No.184327

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝8

Seigouさん






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2010-11-13 20:25:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:32763   閲覧ユーザー数:23894

黄巾党の乱が終息していく

 

各地で勢力を伸ばしていた黄巾党は、各諸侯達の目覚ましい活躍によって次々と鎮静化されていった

 

そしてついに、黄巾党の首領の張角、張宝、張梁が曹操に討たれたという報が大陸に響き渡ったことによって黄巾党の勢いは完全に失われた

 

実は、この黄巾党の乱は諸侯達の予想よりも終わるのがあまりにも早かったのである

 

その理由は、乱が始まる前から一刀が各地の賊を狩っていたため黄巾党の中に入る賊が大幅に少なくなり、暴徒になる黄巾党が本来の数よりもかなり少なくなったためである

 

もちろん黄巾党の旗揚げ主の張角、張宝、張梁を崇拝する人間も相当数いたため、かなりの数が諸侯に対して頑強に抵抗していたが、張角、張宝、張梁が討たれたと知るとその士気は瞬く間に地に落ちたという要因もある

 

もともと黄巾党のほとんどは、朝廷によって課せられた重税によって食べていくことができなくなった元農民がほとんどであり、彼らは自分達が食べられるようになればそれでよかったのである

 

こうして黄巾党の乱は幕を閉じ、各諸侯に投降する黄巾党は膨大な数になっていたのだ

 

しかし、黄巾党がいなくなったからといって、それで賊がいなくなるわけでもない

 

漢王朝は今回の乱で、自身も官軍を各地に派遣するも、勢いを増した黄巾党に悉く叩きのめされ、その無能っぷりを白日の下に晒していた

 

そのため、各地に潜伏している普通の賊にも舐められっぱなしで、人々は次々と今の王朝に不信感を募らせていった

 

それでも、黄巾党の乱が終わり各諸侯は束の間の平和を満喫していたのだった

 

そんな中、我らが北郷一刀はというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ふっ!!」

 

ズバシッッッッ!!!

 

「「「「「「がはっ!!」」」」」」

 

チンッ

 

今度は雍州の天水の森の中にて相変わらず山賊狩り家業をやっていた

 

一刀「ふぅ・・・・・こんなところか・・・・・」

 

この辺りに潜伏している賊も、一刀一人にどんどん討たれていった

 

今自分が斬った賊達を地中に埋め、狛煉に跨り再び旅路を行く一刀

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

そんな日常を過ごしている一刀は、すっかり人殺しの手になってしまった自分の掌を見て思う

 

一刀「(・・・・・いつまで・・・・・こんなことをすれば終わるんだろう・・・・・)」

 

本当は分かっていた

 

自分一人がどんなに賊を討ち、手を汚しても、結局は焼け石に水でしかないと

 

しかし自身の手が、この忠久と金剛刀が届く範囲内でしか自分にはできることがない

 

ならば、どこか有力な諸侯に入ってその手腕を振るえば良いではないかと考えるのが妥当だろう

 

だが、元々この世界のこの時代の人間ではない自分が歴史の表舞台に出ていくことがはたして正解であるのか

 

そんな自問自答と自己嫌悪に陥っていると

 

???「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

一刀「っ!?狛煉!いくぞ!」

 

狛煉「ぶるん!」

 

一刀は狛煉に飛び乗り、この世界に来て二回目になるであろう叫び声のした方へ駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「こ、来ないで下さい・・・・・」

 

「へへ♪お嬢ちゃんよ、こんな所で何していたのかな?」 

「自分から売られに来たのかな~?」

 

「怪我したくなかったら大人しくするんだな」

 

一人の少女が賊に襲われそうになっている

 

???「(誰か・・・・・詠ちゃん、助けて)」

 

少女が心の中で助けを求めていると

 

一刀「そこまでだ!!」

 

???「っ!?」

 

「!!??」

 

巨大な白馬に跨った青年が現れ、少女の前に立ち塞がった

 

