No.165076

また来たのですか?~胡蝶の夢~参

TAPEtさん

華琳があれを着た姿が目に浮かんで一人で十五分ぐらい笑っていたら家族たちが哀れな目で見ています。

無理もない。

2010-08-11 21:57:37 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2284   閲覧ユーザー数:2081

華琳は、

 

それから何日が経って、その夢のことをすっかり忘れていた。

 

それも仕方なかった。

 

そのことがあった直後、三国合同で行う数々な行事があって、そちらの準備をしたり、参加もしていたりして、色々と忙しかったのである。

 

そんな日々が続いて、華琳の疲れが溜まっていたある日、

 

桃香「あの、この前お茶がすっごく美味しい店を見つけたんですけど、皆で一緒に行きません?」

 

三国会議が終わった後、ふと桃香がそんなことを行ってきた。

 

華琳「お茶のおいしい店?それは私は知らないところかしら。とこにあるの?」

 

桃香「東地区のところです。三日前頃に新しく出来たところなんですよ」

 

北郷「ああ、あの喫茶店か。この前月ちゃんが推薦してたな」

 

蓮華「いいんじゃない。私は構わないわよ。華琳はどうする?」

 

華琳「そうね。この後特に用もないし、行くとしましょう」

 

桃香「やったー、じゃあ早速いきましょう」

 

華琳「ええ、それじゃあ」

 

席から立とうとした華琳はその瞬間、

 

華琳「っ!」

 

全身から血が抜けるような気分を感じ、席に腰を下ろしてしまった。

 

北郷「どうした、華琳?」

 

華琳「…いえ、何でもないわ」

 

桃香「大丈夫ですか?疲れてるなら無理して付き合わなくても…」

 

華琳「ちょっと貧血が来ただけよ。いいからさっさと行きましょう」

 

 

 

 

喫茶店

 

蓮華「うむ、いい店ね」

 

桃香「でしょー?」

 

北郷「…華琳、どうした?」

 

華琳「…ん?何がかしら」

 

北郷「いや、顔があまりはれてないのだけど…」

 

華琳「別に…ただ、期待したよりは以下だと思っただけよ」

 

桃香「え?」

 

蓮華「いくら華琳が味に厳しくても、これほどのお茶なのにおいしくないの?」

 

華琳「おいしくないわけではないわ。でも、なんていうか…」

 

すー

 

華琳「……」

 

北郷「何なんだよ?」

 

華琳「……とてもおいしいものを食べた後に、普通においしいものを食べたら、あまりおいしいと感じないというものかしら…」

 

北郷「つまりなんだ。華琳は最近これと比べ物にならないおいしいお茶を飲んだことがあるのか?」

 

華琳「それが、またそんなことがあったのかオモイ出せないんだよね」

 

すー

 

華琳「…ふぅ…」

 

桃香「…今日の華琳さんは、ちょっと変な気がしますね」

 

蓮華「やっぱりちょっと疲れてるんじゃないか」

 

北郷「やっぱりそうだな。最近、忙しかったから、少し休んだほうがいいぞ、華琳」

 

華琳「いきなり人を病人扱いしないでくれる?」

 

北郷「けど、」

 

華琳「私は大丈夫よ。もし体が悪くなったようだったら、私が何とかするわ。あなたたちが心配する必要はないの」

 

 

 

 

 

華琳「ふぅ…」

 

他の人にはそういったものの、自分も自分の異常さに気づいていないはずもなかった。

 

疲れが溜まっている?というにはそこまでだるいとかそういうものでもない。

 

どこか具合は悪いには悪いみたいだけど。

 

後で華陀にでも聞いてみようと思ってみる華琳であった。

 

華琳「今日はもう遅いし、明日にしましょうか」

 

そう思った華琳は、布団に入って目を閉じた。

 

 

・・・

 

 

玄徳「………誰かある?」

 

がらり

 

侍女「お呼びでしょうか、若旦那さま」

 

玄徳「お客さまです。着替えるようなものを準備して尋ねるように」

 

侍女「…はい?」

 

 

 

 

華琳「!!」

 

ここは…

 

気づいてみたら、いつの間にか私は立っていた。

 

そして、私が立っていた場所は私の部屋ではなかった。

 

華琳「どういうこと?」

 

ここは一体どこなの?

 

がらり

 

華琳「!!誰?」

 

侍女「お客さま」

 

華琳「…あなたは…」

 

この前夢で見ていた……

 

そう、私はまた夢を見ているのね。

 

侍女「若旦那さまがこの服を持っていくように仰ってました。どうか…」

 

華琳「服?」

 

そういえば、寝巻のままね。

 

今度は最初から着て寝ていたから……

 

華琳「いいわ。もらいましょう」

 

侍女「お手伝いいたします」

 

華琳「構わないわ。一人で着れるわ」

 

侍女「そうですか、では……」

 

がらり

 

華琳「……」

 

もらった服を見た。

 

 

…何でこんなに色がおおいの?

