No.182719

TINAMI 学園祭 (悲しき決意)

R.saradaさん

決意。
込められた想いや如何に。

JIN様に続きまして、リレー小説の方投稿させて頂きます。
色々思うことはありますが、それは後書きにて。

続きを表示

2010-11-05 14:42:38 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4098   閲覧ユーザー数:3442

 

『……風紀……南華老仙…………ヒトヤ犬……下着……焔耶……貂蝉……卑弥呼……』

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」

 

「…………ん」

 誰もいない校舎裏。

 その一角にあるベンチで横になって寝ていた俺は、唐突に聞こえてきた叫び声によって目を覚ます。

 しかし目を開けたと言うのに。

「……何も見えん」

 目の前に広がる世界は暗闇だった。

「……ってなんだ。ブレザーか……」

 そう言えば寝るとき被ったんだっけ。

 それすら思い出せないとは、まだ寝ぼけているってことだろうか。

 

 とりあえず被っていたブレザーを引き剥がし、まず目にしたモノは。

「まぶし……」

 真っ白な光である。

 まあ真っ暗なところから唐突に光を浴びればそうなるわな。

 俺はその光に目を細めつつ、だんだんと光に慣れてきた目で次に見たのは。

「…………青いな……」

 雲一つ無い、美しい青色がどこまでも続く、とても綺麗な空だった。

 平和である。

「……ふわあ」

 青空のあまりの綺麗さに、思わずあくびがこぼれてくる。

 本当に平和である。

 辺りから聞こえて来る、騒がしいモノを除けば、だが。

 

 本日は晴天。

 絶好の学園祭日和である。

 今この学園――TINAMI学園では、希望で一杯の学園祭が行われている。

 沢山の人たちが協力して、何週間も前から準備をしてきたのだ。

 盛り上がること必至の行事である。

 そして今日はその学園祭の二日目。

 昨日の学園祭は何事も……なかった訳ではないが、無事終了。

 そして今日もそれに続こうと、皆必至になっている。

 そんなところだろうか。

「…………ふわあ」

 それにしてもあくびが止まらない。

 どうやらこれは、平和だから出ているモノではないらしい。

「…………ねむ……」

 となれば理由はそれである。

 ふと空で燦々と輝いているそれに目を向けて。

「横になったときとそんなに変わってないな……」

 そう小さく呟いた。

 寝たのが確か、今日の学園祭が始まって少し経ってからだから、太陽の位置から計算して、多く見積もっても、一時間も寝ていないだろう。

「ふわ……」

 つまりこれは、完全に寝不足だ。

 いろいろあって昨日は徹夜だったのだから、眠いのは仕方ないと思うのだが。

「……あー……」

 この眠気は尋常じゃない。

 

「まあそれなら、この眠気に身を任せればいいか」

 そう思った俺は、ブレザーを被りなおして。

「……」

 そしてそのまま目を閉じた。

 これほどの眠気だ。

 何をするまでもなく、一瞬のうちに夢の世界へ連れて行ってくれることだろう。

 

 

 

 そう思ってしばらく目をつぶっていたのだが。

「…………」

 全く寝付けない。

 眠気は尋常じゃないのに、どうしても眠ることができない。

 ……いや、違う。

 眠ることができないと言うより、俺自身が眠ることを拒否している様な……。

 それになんだろうか。

 この背中を伝う嫌な汗は……。

 何というか……何か尋常じゃないくらいの地獄が間近に迫っている、そんな感覚。

 

