No.171124

真・恋姫無双~君を忘れない~ 五話

マスターさん

久しぶりの投稿になってしまいました><
物語が動き出します。展開が下手ですが、寛大な御心で見てくれることを願います。
支援してくださった方、コメントしてくれた方、本当にありがとうございます!

誰か一人でもおもしろいと思ってくれたら嬉しいです。

2010-09-08 00:30:38 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21444   閲覧ユーザー数:17222

紫苑視点

 

「それ本気なの?」

 

 一刀くんと焔耶ちゃんが退出した後、桔梗が私に語った話に、私は驚きを隠すことが出来なかった。

 

 桔梗は、つい最近まで、長安の方まで旅していたようで、そこで、中原や河北を中心に賊が頻繁に出現しているという情報を入手したようだ。

 

 その賊には共通点があった。全員が、身体のどこかに黄色い布を身につけているという。

 

 朝廷は、皇甫嵩や朱儁らを取り立てて、討伐に当てているが、それでも制圧できず、各地の有力者にも呼び掛けているという。

 

「全く、朝廷も使えぬものよ」

 

 桔梗はニヤニヤしながら言っていた。誰も聞いていないとはいえ、全く平然と危険なことを言うのは昔から変わっていないわね。

 

 しかし、実際彼女の言うとおり、朝廷の権威は失墜していた。桔梗の話によると、朝廷が派遣した討伐隊は賊に散々打ち破られて、逆に賊に勢いを与えてしまったようだ。

 

 益州は都から離れているため、情報が伝わらない。この情報を掴んでいるのも、桔梗のみだろう。

 

 桔梗は、さらにこれは朝廷の弱体化に拍車をかけ、大陸は群雄割拠する乱世になるだろうと言った。ここ、益州もその波に必ず飲み込まれるだろう。彼女はその時の危険性を考えているようだ。

 

「北郷を借りたい。あいつに大陸の現状を見せたい」

 

 桔梗は真面目な表情でそう私に頼んだ。

 

「あやつは何か不思議な感じがする。儂の会ったことのない種類の男よ。あやつが大陸を見てどう

思うのかに興味がある」

 

「でも危険すぎるわ。あの子は……」

 

「紫苑。まさか気付いておらんとは言わせんぞ。あやつは武の心得がある。動作を見ておればわかるだろ」

 

 気づいていた。どのくらいの強さなのかはわからないが、彼の動きは武を心得ている者のものだった。でも、彼を危険な目に合わせたくなかった。あんな純粋な目を持つ子に、人が無残にも殺される所を見せたくなかった。

 

「お主の気持ちもわからんではない。だが、それはお主の私情に過ぎぬ。わかるだろ?」

 

 桔梗は溜息交じりにそう言った。それに儂と焔耶が付いておる。危険な目には間違っても合わせはせぬ、と付け加えた。

 

「わかったわ。その代わり、ひとつお願いがあるのだけど……」

 

一刀視点

 

 えーと、どうして俺は今、武器を構えた焔耶の前に立っているのだろう?

 

 昨日、焔耶と賊を捕まえた後、紫苑さんの屋敷の戻ると、桔梗さんから、焔耶と試合をするように言われた。

 

 そして、翌日、再び屋敷を訪れた桔梗さんに有無を言わせず模擬刀を持たされ、今に至った。

 

「武の心得があるのだろう。その力を儂に見せろ」

 

 桔梗さんはそう言った。でも、そのことは紫苑さんにすら言っていないのに、どうしてわかったのだろう。確かに俺は剣術を習っている。元の世界でも実力を認められ、北郷流の免許皆伝を許された。

 

 だけど、剣は嫌いだった。

 

 とどのつまり、剣は人を殺す道具に過ぎない。精神の鍛錬、相手を敬う心を育てるなど、いろいろと言われたが、そんなものは単なる後付けのものにすぎない。剣術は人を殺すための技だ。

 

 それでも剣を振っているときは心が穏やかになった。だから暇を見つけては剣を振っていた。そうしたら、いつの間にか、道場の中で俺に勝てる者がいなくなっていた。

 

 百年に一人の逸材だ、と周囲の人間は喜んだ。しかし、それは人殺しが上手くなると言われたようで、全く喜ぶことが出来なかった。それから、俺は道場に行くのを控えるようになった。

 

