No.183615

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝3

Seigouさん






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2010-11-09 21:24:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:23269   閲覧ユーザー数:16273

ある山の中の今は使われていない打ち捨てられた砦

 

 

 

 

 

 

ワイワイガヤガヤ

 

 

 

 

 

 

砦の中には約3千人の賊達が集まっている

 

「はっはっはっ♪いや~~~~♪この昨日の村は大漁だったな♪♪」

 

「ええ♪まさかあんな小さな村にこれだけの貯えがあったなんて思いもしませんでしたよ♪」

 

「お気の毒なこったぜ、せっかく苦労して貯め込んだものが一瞬にしてパーなんだからな♪」

 

「おいおいそれを言ってやるな、俺達の物は俺達の物、人の物は俺達の物、そうだろ♪」

 

「ちげぇねぇっす♪」

 

この賊の群れは、自分達の数の多さを利用し周辺の村々に高圧的な脅しをかけて食糧から何やら何まで奪い取るようなことをしていたのだ

 

「おい!お前らもし~~~~っかりいいところに売ってやるから安心して大人しくしてろや♪」

 

賊が言い放った先には、手製の檻に閉じ込められた20人ほどの村娘達がいた

 

村を襲った時に食糧とともにさらってきたのだ

 

「うう・・・・ぐすっ・・・・・うぁ・・・・・・」

 

これから待っているのは理不尽極まりない地獄だろう

 

そんな絶望的な未来しか頭の中に描かれない

 

賊達は一様にふざけたことをのたまいながら笑いあった

 

「はぁ~~~~~・・・・・そういえばちょっと小耳にはさんだことがあるんですが」

 

「ん、なんだ?」

 

「最近、俺達と同業のやつらが誰かに次々と消されているって話ですよ」

 

「ああ、最近になって現れたっていう、例の山賊狩りか」

 

「なんだそりゃ?」

 

「お前知らないのか、なんでも見たことのない形の剣を腰に差して、かなりでかい大剣を背中に背負っているらしいぜ」

 

「おおこわ、そんな奴がいたら俺小便ちびっちまうぜ♪」

 

賊達は大きなダミ声で笑いあった

 

すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その話はするな!!!」

 

城壁の隅に陣取っていた賊の一人がいきなり大声を出した

 

周りの賊達も一様にその賊の方を見る

 

「おいおい、なんだよそんな大声あげて?」

 

「そうだぜ、せっかくの酒が不味くなるぜ」

 

「・・・・・そういや、オメーは最近入ってきたばかりだったな、なんかその山賊狩りのことを知っているのか?」

 

大声を上げた賊は、ぽつりぽつりと語り始めた

 

「・・・・・俺は、この群れに来る前は、百人程度の群れにいた・・・・その時に、その山賊狩りに、たった一人の男に、俺以外のやつはみんな殺されちまった」

 

最後のほうは泣きそうな声で、この者がどれほど怖い思いをしてきたかが読み取れる

 

「・・・・・(ごくり)」

 

その喉の音は誰のものだったのか

 

この賊は自分以外の仲間が皆殺された時足を洗おうと考えていた、しかし、この者は生まれた時から、この環境で育っていたために賊としての生き方しか知らなかったのだ

 

だから今さら、他の生き方などできるはずがなかった

 

「でもそいつはたったの一人なんだろ」

 

「そうだぜオメーの群れがやられたのは、戦い方が拙かっただけだぜ」

 

そう言う賊

 

それはそうだ、常識的に考えて一人で百人単位の人間をいっぺんに殺すことなど不可能なのだ

 

しかし

 

「甘いよ、そいつが剣をふるった時、わけのわからない光が出て、その光が一回発せられるたびに数十人の仲間がいっぺんに吹っ飛んだんだ」

 

その賊はいきなり信じられないことを言う

 

周りの賊達も『オメー夢でも見たんじゃねーのか!?』とか『妄想に付き合っちゃいられねーよ!』と相手にしなくなってきた

 

しかし、ただ一人違うものがいた

 

「・・・・・そりゃもしかして、氣の使い手か?」

 

「ん、なんだそりゃ?」

 

「稀にいるらしいですぜ、体の中に流れる力を自在に扱える人間が」

 

「へ~そりゃ便利だな、俺も鍛えればそんな力を扱えるのか?」

 

「馬鹿、稀にって言ったろう、素質の無い奴がどんなに訓練して、どんなに鍛えても一生使えないままらしいぞ」

 