「……」

 しかしどうしたものだろうか。

 眠いのに眠れない。

 はっきり言ってこれ以上の苦痛はない。

「……眠れないなら空でも眺めていようかな」

 そう思った俺は目を開いて、最初に目にしたモノは。

「何もみ――」

「サラダさん! こんなところにいたんですか!!」

「――うおっ!?」

 俺の被っていたブレザーを引き剥がし、光を遮って俺を覗き込む、真っ赤な髪を持ったとても美しい女性だった。

「は、遙(はるか)か……。脅かすなよ……」

 唐突に目に入った女性は、その紅い瞳を大きく見開いて、俺を覗き込んでいた。

 彼女は、紺を基調とし淵を黒で彩ったブレザーに、灰色を基調としたチェック柄のスカートを併せたTINAMI学園指定の制服に身を包んでいる。

 そしてブレザーの左腕には、『実行委員』と書かれた腕章を巻いていた。

 全体的に落ち着いた色合いであるが故に、彼女の持つ腰ほどまである真っ赤な髪と、紅い瞳はよく映える。

「脅かすなよ、ではありません! こんなところで何をしているのです!?」

「な、何をしているって……見ての通り横になってるんだけど……」

 見下ろしながら大声を出す彼女に、俺は何とか答えを返す。

 今行われている学園祭は、さっきも言ったが何週間も前から準備を重ねてきたのだ。

 きっと参加すれば、一生の思い出になるほどの希望が待っていることだろう。

 だから彼女は、それに参加していない俺を怒っているのだと思い、正直に話したのだけれど。

「そんなことを聞いているのではありません! こんな大変なときに学園祭実行委員の貴方は一体何をしているのか、と聞いているのです!!」

 どうやらそれは違ったらしい。

「い、いや。大変なことと言われても……。昨日の騒ぎで、壊されたモノを直すのに走り回って徹夜だったから、ここで眠っておこうと思ったんだけど……」

 俺の言っていることは紛れもない事実だ。

 昨日起きた騒ぎ――と言うよりそれが解決した後に発生した出来事の方が大きい気がしなくもないが――により破壊された箇所を補強するのに、さっき遙も言っていた学園祭実行委員の一人である俺が走り回っていた。

「って言うより何で遙は普通にしていられるんだよ……」

 ちなみに、腕に巻く『実行委員』と書かれた腕章が目印である。

 まあつまり、目の前のこちらを覗き込んでいる遙も実行委員の一人なのだ。

 だからこの娘も壊れた箇所の補強をしていたから、俺と同じく寝不足だと思うんだが……。

 事実補修が終わったとき、俺と同じように今にも倒れそうなほどふらふらしていたし。

「それは! ……ってもしかして放送聞いていないんです?」

 またしても大声を出そうとしていた彼女は、俺の言葉を認識した瞬間、少し声を小さくして問いかけてくる。

 さっきは怒りで見開いていたその目を、今度は驚きで見開いて。

「あれほど大きな放送だったのに……いや、いいです。聞いていないなら説明します」

 そういえば眠っているときに何か聞こえたような……。

 しかしそれが一体何だと言うんだ?

「サラダさん。昨日の騒ぎの原因をご存知ですか?」

「原因? それはまあ一応知ってはいるけど……」

 あれだけ大規模な騒ぎだったんだ。知らない訳がない。

 それに昨日、目の前を犬が走っていって、それを追いかけていく風紀委員の姿を見ているし。

 その騒ぎを知らないのは、昨日学校に来ていない奴だけだろう。

 まあ知らなくても話題になっているだろうから、知りたくなくても知ることになるだろうが。

「たしかこの学園に犬……『ヒトヤ犬』だっけ? が侵入し、学園内を走り回っていろいろな場所で騒ぎを起こした、って感じだったと思うけど」

 それに俺たちは昨日、そのせい――それの原因は違うような気がしなくもないが――で徹夜をすることになったのだから嫌でも知ることになったさ。

「はい、『ヒトヤ犬』です。女子の多いところに出没し、猥褻行為を行っていたのです」

 そう言う彼女の紅い瞳には、静かな怒りが篭っていた。

「猥褻行為ねえ……」

 たしかスカートめくりとかそういうモノだったかな。

 犬なのになぜそんなことをしているのだろう、とは思うけれど、まあそれは『ヒトヤ犬』だからと納得しておこう。うん。

「……ん? でもそれって昨日解決したんじゃなかった?」

 ふと思いついた疑問、と言うより当たり前の疑問だと思う。

 昨日一連の騒ぎが収まった頃放送で、風紀委員たちの活躍によって? 『ヒトヤ犬』は捕らえられた、と言っていたと思ったんだが……?

「ええ、たしかに『ヒトヤ犬』は捕まりました。ですがそれは……」

 彼女はそこで、言葉を止めた。

 そして彼女は目をつむる。

 な、なんだ? そんなに重要なことなのか?

