「長!大変だ!!」
「どうしたんだ?そんなに慌てて?」
「あの賊に落とされた街を覚えてるだろ?」
「あの、俺達が復興を目指している街だよな?」
「ああ、そこに大軍がきたんだとよ!!」
「な、なんだって!?」
朝食を食べ終えまったりしていたところに舞い込んできた情報に緊張が走る。一刀はすぐさま、左慈達を読んでくるように頼んだ。
「北郷!!」
「聞いたか?」
「ええ、大変なことになりましたね」
「でも、なんであそこに集まってきたんだ?」
一刀は今回のことに不思議に思っていた。何故、廃墟になった街に大軍が集まっているのかということに。そんな疑問に于吉が答えてくれた。
「私が集めた情報から推測できることが一つありますね、最近多発している賊のことを知っていますよね?」
「ああ、黄色の布を巻いた奴らのことだろう?」
「ええ、その者達を討伐しようとついに官軍が重い腰を上げたそうですよ」
「でも、それだけじゃどうして街に集まったのかわからないよ?」
「ここからが本題ですよ。その動き出した官軍は各地の諸侯にも協力を要請しまして賊討伐を行い始めたそうです。そして、つい最近、主力の一つである大軍が壊滅したという情報が入りまして。今回、街に集まっているのはその生き残りではないかと」
「なるほどね。そこで再起を図ろうとしてるのか」
「ええ、廃墟だから目くらましにもなるというのもあるでしょうし」
于吉の推測に納得する一刀と左慈。だが、気を抜くことは出来ない。ここが見つかればたちまちそいつらはこの村に侵攻し、略奪をしていくだろう。再起を図る為に、何より生き残る為に。
「どうする?」
「こっちも戦う準備をするしかないだろ?」
「・・・そうだな」
「俺達が復興した村をむざむざ襲わせるか!」
「「おう!!」」
これは、大軍に立ち向かうおせっかいの物語である。
村人に事情を話すと、50人の人達が兵に志願してくれた。少ないと思う。しかし、まだ、小さいこの村での50人である。むしろ、これでも集まった方なのだ。志願してくれたことにありがたい気持ちと申し訳ないと思う気持ちで複雑な心境の一刀。だが、時は待ってくれない。
「では、偵察を出しますか」
「そうだな。相手の情報がないことにはこちらも迂闊に動けんからな」
于吉は志願兵の中で身軽な人を数人選ぶと、敵の情報を得るべく街へと向かうのだった。それを見送ると、左慈は残った兵達に戦い方を教えるべく場所を移動する。自分達に出来ることをやっている二人を見た一刀も、迷いを捨て今出来ることをすべく動き出そうと自分の顔を叩き、気合を入れなおすのだった。そして、兵糧の準備に取り掛かる。
その夜
一刀、于吉、左慈、管輅の四人は中央に置いた竹簡を囲うように座っていた。議題はもちろん、街に居ついてしまった、黄巾の奴らのことだ。これから、各自の持っている情報を出し合い、どう乗り切るかを話し合おうとしていた。
「では、軍議を始めます。なお、ここからは軍師として私こと于吉が進行させて頂きます」
「よろしく頼む」
「はい。では、まず我が軍の状況を教えて頂けますか。左慈」
「ああ、俺からは我が軍の調練具合だ。とりあえず、複数対一で戦う方法を教えたというところか。さすがに畑仕事で基礎体力だけはあるのだが・・・まだ、実践に出すまでには達していない」
「わかりました」
左慈の報告にはあまり顔色は変えない面々。ある程度予想は出来たことだった。そもそも、志願兵が集まったのは今日なのだ。まともな調練を初めて行った日に、実践に出せるレベルまで達することなど不可能なのだから。
「続いて、北郷」
「了解。俺は兵糧の方の準備をした。一週間は持つだろう」
「十分ですね。我々が勝つには短期決戦しかないのですから」