 

裾も広いし。

 

 

着替えを終わらせて外に出てみた。

 

空を見たら日が一番高い時だった。

 

夢だから時間なんてどうでもいいんだけど。

 

侍女「似合ってますよ」

 

外に出てきた私を見て侍女が言った。

 

華琳「…寝る時の服よりはマシでしょう…玄徳に会いたいのだけれど」

 

侍女「かしこまりました。こちらへ…」

 

私は侍女に案内されて玄徳がいるところまで向かった。

 

 

 

 

玄徳「…あ、孟徳殿、お久しぶりです」

 

部屋に入ったら、玄徳は私を待っていたのように嬉しく迎えた。

 

華琳「私が来るのを知っていたようね」

 

玄徳「なんとなくです。あの時から半月ぐらい経ちましたね」

 

華琳「そうかしら。すっかり忘れていたからね。ここの事は」

 

玄徳「……そうですか」

 

玄徳は少し残念だって顔をしながらも、微笑みは守っていた。

 

玄徳「いつものものを用意してくれ」

 

侍女「はい」

 

侍女が玄徳に命じられて部屋を出た後、私と玄徳は座った。

 

どうも床に座るのは慣れない。

 

玄徳「この前孟徳殿と話したいことは色々あったのですが、自分も用事があったし、その後孟徳殿も直ぐに戻られたようでして」

 

華琳「ええ、おかげでここが私の夢だということは解ったわ」

 

玄徳「夢、ですか?」

 

華琳「そうよ。少なくともここが現実ではないことは、確かね」

 

玄徳「現実ではない、ですか……それは少し不憫な話ですね」

 

不憫?

 

華琳「何故かしら?」

 

玄徳「孟徳殿には夢の中の世界かも知れません。でも、自分は、そしてここに生きている人たちには此処こそが現実。他の世界なんて存在しませんから」

 

華琳「……」

 

玄徳「何よりも、私は孟徳殿に会った以前にも、孟徳殿がいない間にも、ずっとここで日常を過ごしていましたから。少なくとも私にとってここは唯一な現実であります」

 

私にとっては夢でも、「夢」の住民にとってはこれこそが現実。

 

玄徳「胡蝶の夢…まさに孟徳殿が感じているのはそれでしょうね」

 

華琳「…そうね。どっちが私の夢でどっちが現実かがはっきりしていることを除いたらね」

 

玄徳「……さてそれはどうでしょうね」

 

華琳「??」

 

がらり

 

侍女「お茶をお持ちしました」

 

 

 

 

すー

 

玄徳が淹れた人参茶を飲んだ。

 

華琳「…なるほどね」

 

玄徳「はい?」

 

華琳「今日桃香たちとお茶にしている時に、何故かお茶がおいしくないかと思えば、そう…ここのお茶の味を思い出してそうだったのね」

 

玄徳「…それはこちらのお茶がそれほど美味しかったという意味で引き取ってもよろしいのでしょうか」

 

華琳「…惹かれる味よね」

 

玄徳「そうですか……その、桃香という方はそちらの友人で…」

 

 

華琳「……あなた、礼儀を知る者だと思っていたのだけれど?」

 

玄徳「??…あ、失礼しました。勝手に個人の事情を聞こうとして、」

 

華琳「違うわよ。あなた、本人が聞いてないところだからって人の真名を勝手に呼んでもいいと思うの?」

 

玄徳「真名…とは?」

 

華琳「?」

 

真名を知らないの?

 

…ああ、そういえば、一刀も最初の時は真名のことを知らなかったわね。

 

華琳「真名とは、その人と本当に親しい人にした許されない、その人の全てを表す真の名前。もし許されてない者がそれを口にすると、その人は首を落とされても文句は言えないでしょうよ」

 

玄徳「そんな風習があるのですか?それは大変失礼なことを犯してしまいました…」

 

華琳「まったくよ。でもまあ、本人もいないわけだし、私とって夢の中だからって助けてもらった人の首を簡単に刎ねてしまうほど冷血人じゃないから、今回だけは許してあげましょう」

 

玄徳「ありがとうございます…だとすれば、孟徳殿もその真名というものがあるのですね?」

 

華琳「もちろんよ。そこまで許してあげるほどやさしくはないけどね」

 

玄徳「あはは、そうですね…たった二回あっただけなのに、しかも夢の中に登場人物だと思われている自分にそんな大切なものを許してくださるわけが……」

 

話をしていた玄徳の口が急に止まった。

 

華琳「何?どうしたの?」

 

玄徳「…孟徳殿」

 

華琳「何?」

 

玄徳「何か、前に伺いたより具合が悪いように見受けられますが」

 

華琳「え?」

 

玄徳「孟徳殿だけよければ、医員を呼んで来ますが…」

 

華琳「私は別に大丈夫なんだけど。それに、あなた医者の心構えがあるの?」

 

たった二回見て私の些細な具合がどうか解るというの?

