夢を見ていたのよ。
夢の中でアタシは皆に愛されるフランス人形なの。
名前はシルヴィ。
みんなにチヤホヤされているの。
頬の赤いあの子はイギリス育ち、ムチムチした手足のあの子はアメリカ育ち、
エキゾチックなショートヘアのあの子は東の国の子かしら?
そんなみんながアタシのことを可愛がるのよ。
それはそうよね、だってフランス人形ですもの。
アタシは綺麗に焼き上げられたビスクドール、青い目は傷ひとつ無いガラス製。
ドレスだってお姫様が着ているのと同じ素材で滑らかよ。
みんなとても羨ましそうにアタシを可愛がるの。
このまま、この時が続けばどれだけ幸せなことでしょう。
そんな幸せな夢からアタシを目覚めさせたのは、
ドアの隙間から差し込んだ光。
イギリス生まれのウドゥンドール、アメリカ生まれのコンポジションドール、
日本生まれの和人形に囲まれながらアタシは眠たい目を開ける。
そこにいたのは真っ黒なドレスの女の子。
人間なのに人形みたい。
女の子は知らんぷりでアタシの前を通りすぎて、一体の人形を抱き上げたの。
アタシはその子が嫌いなの。
愛想の無い顔の球体関節人形。
国籍なんてわからないの。
みすぼらしい格好で虚ろな目の人形をどうして好む人がいるのでしょう?
でも、女の子はヴァイオリンのケースにその子を閉まって、
部屋を出ていってしまったの。
真っ暗になった部屋でアタシはまた夢を見る。
夢の中でアタシは皆に愛されるフランス人形なの。
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以前、人形屋さんにフランス人形がたくさん並んでいたのを見て、それとなくインスピを受けたので形にしました。