 と言うよりこの流れからしたら大方ヒトヤ犬が逃げ出したとかそんなのだろ?

 なら何でここまでためる必要が……。

 しかし遙が目を開けて放った言葉は。

 

「……ですがそれは、空蝉だったらしいのです」

「…………は?」

 

 俺の予想の斜め上を行くモノだった。

 いやいやいや。空蝉って……。

 要するに偽物だったってことだろ?

 それは犬のできる所業なの?

 いや……まあ『ヒトヤ犬』だからと納得して……いいのか?

 ……まあ納得しておこう。うん。

 

「つまり、昨日捕まえた『ヒトヤ犬』は偽物で、それが今、この学園祭を荒らして回っている、ってことか?」

 それを聞いた遙は、すごく真剣な顔で頷いた。

 それを見て、大体の状況がわかった俺は、一つため息をついた後、

「……それで? それがどうかしたのか?」

 そう遙に問いかけた。

「どうかしたのかって……『ヒトヤ犬』ですよ!? 『ヒトヤ犬』がまた校内を荒らして回っているのですよ!?」

 まあ答えは、予想通り憤りが含まれていたけれど。

 しかし。

「いやそう言われても……。こんな眠気じゃ、このままヒトヤ犬を追いかけても足手まといにしかなりそうにないし……」

 しかしそれに答えることはできない。

 さっきも言ったが、尋常じゃないくらいに眠いのだ。

 実際問題、遙の声を聞きながら、今にもまぶたが落ちそうなのである。

「遙には悪いけど、『ヒトヤ犬』の捕獲は手伝えそうにない。だから俺の分も頑張ってくれ……」

「…………」

「それに『ヒトヤ犬』が偽物だったなら、それを逃がした風紀委員も黙っていないだろ……。きっと俺がいなくても、あいつらが何とかしてくれるさ……」

 そう言って俺は、もう一度ブレザーを被りなおそうとして……遙が手に持ったままだったことに気付き、そのまま遙に背を向けて。

「おやすみ……」

 俺は目を閉じた。

「……そういえばサラダさん」

 しかし彼女は、その眠りを妨げるように声をかけてくる。

「……」

 それに答える声はないが。

 それにしても何で遙は、こんなにもヒトヤ犬を捕まえようと必死になっているんだろうな。

 まあ今の俺には関係のないことだが。

「これも放送で言っていたことなのですけど、聞きました?」

 彼女はかまわず声をかけてくる。

 何だってんだよ。

 ただでさえ騒がしくて寝付けないというのに、彼女に邪魔されたら余計に眠れないじゃないか。

「とは言っても、さっきの放送を聞いていない様ですから、多分聞いていないのだと思って言わせて頂きます。それを聞いた上でまだ眠い様でしたら、もう何も言いませんので」

 おお。それは良い。

 遙の言葉を聞くだけで眠るための障害が一つ消えると言うのなら、いくらでも聞いてあげようじゃないか。

 それにたかが一つの言葉程度で、今の俺の眠気を吹き飛ばせる訳がないからな。

 そう思った俺は、彼女に背を向けたまま、耳を澄ませた。

「サラダさんは、最近この学校に赴任してきた二人の先生はご存知です?」

 最近赴任してきた……?

 そういえば最近、そんなこともあったような……。

 ……何だ? 思い出せない。

 …………いや、思い出せないというより、思い出すことを頭が拒否している……?

「これも南華先輩が放送で言っていたのですが……」

 南華先輩……。

 本名は南華老仙。

 風紀委員長で、たしか前に式神を使えるとか言っていたような……。

「もし、『ヒトヤ犬』を捕まえることができなかったら、罰として」

 捕まえることができなかったら?