「だれだ!て・・・・・め・・・・・」

 

「あ・・・・・あの背中の大剣・・・・・」

 

「こ、黄巾党や俺達の仲間を次々とやっている、例の山賊狩り・・・・・」

 

賊達は震え上がる

 

???「(この人が例の山賊狩り、今都で噂されている天の御使いといわれている人)」

 

少女はその後姿を見て、目をキラキラと輝かせていた

 

一刀「・・・・・選べ」

 

「「「ビクッ!!」」

 

一刀「立ち去るか・・・・・死か・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

一刀の殺気がみるみる濃くなっていく

 

「う、うわ~~~~~~~~~~~!!!」

 

賊達は、一目散に逃げ出したのだった

 

賊が去ったのを確認すると、一刀は狛煉を折り少女の下に歩み寄った

 

一刀「大丈夫かい?」

 

???「は、はい!ありがとうございました!//////」

 

一刀「??・・・・・一人じゃ危ないから送っていくよ、君はどこに住んでいるんだい?」

 

???「あ、はい、天水のお城です////」

 

一刀「へ?お城?・・・・・わ、わかったよ」

 

一刀は、天水のお城で働いている侍女なのかと思っていた

 

一刀「それじゃ、よっと」

 

???「え?きゃっ!?」

 

一刀は少女をお姫様抱っこして狛煉に飛び乗った

 

???「へうぅ~~~~~~~///////////」

 

一刀「???」

 

一刀は狛煉を走らせ天水の城へ駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「いい!!なんとしても1刻以内に探し出すのよ!!」

 

???「ああ!!分かっている!!しかし、探すあてはあるんだろうな!!?賈詡!!?」

 

詠「多分、この町の中にいると思うけど・・・・・あ~~~もうっ!!月ったらどこに行っちゃったのよ!!?」

 

賈詡と呼ばれた少女はかなり焦っていた

 

それはそうだ、自分の主が行方不明となればいてもたってもいられないだろう

 

詠「華雄!!念のために郊外にも捜索隊を派遣して!!」

 

華雄「分かった!」

 

華雄と呼ばれて人が馬に乗り、今走り出そうとしたとき時

 

月「詠ちゃ~~~~ん!!」

 

自分の主の声がした

 

詠「月!!?」

 

華雄「董卓様!!」

 

一刀「!!!???」

 

狛煉の上に少女と一緒に跨っていた一刀は、自分の耳がいかれたのかと思った

 

一刀「(え?今なんて言った?・・・・・董卓!!?)」

 

きっと自分の聞き間違いだと思い一刀は少女を狛煉から降ろした

 

詠「ゆ、月・・・・・月ぇ~~~~~~~~!!」

 

詠は半なき状態となりながら駆け寄る

 

月「詠ちゃん、ごめんね」

 

抱き合う二人を見て一刀は、『本当に仲がいいんだな』と心を和ませていた

 

月「詠ちゃん本当にごめんね、でもどうしても民の暮らしが見たくって」

 

詠「月!そりゃ民の暮らしを生で見たいと思うのは立派なことだけど、護衛の一人くらい付けてもいいじゃない!」

 

月「詠ちゃん、それじゃ意味が無いよ・・・・・あ、そうだ詠ちゃんこの人がさっき山賊さんから私を助けてくれたの」

 

詠「こいつが?」

 

月「あ、そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたね、わたくしの名は董卓、字を仲穎と申します」

 

一刀「(やっぱり!!聞き間違いじゃなかったか!!)」

 

一刀はまたまた記憶のタンスをこじ開けた

 

三国志物語の中で最も悪い人物といえば、十中八九は董卓の名をあげることになるだろう

 

洛陽の何進が発した宦官誅殺令に乗じ、軍を率いて入城、混乱に乗じて帝と陳留王を保護し、実権を握って権勢を欲しいままにする、やがて、朝廷を脱して反乱を起こした袁紹や孫堅らの連合軍と戦い、不利と見るや洛陽を捨てて長安に遷都を断行する、さらに暴政を行なうが、腹心の部下呂布の謀反によって暗殺される

