No.166644

東方学園part1―始まりの日―

シェングさん

東方が幻想入りのようなもの。それなりの速度で書くつもりなので、要望があったら反映していきたいと思います。

2010-08-19 00:42:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3608   閲覧ユーザー数:3557

 私立東方学園――――現存している学園の中では、最も古い学園と呼ばれているところだ。成績をそこまで気にすることはなく。各自の能力を気ままに伸ばすことができる自由な校風が人気の一つとなっている。

 しかし、そんな学園にも裏はある。ある一定以上の力がないと足切りにされてしまうところだ。その力は何でもいい。絵が上手い・足が速い・勉強ができる。要は一芸に秀でていなければならないということである。

 

「面白い人材がまた来たようね……」

「えぇ、今年も面白くなりそうだわ」

 二人の声が室内で交わされる。お互いに扇で口元を隠しているが、その声色は喜びである。

「なにが始まるのかしらね」

「もう始まっているかもしれないわね」

 

 

 若葉が萌える今日この頃。一人の少女は走っていた。

「やばいやばいやばいやばい!」

 学校の銀時計の短針は8、長針は6を指している。

「初日から遅刻とかって本気(マジ)でやばいって!」

 息は切れ切れになってきていて、今まで空に浮いていた金髪は肩に触れてしまいそうだった。それでも歩くことは許されない。再び風に靡き始める金髪。朝に起こった出来事を悔やみながら、それでも彼女は風を切った。

 それでも無情にも鐘はなる。“キーンコーンカーンコーン“という音が耳に伝わると、自然と足も止まってしまった。血液が目まぐるしく動き、酸素を供給していく。一息ふぅ……とつくと先程までのことは忘れて、笑顔でまた歩き出した。

 

 

「出席を取りま~す」

 紫色の桜が煌びやかに書かれている扇を手に取り、出席簿を開き始める。だが、開くことはしなかった。

「そう言えば、初めてだったわね」

 どうやら忘れていたようだ。なんだかちょっと間が抜けているような先生に思い、教室の中では笑いが起こった。

「私の名前は――――――――」

「よっしゃあ! ぎりぎりセーフだぜ!」

 …………何とも言えない空気だ。勢いよく入ったはいいが、一瞬で教室内の雰囲気が寒くなってしまったのは言うまでもないだろう。

「コホン……私の名前は西行寺幽々子ですわ。西行寺先生でも幽々子先生でも幽々先生でも好きなように呼んでくださいな」

 わざとらしい咳払いの後に名前が紹介された。ひらがなで表わすと「ゆゆこ」。この名の通りふにゃふにゃした先生で、いつもとぼけて肝心なことはあまり話さない先生だった。一言でいえばつかみどころがない人である。

 

 

「お、霊夢もここなのかー」

「あら、誰でしたっけ?」

「ひどいな、私だよ私……霧雨魔理沙だよ」

「……………………?」

 静止した空気が二人の間を流れる。え、本気なのか? 私のこと忘れてしまったのか? そんな思いが魔理沙の中にはあった。

「ぷっ」

 目のまえの霊夢と呼ばれた人が笑い始める。

「冗談よ冗談。魔理沙を忘れるわけないでしょう?」

 と言いつつもお腹をかかえて笑い転げそうになっている。一発叩いてやりたかったが、覚えてもらっていてよかったという安堵の心の方が大きかった。

「霊夢さん霊夢さん」

「うわぁ!?」

「どうしたんですか?」

 霊夢は気付いていたようだった。うぅ、ちょっと声を出した私が情けないぜ……

「学級委員長を誰かにやってもらいたいと思っていたのですが、霊夢さんやっていただけますか?」

「えー私がですか……」

少し悩んでいるようだ。そして私と目があった。

「魔理沙やれば? あんたがやるなら私は副委員長でもいいわよ?」

「えっ?」

 私の勘は全然当たらない癖にこういう悪い勘は、当たってしまうと言う空しい的中率がある。

「ね? お・ね・が・い」

 霊夢が私の肩の上に手を乗せてくる。何か危機迫ったものを感じた私は、断ることはできずにコクコクとうなづいてしまった。

「あら~じゃあお願いするわね~」

 幽々先生は和やかな笑みを見せた後、音もなく離れて行った。

 

 

「あの先生やるわね……」

「霊夢さんー意識がどっかに行ってますよー」

 顔の前で手を振ってみるけど考えに没頭しているらしく、返事がない。

「そう言えば、幽々先生はなんで霊夢に推薦を?」

「あーそれは私が首席だからじゃない?」

「そっかー霊夢だもんなー」

 なに、驚くことはない。この私の幼馴染の博麗霊夢という人間は、テスト勉強はしてない。1日だけでいいんじゃない? そんな考えでテストを受けて楽々満点を取るようなやつだ。博麗神社の巫女、博麗霊夢と言えばこの町では知らない人の方が少ないだろう。

「なんにせよ魔理沙は頑張りなさいよ」

 にっこりと太陽のような笑み投げかける霊夢。正直気が重くて仕方ない。むしろ面倒事を押しつけたのはそっちだろう、と悪態の一つでもつきたいくらいだ。

「へいへい、わかりましたよっと」

 それでも、私は笑ってうなづくんだろうな。もう、何度も繰り返してきたやりとりなのだから。

 

 


 
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