 じいちゃんだけが俺の気持ちを理解してくれた。だから、それから立ち合うのはじいちゃんだけにした。

 

「一刀や、これだけはわかってくれ。剣は相手に向けるだけではない。己にも向けることが出来る。もし、お前がそう出来たとき、お前の剣術は単なる殺人のための技でなくなる。何になるのかは自分で確かめるが良い」

 

 じいちゃんはよくこう言っていた。俺には意味がわからなかったが、じいちゃんは、昔は、それはもう驚くほどの剣の達人で、その筋の人物ではかなりの有名人のようだ。今でも、俺なんかでは太刀打ちできない。

 

 そんなじいちゃんが言うのだから、間違いではないのだろう。だから、俺は剣を捨てることだけはしなかった。

 

「それでは、始め!」

 

 桔梗さんの合図が聞こえた。相手は三国志でも有名な蜀の猛将、魏延。俺ごときの腕でどれくらい闘えるのかわからなかったが、心は穏やかだった。じいちゃん以外と闘うのは久しぶりだ。剣を握る感触ですら、懐かしく感じた。俺は一度深呼吸をして、焔耶を見つめた。

 

焔耶視点

 

 最初は納得できなかった。しかし、桔梗様は一刀の力を高く評価しているようだ。確かに賊を退治した時の手際は素晴らしいものだった。

 

 改めて剣を持った一刀と対峙してみると、確かに雰囲気は素人のそれではなかった。目は綺麗な泉のように澄んでいて、私をしっかり見据えている。ある程度の実力はこうして対峙してみると、自然にわかる。一刀はかなりの腕前を持っている。

 

 一刀は独特の構えをしていた。剣をこちらに真直ぐ向けるのではなく、少し、左に倒していた。まるで、剣が視界の邪魔をするのを嫌がるかのように。

 

 お互い、様子を見ようと、五分ほど動かずに対峙し続けた。私は武器の鈍砕骨を少し動かせ、一刀を挑発したが、一刀の瞳は一切揺らぐことなく、私を見つめ続けていた。

 

 小手先の技は効かないな。私は意を決し、一刀の懐に飛び込んだ。鈍砕骨の破壊力は並みの武器などは木端微塵に粉砕する。一刀もそれに気付いているようで、まともに打ち合わず、攻撃を避けることに専念している。

 

 鈍砕骨はかなりの重さの武器だ。一般の兵士では持ち運ぶことすら不可能なほどだ。従って、それほど素早く振ることは出来ない。本来は、大勢の敵を相手にしたときに力を発揮する武器だ。このような一騎打ちには向いていない。一刀も、私の攻撃をよく見切った上で避けている。

 

 しかし、そこに慢心が生まれる。

 

「うぐっ!」

 

 鈍砕骨を右に薙ぎ払い、その勢いを利用して、回し蹴りを放つ。一刀には鈍砕骨が邪魔で、その軌道までは見えないはずだ。一刀の脇腹に強烈な蹴りを見舞い、さらに鈍砕骨で追撃を仕掛ける。

 

 しかし、一刀はすぐに私と距離を置き、呼吸を整えようとしている。闘い方を熟知している。無理に攻めず、相手の動きを見極めようとする、上手い戦法だ。

 

 ここで相手に休憩の隙を与えるわけにはいかない。私は地面を蹴り、一刀に猛攻を仕掛けた。

 

「はぁっ!」

 

 鈍砕骨を力の限りに振り回す。さらに、そこに先ほどと同じように、鈍砕骨を死角にして、蹴りや拳を混ぜ合わせる。

 

「せいっ!」

 

 しかし、一刀は紙一重で全ての攻撃を避けた。蹴りや拳は腕や足で巧みに防いでいる。まるで、こちらの動きが丸見えのような感覚を覚えた。

 

「くそっ!」

 

 私は一刀の頭を吹き飛ばす勢いで横に鈍砕骨を薙いだ。振りが大きいため、一刀は易々と体勢を低くして、それを避けた。

 

「そこだぁっ!」

 もちろん一刀がそう動くのはこちらの読み通り。私は一刀の頭上で無理やり鈍砕骨の軌道を変え、思い切り振り降ろした。

 

 殺った!あの体勢から攻撃を避けることなど不可能に近い。あの攻撃は私の得意な形で、腕の筋肉にかなり負荷がかかるが、今のところ、桔梗様以外であの攻撃を受け切った人物はいない。

