No.167675

真・恋姫無双 真夏の夜の黒い影

狭乃 狼さん

調子こいての夏祭りネタ第四段~。

思いついたんだからしょうがない(開き直り)。

たいしたもんでもございませんが、お付き合いください。

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2010-08-23 16:44:45 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:13321   閲覧ユーザー数:11561

 

 真夜中にね、なぜか誰もいないはずなのに聞こえる音、皆さん覚えがありますよね?

 

 明かりをつけても姿は見えず、再び明かりを消して寝ると、やっぱり聞こえる。

 

 ほら、今もそこで。

 

 カサカサ、カサカサ、カサカサ。

 

 「……何なのよ、一体。気になってちっとも眠れないじゃない」

 

 きょろきょろと。部屋の中を見渡す私。

 

 気配は確かにする。でも、姿は確認できない。

 

 「……どうしたんだよ、こんな夜中に」

 

 隣でぐーすか寝ていた一刀が、私が起きたのに気づき、寝ぼけながら目をこする。

 

 その時だった。

 

 ひゅ~ん。ぴと。

 

 どこからともなく飛んできて、一刀の”あれのところ”に、そいつはトマッタ。

 

 「……い」

 

 「……何だ?」

 

 真っ暗なので、まだ目がなれてなくて姿の見えていない一刀が、そいつに手をやろうとする。

 

 「……い、いやああああああああ!!」

 

 気がついたら、私は思い切りそいつを、近くに置いてあった竹簡で、一刀”あれ”ごとぶん殴っていた。

 

 すっぱーん!!

 

 と、いい音をさせて、一刀はその場に、泡を吹いて、悶絶した。

 

 「何が……、何なんだ……。がく」

 

 

 

 「で、結局どういうことなわけ?」

 

 「いえ、ですからその、……が出たんです」

 

 「え?なに?聞こえないわよ桂花。夕べ、どうしてか知らないけど、一刀の部屋にいて何が起こったのか、ちゃ~んと、話して御覧なさい?」

 

 ごごごごごご。

 

 そんな効果音が聞こえてきそうな、「私怒ってるのよ?」的な表情とオーラを漂わせた華琳さまが、私を笑顔で見つめつづける。

 

 「いえその、ですね。昨日は、その、ほ、北郷と遅くまで残業をしておりまして。その」

 

 「そう。それはご苦労様ね。で、何でそれで一刀の部屋に泊まることになるのかしら?」

 

 ごごごごごごごごごごご。

 

 さらに強くなった効果音を背負い、さらに見たこともない笑顔になる華琳さま。目、笑ってないけど。

 

 「けいふぁ?」

 

 「はひ!そ、その、こ、腰が、その……」

 

 「腰が何?立たなくなるほどしたとでも?なに?私に自慢?いい度胸ね、桂花?」

 

 どこから取り出したのか、絶を構える華琳さま。

 

 「ち!違います!その、長時間座りっぱなしだったのに、作業が終わってすぐ立ち上がったせいで」

 

 「……ぎっくり腰、ですか?」

 

 「……そうよ」

 

 稟の一言に答える私。何でか顔が熱いけど。

 

 「なるほど。それで、動けなくなって北郷に看病してもらっていたと」

 

 「そうよ!……けど、結局そのままあいつの寝台に一緒に寝る羽目になって、「ふ~ん。いっしょに?」(う;)し!仕方なくです!で!夜中にふと目が覚めたら、そしたら」

 

 「そしたら?」

 

 「……ヤツがいたのよ」

 

 『ヤツ?』

 

 全員が首をかしげる。

 

 「わからない?!あの、夏になると夜中に突然出てきて、部屋のそこかしこを駆け回る、黒光りして、一匹見つけたら三十匹はいる、全人類の敵よ!!」

 

 『……ああ~。”あれ”』

 

 どうやらようやく理解してもらえたようだ。

 

 

 

 「けど桂花、気持ちはわからないでもないけど、あれはやり過ぎじゃない?」

 

 「そうですね~。おにいさん、しばらく使い物にならないそうですよ~?いろんな意味で」

 

 「う」

 

 一刀は今朝から部屋に、こもりっきりである。というか、痛くて歩けないそうだ。……竹簡、結構硬いわよね?……ごめんなさい。

 

 「そ、それはともかく!やつがいる限り、いつまた同じ悲劇が繰り返されるかも知れません!華琳さま!ぜひとも討伐のご許可を!」

 

 「討伐、って。そんな大げさな」

 

 「いーえ!城中からヤツを一匹たりとも逃さず、完全に駆逐しなければいけません!ほら!いまだってそこ……に……」

 

 「?」

 

 頭に疑問符を浮かべる華琳さま。全員の視線は、その華琳さまが座る玉座。そこに、ヤツが、いた。そして、それは、飛んだ。

 

 華琳さまの、神聖なる、お胸様に。その、(わずかばかりの)谷間に。

 

 「?……ふぃsjd差おwp、qjしc!!!!!」

 

 すでに言語として成立していない、そんな悲鳴。

 

 今日、初めて私は耳にした。

 

 

 そして、始まった大作戦。

 

 名づけて、『油虫駆逐大作戦』!!

 

 まあ、まんまであるが。

 

 内容もどうということはない、城内の一斉大掃除。規模が少々違うことを除けば。

 

 徹底的に。塵ひとつ残さず。しずく一滴漏らさず。そしてそれは、城内のみならず、

 

 「町にもお触れを出しなさい!今日、いいえ!何日かけてもかまわないから、徹底的にヤツの息の根を止めるのよ!覇王たる私の名にかけて!!」

 

 それから十日ほども経っただろうか。

 

 陳留の町はごみひとつ、砂埃ひとつ落ちていない清潔な町になった。

 

 ようやく動けるようになった一刀が、

 

 「……おれが知らないうちに、何があったんだ?」

 

 「悪が滅んだのよ。一つの悪が、ね」

 

 「は?」

 

 わたしは今、とても晴れ晴れとした気分だった。

 

 そして、それから数日後の夜。

 

 

 

 「ん……、ちょ、ばか、そんなとこ……!」

 

 「ん……、可愛いよ、桂花」

 

 「べ、別にあんたに言われたって、うれしくなんか、ひゃう!」

 

 今日は、正真正銘、一刀と閨をともにしていた。

 

 べ、別に一刀がどうとかじゃなくて、そ、そう!これは華琳さまの命令だから!華琳さまに言われて仕方なく、

 

 「……ほんとーに、仕方なく?」

 

 「こ、心を読むな!馬鹿!変態!助平!」

 

 その時だった。

 

 そいつは、再びやってきた。

 

 ぴと、と。

 

 そいつは、一刀の”それ”に飛びついた。

 

 「え?」

 

 「き!」

 

 おもわず、近くにあった花瓶を、握っていた。

 

 「桂花!待て!落ち着け!んなもんで殴られたら今度こそしゃれにな」

 

 「きぃぃぃぃぃいやあぁぁぁぁあ!!」

 

 「やめれえええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そいつは、音もなく忍び寄り、突如として現れる。

 

 

 そして、気づけばほら、あなたのすぐそばに……。

 

 

 夏になるとやってくる、黒くて、鈍い光を放つ、ちょっとコニクイ、アイツ。

 

 

 みなさん。夏の夜には気をつけましょーね。くす。

 

 


 
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