学園祭の一つの名物といえば、やはりミスコンだろう。
自薦、他薦問わず、容姿に自信のある女性が美しさを競うコンテスト。
そういう催しはとても素晴らしいものだが……
「面白みに欠けるな……」
綺麗で可愛い女の子を見る。
その趣向は悪いとは言わない。しかし――
「当たり前すぎるんだよ」
何処の学園祭でもやっているようなイベント。
我々はそんな当たり前の事をやって、喜ぶ存在ではない。
では、何なら面白く、そして喜ぶ事が出来るのかって?
それは――
『さぁ、やってまいりました女装コンテスト! 常日頃から女装に自信のある変態……おっと、
女装に自信のある勇者が集まってくれたぞーっ!』
『うおぉーっ!』
こういうバカらしい企画だろ。
男達が自身のプライドをかけて、女装をする。
成功すればアイドルとして有名になり、失敗すればただの変態としてこの先を過ごす事になる。
あまりにリスクの高い戦い。
それでも、男達は戦いの舞台にあがる。
それは何故か? それは、今日が学園祭というお祭りだから。
無駄にテンションをあげてバカ騒ぎをする。
それが学園祭の醍醐味だから。
さて、長々と話をするのも悪いから、早速コンテストの方に話を移そう。
『では、トップバッター行ってみよーっ!』
『おぉー!』
『は、恥ずかしい……』
ふむ。最初の勇者は可も無く不可も無くといったところ……か。
ある程度綺麗にまとめられていて、清楚な感じの可愛さには仕上がっているが、何か物足りなさ
を感じてしまう。まぁ、ああいうタイプは周りの人間に無理やり出させられたんだろう。
『ところで君は何か特技はあるのかな?』
『えっ!? えっと、その……』
かなりの恥ずかしがり屋だな。見ているぶんには面白いが、少し不憫だな。
『う~ん、仕方ない。このままだと進まないので次に行ってみよー!』
『さぁ、次の勇者はコイツだ――っ!』
『…………』
『ふんっ』
二人目が出てきた瞬間に会場の空気が固まった気がした。
『おぉ。これはなんという……』
司会者も困惑しているようだ。それもそうだろう。あんな醜悪な物を見せられて正常でいる事
なんて出来はしない。見ているだけで吐き気がする。
どうして奴は、このコンテストに出場したのだろうか?
まぁ、一つだけ言えるのは今後アイツには明るい未来が無いという所か。
『あんたには何も聞く事は無い! そして気を取り直して次に行こう!』
『よし、次はコイツだぁ――っ!』
順調に女装コンテストが進んでいく。
途中、意識を失ってしまいたくなるような獣もいたが、問題はない。
そう。問題は無いのだが、言葉を失うほどの完璧な女装マスターが出てきていない。
ある程度の美人は出てきたが、これでは消化不良で終わってしまいかねない。
最悪、自分で出て落とし前をつけるしかないな。
かなり嫌だが最悪、自分の身を削るしかない。
はぁ……一応準備だけはしておくか。
『長かった戦いも次で最後だ。次はどうなっているのでしょうか! どうぞー!』
『………………』
またもや会場に静寂が訪れる。
しかし、あの化け物の時とは違う静寂だった。
『き、綺麗……』
綺麗。本当にその言葉が似合う姿だった。
一瞬、本物の女ではないかと思ってしまうほどの美しさ。
優勝はコイツで決まりだろう。
まさか、こんな逸材が隠れていたとは驚きだな。
それにしても、今回は予想以上の盛り上がりをみせたな。
ああ。たまには、こういう変わった趣向も悪くはないと思うんだ。
『ねぇ、ままぁ。あの人変な格好でぶつぶつ言ってるよー』
『ダメよ。あんな物見たらいけませんっ!』
はは……。あんだけ盛り上がったんだ。周りから多少変な目で見られてもいいさ。
でも――
こういう結果なら変に準備をしなければよかった。
さすがに自分には女装は似合わなすぎる。
はぁ……
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TINAMI学園祭企画二作品目です。
今回はちょいとバカっぽい話にしてみました。
バカっぽい……ばか……うん。たぶんそうなってます。
ではでは~