 

 もくもくと砂煙が上がる中に、私は信じられないものを見た。一刀は鈍砕骨を模擬刀で受け流していた。模擬刀の耐久力で、あの威力を殺すためには、寸分の狂いもあってはならない。こちらの攻撃を完璧に見切る必要がある。

 

 私は地面を蹴って後ろに跳び退るが、一刀は一気にこちらとの距離を縮めて、斬り込んできた。

 

一刀視点

 

 

 焔耶のパワーは恐るべきものだった。彼女の武器、鈍砕骨って言ったっけ、あれだけ重いものを、まるで普通の武器のように振り回してきた。しかし、スピードはそんなに速いわけじゃないし、避けるのもそれ程難しくない。

 

「うぐっ!」

 

 そう思ったのも束の間、焔耶の蹴りが脇腹に入った。酸素が肺から一気に抜け出て、蹲りそうになるが、何とか体勢を立て直すために、焔耶と距離を置き、呼吸を整える。しかし、焔耶はこの隙を逃すまいと、一気に攻め込んだ。

 

 失敗したな。相手の武器にとらわれて、焔耶の動きを見失っていた。俺はすぐに焔耶を凝視した。焔耶の目線、踏み込み、筋肉の動きまで全てを見逃さない。

 

 北郷流剣術でまず教わるのが、相手の動きを読み取る動体視力の強化だった。大抵の人間はこれを会得できずに、道場を後にする。俺は幼い頃から、じいちゃんに厳しくこれを指導されたため、物心がつくころには、人間の動きを読み取ることが出来た。

 

 特に鈍砕骨が死角となって、軌道が見えない焔耶の蹴りや拳を防ぐには、相手の視線や踏み込みを見れば、大凡の推測が出来た。

 

「くそっ!」

 

 焔耶が鈍砕骨を横に薙ぎ払った。しかし、それは振りが大きく、かなり粗い攻撃に見えた。それを、体勢を下げて、避けたが、焔耶の腕の筋肉にかなりの力が込められた。それはあまりにも不自然だった。焔耶の表情はすでに余裕の色すら浮かんでいる。とういうことは、焔耶の狙いは……。

 

「そこだぁっ!」

 

 思った通り、焔耶は鈍砕骨の軌道を無理やり変えてきた。それをするのに、どれだけ腕に力を込めなければならないのだろうか、そう考えただけで、焔耶の力にゾッとした。相手の体勢を下げるために、鈍砕骨を思い切り横に薙ぎ払う必要があり、それを無理に力だけで変えるなんて、もはや人間業とは思えない。

 

 そんな事を考えている場合ではない。今の体勢では、焔耶の攻撃を避け切ることなんて、間違いなく不可能だ。この攻撃を防ぐには……。

 

 俺は模擬刀を両手でしっかり持ち、焔耶の鈍砕骨が当たるタイミングに合わせて、地面に突き刺した。鈍砕骨は模擬刀とともに、俺に当たることなく、地面にめり込んだ。その衝撃で砂埃が巻き上がる。

 

 砂埃の中、焔耶と俺は目が合った。かなり驚いているようだ。いや、実際、上手くいくかどうかは賭けで、成功して俺も驚いているんだけど。模擬刀と鈍砕骨では、耐久性にかなりの差がある。タイミングや力の入れ具合を少しでも間違えば、確実に殺られていただろう。そう考えるだけで、背中に嫌な汗が流れてきた。

 

 おそらく焔耶の腕はさっきの攻撃でかなりの負担がかかっているはずだ。攻めるなら今だな。焔耶に向かって、地面を蹴り、一気に間合いを詰めた。

 

「うらぁ!」

 

 掛け声とともに、焔耶に斬りかかった。模擬刀と鈍砕骨が火花を散らす。今の焔耶は腕が上手く動かせず、こちらの攻撃を防ぐのに精一杯だ。ならば、じっくり相手の動きを見定めるまで。焔耶の筋肉の動きを見る。あれだけ、腕に負荷をかけたのだ、必ずどこかで隙が生じるはずだ。

 

「くっ!…………な、しまった!」

 