そう。今回はいかに相手を策にはめ、短期で決着をつけるかによって勝敗が決まる。長期になれば、数で勝る敵の有利。普通に戦っても同じだ。一刀達が勝つ方法は一つ。敵を策にはめて混乱させたところ、敵の頭を叩いて降伏を迫るのだ。
勝てる可能性は低い、だが自分達が汗水垂らして必死で復興した村なのだ。むざむざとくれてやるわけにはいかない。これは絶対に負けられない戦いなのだ。
「では、私からの報告ですね。敵は情報通り、あの街を陣取ってます。敵の規模およろ千人です」
「「千人!?」」
「俺達の20倍か・・・」
その圧倒的な数の差に愕然とする一刀達。その絶望的なまでの戦力差に早くも諦めてしまいそうになったが。
「(パシッ!)何か策はあるか?」
頬を叩き、弱気な心を追い出すと勝つ為に意見を求めた。それは。左慈達も同じだった。
「ええ、策はあります」
「奴らの好きにはさせん」
二人も村で過ごしている内に変わってきたようだ。村人と笑顔で会話する光景を見られるようになっていた。ただ、左慈は口下手なので、あまり話さないが。それでも、嫌な気分になるようなことはない。村人も左慈は話すのが得意ではないことを知っているから。そんな居心地の良い場所を無くしてはなるかと勝つ為の策を考えたのであった。
「大軍になったら何に気をつけるべきだと思いますか?」
「・・・全員の統制がとれているかどうか、かな?」
「はずれです。正解は・・・食糧です」
「確かに空腹では士気もあがらんし、戦えないからな」
「そうか!」
「ですので、まず私が先行して街へと侵入し、相手の食糧を強奪します」
于吉の作戦は以下の通りである。
第一段階
その一、于吉が数人と共に街に侵入し、食糧を奪う
その二、左慈が兵の半数を連れて街より数理離れた場所に陣を張る
この時、陣は街を挟んでこの村の反対側に位置するように張る。
その三、一刀は残りの兵のさらに半数を連れて左慈の後方に数理ずつ離し等間隔に5つの陣を張る。
その四、管輅は残りの兵を連れて5つ目の陣を張るさらに後方に同じく等間隔置いた場所に罠を仕掛ける。
第二段階
その一、食糧が無くなっていることに気付いた賊が動き出す
その二、于吉が左慈と合流、賊の注意を引き、陣で持久戦を行う。
その三、ある程度時間を稼いだら、後ろの陣へと撤退。それを繰り返す。
その四、一刀は管輅と合流し、罠を完成させる。
その五、左慈、于吉は最後の陣から撤退したら左右に別れて逃走開始。
最後に罠を発動し、賊を殲滅する。
「というわけです」
「策はわかったが、疑問が二つ。一つは賊を左慈達だけでどうやって抑えるか。もう一つは罠って何を仕掛けるんだ?」
「それはですね・・・」
于吉は質問に答える。
「なるほどな・・・その手で行こうか」
「わかりました。それから管輅に聞きたいことが。当日の天気はどうでしょう?」
「・・・雨です」
「好都合ですね。これで作戦成功率が上がりました。では、準備に取り掛かりましょう」
「「「おう(はい)」」」
一刀達は決戦に向けて準備を行うのであった。
「どうしました?」
その日の就寝時。外で空を見上げていた一刀に気付いた管輅は声をかけた。いつもなら、自分が趣味で見上げているのだが、今回は珍しく一刀である。自分に付き合っている内に趣味に目覚めたのか?と思っていたが、顔を見た瞬間にその答えは打ち消した。
「あっ・・・管輅さんか」
一刀の顔には不安の為か、それとも恐怖か、浮かない表情が浮かんでいたのだから。管輅に気付いた一刀の顔は、ホッとしたような表情に変わっていた。
「星見ですか?」
「うん。ちょっとね。考え事してたから、こうすれば落ち着くかな?って思ってさ」
一刀は再び空へと視線を戻す。今、彼が考えていることはなんなのか?管輅にはわからなかった。
「これから・・・戦が始まるんだよな」
「ええ、でも私達の村を守る戦いです」