 

しかし、この世界の董卓は一刀の知っている董卓とはあまりにも似ても似つかない、しかもまたしても女性である

 

一刀は史実とはあまりに違うこの世界にわけがわからなくなっていた

 

一刀「・・・・・自分は、北郷一刀です」

 

華雄「その背中の大剣、貴様が噂の山賊狩りか、我が主を助けていただいたこと、感謝する」

 

一刀「いいえ、当然のことをしただけです・・・・・」

 

さも当然の如くそう言ってしまう自分が憎らしい

 

月「北郷さん、どうかお礼をさせてください」

 

詠「月!ダメよ、こんな得体の知れないやつを城に招いちゃ!」

 

月「詠ちゃんそんなこと言っちゃダメだよ、助けて貰ったんだからちゃんとお礼をしなくちゃ」

 

詠「でも!」

 

月「詠ちゃ~~~~ん!」

 

月はぷく~~~~~と頬を膨らませて怒った顔をした

 

正直凄く可愛い

 

詠「うっ!わ、わかったよぅ///////」

 

月「あはっ♪詠ちゃんだ~~い好き♪」

 

詠「もう、月ったら///////」

 

月は満面の笑顔で詠に抱きついた

 

月「というわけで、北郷さん、どうか城に来てください」

 

一刀「・・・・・わかりました、そこまでいうならお言葉に甘えさせていただきます」

 

一刀は、自分でも驚くほどすぐに返事をしてしまった

 

いや、それは嘘だろう

 

興味が出たのだ、この世界の董卓に

 

詠「ボクの名前は賈詡、字は文和、僕の主を助けてくれてありがとう」

 

華雄「わたしは華雄という、わたしの主を助けてくれて感謝する」

 

月「北郷さん、今はお城にわたくし達の仲間が揃っていませんので、紹介は明日でもよろしいでしょうか?」

 

一刀「わかりました」

 

こうして一刀は天水の城に招かれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天水のお城にて一室を与えられた一刀

 

城の外に出なければ自由にしてかまわないと董卓こと月に言われていた

 

賈詡こと詠はかなり反対していたが月のウルウル顔に負け承諾した

 

うん、あんな顔されたらなんでも言うこと聞いちゃうよね、人として

 

まあ一刀は何か悪さをしようとは微塵も考えていなかったが

 

そんな一刀は天水の城の中庭にて考え事をしていた

 

一刀「(この世界は一体どうなっているんだ?今まで数多くの武将や軍師達を見てきたけど、その殆どが女性だ、極めつけは董卓も女性であり、俺が知っている史実の董卓とは全くの別人と来ている)」

 

自身が知っている史実の三国志とこの世界を照らし合わせる

 

確かに史実に沿って黄巾党の乱が起き、乱世への兆しが見えている

 

しかし、聞くところによれば呉の孫堅(女性)が反董卓連合が結成される前にすでに劉表によって討ち取られているらしい

 

変な話だ

 

今の時間帯では生きているはずの人間が死んでいたり、死んでいるはずの人間が生きていたりする

 

一刀「(この世界は、史実とは関係ないのか?)」

 

そんな考え事をしている最中

 

華雄「ん?北郷ではないか、どうしたのだ、こんな所で?」

 

一刀「ああ、華雄さんか」

 

華雄「華雄と呼び捨てにしてくれてかまわん・・・・・そうだ北郷、これから私と試合をしないか?」

 

一刀「・・・・・いきなりだな?」

 

華雄「噂の山賊狩りの腕前を是非拝見したいのでな」

 

一刀「・・・・・わかった」

 

ザキュ

 

一刀はその場で構えた

 

華雄「まさか!?素手で戦うつもりか北郷!侮辱と受け取るぞ!!」

 

そう、今の一刀は忠久と金剛刀を与えられた部屋に置いたままで完全に丸腰なのである

 

