No.177256

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 拠点・関羽、愛と義に苦悩するのこと

狭乃 狼さん

刀香譚、最終拠点シリーズ第二弾です。

今回は前回の予告どおり愛紗のお話です。

それでは、お楽しみください。

2010-10-09 13:35:49 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:11947   閲覧ユーザー数:10084

 一刀たちが成都に戻って十日。

 

 二人の変化にほとんどの者が気づいていた。

 

 それもその筈、公務中以外の場では常にべったりのその姿を見れば、誰でも解ることだった。

 

 ただ一人を除いて。

 

 「いつもながら仲の良いお二人だ。そうは思われませんか、白蓮どの?」

 

 「そ、そうだな。はは、は……」

 

 関羽の台詞に、苦笑するしかない公孫賛。

 

 そう。関羽ただ一人だけが、一刀と劉備の変化に気づいていなかった。

 

 だが、否が応でも、気づかされる時が来た。

 

 所用で現在の赴任地である培城から、成都を訪れていたその日の夜。厠へ立ったその帰りに、一刀の部屋の前を通った。

 

 ”それ”が聞こえたのは、その時だった。

 

 「?……今のは、義兄上と義姉上の声か?こんな時間に一体……」

 

 夜中、一つの部屋から聞こえる男女の声。

 

 それが何を意味しているのか、関羽は本気で気付かなかった。そっと、聞き耳を立てた。

 

 そして、聞いてしまった。

 

 「かず、と。もっと、あ、つよく」

 

 「ん。……可愛いよ、桃香」

 

 「うれ、し。ああっ!!」

 

 ……義兄と義姉の、”男女”の声を。

 

 「……!!」

 

 思わず逃げ出していた。

 

 

 頭が真っ白になって、気がつけば自分の部屋に戻っていた。

 

 

 

 閉じた扉にもたれかかり、肩で息をする。呼吸が落ち着いてくると、次第に頭も冷静になってきた。

 

 「……義兄上と、義姉上が、そんな……」

 

 ずずず、と。

 

 その場に座り込む。

 

 一刀と劉備は実の兄妹。だから、例え想いが通じ合ったとしても、”そういう事”にはならない、と。

 

 関羽はそう思っていた。いや、そう願っていたというべきか。

 

 

 だが現実には、あの二人は最後の一線を越えてしまっていた。

 

 いつの間に?……考えるまでも無かった。二人が荊州に出向いていた間にだろう。

 

 思い返してみれば十日前。戻ってきた二人は、何か吹っ切れたような、清清しい表情をしていた。

 

 それから今日までの間に見た二人は、とても仲睦まじかった。

 

 ”それ”が、兄妹としての”それ”ではなく、男女としての”それ”だったのだと、関羽は今になって気付いたのである。

 

 「……他の者達も、察していたのだろうな。だから皆、微笑ましい顔で義兄上たちを見ていたのか」

 

 関羽は悩んだ。

 

 義兄のことは好きである。いや、言葉にこそしていないが、愛していると、自分では思っている。

 

 だが、義姉である劉備のこともまた、関羽は大好きである。

 

 義兄への愛か。義姉への義か。

 

 どちらを取るかで、その日は一晩中、葛藤を続けた関羽だった。

 

 

 

 その日の翌日。

 

 「ハアッ!ハッ!フンッ!!」

 

 一心不乱に、棍を振る関羽の姿が、練武場にあった。

 

 「いりゃあっ!!」

 

 ぶおんっ!!

