――どこかをみている。
だから、どこもみていない。
かつん、かつんと石畳を叩く音。
やがて絨毯を踏みしめると、その女の子はひざまずきました。
「あら、今日もきれいな髪ね」
女の子に声をかけたのは、玉座に座っていたひと。
どくろに撫ぜられた、光を失った女の子。
――なにもみていない。
だから、すべてをみている。
ひざまずく女の子は自分の黒い髪を少し見て、どくろの女の子に頭を下げました。
「ありがとうございます、主」
「思ったままを言っただけよ。顔を上げなさい」
黒髪の女の子は、目の前を見据えます。
玉座から立ち上がった女の子は、真っ白でした。
服も、肌も、髪も、瞳さえも、眩いほどの白。
うつろな目は光を映しませんが、それでも彼女はみていました。
「呼んだ理由は、わかっているわね?」
「はい、私も感知いたしました」
「話が早いわ」
優しげな声をしたその女の子――『しろのやみ』は満足げにうなずきました。
「さあ、行ってらっしゃいな。ネズミさんを駆り出しに」
「はい――――仰せのままに」
ひざまずいていた女の子は、真上に高く飛び上がりました。
お城の最上階、玉座の間からは満点の星空が見えます。
「……そう。ネズミを駆り出しに行くのよ、月の字……マツヨイ」
高く遠くへ飛ぶマツヨイを感じながら、『しろのやみ』は玉座へと戻り祈ります。
どうかこれが、ハジマリになりますよう。
マツヨイがもっと強くなれますように。
『しろのやみ』はまだみぬ者に思いを馳せながら、浅い眠りにつきます。
どくろが撫でる、『しろのやみ』。
やがて瞬く星の下に、マツヨイは下り立つでしょう。
◎あとがき
金色の闇とかとも関係ないですよ
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高くそびえるお城、二人の少女。
ほんのささやかな、お話の始まり。
連載型童話風厨二病小説、開幕。
黒星紅白さんとはなんら関係がありません。
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