「じゃあどんな奴に素質があるんだ?」

 

「そればっかりは俺にも分らん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賊達は噂の山賊狩りについて話し合っていた頃、馬でそちらに向かっている青年がいた

 

その者は、この大陸には決してない見たことのない形の剣を腰に下げ、背中には人間にはとても扱えなさそうな刀を背負い、それらを覆い隠すように灰色の外套を纏っていた

 

その者の顔は、外套によって夕方のせいか真正面から見ても分りずらい

 

白馬を止め、降りると崖の上から打ち捨てられた砦の中の賊を見た

 

賊の数を確かめ周りの状況を確認する

 

確認している途中で、檻の中に捕まっている村娘達を確認するとその者は歯軋りをした

 

そして数秒の瞑想の後、目を見開いて、一気に崖を駆け下りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンッ!!

 

 

 

 

 

 

抜刀術で一瞬にして二人の賊を真っ二つにする

 

「で、出たーーーーーーーーーーヤツが出たぞーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

その言葉が賊の誰から発せられたか分らないが、その言葉を皮切りに賊達の脳は一気に警報を発した

 

顔を隠していた外套が外れるとそれはやはり一刀であった

 

一刀「~~~っふっ!はっ!」

 

賊の群れに向かって氣の斬撃を放つ

 

ドカーーーーーーーン!!!ズバーーーーーーーーーン!!!

 

その斬撃により、40人から50人の賊達がいっぺんに吹き飛ぶ

 

「てめーーーーーーーーーーー!!!」

 

「このやろーーーーーーーーーー!!!」

 

「おらーーーーーーーーー!!!」

 

「でやーーーーーーーーー!!!」

 

「おおーーーーーーーーーー!!!」

 

5人の賊がいっぺんに槍を持って一刀を串刺しにしようとした

 

一刀「しっ!」

 

チンッ!

 

一刀は、この5人の攻撃を見切り5人の間を縮地で一気に通り抜け、忠久を鞘に納めた

 

5人の賊は、自分達が斬られたことにすら気付かずに絶命した

 

「「「「「おらああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」

 

今度は、剣や斧を持った8人の賊が一刀に襲い掛かった

 

一刀「はっ!」

 

スバシュッ!!

 

「「「「「がはっ!!!!」」」」」

 

忠久を抜き放つと武器ごと8人を両断した

 

「何やってやがる!!?相手は一人だ数で押しまくれ!!」

 

長いことこの群れの頭をやっているのか、頭が命令すると賊達は一斉に一刀に襲い掛かった

 

一刀「ふっ!はっ!しっ!」

 

ザシャーーーーーーーーン!!!バシーーーーーーーーーン!!!

 

しかし一刀は、賊達の頭上へ飛び着地点に氣の斬撃を放った

 

「ギャーーーーーーー!!!!」

 

「いでーーーーーーーーー!!!」

 

「腕が、足がーーーーーーーーーー!!!!」

 

一刀「はあっ!!」

 

ズバンッ!!

 

「「「「「「ごはっ!!!!」」」」」」

 

着地し、周りの賊達を薙ぎ払う

 

辺りは、どんどん血の海と化していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀のことを知っていたこの賊は呆然としていた

 

ナンダコレハ

 

次々と物言わぬ屍になっていく仲間達

 

マタカ、マタナノカ

 

ついこの間、自分以外の仲間を殺され、また同じ人間に二度も味あわされる恐怖

 

マタ、ウシナウノカ

 

分っているつもりだった

 

こんな生き方をしているんだから、いつか自分は惨めな最後を遂げるだろう

 

分っているつもりだった

 

しかし、出来るならばもっとましな死に方が出来るのではないかと心の奥底では無意識のうちに思っていたのかもしれない

 

普通の家庭に生まれ、普通に農業をして、普通に結婚して、普通に年を取り、普通に死んでいく

 

そんな自分の姿が頭の中で、走馬灯のように描かれていく

 

ドウシテ、コンナイキカタヲシテシマッタンダロウ

 

よくよく考えれば別の生き方をすることなど簡単だったのだ

 

自分から動こうとしなかっただけなのだ

 

その気になれば自分の中にある世界を華やかに彩ることができたのだ

 

ズバンッ!

