とある村にて。
ここでは、盗賊団が宴を開いていた。
「がはははは!!今日は大収穫だぜ!!」
「おい、そこの女つれて来い!」
この村は賊に占領されたのだろう。
村のいたるところに死体が転がり、わずかな生き残りはみんな拘束されている。
「つれて来たぜぇ!!へへへ、イイ体つきじゃねぇか・・・・。」
「やっ・・・・!!」
盗賊達は女性の服を引き裂く。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「た~っぷり可愛がってやるぜぇ!」
己の欲を満たそうと、盗賊達は女性に群がる。
すると、その時
《タァン!!》
「ガッ!!」
賊の一人が血を噴き出して絶命した。
《タタタタタ!!!タタタタタ!!》
何処からともなく響き渡る、『死を招く音』。
賊たちは、次々と絶命していく。
「クソッタレ!!何だってんだ!?」
《タァン!タタタタタァン!!》
「ぐ・・・あ・・・・」
『死の音』が、夕焼け色に染まった広大な荒野に響き渡る。
そして、噴き出した血が、乾いた大地に吸い取られる。
「はぁっ・・・・はぁっ・・・・な、何が起こったの??」
気が付くと、女性の近くにいた盗賊達は、みな絶命していた。
やがて、一人の男が姿を現した。
「ったく・・・・里緒の時といい、盗賊ってのはみんな発情してんのか??」
その男は、右手には黒く輝く『何か』を持ち、辺りを見回している。
「はぁっ・・・・はぁっ・・・・・・だ、誰??」
女性はガタガタと震えながら問いかける。
男は盗賊が持っていた一振りの短剣を手に取り、彼女の手足を縛る縄をブチブチと斬っていく。
「俺は北郷一刀。ただの通りすがりの・・・・・あー・・・・・『天の御使い』だ。」
「天の・・・・・御使い・・・・?」
時を同じく、ここは『水鏡女学院』。
多くの少女が、ここで学問を学んでいる。
その生徒の中に、一人の少女がいた。
「―――ちゃ~ん!!」
「あ、孔明さん。どうかしましたか?」
その少女は、自分を呼ぶ声に振り返る。
「みんながね、『あのお話』を聞きたいって!!」
「あ、ちょっ・・・・・!」
手を引っ張られ、ある部屋に案内される。
すると、部屋の中には十数人の生徒が座って待っていた。
「あ、元直さんだ!」
「元直ちゃん、『あのお話』聞かせて!!」
「お願い!里緒ちゃん!!」
元直、もとい里緒は、女学院で学問に励んでいたのだ。
ある人との『約束』を果たすとき、少しでも立派に成長した自分を見せるために。
その『約束』の証である帽子を、里緒は毎日かぶっている。
が、彼女にはサイズが合わないのか、帽子は常に斜めにズレている。
今度会うときは、せめてこの帽子がしっかり被れるくらいに成長したい、というのが里緒の目標でもある。
「わかりました。」
里緒はコホン。と咳払いをしてから、ゆっくりと語りだす。
「夜、星を眺めていたときの事でした。私が『天の御使い』と出逢ったのは――――。」
そして、その話は風に乗り、大陸各地に広がっていくこととなった。
数週間後、とある街。
「おい、聞いたか。『天の御使い』の話。」
「ああ、この国のどこかにいるらしいな。」
「アレらしいぞ。此間も一人で盗賊団を壊滅させたとか―――。」
「(・・・・俺のことか?)」
『天の御使い』の話で盛り上がっている人たちの横に、『本人』が立っている。
なんとも不思議な光景だ。
「・・・・・・なんか有名になってきたな。(ボソッ)」
街のどこに行っても、必ず誰かが『天の御使い』の話をしている状態になっていた。
これだけ有名になると、バレた時すごい事になるのでは・・・・と、ふと考えてしまうほどだ。
「う~ん・・・・・まぁ、刃こぼれもあんまりしてねぇし、鍛え直せば売り物になりそうだ。よし、買い取ってやる。」
「おう、ありがとな。」
一刀は武具店で、武器を買い取ってもらっていた。
盗賊の使っていた武器の中で、保存状態の良いモノだけを回収し、それを売ることで路銀を稼いでいる。
生活をするには、多少なり金がいるのだ。
「・・・・さて、メシでも食いに行くか。」
武具店を出た一刀は、近くの飲食店に入った。
「へい、ラーメンお待ち!」
「いただきまーす。」
出されたラーメンをズルズル・・・食べる。
「(・・・・やっぱ日本のラーメンとなんか違うな。)」
祖国のそれと比較しつつ、黙々と麺を啜っていく。
すると、突然店の扉が勢いよく開き、4人の男がズカズカと入ってくる。
「俺は『天の御使い』である!!」
入店した中で一番の大男が発した言葉に、店員と客が大騒ぎする。
その大男は、全身真っ赤な服装で、腕や頬に刺青をしていた。
「あれが、『天の御使い』・・・・。」
「でけぇ・・・・。」
「なんか風格あるなぁ・・・・」
ザワつく様子を見た大男達ご一行は満足そうに笑みを浮かべる。
そして、店員がヘコヘコした態度で接客を始める。
「よ、ようこそいらっしゃいました・・・・。あの、こちらへどうぞ。」
その様子を、一刀は興味なさ気に、横目で見る。