「うん。わかってる。絶対に負けられない戦いだって。それはわかってるんだけど。管輅さんは知ってるだろ?俺が異世界から来たってこと」
「そうでしたね。普段一緒に生活してるので、忘れてしまいがちですが」
「そこではね。戦なんて縁遠いところに住んでた一般人だったんだよ。そんな俺が今や人に指示を出して戦に赴こうとしてるんだから。何が起こるかわからないよね」
その言葉を聞いて、ようやく管輅は一刀が何を考えているのかがわかった。彼は、戦に不安を感じていたのだと。そこで行われる殺し合いを想像して。戦のない場所からきたというからには凄惨な惨状など見たことがないのだろう。それを見るようになる。自分が起こすようになるということに恐怖しているのだ。怖くないはずがない。彼の言葉を信じるなら、一般人であった身ならなおさらに。
「ですが、皆あなたを慕っていますよ。あなたがどう思おうと皆の中心にいるのは間違いなくあなたです」
本当なら不安を打ち消すように慰めるなり、活を入れたりする場面だろう。けれど、管輅はそんな言葉など持っていない。持っていないが、何かを言わないといけないと思い、彼女なりの言葉を発した。その言葉で一刀は今朝の志願兵を募ったときのことを思い出す。
「みんな聞いてくれ!」
村の中心で大声を出す。近くの街に再び賊が集まっていること、ここが見つかればそいつらがなだれ込むであろうこと、そうなる前に村を守る為に戦うことを。
「だから、俺と一緒に戦って欲しい」
心からの願いに、50人の兵が集まった。彼らはいずれも一刀に何かしらで助けられ、この村で暮らし始めた人達だ。
「今の俺らがあるのは長のおかげだ」
「それに、この村は俺らの故郷。それを賊なんぞに潰されてなるものか!」
「こんな居心地のいい村なんてねぇ。こんないい仲間達に巡り合えた、人の優しさに触れられた。そんな場所を守る為なら、俺は喜んで付いていくぜ」
村人の言葉に胸が熱くなった。そう、彼らの心意気の為にこの戦逃げ出せない。それに、管輅、左慈、于吉達と一緒に生きていく約束も果たさないと。自分の信念を曲げない為に。様々な想いが合わさり、一刀の中で覚悟が固まっていく。そして、両手で気合いの一叩き。自分の両頬を思いっきり叩くと。
「ありがとう。管輅さん。おかげで覚悟が決まったよ」
「いえ、私は何も・・・」
「そんなことない。君の言葉で俺のやるべきことが再確認できたんだ。だから、ありがとう」
管輅に、自分のやるべきことを思い出させてくれた彼女に、感謝するのだった。
だから、彼女も一つの決心をする。
「白士さん。この戦が終わったら、伝えたいことがあります」
三日後
「では、私達は出発します。皆さん、符を肌身離さず持ってて下さい。それが、敵から身を隠す役割をします」
于吉は50人の中から5人の人を選び、隠行の符を持たせる。これは以前、自分達が隠れていたときに使っていた術を符に込めたものであり、これを使って街に潜入する計画である。そして、食糧の強奪といったが、さすがに千人規模の食糧の強奪は難しいので隠行の術と人払いの術で食糧を隠すことになっていた。これは、この戦の勝利後のことを考えての複線でもあるのだが、今は関係ないので割愛する。
「気をつけろよ」
「心配いりません。そちらもへまなさらぬように」
「ふん。それこそ無用な心配だ」
「ああ、こっちもこっちでやってやるさ」
「そうです。抜かりなく・・・」
「そうですか・・・ではこれより、出陣します」
符を身につけ姿を消した食料強奪隊は、敵の本拠に向けて出陣した。それを見送った後、出陣する気配を見せたのは左慈と一刀である。
「じゃ、俺らも行くか」
「ああ」
「ご武運を」
左慈と一刀も志願兵を引きつれ、自分達の役割を果たす為に出陣した。
「皆さん、ここからは音を潜めて下さい。姿を消していますが、音を消しているわけではありませんので」
