※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、
記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。
後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も
多々ございますので、その点も御容赦下さい。
姓は楽進、字は文謙、真名は凪────
彼女には、心より愛した一人の男がいた。
その男の名は北郷一刀。
『天の御遣い』と呼ばれ、『北郷警備隊隊長』として民を護った彼は三国同盟を成した人物であるが、
魏の人々には『魏の種馬』とも呼ばれた。
それは魏の人々の、彼への深い親愛の表れからだが。
・・・だが、その彼は三国が同盟を結んだその夜、この世界から姿を消した。
姿が見えない彼と華琳を探しに来た凪が、森の中から憔悴した様子で現れた華琳の姿を見た時、凪は瞬時に理解する。
以前から感じていた嫌な予感────
足が震え、体が自分の物じゃないように重い。
頭は真っ白だった。
そして・・・凪の姿を見て、頬を伝う涙をそのままに華琳が伝えた一言。
「一刀が・・・消えてしまった・・・」
理解はしたが、納得はしていない。
何より認めたくなかったから。
自分を置いて隊長がいなくなる筈が無い。
そんな事は有り得無い。
だったら、何故、どうして、何が、彼女の頭の中で問いかける言葉がぐるぐると回り・・・。
やがて一つの事に考えが行き着く。
(私が隊長の苦しみに気づけなかったから、隊長に置いていかれたんだ)
その考えに行き着いた瞬間、何かがピキリと音を立てて・・・。
凪は────気を失った。
────夢を見た。
幸せな夢。
隊長が私の隣で微笑んでいる。
でも・・・その幸せな筈の夢なのに────
隊長が何かを話しているけれど、私には聞こえない。
隊長がもう一度私に向かって何かを話そうとしたけれど、隊長の声は私に届かない。
隊長が私に触れようとしたけれど、その手が私をすり抜けて空をきる。
隊長がそれに気付いて悲しそうな顔をしたけれど、私は────気が付かない。
隊長は・・・そのまま消えてしまった・・・なのに私は────
また・・・ピキリという音が聞こえた・・・。
凪が再び目を覚ましたのは、それから3日が過ぎた頃。
目を開けた時に見たのは真桜と沙和の、自分を心配そうに見つめる二人の顔。
寝台横の椅子に座り、付き添っていたのだった。
「凪ぃ・・・」
「凪ちゃん・・・」
「真桜・・・?沙和・・・?私は・・・どうしたんだ・・・?」
二人はその問いに答えられず、俯いた。
その様子を不思議に思い、凪は寝台から体を起こそうとして体中の間接が痛む。
思わず顔を顰めるが、それ以上に俯いたままの二人が気に掛かる。
いつの間にか服は白い着物に替えられていた。
何とか体を起こして座り直すと、真桜がゆるゆると顔を上げる。
その瞳からは、今にも涙が溢れ出しそうだ。
「凪ぃ・・・覚えてへんかもしれへんけどな・・・隊長・・・」
その言葉の後が続かない。
「ああ、覚えている。隊長が消えてしまったというんだろう?」
そう、凪は“笑顔”で言った。
「・・・凪・・・?」
真桜が訝しげに声を出し、沙和も凪の顔を見つめる。
「そうか、私はその事で気を失ったんだな。まだまだ修行が足りないか!」
また、“笑顔”。
真桜と沙和の二人に、急激に嫌な予感がよぎる。
「な・・・凪ぃ!?」
「凪ちゃん!?」
二人が身を乗り出し凪に駆け寄ろうとするのを、凪がやんわりと止める。
「いや、大丈夫だ。頭はちゃんとしている。私は信じているだけだ。きっと隊長は帰ってくると」
キッパリと言う凪に、二人は安堵の溜息を漏らす。
「もぅ~、脅かさないでなの~」
「そうやで・・・凪がいってもうたかと思ったやん」
「すまなかったな、二人とも。心配を掛けたようだ・・・でももう大丈夫だ!隊長が残してくださったものを
しっかり守って行こう!そうすれば隊長が帰ってきた時に、褒めてもらえるぞ!」
凪の言葉に二人が元気よく頷く。
沙和は凪が気が付いた事を華琳に伝えるために部屋を出て、真桜は水を取ってくると言って部屋を出た。
一人になった凪は、寝台の下に置かれていた籠の中から一枚の布を取り出す。
それはかつて凪が作った、聖フランチェスカ学園の制服の上着だった。
それをギュッと抱きしめる。
「隊長・・・待っています・・・いつまでも・・・」
凪は・・・やさしい瞳でその制服を抱きしめ続けていた・・・。