「あ、あの・・・・ご注文は?」
「上等な酒を持って来い。」
「へ、へぇ・・・。」
昼間から酒かよ。と心の中で呟きながらも、一刀はズルズルと食事を続ける。
やがて厨房から出てきたのは、酒と人数分の杯を持った女の子。
「お待ちどうさまです・・・・。」
「おいおい、中々イイ女じゃねぇか!!」
「あ・・・ありがとうございます。」
顔では笑っている少女だが、全身は小刻みに震えている。
「注いでもらおうか。」
大男の言葉に女の子はビクッ。と反応する。
「で、では、失礼します・・・・・」
大きな杯一杯に、酒を注いだその少女は、厨房へ逃げ込むように去っていった。
大男は、辺りを見回す。
すると、ある男に気がついた。
客のほとんどが『天の御使い』である自分に注目しているのに、その男は見向きもせず、ただズルズルと音を立てて食事に没頭していた・・・つまり一刀の態度が気に食わなかったのである。
やがて、大男の部下の一人もそのことに気づいた。
「おい、そこのお前!!」
「んあ?」
一刀はラーメンの器を持って振り向く。
「『御遣い様』の御前だぞ!!」
「だからなんだよ。」
「その無礼な態度を慎め!!!」
「なにが?」
すると、今度は大男が口を開く。
「おい、オメェ。俺が何者なのか、ちゃ~んと聞いてたか?」
「あー、『御遣い』とか言ってたな。」
「そうだ。俺は『天の御使い』だ。この世界を救ってやるために、わざわざ来てやったんだ。」
「そうか、そりゃご苦労さん。(ズルズル・・・・)」
一向にラーメンを食べることをやめない一刀。
大男は注がれた酒を一気に飲み干し、ニヤリと笑みを浮かべる。
「おい、兄ちゃんよぉ。あんまり俺の気分を害すると、ケガするぜ??」
「ふーん。(モグモグ)」
「俺はな、一人で盗賊団をぶっ潰せるんだよ。」
「ほー、スゴイスゴイ。」
一刀はズズー・・・とスープを飲み干し、立ち上がる。
「ごちそうさん。店主、勘定はここに置いとくぜ。」
立ち去ろうとする一刀に、大男は声を荒げる。
「ちょっと待てぇ!!!」
「・・・・・んだよ。しつけーな。」
「てんめぇ、ナメやがって・・・・!!」
「おい。」
すると、誰かが一刀に声をかけた。
「ん?」
振り向くと、そこには紫の髪をなびかせた一人の少女がいた。
「なんだ??」
「この店に、『天の御遣い』と名乗る男がいると聞いたのだが。」
「ああ、いるぜ。おい、お前に客だ。」
「あぁ!?客だとぉ??」
「貴様が『天の御遣い』か。」
紫色の髪の少女が店に入ると、中にいた者達がザワつく。
「か、甘寧将軍だ・・・・・。」
誰かの呟きに、大男達も驚愕する。
「質問に答えろ。貴様が『天の御遣い』か。」
「お・・・・おう。なんか、用か??」
「表に出ろ。」
言われるがままに店を出た大男達御一行。
すると、少女はどこからか剣を取り出し、構える。
「な、なんのつもりだ??」
「『天の御遣い』は一人で盗賊団を潰したと聞く。その武を見せてもらいたい。」
「ぐっ・・・・・!!」
焦りだす大男。
すると、一刀はニヤリと不敵な笑みを浮かばせる。
「そういやぁ、そんなこと言ってたなぁ。『俺は一人で盗賊団をぶっ潰せる』とかなんとか・・・・・」
「こんの野郎・・・・・!!」
大男は決心したのか、部下から剣を受け取り、構えた。
「う、うおおおおおおおおお!!!」
「・・・・・。」
声を上げて斬りかかった大男。
少女は彼の斬撃をヒラリと交わすと、カウンター気味に大男のみぞおちに肘で一撃を入れる。
「がっは・・・・!!!」
その一撃で大男は気絶した。
少女は、はぁ。とため息をつく。
「・・・・・どうやら盗賊団を一人で潰したというのは嘘のようだな。」
一刀はその様子を見て苦笑いする。
「(・・・・・なんてお嬢ちゃんだ。こわいこわい。)」
一刀は、気絶している大男に手を合わせる。
ちなみに、大男の部下達は、知らない間に姿を消していた。
その時、桃色の髪で、剣を携えた少女が誰かを引き連れて走ってきた。
「思春!!」
「蓮華さま、どうかなさいましたか!?」
「思春、手がかりを見つけたわ・・・・って、そこで気を失っているのは誰??」
「『天の御遣い』のようですが・・・・どうやら噂ほどの人物ではないようです。」
「なんだと・・・・!?せっかく―――」
「あ、あの、この人ではありません。」
桃色の髪の少女の後ろに立つ人物がそう告げた。
「「何!?」」
一刀はその女性を見る。
すると、そこにいたのは数週間前に、盗賊を殲滅した際に助けた女性だった。
「(やべ・・・・・。)」
一刀はその場から立ち去ろうと、後ろを向いたその時、
「あ!あの人です!!!あそこにいる、変な筒を肩に掛けたあの人です!!!」
バレてしまった。
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思いつき。
片手でやったので、誤字脱字があるかも。
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