「「「「「御意」」」」」
于吉率いる食糧強奪隊(隠匿隊でもいいが)は敵の本拠に侵入した。
「ここからは手分けして食糧庫を探しましょう。半刻後にここに集合して下さい」
「「「「「御意」」」」」
いよいよ、食料隠匿を開始し、本戦を始める前の前哨戦が始められるのであった。
「もっと高く積み重ねたほうがいいな」
「御意」
「隊長~。矢はここに設置しておきますよ」
「わかった」
一方、こちらは左慈の隊。現在、急ピッチで陣の作成に取り組んでいる。この隊の役割は敵の足止めと時間稼ぎだが、正面からぶつかってしまっては数の暴力により、すぐにやられてしまう。その為、ここでは矢による遠距離攻撃が主体となる。その為の隠れ蓑として土を積み上げて、壁にしてそこに身を隠しながら攻撃することにしていた。
「長~!こっちは壁が出来たぜ~」
「おう!そしたら、あっちのほうを手伝ってくれ」
「御意」
「長。矢の用意が出来たぜ」
「よし。次の陣の作成の準備をしておいて」
一刀隊の方も急ピッチで陣の作成に取り掛かっている。こちらのほうは同じ陣をさらに後、3つ作成しないといけない為、左慈隊よりも早く陣を作り上げなければならない為、慌しく動き回っている。
「みなさん。ここで少し休憩しましょう」
「わかりました。ですが、急がなくてよろしいのですか?」
「言いたいことはわかります。到着するのが早ければ早い程いいですからね。しかし、私達には体力というものがあります。無理に移動すれば身体を壊してしまい、作戦どころではなくなってしまいますから」
ここは管輅隊。管輅隊は一刀、左慈隊とは違い、まだ目的地に到着していなかった。管輅隊は一番遠い地での作戦な為だ。その上、大規模な罠の作成もしなければならないという部隊であった。
「管輅様、もうよろしいのでは?」
「・・・そうですね。みなさん、もう一走りです。いきましょう」
「「「「「御意!」」」」」
場面は再び戻って于吉隊。
「こことここと・・・なるほど。食糧庫を複数用意してそれぞれ別のところに置いてあるというわけですね」
「へい。見張りもそれぞれいました」
「それは問題になりません。この姿を隠している状態ならね。では、早速隠しに取り掛かりますよ」
「「「「「御意」」」」」
于吉の策は順調に進んでいた。
そして。
ここから、一刀達の戦いが始まる。
于吉隊が食糧を隠して10日が経った。
「腹減った~・・・」
「飯は?飯はどこにあるんだ?」
「食い物よこせ~・・・」
飢えた賊達が食糧を求めて彷徨う。空腹は限界にきていた。食糧を失った賊達は何もしなかったわけではない。あるときは食糧を略奪する為に周囲に村や街がないか偵察に行かせた。が、偵察に行かせた者達は全員帰ってこなかった。別の者をさらに偵察に送ったがその者達も帰ってこないのだ。周囲に街が存在するのかわからないまま、大勢を引き連れて動くのは官軍に見つかる恐れもあるので出来ない。だが、偵察は帰ってこない。その状態が10日も続いて、彼らも限界に近づいていた。
「そろそろ頃合ですね。次の作戦に移りましょう」
賊達の様子を伺っていた于吉は、頃合と見て次の作戦に移る。
「お、おい!あれ・・・」
「あ、あれは!?荷馬車か!?」
「ってことは食糧が!!」
「よっしゃ!奪ってやれぇええええええええ!!」
賊達の目に映ったのは、馬車を引く数人の男。実はこれ、于吉隊の人間である。荷馬車に乗っているフリでああり、実際に馬車に入っているのはおにぎりが一つである。そうとは知らない賊達。馬車の中にはぎっしりと食糧が入っているに違いないと勘違いして物凄い勢いで迫る。砂糖に群がる蟻の如く、それでいて何も考えずにただ荷馬車を目指しては駆けていく。その数、街に滞在していた賊の大多数であり、ほぼ全員に近い数をつり出すことに成功したのだった。