 焔耶の腕の筋肉は、鈍砕骨の重みに対応できず、身体が右に流れてしまった。俺はその絶好の機を逃さなかった。鈍砕骨を模擬刀で地面に弾き飛ばし、足で踏みつけて固定して、首に模擬刀を突き付けた。

 

「そこまで!」

 

 桔梗さんの声と同時に、模擬刀を首から離して、焔耶を立たせた。そして、桔梗さんの方に振り返った。

 

桔梗視点

 

 北郷の動きは悪くなかった。焔耶には試合の前に、手加減するように言い含めていたが、どうやら、焔耶も本気近くの力を出さなくてはいけなくなったようだ。

 

 ふむ……。北郷の奴、なかなか良い目を持っておるの。焔耶の動きを全て見極めたうえで、次の動きにすぐに対応できるように、攻撃を紙一重のところで避けている。

 

 横をちらりと見ると、紫苑が心配そうに北郷を見つめている。おーおー、健気に胸の前で手を握りしめておるぞ。ひさしぶりの紫苑のしおらしい姿についつい頬が緩んでしまった。

 

 勝負に動きがあった。焔耶が勝負を仕掛けるらしい。奴の一番の得意の動きだな。あれをどう防ぐか、見物だな。

 

 焔耶の鈍砕骨が地面に当たった衝撃で砂埃が舞い上がって、一瞬、北郷と焔耶の姿が見えなくなった。そして、砂埃の中から、二人がとび出してきた。しかし、今度は攻守が逆転していて、北郷が焔耶を攻め立てていた。

 

 ふむ、北郷が焔耶の攻撃をどう防いだのかは見えなかったな。だが、北郷の奴、思った以上にやるではないか。戦闘の中でもあれだけ冷静さを保っていられるとは、それなりの鍛錬は積んでおったのだろう。

 

 焔耶の動きは見るからに悪くなっていた。あれだけ無理に鈍砕骨の軌道を変えたのだ、腕が痺れて、上手く動かせんのだろう。もうすでに勝負は見えたな。

 

 焔耶の奴め、まさか北郷に敗れるとはな。これは、この後、厳しくお仕置きが必要だの。

 

 焔耶にどんな仕置きをしてやろうかと、思っていると、決着がついたようだ。焔耶の首元に北郷の模擬刀が突き付けられている。

 

「そこまで!」

 

 さて、これで北郷の強さもわかった。つくづく面白い男よ。しかし、攻め方が気に入らぬ。まるで、相手を気遣うような動きだ。おそらく、焔耶の動きを見極めて、怪我をさせないように、動いておるのだろうが。

 

 まぁ、良いわ。奴に武人としての強さを求めるわけではない。だが、一度、しっかり見せた方が良いの。本物の殺し合いというものを。

 

「さて、紫苑。これで良いだろう?」

 

 儂は横にいる紫苑に確認を求めた。儂が奴に求めるのは武の強さではなく、人の器。奴がどれ程の器のなのかが楽しみになってきた。

 

紫苑視点

 

 私から桔梗にお願いをしたのだけれど、いざ、一刀くんと焔耶ちゃんが対峙しているのを見ると、緊張せざるを得なかった。焔耶ちゃんの強さは益州軍の中でも五本指に入る。一刀くんがどれくらい闘えるのか。

 

 私は自分の気持ちに矛盾を抱えていた。私は益州の将軍として、桔梗と同じように、一刀くんの強さに興味があった。しかし、個人としては、彼が怪我しないか心配だった。

 

 なぜかしら?まだ会ったばかりの青年に、どうしてここまで情を傾けているのかしら?

彼があの人に似ているから?明確な理由を見つけられないまま、一刀くんと焔耶ちゃんの試合は始まった。

 

 最初は焔耶ちゃんが優勢だった。鈍砕骨を縦横無尽に振り回して、一刀くんを徐々に追い詰めている。いや、彼はしっかり焔耶ちゃんの動きを見切った上で避けている。しかし、思わず、両手を握りしめていた。彼が闘う場面を見つつ、先ほどの疑問が頭から離れなかった。

 

「っ!?」

 

 そうこうしている内に、焔耶ちゃんの動きが変った。焔耶ちゃんの攻撃が一刀くんに当たったように見えた。しかし、砂埃の中、彼と焔耶ちゃんがとび出してくるのを見て、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 そして、今度は一刀くんが焔耶ちゃんを攻めた。焔耶ちゃんは桔梗の部下だけあった、攻撃は苛烈を極め、まさに鬼神のごとく攻め立てる。