一刀「別に馬鹿にしているわけじゃない、俺が戦場にいる時、怪我でもしていない限り常に俺は万全だ」

 

華雄「・・・・・・・・・・」

 

それでも華雄は一刀を睨みつける

 

一刀「今回はたまたま俺の手元に獲物がなかった、ただそれだけだ」

 

華雄「いいだろう!後になって負けた理由にするなよ!!」

 

華雄は駆け出し自身の武器、金剛爆斧を一刀に振り下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三半刻後(約30分後)

 

 

 

 

 

 

 

 

華雄「はぁはぁ・・・・・はぁはぁ・・・・・」

 

一刀「もう気は済んだかな?」

 

息を切らし、ボロボロの状態となった華雄が地面に仰向けの大の字に横たわり、それを息も切らさず上から覗き込んでいる一刀の姿があった

 

華雄「はぁ・・・まさか・・・・はぁ・・・素手の者に・・・はぁ・・・・ここまで、打ちのめされるとはな・・・・」

 

一刀「俺の流派は、武器は基本的には選ばないからな」

 

華雄「あれは、一体なんなのだ?」

 

一刀「北郷流無刀術って言ってな、俺が前に居た所の様々な武術の技を織り交ぜたものなんだ・・・・・それにしても、華雄もなかなか良い素質を持っているな、努力を怠らなければ数年で俺を倒せるようになると思うぞ」

 

華雄「本当か!!?」

 

一刀「あ・く・ま・で、努力を怠らなければの話だぞ」

 

華雄「わ、わかっている!/////」

 

自分がはしゃいでしまった事に気付いて、華雄は赤くなってしまう

 

華雄「・・・・・おまえには、呂布と同じ臭いがするな」

 

一刀「っ!!?呂布だって!?」

 

華雄「ん?呂布を知っているのか?」

 

一刀「実際に会ったことは無い、ただ黄巾党3万を単身で止めたという噂を聞いたことがあるんだ」

 

華雄「ああ、あの時の呂布はまさに鬼神そのものだったな」

 

一刀「(・・・・・呂布・・・・・か・・・・・)」

 

一刀はさらに記憶のタンスをこじ開ける

 

劉備、関羽、張飛、許緒、典韋など数多の豪傑が当ってもカスリ傷一つ付けられなかった武人、ひとたび戦場へ出れば、敵は恐れおののいた

 

正史でも『人中の呂布、馬中の赤兎』と唄われたほどの三国志最強の武人

 

しかし、自分自身しか信じていなかっただけに人任せにできない、そのため陳宮という有能な軍師がいながら、それを生かしきれなかった

 

また、目先の利に動かされるので、諸候のウケは悪い

 

まさに戦をするために生れてきたような人物、しかし、半ば強引ではあるが、劉備VS袁術の戦いを仲裁したのは、珍しく戦以外の見せ場だった

 

一刀は、もはや史実の知識なんて殆どあてにならないとわかっていながらも、半ば条件反射的に自分の知識を捻り出した

 

一刀も武人の一人だったので呂布にはある種の憧れのようなものを抱いていたのだ

 

一刀「起き上がれるか?」

 

華雄「ん!・・・・・ちょっと無理か・・・・・」

 

華雄は、起き上がろうとするが立てなかった

 

一刀「わかった・・・・・」

 

華雄の隣に立つと一本の針を取り出した

 

華雄「なんだそれは?」

 

一刀「いいから楽にしていろ」

 

そして、針に氣を集中させた

 

華雄「(こ、これは!?)」

 

目の前で一刀の体が淡い光に包まれた

 

華雄「(凄い氣だ)」

 

その光が自身に移ってきた

 

華雄「(暖かい)」

 

次の瞬間、体のあちこちにあった傷が全て塞がっていた

 

華雄「おお!どこも痛くない!おまけに前より調子がいいみたいだ!」

 

一刀「それは何よりだ」

 

華雄「今のはなんなのだ?」

 

一刀「今のは五斗米道(ゴットヴェイドー)って言って、友達の華陀に教えてもらったんだ」

 