「おい。かかったぞ」
「よし。全力で逃げろ!」
賊に気付いた于吉隊は賊から全力で逃げる。左慈隊が待機している陣に向かって。
「隊長!きました!!」
「よし。弓構え!!合図と同時に撃て!いいな?」
「「「「「「「「「「御意!」」」」」」」」」」
こちらに全力で逃げてくる于吉隊を視界に入れ、左慈は距離を計る。そして・・・。
「てぇ!」
合図と共に矢が放たれた。
「ぎゃあああ!」
「いてぇ!いてぇよ!!」
「うわああああ」
「矢がとんできたああああ!!」
先頭を走っていた賊に矢が当たる。荷馬車のことだけを考えていた賊達は飛んできた矢に対応できるはずもなく、無防備に矢を受けてしまう。矢に当たった賊は走っている勢いそのままに派手に転倒した。さらに、その後ろを走っていた賊も避けきれず巻き込まれて転倒。まさに転倒の連鎖反応である。
「よし!そのまま打ち続けろ!」
自身も矢を放ちながら指示を飛ばす左慈。左慈隊の面々も忠実に指示をこなしていく。そこに逃げてきた于吉隊も合流し、数人を除き矢を放つのに加わる。
「左慈!私達も協力します」
「無事だったか」
「ええ。見ての通りです。策はこちらの計画通りに進んでいますよ」
「ああ。だが、油断するな。ここからが勝負だぞ」
「もちろんです!さあ、于吉隊も撃ちなさい!」
「御意!」
于吉隊も加わり僅かだが、矢の数が増えた。それに比例して賊への被害も大きくなるかと言えばそうでもない。最初は意表をついた攻撃だったものの、賊もだんだんと矢に対応してきた為である。
「くっ・・・打ち落としてけ!数はそんなにないぞ!」
「そうだ。こっちは数で勝ってる。慌てずにいけば対応できるぞ!」
冷静に飛んできた矢を武器で打ち落とし始めた賊。武力がそんなにあるわけではないが、矢を放っているのは十数人と少数であるのに対して、こちらは数百人という数である。一本くらい打ち落とせるし、黒いやつは仲間を盾にすることまでやってのけていた。
「左慈」
「ああ、奴らが対応し始めたな」
「では、次の段階に移りましょう」
「ああ。総員!矢を放つのやめ!後陣まで撤退開始!」
于吉と左慈は矢に対応し始めた賊を冷静に確認すると、素早く後ろの陣に撤退する指示を出す。隊員も指示に反応し、あっさりと撤退を開始する。そして、ここからがまた于吉隊の出番である。彼らは持ってきた荷馬車を放棄したのだ。そして、予めこの陣に用意してあった荷馬車を于吉が陰行の術で隠すと、後陣に向けて引き始め速やかに撤退したのであった。
「奴ら撤退を始めたぜ」
「敵わねぇと悟って逃げ出したんだぜ。ほれ、荷馬車があるぜ」
「よっしゃ!いただきでぇ!!」
これがある意味、于吉の考えた究極の策かも知れない。
荷馬車の中身を頂こうと駆け寄った賊達は中身を見て驚愕する。
「・・・・何もない・・・だと!?」
そう、荷馬車の中を見た瞬間にわかる。そこに荷物が置いていないことが。いや、置いてあるには置いてあった。馬車の中央にぽつんと置いてある。おにぎりが一つ。それだけだ。後は荷物どころか何も置いてないのだ。賊達の期待は一瞬で崩された。それでも彼らは絶望していなかった。何故なら、彼らは見ている。この荷馬車を引いていた人間が逃げるところを。それを追えば荷物を奪えるかもしれない可能性があるから。何よりも、目の前におにぎりが存在しているのだ。逃げていった奴らを追うのは後だ。今はそれよりも空腹を満たしたい。それが、この場にいる全員の一致した考えである。
「飯だ・・・飯だ!」
「おお!やっと食え・・・」
ここでようやく彼らも気づく。おにぎりが一個しかない現状に、空腹で飢えている人間が多数。この場合、全員でおにぎりを分けるのは無理。いくらなんでも人が多すぎる。ということは食べられない人が出るというわけで・・・。10日も食べていないのだから、我慢するという選択肢は存在しない。どうやって自分がおにぎりを食べようかという思考になるのは当然のことだった。