 何だろう。尋常じゃないくらいに嫌な予感がする。

「その新任の先生、貂蝉先生と卑弥呼先生に――」

 突如頭をよぎる二匹の化物。

 たとえ新任の先生だとしても、あの強烈過ぎる二匹は、一度見たら一生忘れられそうにない。

 それを頭で認識した瞬間、背中を伝う尋常じゃない量の汗。

 それに加え、心臓が早鐘を打ち出した。

 一応言っておくが、恋をしたとかそう言う類のモノではない。

 そんなことを思っていた俺に、彼女はそれを告げてくる。

 それはまさに――。

「――私たちの部屋の合鍵をお渡しするそうです」

 

 ――地獄への鍵。

「学園祭を滞りなく実行させるのが実行委員の仕事だよな!!」

 俺はそう叫び気味に言いながら、一瞬にして跳ね起きた。

 眠気? そんなモノ最初からなかったよ。うん。

「……」

 隣から俺へと悲しいモノ――よくわからない目線を送られているような気がするが、それを無視して。

「が、学園祭を無事に終わらせるためにも、『実行委員として』、『ヒトヤ犬』を捕まえるぞ!!」

 そう口にした。

 これは『実行委員として』、『ヒトヤ犬』を捕まえると言う当たり前のことをしようとしているだけであり、断じて化物たちに合鍵を渡されるのが怖いからとかそう言う訳じゃない!!

 

「…………」

「は、遙!? 今、どんな状況なんだ!?」

 悲しいモノを見る目から残念なモノ――よくわからないモノを見る目に変わり始めていた彼女へと、俺は声を引きつらせながら問いかける。

 む、無論これは現状を確認するために声をかけただけであり、彼女が俺を見る目が怖かったからとかそう言う訳じゃない!!

 そう問いかけた相手――遙は、呆れた様に小さくため息を吐いた後。

「……それがまだよくわかっていないのです」

 申し訳なさそうな顔でそう言った。

 それを言った後、大変意気込んでおられるところ本当に申し訳ないのですがっ、とトゲのある言葉を口にしたが。

 だからこれは実行委員として以下略。

「そ、そうか……。なら他の実行委員の皆は?」

「もう既に集まっていますよ」

「…………ぐっ……」

 な、何だ? 今日の遙はやけに機嫌が悪い。

 ……そういえば、昨日の学園祭が終わった後も機嫌が悪かった様な……。

 しかし今は、そんなことよりこの圧力をどうにかしないといけないので。

「よ、よし! じゃあ俺たちも行くとしますか!!」

 俺はそう声に出した。

 最初に少し、声が裏返ってしまったような気がするが気にしない!

 それを聞いた彼女は、また小さく息を吐いた後、

「サラダさん、これを」

 そう言って手に持っていた、俺のブレザーを差し出してきた。

 その顔は、とても楽しそうに笑っていた。

「……ああ、サンキュ!」

 俺はそれに――左腕に『実行委員』と書かれた腕章の巻いてあるブレザーに、腕を通した。

 まあ最初の理由は不純だったかもしれないけれど、これを着たからには本気で行きますか!!

「……おし!」

 ブレザーを着終わった俺は、一度頬を強く叩く。

 パアンと、こぎみ良い音が辺りに響きわたる。

 それは俺の身体を少し軽くしてくれた。

 そうして俺は。

 

「じゃあ遙、行くとしますか!」

 

 そう叫びながら駆け出した。

 あの沢山の人たちがいる、学園祭の会場へと。

 これから多くの希望が待っているだろう、あの場所へと。

 

「……はい!!」

 

 後ろでそう答えた彼女は、俺を追いかけるように走り出した、様に感じる。

 そうして俺は『ヒトヤ犬捕獲大戦』へと参加したのだった。

「そう言えば遙。さっきは何であんなに機嫌が悪かったんだ?」

「……」

「?」

「それはですね……」

「うん」

 

「私も昨日、『ヒトヤ犬』に襲われた被害者だからですよ……」

 

「……」

「……」

「…………遙」

「……はい」

「……いろいろごめん」

「…………いえ……」

こんにちは、サラダです。

 

さて、まず少し言わせてください。

 

 

ヒトヤ犬、追いかけてないじゃねえか!

リレー小説あまり関係ないじゃねえか!!

それにオリキャラと化物二匹(しかも名前のみ)しか出てねえじゃん!!!

 

 

ごめん。せめて参加だけでもしたかったんです……。

 

 

……まあ私がこの作品を投稿した後も、リレーは続いていきますので、

皆さん楽しんでいって下さい。

私の作品も、その作品たちの一つに加われれば嬉しいです。

 

それでは、また。

 

 
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