No.186766

鬼退治<2>

シバさん


前作の続編です。

まだまだ未熟な為どれ位のページ数で更新して行けば良いのか・・・;(ペースも疎らですしね;)

続きを表示

2010-11-27 00:15:11 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:330   閲覧ユーザー数:322

 

 

 

 

・・《貴女は呼び戻された》

 

死の最中・・死後の世界と現世を繋ぐ細い道の途中で、藍は足を止めた。

自分が死んだと言う事も意識できない。

朧に霞む視界で白い道筋を無意識に辿っていた・・

 

声を聞き、ハっとして自分の背後にいつの間にか立っていた少女を見た。

中国服に身を包む、幼い少女・・

少女がゆっくりと口を開いた。

 

《今一度、甦れ・・・》

 

甘美で、どこか妖艶な響きのある言葉だった・・・

 

 

藍は目を覚ました。

違いの無い、現の世界・・

自分を囲む医者達が驚愕の目で自分を見た。

 

心臓の音を伝えるメーターは真っ直ぐに走ったままだ・・

それなのに藍は目を覚ました。

ゆらりと手術台の上に起き上がる・・輸血用に繋がれていた管が切れ、

袋釣りにされていた血液が手術室の床を彩った。

 

「ゔぁぁぁ・・ぅぅぁう・・・ぁあ・・」

 

突如襲う全身の痛みに、藍は低く・・呻いた。

それはまるで地獄の鬼の泣くような・・そんな不気味な呻き・・

藍の顔の皮膚が盛り上がるように変化し、硬質な面が顔全体に広がる・・

般若のような漆黒の面に浮かぶ、赤く裂けた口元、

額の部分には[壱]の文字が刻まれている・・

身体の表面にも黒の結晶が現れ、変化する・・

 

恐怖を隠しきれなかった医者の1人が甲高い悲鳴を上げた。

その口を、鬼と化した藍が引き裂く・・

長く美しかった黒髪が鮮血に染まり、また医者達から悲鳴が上がった。

 

幾つもの絶叫が上がり、その度に藍はそれを裂いた。

肉片、脳漿、縮れた皮膚・・そして溜息の出るほどまで美しい紅の血液・・

 

「何処・・ぁ・・か・ね・・茜・・何処に居るの・・?」

 

 

不意に、手術室の扉が開いて、私も、私の親も、そして私達と対峙していた医師までも・・

驚いた表情で振り向いた。

・・雫の垂れる音がして、病院の白い廊下に斑の模様がついた。

医者達の血で、全身を染めた鬼が死んだはずの自分の姉だと気付くまでに、

そう時間は掛からなかった。

 

「痛ぃ・・イタイよ、茜・・身体中が凄く・・痛いよ」

 

鬼がそう呟いたから・・。

 

「・・藍、姉ちゃん・・なの?」

 

声が震えた・・

本当にこれが・・こんな者が実の姉なの?

これが甦ったというの??

 

血み泥の鬼の両手が私の腕を掴み、正面に対峙する。

鬼面から覗く姉の目からは、涙が零れていた・・

 

「・・茜・・貴女が私を呼んだのね・・」

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択