華雄「なんだと!あの神医と謳われた華佗が北郷の友なのか!?」

 

一刀「やっぱり、華佗は有名なんだな」

 

華雄「ああ、何でも治せない病気は無いというぐらいの名医だと聞いている」

 

一刀「確かに、この五斗米道(ゴットヴェイドー)は反則的な医療だろうな」

 

そんなたわいもない会話を二人はしばらくしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日付は変わり昼の時間となる

 

 

 

 

 

 

カチャカチャ  キュッキュッ

 

一刀は中庭の木陰で、自分の愛刀忠久を分解し手入れをしていた

 

一刀「・・・・・ん?」

 

???「・・・・・・・・・・」

 

何かの気配を感じ振り向くと、そこには一匹の犬がいた

 

一刀「・・・・・コーギーか?」

 

一刀が『今の大陸にコーギーがいたのか?』と考えていると

 

???「・・・・・わふっ♪」

 

犬は一刀の傍に寄ってきて、頬ずりしてきた

 

一刀「よしよし、どうしたんだ?」

 

なでなでなでなで

 

???「わふ~~~ん♪」

 

犬は一刀に撫でられ、気持ち良さそうに身じろぎした

 

一刀「首輪が付いているということは、お前の御主人はどこにいるんだ?ん?」

 

???「わふっ?」

 

犬は何って感じで首を傾げている

 

???「・・・・・セキト・・・・・」

 

一刀「あれ?この子は君の犬かい?」

 

???「(コク)・・・・・セキトっていうの」

 

一刀「へ~~、セキトって言うのか、人懐っこいなお前」

 

???「・・・・・(フルフル)」

 

一刀「?」

 

???「セキト・・・・・人懐っこくない・・・・・知らない人には懐かない・・・・・」

 

一刀「じゃあ、何で俺には懐いているんだろう?」

 

???「・・・・・不思議」

 

一刀はしばらくセキトを撫でていた

 

一刀「ああ!紹介が遅れたね、俺は北郷一刀」

 

恋「恋は恋・・・・・」

 

一刀「・・・・・それって、もしかしなくても真名だよね、真名じゃない方の名前は?」

 

恋「呂布・・・・・でも・・・・・かずといい人だから恋って呼んでほしい・・・・・」

 

一刀「へ~、呂布か~・・・・・・・・・・って、呂布!?」

 

この可愛い女の子が三国志において裏切り者の代名詞と言われるあの呂布奉先!!?

 

断言しよう、ありえない

 

一刀「(ん?セキト?・・・・・ってことは!!?)」

 

この犬があの赤兎!!!?

 

なぜ赤兎馬が赤兎犬になっているんだ!!?

 

史実とのギャップがここまできついと逆に清々しくなってくる

 

恋「恋って呼んでって言った・・・・・」

 

一刀「でもいいの?今会ったばかりなのに」

 

恋「いい・・・・・セキトが懐く人に悪い人いない・・・・・」

 

一刀「・・・・・わかった、恋・・・・・残念だけど俺には字と真名がない、だから一刀が一番真名に近いと思う、そう呼んでくれ」

 

恋「かずと・・・・・わかった・・・・・」

 

一刀と恋が最初の出会いをしているところで

 

詠「北郷!こんな所に居た!皆揃ったから玉座の間に来なさい!・・・・・って、恋も居たの!?」

 

恋「詠・・・・・」

 

詠「ちょうどよかった、恋も玉座の間に来なさい!」

 

恋「わかった・・・・・」

 

一刀「あ!ちょっと待ってくれ!俺着替えてくるから!」

 

実は今の一刀は、時雨からもらったこの世界の服を着ているのだが、もうあちこちボロボロの状態なのである

 

流石にこんな格好で玉座の間になんか行けっこなかった

 

詠「・・・・・わかったわ、案内人をそっちに行かせるから、でも早くしなさいよね!」

 

一刀「わかった!」

 