 

 鬼気迫る、というのは、このときの彼女の表情をいうのであろう。

 

 想いを振り払うかのように、ただただ、棍を振り続ける。そこに、

 

 「精が出るね、愛紗ちゃん」

 

 「!!……義姉上」

 

 劉備がてくてくと歩いてくる。無邪気な笑顔で。

 

 「……なにか、御用でしょうか」

 

 「ううん、別に。姿が見えたから声をかけてみただけ。……ね、ちょっとお茶しない?」

 

 「は、はあ……」

 

 その手を引かれ、練武場から半ば無理やりに、と言った感じで、城内の食堂へとやってきた。

 

 「…………」

 

 何を話していいかわからない。そんな感じで茶をすする関羽に、

 

 「ねぇ、愛紗ちゃん」

 

 「は、はい!?」

 

 「さっきの練武だけど、何か、心ここにあらずって感じに見えたけど、何かあったの?」

 

 「!!……」

 

 みすかされた、と。関羽は思った。迷いが武に出ていたのを、その力量においてかなりの差がある義姉にすら、見抜かれた。

 

 だが、その迷いを語るわけにはいかなかった。

 

 相手はその、迷いの元の当人なのだから。

 

 「……たいしたことではありません。義姉上には、関係の無いことです」

 

 思わずついた嘘。

 

 それにより、悲しそうにうつむいた義姉を見て、関羽の心に、激しい罪悪感が湧き上がる。

 

 「あ、あの。義姉上、いまのはその」

 

 「ううん、いいの。愛紗ちゃんだって、話したくないことぐらいあるもんね。……けど、もし話せることがあったらいつでも言って?……私なんかじゃ、頼りにならないかもしれないけど。ね?」

 

 関羽に笑顔を向ける劉備。

 

 関羽はおもった。

 

 (……やはり、この方はすごい。相手が誰であっても、その慈母の様な笑顔で包み込んでしまう)

 

 そんな義姉だからこそ、義兄も惹かれたのだろう、と。

 

 (そんな義姉上を、私は裏切りたくはない。けど、義兄上への想いを、自分の心を偽りたくも無い。……私は、どうすれば……)

 

 「ねえ、愛紗ちゃん」

 

 「はい?」

 

 一人思考に入っていた関羽に、劉備が優しく声をかける。

 

 「何を悩んでいるのかは知らないけど、私から一つだけ助言。……悩んで答えが出ないのなら、後はただ、行動あるのみ、だよ?」

 

 「…………」

 

 その一言で、関羽の心に引っかかっていた”何か”が、外れた。

 

 そして、その日の夜。

 

 

 

 「あの、愛紗さん?一体どうしたんでしょうか?」

 

 「……」

 

 一刀の部屋で、関羽は一刀を寝台に押し倒していた。

 

 関羽は、劉備の一言で踏ん切りがついた。

 

 義姉への義は義。けれど、義兄への想いはそれ以上に強い。そして、昼間の義姉の一言。

 

 「後はただ、行動あるのみ」

 

 そう。関羽は行動に起こした。義兄への、夜這いという形で。

 

 「……義兄うえ、お慕いいたしております」

 

 「え?……むぐっ?!」

 

 強引に、一刀の唇に自分の唇を押し付ける。

 

 「んっ、んんっ……、ぷはっ!ちょ、ちょっと待って、愛紗!!」

 

 「……何故、ですか?私では、駄目なのですか?」

 

 「そうじゃなくて!こういうのはお互いの気持ちが」

 

 「私は!義兄上を、一刀さまを愛しています!!それでは駄目なのですか?!一刀さまは、私がお嫌いなのですか?」

 

 その瞳に涙を浮かべ、一刀に問いかける関羽。

 

 「……嫌いなわけ無いだろ?愛紗の気持ちも嬉しいさ。だけど、駄目だよこんな」

 

 「……義姉上以外では、そんな気になれないと?」

 

 「そうじゃないって。……よっと」

 

 「あ」

 

 ぐい、と。上体を起こし、関羽の肩をつかんでその瞳を見つめる一刀。

 

 「……俺は愛紗が嫌いなわけじゃない。むしろ、愛しいと思ってる。けど、俺が一番愛しているのは桃香、だ。……それでも、愛紗は構わないのかい?それを聞いてもなお、考えは変わらないのかい?」

 

 「……」

 

 コクリ、と。無言で頷く関羽。

 

