No.177738

真恋姫 ~雨の日に~

k.nさん

華琳と一刀の話です。

SSです。


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2010-10-12 01:17:52 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3922   閲覧ユーザー数:3457

一刀の馬鹿。

 

雨が降ったからって自分の服を被せるなんて。

 

あの程度、何ともなかったのに。

 

心配性というか、格好つけたがりというか…。

 

いつもそうやって。

 

本当……馬鹿…。

 

「あはは。でも華琳が風邪引かなくて良かったよ。」

 

…。

 

どこまで能天気なんだか…。

 

「…おかゆ、すげーうまい。温まるよ。」

 

誰が作ったと思ってるの。天下人の粥なんだから、言われなくても分かってるわよ。

 

…ほら、もう一口。

 

「んぐっ。…ん。うま。」

 

……一刀。

 

「ん。…何?」

 

 

 

“雨の日って、好き…?”

 

 

“……………あんまり、好きじゃないな…”

 

 

“……そう…”

 

 

「…何だよいきなり。華琳らしくない質問だな。」

 

何よそれ。後は自分で食べる?

 

「口移しでお願いしまぶっ!!いてぇ」

 

救いようが無いわね。まったく…… … 。

 

 

ザァー ザァー ザァー…

 

…………雨、か…。

 

 

 

               ザァーザァー

 

 

―――……華琳。……貴方は、大きくなったら……に……そして………―――

 

―――母上!!嫌!母上ぇ!!!―――

 

―――本当に貴方は…ふふ。寂しがり屋なのね。

普段は見栄っ張りで意地っ張りで、とことんわがままなのに…。

…でもいつかきっと、必ず、そんな貴方を理解してくれる人が現れるでしょう。

その人だけには、甘えなさい。

いっぱいいっぱい甘えなさい。貴方が今まで頑張った分、しっかりと。

…こんなに可愛い娘なんだから…えぇ、大丈夫…だいじょう…かりん…―――

 

―――ははうえ?…ははう……。嫌。嫌だよ。…お母さん…。いや、いや!!

 

「ぃや…。……?」

 

……え?夢…。

 

でも、何…あったかい。母上の胸の中にいるみたい。

 

…いい匂い。……落ち着くし、安心する…。

 

「…大丈夫か?うなされてたみたいだけど…」

 

一刀…。

 

「…嫌な夢か?」

 

別に、大したことないわよ。

 

「……一人で抱え込むなよ。皆がいるんだから。」

 

…分かってる。

 

まぁ貴方じゃなんの戦力にもならないけど?

 

「ぐ。おキついですね~華琳さん。」

 

ふふ。

 

 

弱くて馬鹿で無頓着で鈍感で女好きだけど…

 

一緒にいて、楽しいし気が楽になる。

 

それに、たまには…カッコいいところもある…。

 

……私の、一番大事な人…。

 

心の支え。好きな人、愛している人。ずっと、甘え続けていたい人。

 

…北郷……一刀。

 

 

 

 

「…ん?どうかした?」

 

「私は、雨なんて大っ嫌い。」

 

「いきなりだな。」

 

「でも、今は嫌いじゃない。」

 

今。本当に今この瞬間。

 

好きな人に抱きしめられている…幸せな時。

 

残酷なことをたくさんしてきた。

 

部下に対する処罰も緩めなかった。

 

血を多量に浴びた。

 

覇王を目指すことこの曹猛徳は、全てを背負って生きてきた。

 

そんな私に、貴方は何食わぬ顔で対等に接してきた。

 

普通なら処刑に処しているところだけれど、嬉しかった。

 

普通の女として見ていてくれたことが…とても嬉しかった。

 

今もこうして、ずっと抱きしめてくれている。

 

顔を向けると笑顔で返してくれる。

 

髪を優しく撫でてくれる。囁くように真名を呼んでくれる。

 

「愛してる」と…言ってくれる…。

 

 

……これから…この先ずっと…

 

「いいのか?これから会議があるんじゃ…」

 

この人に甘えていこう。「いいの。それよりも…一刀…」

 

この人の味を確かめながら…

 

この人の匂いを浴びながら…

 

この人の温もり…優しさを感じながら…

 

 

「……一刀…………」

 

 

“お母さん。もう寂しがり屋とは言わせないわよ。じゃあね…ありがとう…”

 

 

大好き。

 

 

 


 
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