No.176059

真・恋姫無双紅竜王伝赤壁合戦編⑪~曹家の翁②~

赤壁合戦11話です。先週はいろいろあって投稿できず、申し訳ありませんでした!
この話の曹仁ですが、ある戦国時代を題材にした漫画の中の登場人物がモデルです。
解っている人はもう解りますよね?

2010-10-03 00:29:38 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2781   閲覧ユーザー数:2481

曹仁率いる軍勢の戦い方は少数の兵を鶴翼に広げ、蟻地獄のように敵を待ち受けて左右より矢を、正面から槍衾を仕掛けて打ち破るというものだった。

そして、その結果として広がるのは呉軍の将兵の屍。さきほど現れた呉軍の部隊をほぼ全滅させていたのだった。

一息つく曹仁隊の斥候が、近づいてくる部隊を発見した。

「曹仁様!再び接近してくる部隊が!旗印は・・・『夏候』!夏候惇将軍の部隊かと思われます!」

「春蘭か・・・通せ」

しばらくすると、春蘭を先頭に『夏候』の旗を掲げた春蘭の隊が現れた。殿を務めた為だろう、兵士達は疲労困憊の様子。

その中でも春蘭だけが疲れた様子を見せないのは、曹仁の予想の範囲内だったが・・・

「曹老人、華琳様の隊はここを通ったか!?」

「いや、残念じゃが・・・華琳は通っておらぬ」

春蘭の話を聞くと、確かに魏軍の最後尾は彼女達らしいのだが、華琳の本隊は山道を通って来た蜀軍の奇襲攻撃を受け続けているという。

「兵たちが混乱して本来の道から外れたのかもしれぬのう」

「くっ、ならば私が・・・」

「待たんか、馬鹿者」

すぐにでも駆けて行きそうな春蘭の馬の轡を掴んで止める。

「心配せんでも華琳は死なぬ。作戦を完遂するためには夏候惇隊の損害はこれ以上増やせぬから、お主はひとまず退くのだ」

「し、しかし華琳様が・・・」

なおも食い下がる春蘭に、曹仁は力強く告げた。

「春蘭よ、華琳は死なぬ・・・わしが死なせぬよ。だからお主は樊城で華琳の疲れを癒す準備でもしておくがよい」

橋を渡り、樊城に向かう春蘭隊の背を見送り、曹仁はため息をついた。

「まったく・・・あの悪たれ娘が大きくなったものだ」

身体も、心も、人に慕われる器量も。

「わしはただ待つだけじゃ。あの子がこの川を渡り終えるまで。迎えに行かねばならぬほどの子供ではもうあるまい」

撃退して、撃退して、撃退して―――

何度蜀軍、呉軍の攻勢を押し戻しただろう。『曹魏の盾』と呼ばれる曹仁隊の兵士は討たれ、傷ついて戦場から、この世から去って行っていた。

「曹仁様・・・」

「・・・心配そうな顔をするな。だが、さすがに老人にはきついのぉ・・・」

百戦錬磨の曹仁といえど、体力面ではすでに衰えを隠せない。肩で息をし、身を守るために纏っている鎧が逆に彼を苦しめる。

「曹仁様、さらに敵軍が!旗印は『甘』!」

「鈴の甘寧か・・・!」

絶体絶命の危機に現れたのは呉軍の切り札、猛将甘興覇。『鈴の甘寧』と仇名される彼女の軍勢の前には、いかに堅牢を誇る盾の軍勢といえども満身創痍の状態ではその命運は風前の灯であった。

「だが・・・皆よ!甘寧さえ退ければ我らの勝ちじゃ!もうひと踏ん張り、奮起せよ!」

『うぉぉぉぉぉぉぉ!』

「くっ、死にそこないどもめ!」

曹仁隊の粘りは猛将甘寧をして苦しめるものだった。死兵となった曹仁隊の前に橋を突破したい甘寧隊は苦戦を強いられていた。

しかし、曹仁隊の数は少しづつ確実に減っていった。次々に斃れ伏していく兵士達・・・

「曹仁様、お逃げください!もう部隊は持ちませぬ!」

兵の悲壮な叫びにも、曹仁は首を横に振る。

―――まだ、あの子が戻ってきておらぬ


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
25
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択