・・《貴女は呼び戻された》
死の最中・・死後の世界と現世を繋ぐ細い道の途中で、藍は足を止めた。
自分が死んだと言う事も意識できない。
朧に霞む視界で白い道筋を無意識に辿っていた・・
声を聞き、ハっとして自分の背後にいつの間にか立っていた少女を見た。
中国服に身を包む、幼い少女・・
少女がゆっくりと口を開いた。
《今一度、甦れ・・・》
甘美で、どこか妖艶な響きのある言葉だった・・・
藍は目を覚ました。
違いの無い、現の世界・・
自分を囲む医者達が驚愕の目で自分を見た。
心臓の音を伝えるメーターは真っ直ぐに走ったままだ・・
それなのに藍は目を覚ました。
ゆらりと手術台の上に起き上がる・・輸血用に繋がれていた管が切れ、
袋釣りにされていた血液が手術室の床を彩った。
「ゔぁぁぁ・・ぅぅぁう・・・ぁあ・・」
突如襲う全身の痛みに、藍は低く・・呻いた。
それはまるで地獄の鬼の泣くような・・そんな不気味な呻き・・
藍の顔の皮膚が盛り上がるように変化し、硬質な面が顔全体に広がる・・
般若のような漆黒の面に浮かぶ、赤く裂けた口元、
額の部分には[壱]の文字が刻まれている・・
身体の表面にも黒の結晶が現れ、変化する・・
恐怖を隠しきれなかった医者の1人が甲高い悲鳴を上げた。
その口を、鬼と化した藍が引き裂く・・
長く美しかった黒髪が鮮血に染まり、また医者達から悲鳴が上がった。
幾つもの絶叫が上がり、その度に藍はそれを裂いた。
肉片、脳漿、縮れた皮膚・・そして溜息の出るほどまで美しい紅の血液・・
「何処・・ぁ・・か・ね・・茜・・何処に居るの・・?」
不意に、手術室の扉が開いて、私も、私の親も、そして私達と対峙していた医師までも・・
驚いた表情で振り向いた。
・・雫の垂れる音がして、病院の白い廊下に斑の模様がついた。
医者達の血で、全身を染めた鬼が死んだはずの自分の姉だと気付くまでに、
そう時間は掛からなかった。
「痛ぃ・・イタイよ、茜・・身体中が凄く・・痛いよ」
鬼がそう呟いたから・・。
「・・藍、姉ちゃん・・なの?」
声が震えた・・
本当にこれが・・こんな者が実の姉なの?
これが甦ったというの??
血み泥の鬼の両手が私の腕を掴み、正面に対峙する。
鬼面から覗く姉の目からは、涙が零れていた・・
「・・茜・・貴女が私を呼んだのね・・」
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前作の続編です。
まだまだ未熟な為どれ位のページ数で更新して行けば良いのか・・・;(ペースも疎らですしね;)
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