「俺が食う!」
「ふざけんな。俺が食うんだよ!」
「てめぇなんぞに食わせるか!俺のもんだ」
「はっ!俺のもんに決まってんだろうが!」
やがて火種は大きくなり、ついには撤退した左慈隊達のことなど頭からなくなり、おにぎりを巡る醜い争いに発展するのであった。
「よこせぇえええええええええ!」
「ぎゃああああああああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぐがあああああああああああ!」
そこはさながらに地獄絵図のようである。一つのおにぎりを巡り、何人もの人間が群がる。おにぎりを食らおうとする邪魔者は容赦なく切り捨て、強い者だけが残っていく。生き残った者は傷を負いながらもおにぎりを食べられた強者と、早くから自分は無理だと争いに参加しなかった傍観者のみ。おにぎり争奪戦に参加したものは悉くが死亡した。普段なら、その中にも何人か生き残りがいてもよさそうなのだが、空腹により抵抗力が落ちており、傷を受けた衝撃と出血した為に死亡して行くのであった。
「はむっ!んぐ、むぐ・・・んぐっ!ふぅ、久しぶりの飯は上手いぜ。ん?」
これが彼の最後の言葉である。最後まで残り念願のおにぎりを食した男は、他の生き残った者達の嫉妬から殺されてしまうのであった。おにぎりもなくなり、多数の犠牲を出した賊達。それでも飢えを満たしたわけではない。彼らはここで漸く撤退していった左慈達を思い出す。彼らの考えは一つ。奴らを襲って食糧を奪う。それだけ。
「食い物だ!」
「奴らを追うんだ!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
獣のような咆哮を上げ、彼らは進軍を開始する。
荷物を奪う為、飢えを満たす為、生きる為に・・・。
「やれやれ・・・あれでは、獣と変わらないではないか」
彼らが左慈達を追って猛然と進軍している後方で、そんな彼らを見下した視線を向けて吐き捨てる男達がいた。後に彼らの存在は一刀達の作戦の成功するかを左右する(悪いほうで)存在になるのだが、現時点で気付いている人はいなかった。
ギャグ一切なし!
そして、初めての前後編。
次回にこの戦いも決着をつける予定。
さらに、この作品のヒロインにも動きがあります。
そう、みんな大好きちょ・・・・(自主規制)
ごめんなさい。冗談です。
そんなおぞましい光景を私は書く気はないです。
まぁ、言わなくても本編を読んでいれば誰かはわかりますよねw
冷静に考えると、恋姫とうたって投稿している本作。
最近、恋姫キャラって男だけ・・・。
オンナノコ出してない。
これはまずい!
そろそろ話しを進めて出さないと。
これを読んでくれている読者様達の、なにより私の、女の子成分が不足してしまう。
というか、もうすでに不足してますが。
誰ですか?
ちょうせん出して、女の子分の代わりに補充すれば?と言っている人は!!(被害妄想)
とりあえず、新キャラを出すにしても。
この戦いを終わらせないと出せませんね。
頑張って書きます。
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お久しぶりです。
まだ、一ヶ月は経っていないと思いますが、それに近くなってしまいました。すいません。
今は、ネタが浮かびづらくなっていまして・・・。
正確には、ストーリーは考えているのですが、上手く話しが纏まらないという状態で・・・。すいません。
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