を広げ、『ある一点』を指差す。

 

 

 

「最近、この街で『不審な集団』が活動しているみたいなの。」

 

 

「・・・・へぇ。」

 

 

一刀も地図を覗き込む。

 

 

「ってことは、俺の任務は『現地調査』か??」

 

 

「そうよ。今回の任務は、貴方と『もう一人』でこの集団の捜索、そして連中が何をしているかを調べること。」

 

 

「もう一人??」

 

 

「ええ。もうすぐ来ると思うけど・・・・」

 

 

 

やがてトタトタトタ・・・・と、足音が聞こえてきた。

 

 

「蓮華さまっ、お呼びでしょうか!!」

 

 

 

入ってきたのは、一振りの長刀を背負い、まるで忍者のような格好の少女。

 

 

彼女の元気いっぱいの声が、執務室の雰囲気を明るくする。

 

 

 

「・・・・・コイツか?」

 

 

「ええ。彼女は『周泰』。我が孫呉の武将の一人で、隠密活動に長けていて、工作活動においては孫呉一よ。」

 

 

「ほぉ、そりゃスゲェ。」

 

 

 

次に周泰の方を向いた蓮華は、彼女に一刀を紹介する。

 

 

 

「明命、彼は北郷一刀。『天の御使い』で、孫呉独立の協力者よ。」

 

 

「ふぇっ!?み、御使い様・・・・??」

 

 

声を出して驚く周泰を見て、蓮華は「意外でしょ?」と補足して微笑む。

 

 

一刀は周泰に歩み寄る。

 

 

周泰は『天の御使い』である一刀に対して緊張しているようで、顔の表情が強張っている。

 

 

「北郷一刀だ、よろしくな。」

 

 

「え、えっと、我が名は『周泰』、字は『幼平』ですっ!み、御使い様!あ、えと・・・・」

 

 

 

慌てる周泰の姿が面白可笑しく見えた一刀は、「落ち着けって」と呟いて苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「周泰よぉ、もっと気楽に話そうぜ。な?」

 

 

「え、は、はい!!」

 

 

「よし、んじゃ俺のことを『御使い様』って呼ぶんじゃなくて、名前で呼んでくれ。」

 

 

「でも・・・・よろしいのですか?」

 

 

「『御使い様』なんてよそよそしいにも程があるってもんだ。そんなんじゃ仲良くなれねぇだろ?」

 

 

 

蓮華と契約をしてから多少は日が経ったとはいえ、一刀のことを『御使い殿』と呼び、畏敬の念を抱いて接してくる人は多かった。

 

 

一刀自身はそれがイヤだった。

 

 

だが「普通に接してくれ。」と言っても、人々は『彼は天の御使い』という先入観に近いものを取り払うことができず、それが一刀の『不満』につながっていった。

 

 

一人でも多くの人達に、『御使い』ではなく自分の『名前』で呼んでもらいたい。これは一刀の『お願い』でもあった。

 

 

 

 

「で、では・・・・『一刀様』。こちらこそよろしくお願いします。」

 

 

 

『様付き』だったが、それでも一刀は満足だった。

 

 

 

「おう。」

 

 

笑顔で差し出した一刀の手を、周泰は笑顔で握った。

 

 

 

二人が打ち解けた所で、蓮華は周泰に今回の任務を伝える。

 

 

 

「先日の諜報任務の疲れがまだ残っているだろうが、思春は千人を超える新兵の訓練指揮で手一杯なの。明命、頼めるかしら?」

 

 

「はい!もちろんですっ!!」

 

 

 

笑顔で返事をする周泰を見て、蓮華も自然に笑みがこぼれる。

 

 

 

「よし、んじゃ行こうぜ。周泰。」

 

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

「さて、ここが目的地か。」

 

 

「さっそく行動開始ですっ!」

 

 

 

翌日、目的の街に到着した一刀と周泰。

 

 

二人は探索も兼ねて街中を歩きまわる。

 

 

 

「けっこうデケェ街だな。」

 

 

「そうですね。それにこの街は交通路としても機能しているので、人もかなり多いですよ。」

 

 

「こりゃ骨が折れそうだな・・・・。」

 

 

 

髪をガシガシ。とかきむしる一刀。

 

 

 

「街の全体を把握したら宿でも探すか。一日二日で何とかなりそうにもねぇし。」

 

 

「そうですね。」

 

 

 

その後も、『どこに何があるのか、どの道を進めばどこに行き着くのか。』を確認しつつ、探索を続ける。

 

 

 

 

と、その時である。

 

 

 

「ああっ!!あれは!!」

 

 

「ん?ちょ・・・・おい、どうした!」

 

 

 

周泰が突然走り出したので、一刀も慌てて彼女を追う。

 

 

なんとか周泰に追いつくと、彼女は『何か』を抱え込み、頬擦りをしていた。

 

 

 

「あぅあぅ~♪」

 

 

「・・・・なんだそりゃ。」

 

 

「お猫様ですっ♪」

 

 

 

周泰が抱え込んでいたのは首に黄色い布を巻いた『猫』だった。

 

 

 

「それ、どっかの『飼い猫』みてぇだな。」

 

 

「確かに・・・こんなにモフモフさせて頂いてるのに、全く嫌がりません。」

 

 

「モフモフってなんだよ。」

 