 

玄徳「いえ、そういうわけではないのですが…自分、少しそういう人の些細な体や心の差が見えるのです。その人の目を見たら」

 

華琳「目を?」

 

玄徳「はい、今の孟徳殿の目は、二週間以前に会った時よりその光を失っています。ほんの些細な差ですが…、もしよければ、一度医員に見てもらえばどうかと」

 

華琳「結構よ。私は別に疲れとか感じていないし、夢だからってこれ以上あなたに手間をかけたくもないわ」

 

確かに華陀に見てもらおうとは思っていたけど、まさか桃香たちだけではなく、こんな他人とも同じ男にまで気づかれるほどだったら、思ったより良くない状態かもしれないわね」

 

何より、夢の中でまでこの曹孟徳が人に心配をさせるなんて、昔の私だったら考えることもできないものなのに…私もゆるったのかしら。

 

玄徳「そうは仰いますが、体というものは、病気としてその症状が日常に支障を与えていたら、そこでもう手遅れというものです。診てもらって何もなければよしとして、一度会って見たらいかがでしょう」

 

華琳「……」

 

どうやら断わってもいいというまでずっと説得しそうね。この男。

 

どこかの誰かとそっくりだわ。

 

華琳「…いいわ。しかし、帰ったら華陀にでも見てもらおうと思っていたのだけれど、それほどの医員には見せてもらわないとだめよ」

 

玄徳「か、華陀ですか??」

 

随分と驚くわね。

 

喜びなさい、華陀。

 

あなたはこんなところでも相当有名になっているようよ。

 

 

華琳「随分と不思議な方法で診るのね」

 

医員「はい?」

 

玄徳「気にしないで続けてくれ」

 

どっちかというと、

 

治療の前に叫んだり気合入れたりするのがもっとおかしいといえばおかしいけどね。

 

・・・

 

玄徳「特に体に異常があるわけではないようです。ただ、随分気力がなくなっているようで、湯薬とかを飲みながら、二、三日は安定したほうがよさそうですが」

 

華琳「無理」

 

玄徳「でしょうね」

 

三日も休んでいたら国の仕事にどれだけ影響を与えるか想像もつかないもの。

 

玄徳「でしたら、湯薬だけでも…これが医員からもらった薬剤の目録です。お帰りになったら華陀殿にでも誰にでも頼んで作ってもらったらいいと思います」

 

華琳「あら、気がきくわね。ありがとう……」

 

まぁ、どうせ持って帰ることはできないでしょうけどね。

 

数はそんなに多くないみたいだから帰って自分で作っても……

 

玄徳「どうかさないました?」

 

華琳「…この紙、質がいいわね」

 

玄徳「はい?」

 

薬剤の目録を書いた紙をもらってみれば(竹簡でないこともびっくりだけど)、この紙、私たちのところのものとは比べ物にならないわね。

 

華琳「この紙、どうやって作るのかしら?材料は?作り方は?」

 

玄徳「さあ、それは良くわかりませんが…」

 

華琳「…」

 

夢……としてだけ扱うには都合がいいわね。良すぎる。

 

華琳「この紙をどうやって作るか、私がこの後来るまで調べてもらえるかしら」

 

玄徳「はい?…はぁ……」

 

・・・

 

・・

 

 

 

華琳「…うん」

 

…終わったの?

 

華琳「……っ!!」

 

何!?

 

何で夢の中で侍女からもらった服を、目が覚めたのにまだ着ているわけ?!

 

まさか、まだ夢の中。

 

コンコン

 

北郷「華琳?居る?」

 

華琳「か、一刀?」

 

北郷「やっぱちょっと心配でね。華陀に来てもらったんだけど、開けてもいい?」

 

!!

 

華琳「いや!ダメ!私がいいというまで絶対開けちゃダメだからね!」

 

北郷「華琳、どうした?」

 

こんな服着ているの一刀に見られたら恥ずかしくて死んじゃうじゃない、もう!!

 

玄徳!次に会ったら覚悟してなさいよ。

 

 

 

 

侍女「お客さまは、またお戻りになりました」

 

玄徳「そうか…次に来られるはまたいつになるものか」

 

侍女「随分と恋しいようですね」

 

玄徳「口が過ぎるとよくない」

 

侍女「あ、もうしわけありません。…しかしあの服、とてもお似合いでしたね。ふふふ」

 

玄徳「よもや言ってはダメだ。あれが子供が着る服だと知ったらあの方はきっと私を殺そうとなさるだろうからな」

 

侍女「ふふふっ、はい。しかし、まさかそれがぴったり合うとは流石に…ふふふ」

 

玄徳「…絶対にいうな」

 

侍女「ご心配なく」

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

朝鮮時代に子供たちに着せた服。

 

家で捨てるようになった色んな色の服の布を集めて、家で縫って作った場合が多いという。

 

最近もソルナル(正月)とかチュソク(お盆)みたいな時には着せる家もある。

 

もちろん家で作ってはない。


 
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