 

「(ビクッ!!!)」

 

自分の隣にいた仲間がたった今、真っ二つになった

 

「・・・・・・・・・・」

 

視界がドンドン暗くなっていく

 

アア、シヌトキッテコウナノカ

 

出来ればもう一度生きる機会を与えてほしい

 

しかし、もう遅い

 

チャキ

 

ナンノオトダロウ

 

次の瞬間、その賊の意識は途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・何だ・・・・・これは?」

 

周りを見渡してみると、生き残っている賊はこの群れの頭だけであった

 

「なんなんだてめーは!!!」

 

賊の頭は、目の前の返り血を浴びた一刀に怒鳴りつけた

 

一刀「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一刀は、頭を睨みつける

 

「ひいっ!!」

 

頭は恐怖を感じ後ろへ走り出す

 

「きゃあ!!」

 

そして、檻に入れられている村娘達の一人を檻から引っ張り出して人質にした

 

「武器を捨てろ、さもないとこいつの首が落ちるぞ!!!」

 

一刀は、それを気にしないで頭に近寄る

 

「おい!!武器を捨てろって言ってんだよ!!近寄るんじゃねぇっ!!」

 

あと十歩ほどといったところで

 

一刀「・・・・・ん?お前は?」

 

一刀は、頭の顔をじっと見る

 

「な、なんだ!?」

 

一刀「そうか、お前が・・・・・」

 

「だからなんだってんだ!!?」

 

一刀に剣を向けた瞬間

 

ドガッ!!

 

「ぼふっっ!!!」

 

縮地で距離を一気に詰めた一刀が頭の顔面を素手で殴り吹っ飛ばした

 

頭はそのまま気絶

 

一刀「・・・・・ふぅ」

 

チンッ

 

忠久を鞘に納め、檻に入れられていた村娘達を開放すると

 

「ありがとう!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「おおきにーー!!」

 

「ありがとう、ありがとう!!!」

 

エトセトラ、エトセトラ

 

一刀「え、あ、どういたしまして」

 

こちらの戦いが待っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀はその後、村娘達を村に送り返した

 

村娘達がそれぞれの家に帰っていき、それを見送った一刀はこの村を去ろうとする

 

すると

 

「待ってください、どうかお礼をさせてください」

 

一人の村人に呼び止められた

 

周りからも『もう少し待ってください!』やら『どうかお礼を!』といった声が飛び交ってくる

 

しかし、一刀は

 

一刀「いいえ、お礼はこいつで十分です」

 

「む、そいつは?」

 

こいつというのは、縄で縛って狛煉に括り付けてある一刀が捕まえた賊の頭であった

 

実はこの男は、賞金を懸けられていたのだ

 

一刀は、この村に来る前に長沙の都で近くに潜伏している賊の情報を集めていた

 

その中には賞金を懸けられている者も多くいて、一刀はそういった賊の似顔絵などをを重点的に集めていたのだ

 

一刀は、そのことを村人に説明する

 

「分りました、そいつのことは北郷さんにお任せします」

 

「本当にありがとうございました!」

 

一刀「では、これで」

 

そう言って一刀は去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

賊を役人に引き渡した後、一刀は三千人の賊が暮らしていた砦へと戻ってきた

 

ザックザックザック

 

金剛刀を抜き、それをスコップ代わりにして土を掘る一刀

 

その中に自分が斬った賊達を埋めていく

 

一刀「・・・・・本当に・・・・・すまない・・・・・」

 

そして、全ての賊達を埋め終え、その上に石を置き花を飾り、一分間ほど手を合わせると、頬を流れる雫を拭いその場を去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは一刀が、山賊狩りとして活動していた頃の話の一つである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、seigouです

 

一刀がどんな生活をしているかを描きたかったのでこんな話を作ってみました

 

本当は物語を分りやすく進めたかっただけなんですが

 

ここで一刀の持つ忠久なんですが

 

いくら最上大業物並みの性能があってどんな達人が振るっても、日本刀というのは連続で使えばせいぜい100人斬れればいいものです

 

何故ここまで連続して人を斬り続けられるのかというと

 

一刀は、この忠久に氣を流し忠久にかかる負担を大幅に減らしているからこれだけ連続で人を斬れるのです

 

もちろん、負担をゼロに出来るわけでも切れ味を向上させているわけでもないので、考えなしに使い続ければ何時かは壊れてしまうでしょう

 

さて次回は、とうとう皆さんお待ちかねの武将が出てきます

 

それと、我らが医者王も

 

今後ともよろしくお願いいたします


 
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