 

 

猫への頬擦りを止めない周泰を見て、一刀は呆れ顔になる。

 

 

 

 

 

「とりあえず――「お~い、そこのお二人さん。」―――・・・ん?」

 

 

突然、背後から声をかけられ、一刀は反射的に振り返った。

 

 

一刀の後ろにいたのは、黒い短髪で、黄色のハチマキを締めた青年。

 

 

だが一刀は、何よりも彼の背負う『大きな剣』に注目した。

 

 

見る限りだが、鞘は鉄製で、所々錆びているようだった。

 

 

青年は、苦笑いを浮かべながら話しかける。

 

 

 

 

「その猫、僕のなんだけど返してくれない??」

 

 

「・・・・・そうかい。おい、飼い主のご登場だ。放してやれ。」

 

 

「え!?も、もう少しだけ・・・・・」

 

 

「ダメだ。放してやれ。」

 

 

半泣き状態で懇願する周泰を見て、青年はハァ。とため息をつく。

 

 

 

「仕方ない。もう少しくらいならいいよ。」

 

 

「ホントですかっ!?」

 

 

「・・・・ワリぃな。」

 

 

「ううん。『ランラン』も彼女と遊んで楽しいみたいだし。」

 

 

「そうか。」

 

 

 

周泰は、幸せそうに猫のランランと戯れる。

 

 

飼い主の青年も、微笑ましくその様子を眺める。

 

 

だが、一刀はその間もずっと『剣』を見ていた。

 

 

やがて、一刀の視線が気になった青年は、笑顔で一刀に問いかける。

 

 

 

 

「どうかした?」

 

 

「いや・・・・デケェ剣だな、って。」

 

 

「ああ、これか。いや、最近は物騒な世の中だからさぁ。自衛用に、ね?」

 

 

「・・・・・なるほど。ってことはアンタ行商人かなんかか?」

 

 

街に住んでいて、かつ街中で『自衛』のために武器を背負う。というのは考えにくい。

 

 

『自衛用』ということは、治安の悪い荒野や山などを通る必要がある人間なのだろう。

 

 

 

「まぁ、そんな感じ。ホントに最近は物騒でさぁ・・・・・。」

 

 

「行商人にとっちゃ、ツライ世の中だろうな。」

 

 

「そうなんだよ。まったく、国は何をしてるんだろうね。」

 

 

「この国は民を救わねぇからな。」

 

 

一刀の『この一言』が、彼の雰囲気を一変させた。

 

 

 

「よくわかってるね・・・・・。この国は、民を救わない。ヒドイ国だ。」

 

 

「ああ。」

 

 

「だから――――」

 

 

 

 

 

 

 

「――――トッテモヒドイコノクニヲ、コワサナイトイケナイ。」

 

 

 

 

 

この瞬間、一刀は『硬直』した。

 

 

直感的に感じたのだ。この青年の『危険な何か』を。

 

 

一刀は会話を続ける。

 

 

 

「・・・・そんなこと、できるのかねぇ??」

 

 

「できるさ。」

 

 

 

青年はニッコリと微笑む。

 

 

 

「蒼天を埋め尽くすほどの『壊し手』がいれば、そんなの簡単だよ。」

 

 

一刀も、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「でも、蒼天が埋まっちまえば、お天道様も隠れちまう。毎日が真っ暗だぜ??」

 

 

「アハハ。大丈夫だよ。―――『黄色い空』なら、いつだって明るいから。」

 

 

 

 

と、その時。

 

 

「晋!!探したぞ!!」

 

 

今度は二振りの剣を腰に差した、銀髪の少女が一刀達に向かって叫ぶ。

 

 

 

「・・・と、いけない。お迎えが来た。すっかり話し込んじゃったね。」

 

 

「いや、おもしれぇ話だったぜ。機会があれば、また話そう。」

 

 

「うん、いいよ。僕は『漢忠』。またどこかで会おうね。」

 

 

「俺は『北郷』。また―――どこかでな。」

 

 

「ランランと遊んでくれてありがとうね、お嬢さん。」

 

 

「私も楽しかったですっ!!ランラン様っ、また遊びましょうねっ!!」

 

 

 

一刀達と別れた漢忠とランランは、銀髪の少女と合流する。

 

 

「晋よ、お前ずいぶん楽しそうだな。あの男と何かあったのか?」

 

 

「うん。『北郷』って人と話してた。面白いよ?会話の最中もずっと僕の『剣』を見てたんだ。」

 

 

「お前、もしかして・・・・・」

 

 

「アハハ♪『そのまま』だよ。バレちゃったのかな?」

 

 

 

 

 

その頃、周泰と一刀は『宿』を求めて歩いていた。

 

 

 

「・・・・なぁ、周泰。」

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

「アイツ、『任務対象者』かもしれねぇ。」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

一刀はニヤリ。と笑みを浮かべる。

 

 

「会話の内容は宿で話すが・・・・アイツ、臭わなかったか?」

 

 

「え・・・・鉄の匂いならしましたが、それはたぶん飼い主様の剣の鞘が『鉄』だったからでは??」

 

 

「かもな・・・・。だが、俺は別の臭いだと思った。」

 

 

「では、何の臭いだと思われたのですか??」

 

 

「まだ新しい――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――『血』の臭いだ。」

 

 

 


 
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