一刀は、与えられた部屋へ急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉座の間

 

 

 

 

 

 

???「なぁ?そいつって、そんなに強いんか?」

 

華雄「ああ、なんせ素手の相手に手も足も出なかったのだからな」

 

???「はぁ~~、華雄さんがそんなにあっさり負けてしまうなんて信じられないです」

 

???「まだ野には、各諸侯でも把握しきれない兵(つわもの)がいるのですね」

 

華雄「もし、あいつが本来の自分の獲物を持っていたら、私と張遼、徐晃の三人がかりでも倒せないかもしれないな」

 

???「嘘やろ!!?」

 

???「え!?華雄さんと霞さんと菖蒲さんの三人がかりでもですか!?」

 

菖蒲「まるで恋さんのようですね」

 

華雄「ああ、わたしはあいつなら呂布を倒せるんじゃないかとすら思っている」

 

???「恋殿は天下無双なのです!どんなやつが来ても必ず勝つです!」

 

恋「ねね、うるさい・・・・・」

 

コツン

 

音々音「あうぅ、恋殿ぉ~~~」

 

ここには、天水の主だった将が勢揃いしている

 

左側に張遼文遠こと霞、徐晃公明こと菖蒲、そして華雄

 

右側に徐庶元直こと雫、呂布奉先こと恋、そして陳宮公台こと音々音が居座っている

 

そして、6人が話している最中、詠と月が現れた

 

詠「皆、揃ったわね」

 

月「皆さん、これから紹介するお方は、今都で大変噂になっている天の御遣い様かもしれません、決して失礼の無い様にお願いします」

 

霞「へ?天の御遣い?」

 

菖蒲「噂の山賊狩りさんが・・・・・」

 

華雄「ほう・・・・・」

 

雫「・・・・・御遣い様・・・・・」

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

音々音「北郷・・・・・一刀・・・・・ですか・・・・・」

 

一同は、それぞれの反応を見せる

 

案内人「董卓様、お連れいたしました」

 

月「御苦労様です、下がってかまいません」

 

案内人「はっ!」

 

案内人が去った後すぐ一刀が入ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!!!?????」

 

この場にいる者は、玉座の間そのものが驚いていたような錯覚を覚えたろう

 

月「へうぅ~~~~~/////////////」

 

詠「な、な、な!?////////////」

 

霞「ほぉ~~~/////////」

 

菖蒲「はぁ~~~////////」

 

華雄「・・・・・・・///////」

 

雫「//////////」

 

恋「・・・・・かずと、綺麗(ぽっ)////////」

 

音々音「恋殿、気をしっかりと持つです~/////////」

 

と、様々かつ一様の反応を見せる

 

玉座の間に入ってきたのは、凛とした佇まいに艶のある綺麗な髪を腰まで伸ばし、今まで見たこともない服(フランチェスカの制服)を着た優しそうで端正な顔立ちの青年だった

 

一刀「董卓様、此度はこのような席にてご紹介していただき、まことにありがとうございます」

 

一刀は、拳包で挨拶をした

 

月「・・・・・////////」

 

一刀「・・・・・あの?董卓様?」

 

月「はうい!!?////////」

 

気がかなり動転しているのか、月は奇声を上げた

 

詠「月!?ああもう!北郷一刀!あんたに聞きたいことが幾つかあるわ!////////」

 

一刀「え?は、はい、自分に答えられることでしたら」

 

詠「あんたは、天の御遣いなの?」

 

一刀「・・・・・この大陸を旅していて、何度も聞いたことがありますけれど、その天の御遣いとは何なのでしょうか?」

 

詠「世が入り乱れ、乱世の兆しが見え始める時、冥き空より流星が舞い降りる、その流星は光と闇の翼を合わせ持つ天の御遣いを乗せ、武と智と和を持って乱世を沈静するであろう・・・・・管輅という占い師の予言よ」

 

一刀「・・・・・正直自分は、自分自身がそんな大層なものだとは思いません、本当にごく普通の人間です」

 

