一刀の馬鹿。
雨が降ったからって自分の服を被せるなんて。
あの程度、何ともなかったのに。
心配性というか、格好つけたがりというか…。
いつもそうやって。
本当……馬鹿…。
「あはは。でも華琳が風邪引かなくて良かったよ。」
…。
どこまで能天気なんだか…。
「…おかゆ、すげーうまい。温まるよ。」
誰が作ったと思ってるの。天下人の粥なんだから、言われなくても分かってるわよ。
…ほら、もう一口。
「んぐっ。…ん。うま。」
……一刀。
「ん。…何?」
“雨の日って、好き…?”
“……………あんまり、好きじゃないな…”
“……そう…”
「…何だよいきなり。華琳らしくない質問だな。」
何よそれ。後は自分で食べる?
「口移しでお願いしまぶっ!!いてぇ」
救いようが無いわね。まったく…… … 。
ザァー ザァー ザァー…
…………雨、か…。
ザァーザァー
―――……華琳。……貴方は、大きくなったら……に……そして………―――
―――母上!!嫌!母上ぇ!!!―――
―――本当に貴方は…ふふ。寂しがり屋なのね。
普段は見栄っ張りで意地っ張りで、とことんわがままなのに…。
…でもいつかきっと、必ず、そんな貴方を理解してくれる人が現れるでしょう。
その人だけには、甘えなさい。
いっぱいいっぱい甘えなさい。貴方が今まで頑張った分、しっかりと。
…こんなに可愛い娘なんだから…えぇ、大丈夫…だいじょう…かりん…―――
―――ははうえ?…ははう……。嫌。嫌だよ。…お母さん…。いや、いや!!
「ぃや…。……?」
……え?夢…。
でも、何…あったかい。母上の胸の中にいるみたい。
…いい匂い。……落ち着くし、安心する…。
「…大丈夫か?うなされてたみたいだけど…」
一刀…。
「…嫌な夢か?」
別に、大したことないわよ。
「……一人で抱え込むなよ。皆がいるんだから。」
…分かってる。
まぁ貴方じゃなんの戦力にもならないけど?
「ぐ。おキついですね~華琳さん。」
ふふ。
弱くて馬鹿で無頓着で鈍感で女好きだけど…
一緒にいて、楽しいし気が楽になる。
それに、たまには…カッコいいところもある…。
……私の、一番大事な人…。
心の支え。好きな人、愛している人。ずっと、甘え続けていたい人。
…北郷……一刀。
「…ん?どうかした?」
「私は、雨なんて大っ嫌い。」
「いきなりだな。」
「でも、今は嫌いじゃない。」
今。本当に今この瞬間。
好きな人に抱きしめられている…幸せな時。
残酷なことをたくさんしてきた。
部下に対する処罰も緩めなかった。
血を多量に浴びた。
覇王を目指すことこの曹猛徳は、全てを背負って生きてきた。
そんな私に、貴方は何食わぬ顔で対等に接してきた。
普通なら処刑に処しているところだけれど、嬉しかった。
普通の女として見ていてくれたことが…とても嬉しかった。
今もこうして、ずっと抱きしめてくれている。
顔を向けると笑顔で返してくれる。
髪を優しく撫でてくれる。囁くように真名を呼んでくれる。
「愛してる」と…言ってくれる…。
……これから…この先ずっと…
「いいのか?これから会議があるんじゃ…」
この人に甘えていこう。「いいの。それよりも…一刀…」
この人の味を確かめながら…
この人の匂いを浴びながら…
この人の温もり…優しさを感じながら…
「……一刀…………」
“お母さん。もう寂しがり屋とは言わせないわよ。じゃあね…ありがとう…”
大好き。
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華琳と一刀の話です。
SSです。
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