そして────3年の月日が流れた。
「よーう、かずピー。卒業おめっとさーん」
「おう、及川・・・お前が卒業できた方が驚きだよ」
駆け寄ってきたスーツ姿の悪友の言葉に、同じくスーツ姿の一刀が半目で答える。
今日は大学の卒業式。
大学へ続く並木道には桜が満開に咲き誇っていた。
周りにいる人達もスーツ姿であったり、着物姿であったりと色とりどりだ。
中には鎧武者姿や、白い巫女服のようなものを着ている者達もいる。
聖フランチェスカ学園を卒業した二人は、揃って地元の大学に進学した。
一刀は特に問題も無く過ごしたが、及川はよくゼミをサボってナンパしていた筈で、
とても卒業できるような単位を取ったとは思えない。
「そらー・・・人徳ですよー」
及川の青褪めた顔と冷や汗で、拝み倒したんだな、とあたりをつける。
「そんな事より、驚きなのは一刀、お前じゃ!」
「何がだよ」
「フランチェスカの時は彼女も作らんかったお前が、まさか大学進学と同時に彼女を作って、
そのまま大学卒業と同時に結婚するってかぁー・・・しかもあんな美人と!」
「はっはっは。それも人徳だろ?」
一刀の眩しい笑顔に、及川がキィッとハンカチを噛む。
「それにしても、相手方のじいさんが台湾で大きな武術道場やってるんだろ?よく結婚許されたなー」
「最初はやっぱり反対してたけど、俺の実家が北郷流の剣術道場やってると分かったら、逆にものすごく
賛成してくれたんだよ」
「やっぱり武道をやっている者同士、通じるものがあったんやろか」
「かもな」
「ウチも道場やってればなー」
「逃げ出して終わりだろ?」
ハハハッと笑いあう。
「それにしてもホントうらやましいわー。お嬢様で美人で性格良し。料理も裁縫も出来ると来たもんだ。
なのに大学でかずピーと出会うまで誰とも付き合わなかったなんてなー」
及川が恨めしそうに声を出す。
「まぁ、黒服の護衛付で来るような環境だったから、無理もないさ」
「あー・・・最初見た時はビビったわ。そんな相手に、入学式で出会っていきなり付き合ってください!
なんて言うから、かずピーの頭おかしくなったかと思ったら、相手もはい!って元気よく言うから2度ビビったわ」
「一目見た瞬間に、運命の相手だと思ったんだよ。お互いに」
「えーなーえーなー」
「コラ。纏わりつくな」
じゃれつく及川の頭を抑えて、顔が赤くなったのを誤魔化す。
「今日入籍だっけか?」
「ああ、式が終わったら役所に出しに行くよ」
「────!」
その時、一刀を呼ぶ声が後ろから掛かる。
見れば一人の女性が手を振っているのが見えた。
「お。噂をすれば奥様の登場やなー」
「そう言えば、式が終わったらうちでメシ作るんだが、及川も来るか?」
「いやー・・・あの辛いのは俺はムリっす」
以前、一刀のアパートで御馳走になった時の事を思い出して逃げ腰になる及川に苦笑を浮かべながら
〝彼女〟に手を振る。
「今行くよ!〝凪〟!」
つづく
ぐはぁ!<吐血
うっかり編集途中で送信してしまってた!
やはり会社でやるのは危険すぎですね。
部下に何やってるんです?って聞かれて慌てていじったら送信してましたよ。
今度は気をつけてやろう。
さて。お送りしました第一話ですが、ホントはコレまだ投稿するつもりじゃなかったんですよね。
前作でTinamiの使い方を完全に覚えて、完結させてからお送りするつもりでしたが、
こうなったこっちも書きます。
前作のも期限になんとか間に合うようにしたいと思います。
・・・とは言うものの、このSS実は随分前に書いたものになります。
テキストで300kbほど書いた所でハードディスクと共に逝きまして。
さぁ、初投稿だ!という矢先だっただけに、
しばらくは哀しみのあまり何もする気がおきなかったものです。
萌将伝で凪成分を補充できたのでようやくぼちぼちやるか、といった感じです。
では、ちょこっと予告。
華琳の元に五胡の不穏な動きと、黄巾党の復活の知らせが届き、
調査に霞と稟を向かわせる。
一方、一刀の元には謎の人物が現れて・・・。
では、また。
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真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
凪すきーの凪すきーによる、自分の為のSSです。
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