詠「・・・・・なら次の質問よ、あなたの着ている服、見たこともないものだけどどこで手に入れたの?」

 

一刀「これは、自分が前に居た所で日常的に着ていた服です、もしかしてこの服では駄目でしたか?」

 

詠「そんなことはないわ、でも今言った、前に居た所というのは何処の事なの」

 

一刀「・・・・・信じて貰おうとは思いませんが、自分は荊州北部の江夏の村の近くで倒れていました、どうやってそこまで来たかは、全く覚えていないのです」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「もちろん、虚言と受け取っていただいてかまいません、しかし、今言ったことは紛れもない真実であります」

 

詠「・・・・・最後の質問よ、あなたは何故そこまでの武を持ちながらどこにも仕官しないのかしら?」

 

一刀「・・・・・自分は、基本的に殺し合いや憎しみ合いは好みません、仕官してしまえばいやがおうにもそういったことに巻き込まれてしまいますので」

 

月「ならば何故、各地の山賊達を狩っているのですか?これは矛盾していると思いますが」

 

一刀「・・・・・確かに自分は、殺し合いは好みません、しかし、目の前で悲鳴を上げ、助けを求めている者を見捨てるようなこともできないのです」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

月と一刀は互いの目をまっすぐに見詰め合う

 

そして

 

月「・・・・・わかりました、北郷さん、しばらくここに身を置きませんか?」

 

一刀「え?なぜ?」

 

月「いいよね詠ちゃん」

 

詠「ボクはかまわないわ、想像していたより遥かにまともそうだし」

 

月「皆さんはどうですか?」

 

霞「ウチはかまへんで」

 

菖蒲「はい」

 

華雄「稽古の相手が増えるのはいいことだ」

 

雫「これからよろしくお願いします」

 

恋「かずと・・・・・ずっと一緒///////」

 

音々音「恋殿ぉ~~~」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

なんだかとんとん拍子に進んでいく会話に完全に乗り遅れてしまった一刀であった

 

月「では北郷さん、はたしは姓は董、名は卓、字を仲穎、真名は月です」

 

一刀「え!?いいんですか!?いきなり真名で呼ばせても!?」

 

月「かまいませんよ、ちなみに敬語も無しでお願いしますね」

 

一刀「いいのかなぁ・・・・・」

 

詠「いいのよ、月ってばああ見えて、かなり頑固なところがあるから、諦めたほうがいいわよ」

 

こんなんでいいのかと物凄い疑問に思っていた一刀だったが

 

月「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

月の笑顔の裏に隠れている阿修羅みたいなオーラを見て心折れた

 

一刀「・・・・・わかった、月、これでいいか?」

 

月「はい♪」

 

さっきまでの阿修羅のようなオーラが消え、月は満面の笑顔になった

 

詠「ボクは、姓は賈、名を詡、字は文和、真名は詠、呼びたきゃ呼んでいいわよ」

 

霞「ウチは、姓は張、名は遼、字は文遠、真名は霞や」

 

華雄「もう知っているだろうが、華雄だ、字と真名はない、よろしく頼む」

 

菖蒲「わたくしは、姓が徐、名が晃、字を公明、真名は菖蒲です、どうぞお手柔らかにお願いします」

 

雫「姓は徐、名は庶、字は元直、真名は雫です、よろしくお願いします、北郷様」

 

恋「恋・・・・・もうかずとに真名預けた・・・・・」

 

音々音「恋殿!?あいつに真名を預けていたのですか!?」

 

恋「(コク)・・・・・セキトも懐いたから」

 

音々音「な、なんと!?」

 

霞「へぇ~、セキトが懐いたんか?ほんま珍しいな」

 

華雄「あの凶暴犬がか!?」

 

雫「わたしは、懐かれるのに何ヶ月もかかりました」

 

菖蒲「・・・・・今だに懐いてくれません」

 

それぞれがセキトの自分に対する評価を露呈していく

 

恋「ねねも真名・・・・・」

 

