凪がアパートに遊びに来るようになったある日────
エロDVDが見つかった。
「いいかい、凪。これは決して浮気とかじゃないんだ。男の子ならば少なくとも数本は持っていて当たり前
なんだよ。例えばマンガとか、アニメでも男の子がこういうものを持っていて女の子に怒られる話が当たり前
のようにあるだろう?そのくらい当たり前の事なんだよ。もう言わば本能のようなものなんだ。そう、男の本能。
これが中々怖いものでね。例えばスカートがあるだろ。それがヒラッとするだけで思わず目が行ってしまうんだ。
それがどんなに自分の好みの女の子じゃなくてもね。それこそお婆さんだとしても、『スカートがめくれる』
という現象には男は思わず目をやってしまうんだよ。まったく困ったものだよ男の本能。はっはっは。
何しろホントに、まったく好みじゃない女の子でさえスカートがめくれれば思わず目がいくんだからね。
それは男の本能だから逆らえないんだよ。ホントに。それは横にどんなにかわいい、凪のような彼女がいても
うっかり目がいくことがあるんだよ。それは怒っちゃいけない。何しろ本能だからね。自分ではまったく見る
つもりが無いのに目が行って、後でガックリくるのが男なんだよ。可愛そうな生き物なんだよ。男はね。
同じように洗濯物の中に女性用下着があってもうっかり目が行ってしまう事があるんだ。それが誰のものだと
してもね。派手な下着にはそういう男の本能を刺激するためのものが沢山あるんだ。男の本能を刺激する為に
作られた至高のデザインのものもあるくらいだからね。その為に日夜デザインを考えている人もいるほどだしね。
後は道端に落ちているエッチな本に興味を引かれるのも男の本能なんだよ。思わず目がいっちゃうんだよ。
だからね、こういうものを持つというのも男の本能なんだ。特に中学生から高校生なんかはもうとにかくこれが
見たくて見たくてしょうがなくなるんだよ。何しろ自分で買うって事も出来ない年齢だから、友達の兄さんとか
悪友とかから必死で買ったり借りたりするくらいなんだよ。その時に苦労した想いが、こういうものを自分で買
える年齢になった時に思わず買ってしまったりするものなんだよ。それにいざという時の勉強の為というのも
あるんだ。男は本能とプライドの塊だからね。いざという時に失敗するとプライドが崩れてしまうから、必死で
勉強するものなんだ。これはいわば参考書のようなものでもあるんだ。昔、女の子だけ別に呼ばれて性教育の授業
があったりしただろう?男の子にはそういうものが無かったから、余計不安になるものなんだ。教育問題だね。
だから、こういうものがオレの部屋にあったとしても、まったく変じゃないんだよ。わかってくれたかな?」
ここまでを爽やかな笑顔でさらっと語った一刀に、凪は
「そ・・・そういうものでしょうか・・・」
と不可解ながらも認めてしまった。
「・・・ということがあって焦ったよ。でもおかげでそういうのを持っててもいいって認めてくれたから、
やっぱり凪はやさしいぜー。ホント可愛いんだよなー。忠犬って感じかな?」
及川とゼミの終わりに外のベンチで話しをしていた一刀だったが、ふと及川が真剣な表情でスッと一刀に
内緒話をするように近づく。
「かずピー・・・『ヤンデレ』って知ってるか?」
「ああ、ツンデレとかと同じようなジャンルで、包丁持ったり、大声で笑ったり喚いたりする病的な女の子って
事だろ?それがどうかしたのか?・・・あ、凪はそんな要素まったくないぞ」
「違うねん。違うねん、かずピー・・・」
及川が静かに首を振る。
そのあまりにも思いつめたような表情に、思わず一刀の咽がゴクリとなった。
「ええか。それはあくまでもコミカライズされたヤンデレじゃ。俺に言わせれば、ただのホラーじゃ。
包丁やカッターで自分や相手を傷つける?大声で笑ったり、喚いたり?違うねん。ええか。
ホンモノはそんな事はしない。ただ、ただ『優しい』んじゃ」
「優しいって・・・いい事じゃないのか・・・?」
「甘い。甘いで。半端じゃない優しさなんじゃ。例えばよく表現されてるのが、他の女の子と喋ったとか
付き合ったとかで自分や相手を傷つけるのが一般的なイメージだけど、ホンモノは違うねん。
『私にヤキモチを妬かせたいんだな』と思うねん。だから他の人や自分を傷つけるとかはしないねん。
大声で笑ったり、喚いたりするのはただ自分の精神を守る為の行為に過ぎないねん。
ホンモノは静かににっこり笑うだけやねん・・・・。何でかって?そら簡単や。『絶対に自分から離れられない』
そう思っているからや。それは例え相手が結婚したとしても・・・やで。他の人と結婚したのも、本人から
すれば『しょっちゅう見る女より、たまに会う私の方により深い愛情を注いでくれる為』って思うねん。
後はずっと後をつけたり、写真をいっぱい撮ったりっていうのはただのストーカーや・・・。
ホンモノはそんな事しないねん。『いつでも頭の中にいる』からやねん。写真とかいらないんや。
だからな、ずっと側にいるんや・・・。まるで忠犬の如く影のように側にいたりするで。
それに家が離れていても、いつの間にか近くにおるねん・・・。
特徴としては必ず小奇麗にしているんや。だから絶対に自分を傷つけたり相手を傷つけたりしないんや
・・・そんな事をしたら『綺麗な私』を見てもらえなくなるからや。
・・・ええか・・・かずピー。『優しい女』と『犬っぽい女』には気をつけえ・・・」
あまりにも真剣な及川の表情に、思わず背筋が寒くなった一刀は
「な、凪に限ってありえないぜ・・・と、とりあえず帰る」
そういってその場を後にした。
その背中を見ながら及川が遠い目をして呟く。
「かずピー・・・まだあるんや・・・特徴が・・・『クールで頭がいい女』・・・ってのが・・・。
そいつは物凄い頭脳で、真綿で首を絞めるように周りから攻めてくるで・・・気ぃつけぇ・・・」
一刀の姿が建物の影に消えた時、近くで青い髪を持つ女性の姿がフッと見えた気がした────
ジツタイケンジャナイデスヨ?
というわけで第3話です。
では、また。
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※この作品は真・恋姫無双 魏end 凪の伝の外伝になります。
この話はいつの頃の話かは、まだ秘密です。