 

 一刀くんはというと、攻撃は無駄がなく、相手の動きをしっかり見ている。冷静と言えば、聞こえは良いが、あの攻撃は、まるで相手を傷つけるのを怖がっているのかように見える。

 

 勝負は、そのまま一刀くんが勝利した。横の桔梗を見ると、一刀くんの強さに満足がいったような表情をしている。

 

 確かにこれほどの強さを持っていれば、桔梗たちと大陸を見て回っても、自分の身を守ることくらいは出来るだろう。でも、どうしてかしら、何か心のどこかが締め付けられるような気持ちになった。

 

 私は彼をどうしたいのかしら?

 

一刀視点

 

 試合を終えた俺は、桔梗さんの所に呼ばれた。桔梗さんは上機嫌な顔で迎えてくれたが、紫苑さんは、なぜか複雑そうな表情をしていた。

 

「北郷、見事だったぞ」

 

 まず、桔梗さんは俺を褒めてくれた。たぶん、俺の実力が予想よりも上だったことに満足しているのだろう。でも、どうして、俺をいきなり焔耶と試合なんかさせたんだろう?そういえば、理由を聞いていなかったな。

 

 

「焔耶。主もまだまだだな。屋敷でじっくり話し合わねばな」

 

 俺の後ろに来ていた、焔耶に向かって、桔梗さんはニヤニヤしながら言った。

 

「ヒィッ!」

 

 焔耶はそれを聞くと、ひどく怯えたような表情をして、俺の後ろに隠れてしまった。どうしたんだろ?

 

「さて、北郷よ。お主に言わなければならないことがある」

 

「はい」

 

「明後日より、儂と焔耶は益州を離れ、長安のあたりまで旅に出ようと思っておるのだが、お主にも同行してもらいたい」

 

「え?でも、俺は紫苑さんの従者なので、長い間、屋敷を空けるわけには……」

 

 そう言って紫苑さんの方を見ると、微笑みながら頷いていた。でも、その頬笑みはぎこちなく、俺の胸に寂しさを残した。

 

「紫苑にも許可は取ってある。お主には大陸をしっかり見てもらいたのだ。そして、お主が思う所を申してもらいたい」

 

 桔梗さんは珍しく真面目な顔で言った。俺はこの三人には、いくら返しても返しきれない恩がある。彼女らの頼みなど、考えることもない。

 

「わかりました。足手まといになるかもしれませんが、お願いします」

 

 そう言って、頭を下げた。桔梗さんは満足したように、うむ、と言って、怯える焔耶を引っ張って帰って行った。焔耶はこちらに助けを求めるような眼で見ていたが、もちろん俺にはどうすることも出来ない。

 

 俺は紫苑さんと屋敷に戻った。紫苑さんは最後まで複雑そうな表情をしていた。珍しく、俺との会話も心ここにあらずといった感じだった。彼女がどんなことを考えているのかは、俺の想像の及ぶところではなかった。

 

 大陸をまわる。旅なんかしたことないから、不安ももちろんあったが、それは俺の興味を十分に惹いた。

 

 しかし、この旅で俺は、改めて知ることになる。この世界は俺がいた世界とは全く異なる世界であると、この世界がいかに厳しいかという事を。

 

あとがき

 

皆さま、お久しぶりです。お待ちしていただいた方がいらっしゃれば、待たせてしまって申し訳ありませんでした。

 

今回から物語が動き出します。

 

黄巾の乱、本来は益州は黄巾の乱にはあまり係わりがないのですが、俺の妄想力をフル動員して、

 

書きたいと思います。

 

今回は、一刀の力を紹介しました。

 

一刀は、腕力のみでいえば、一般人よりもちょっと強いくらいです。

 

彼の武器はその目の動体視力です。

 

戦闘シーンは苦手で、わかりにくくてすいません><

 

あと、今回は一刀、焔耶、桔梗、紫苑のそれぞれの視点で、戦闘を書いたので、

 

くどいかもしれません。

 

でも、桔梗と紫苑に関しては、両人の思いを書きたかったので……。

 

次回は、一刀が旅立ちます。その先で彼を待ち受けるものとは。

 

一人でもおもしろいと思ってくれたら嬉しいです。


 
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