音々音「おお!?ねねもでございますか!?」

 

恋「・・・・・(コク)」

 

音々音「わ、分かったです・・・・・姓は陳、名は宮、字は公台、真名は音々音、言いにくければねねでかまわないのですぞ!」

 

一刀「俺は、姓が北郷、名が一刀、字と真名は無い、あえて言えば一刀が一番真名に近い、一刀と呼んでくれ、月、詠、霞、、菖蒲、華雄、雫、恋、ねね、これからよろしく頼な」

 

月「はい一刀さん♪」

 

詠「わかったわ、一刀」

 

霞「よろしゅうな、一刀♪」

 

菖蒲「本当にお手柔らかにお願いします、一刀さん・・・・・」

 

雫「よろしくお願いします、一刀様」

 

恋「かずと・・・・・(ぽっ)///////」

 

音々音「よろしくしてやるのです!」

 

皆それぞれ挨拶をしていく中で一刀は物思いに耽っていた

 

一刀「(賈詡、張遼、華雄、徐晃、徐庶、陳宮)」

 

一刀はまたまた記憶のタンスを・・・・・・・・・・・開けなかった

 

この陣営に居るはずのない軍師や武将が混じっている時点で考えるのが面倒になってくる

 

もうここまで来たら史実なんて関係ない、こうなったら歴史を無視してひたすら自分の思った通りにやろう

 

もちろんやり過ぎない範囲内で

 

月「それでは一刀さんの「ちょっと待ってくれ!」・・・・・はい?」

 

一刀「この軍での俺の扱いなんだけど、俺を董卓軍の客将として扱ってほしい」

 

月「客将ですか?」

 

詠「どうしてなのよ?」

 

一刀「何かするうえで、客将のほうがこっちも色々動きやすいからさ」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「もちろん、客将だからといって与えられた仕事に手は抜かない、自分にできる最高の仕事をしてみせる」

 

月「・・・・・わかりました」

 

詠「月!それでいいの!?」

 

月「うん、だって一刀さんは嘘を付く人には見えないから」

 

詠「・・・・・わかったよぅ」

 

詠も月の言葉には逆らえないらしい

 

一刀「ごめんな、色々注文が多くて・・・・・」

 

月「そんなことありませんよ、というより注文したのは客将の件だけじゃないですか」

 

一刀「あれ?そうだったっけ?」

 

月「そうなんです♪」

 

一刀「・・・・・ぷっ」

 

月「・・・・・くす」

 

一刀「あっははははは♪」

 

月「くすくすくすくす♪」

 

二人はたわいもない会話をしているだけのはずなのに満円の笑顔で笑い合っていた

 

そんな様子を見ていた詠は

 

詠「(こんなに楽しそうな月、何時以来だろう・・・・・)」

 

少しだけ一刀に嫉妬していたりしていた

 

そんな時

 

霞「せや、これからのことを考えて、一刀の実力を見せてくれへんか?」

 

詠「霞・・・・・あんたただ単に戦いたいだけでしょ?」

 

霞「あ、ばれた?」

 

詠「はぁ・・・・・まあいいわ、一刀もいいわね?」

 

一刀「俺はかまわないよ」

 

霞「ほな、さっそく中庭でやろか♪」

 

霞は飛龍堰月刀を振り回しながら眩しい笑顔で玉座の間を出て行こうとする

 

一刀「じゃあ俺も、用意したらすぐに行くから」

 

霞「おう♪待っとるで♪」

 

一刀は自分の武器を取りに自室へ向かい、それ以外は中庭へ向かったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛た!あだ!物を投げないでください!

 

『孤高なのになんで陣営に付くんだ!』と苦情が来そうですが、こちらも物語を面白くするのに必死なんです

 

絵を見て感動しましたので0157さんの雫と郁さんの菖蒲をお借りしました

 

次回は一刀VS恋です

 

この小説を投稿してから初めての本格的な一対一の戦闘偏です

 

お楽しみに


 
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