 「……はあ~、やれやれ。……だそうだよ、桃香」

 

 「え?!」

 

 一刀の言葉に驚き、扉のほうに振り向く。そこには、しかめっ面をした劉備が立っていた。

 

 「……昼間様子がおかしかったから、もしかしてって、思ったんだけど」

 

 「と、桃香さま!い、一体いつから……」

 

 「……最初っから」

 

 「あう」

 

 劉備が居たことにまったく気付かなかった。……突っ走ると周りが見えなくなるのが、彼女の唯一にして最大の欠点であった(料理は除く)。

 

 「……でもしょうがないね。一刀がもてるのは今に始まったことじゃないし。……それに、愛紗ちゃんなら、まあ、良いかな」

 

 「え?」

 

 関羽を許すという劉備の言葉に、罵倒されても仕方ないと思っていた関羽は、思わず呆気に取られる。

 

 「一刀、優しくしてあげなきゃ駄目だよ?いつもみたいに激しくしたら、愛紗ちゃんでも壊れちゃうかもしれないからね?分かった?」

 

 にっこりと。一刀と関羽に微笑む劉備。……目は笑っていないが。

 

 「あ、ああ。分かってる」

 

 「と、桃香さ、ま?」

 

 「それじゃ、お邪魔虫は消えるね。……愛紗ちゃん」

 

 「は、はい!」

 

 扉に手をかけつつ、

 

 「……負けないから、ね?」

 

 そう言って部屋を出て行く劉備。

 

 「あ、あの、義兄、上……」

 

 「……どうする?続き、してほしい?」

 

 「~~~~いじわる、です」

 

 「はは。……好きだよ、愛紗」

 

 とさ、と。寝台に関羽の体を横たえる一刀。

 

 「義兄、上。……かずと、さま……」

 

 

 ついに、至福の時に身をゆだねる事が出来た関羽。

 

 

 そう。

 

 

 たとえ行為の最中、一度も”愛してる”と、言われなかったとしても、関羽にとって、人生でもっとも幸せな時間。

 

 

 その事に、変わりはなかった。

 

 

 たとえ、最後に選ばれなかったとしても、今この時だけは、愛する人は、自分だけのもの。

 

 

 彼女は何度も何度も、愛しい人を求め続けた。

 

 

 この幸せなひと時を、しっかりと噛み締めるように。

 

 

 何度も、何度も。

  

 

 ……一刀が干からびるまで(笑。

 

 

 てなわけで、最終拠点その二です。

 

 「……」

 

 「……」

 

 ……え~と。あの、輝里さん?由さん?どうかなさいましたか?

 

 「……教えてほしいわけ?」

 

 「……聞かな解らんか?」

 

 ……一刀のことでしょうか?

 

 「あれが一刀さんの本領だということは、百歩譲って認めましょう。ですが!」

 

 「せや!一億歩譲って認めたとしても、うちらは、うちらは」

 

 あー、はいはい。手を出してもらえないから寂しいわけ。

 

 「そ!そんなつもりじゃ!!」

 

 「あ、あほな事言いな!うちは別に……!!」

 

 まあ、もう少し辛抱ですよ。そのうち良いことありますから。

 

 「……ほんとーに?」

 

 「信用ならんからな、作者の言うことは」

 

 いいよー、信用してもらえなくても。別に無理して君らの話し書く必要は無いしねー。あーあ、この台本も無用の長物かなー?(ちらり)

 

 「え、えーと。つ、次は誰のお話なのかなー?」

 

 「そ、そやね。あー、たのしみやなー」

 

 そう?じゃ、後で楽屋おいで。”これ”、見せてあげるから。

 

 

 

 というわけで、次回もまたまた拠点です。

 

 「楽しみにお待ちくださいねー(早くおわらせないと)」

 

 「コメントもぎょーさん待ってるでな~(次の台本、次の台本)」

 

 ではみなさん、またの機会に。

 

 『再見~!!』

 

 


 
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