No.169015

東倣麗夜奏 3話

huyusilverさん

・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。

2010-08-29 16:09:28 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:558   閲覧ユーザー数:528

東倣麗夜奏 ~ Phantasmagoria of Nostalgic Flower.

楽園の外に棲む妖怪達による些細な話。

 

 

 

3話

 

 

 

毎年のように続く記録的な猛暑も、そろそろ落ち着いてくる季節。

それでもまだ続く残暑に人間も妖怪も頭を悩ませていた。

 

屋敷に篭って人間的な暮らしをするのも悪くは無いが、それはそれで

以前の退屈な生活に逆戻りしてしまうというもの。

しかし、そんな中人間の街でも見に行こうものならアスファルトの熱気で

気が滅入る事だろう。

 

 

 桜子 「・・・そういえば、しばらくあの神社には行って無かったわね。」

 

 

屋敷付近の湿度の高い樹海とは違い、境界の神社周辺は森林浴に最適なはず。

ついでに何か変わった事でも起これば儲け物である。

そんな事を考えながら、桜子は神社へと足を運んだのであった。

 

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境界の神社。

夏の不安定な天気の影響で夕立でも降ったのか、地面には水溜りができていた。

これでは湿気がひどくて樹海と同じではないか。

桜子はちょっと後悔しながら神社の境内へと降り立った。

 

 

  桜子 「ああ、せっかくの森林浴が台無しよ。

      神社も特に変わったところは無いみたいだし・・・

      あー湿気でじめじめ・・・しない。」

 

 

神社周辺の上空ではそれなりに湿気を感じたはずだったのだが、境内に入ると

そういったものは感じられなかった。

 

 

  桜子 「あら、やけに快適ね。 それなりに雨が降ったように見えるんだけど。

      これも何かの影響かしら?」

 

  ? 「蒸し暑かったから私が散らせたのよー。」

 

 

声のする方を見ると、神社周辺では見かけない妖怪が木陰で休んでいた。

どうやらこの妖怪が湿気を何とかしたようだ。

 

 

  妖怪 「私はあらゆるものを散らせる事ができるのよ。

      寝てたら急に振ってきたもんだから、ちょっと濡れちゃったわ。」

 

  桜子 「おかげでこっちも快適だわ。 便利な力ねえ。」

 

  妖怪 「別にあなたの為に使ったわけじゃないんだけどね。」

 

----------

 

  桜子 「ところで、この辺りでは見ない妖怪ね。」

 

  妖怪 「居場所が無くてねぇ。」

 

 

妖怪の話によると、定住先を探してぶらぶらしていたが

どうにも住みにくい場所ばかりで結局この神社に辿り着いたのだという。

今妖怪の間で、この神社はヒーリングスポットとしてそれなりに有名なのだそうだ。

 

 

  桜子 「妖怪が神社で癒されるなんてのもおかしな話よね。」

 

  妖怪 「時代は変わるものなのよ。」

 

 

  妖怪 「ところで、この神社の結界の向こうには妖怪の楽園があるんだってね。

      こちらの世界では無くなってしまったり、幻想のものになってしまった物が

      向こうでは生き生きとしているとか。」

 

  桜子 「楽園ねぇ、結界の向こうがどうなってるのかは知らないけど

      特に興味は無いわね。

      あんたこそ、居場所が無いならその楽園とやらを目指してみたらどうなの。」

 

  妖怪 「まあ、一時はそう思ったんだけどね。」

 

妖怪の話によると、結界の向こうにある幻想郷と呼ばれる世界には

この世界で幻想となった物が流れ着き、昔のままの人間と妖怪、自然の姿が

あるらしい。

だが、その話が本当であればこれから先の未来、幻想郷が妖怪にとって

住み良い場所であり続けるかどうかはわからない。

 

この妖怪はそう思って、この世界に留まる事を選んだという。

 

 

  妖怪 「今までにこの世界から消えていったものは、我々にも

      馴染みのある物が多かった。

      でも、今この世界はほとんど人間だけの社会。

      

      これから幻想となって向こうへ流れていくのも

      人間が人間の為に作った物や技術なのよ。

 

      それが、我々妖怪にとってどういった影響を及ぼすのか。

      今の状況を見ればわかる事じゃない。」

 

  桜子 「まあ、そんな事もあるかもしれないわねぇ。」

 

  妖怪 「あなたこそ、興味は無いって言ってたけど

      何か思うところがあったんじゃ無いの?」

 

  桜子 「楽園には浪漫が足りないのよ。」

 

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しばしの間、神社を眺めながら森林浴を楽しんだ後、妖怪はどこかへと去っていった。

途端に湿気が舞い戻り森林浴はもうだめだと思い始めた頃、

見慣れた顔ぶれの妖怪達が神社に集まってきた。

 

あの妖怪が神社周辺の妖怪を散らせていたのか、一斉に集まっては

早くも宴会の雰囲気となっていた。

 

 

  桜子 「歴史は繰り返す・・・ってね。

      人間と同じにして貰いたくは無いわねぇ。

      興味なんて無いけど。」

 

 

そろそろ陽も沈む時間。

この時間を乗り切ればそれなりに涼しくなってくるだろう。

ついでなので少しの間暑さを我慢して宴会に便乗する事にした。

 

 

 

 

 

霞散らす山風

○九寫水 美寿華(Kushamina Mizuka)

 

結界の外を漂う妖怪。

あらゆるものを散らせる程度の能力を持つ。

 

居場所を無くして各地を転々としている妖怪なのだが、

元々放浪癖がある為、過去に定住先があったのかは不明である。

居心地が悪くてどこにも足を止める所が無いと言う意味なのかもしれない。

 

彼女の能力は湿気や雲をはじめ、花粉や恋心、人の流れなど

多岐に渡って影響を与える。

桜子と違い本物の桜吹雪を起こす事が可能な為、花見シーズンになると

嫉妬の対象となる。


 
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