「陛下、天の御使い様がお見えになりました。」
側近の一人が私に報告してきた。
「分かったわ、早速こちらにお呼びして頂戴。」
「承知いたしました。」
そういうとその場から去っていった。
(さて、あの女性が言う青年はどういった方なんでしょうかね・・・?)
すると突然喉の奥から何かが込み上げてくるのが分かった。
「ッゴホ、ッゴホ!!」
咄嗟に手の平を口に当てた。
・・・咳が止んだ後恐る恐る手の平を見ると、そこには血が付いていた。
(残された時間も少ないようね・・・。さて、一体どうしたものか。)
私は手の平を見つめながら苦笑した・・・
俺達が帝都に着くと、そこで待っていたのは側近の方々だった。
「お疲れのご様子ですが、陛下がお待ちになっておられます。さぁ、こちらへ。」
俺達は休む暇無くそのまま宮殿へと向かった。
皆の顔を見ると、緊張しているのか強張っていた。
(まぁそれもそうか。これからあの霊帝に会うんだもんな・・・)
史実ではあまり語られていない霊帝。一体どんな人なのだろうか?
しばらくすると俺達は馬車から降りて宮殿の中へと案内された。
中に入るとかなり広く、俺達の城の倍以上の面積はあると思えた。
部屋の数もかなりあるらしく、そこらじゅうにあるみたいだった。
そうして俺達は皇帝の間へと辿り着いた。
「いいですか?くれぐれも陛下にご無礼が無いようにしてください。」
そう側近の人に注意された後、皇帝の間へと足を踏み入れた。
そこには豪華な玉座に座る一人の老人と、その傍で控える数人の側近がいた。
そこで俺は跪き、礼をした。
「お初にお目にかかります。陛下。」
俺の後に続き他の皆も同じようにした。
「そなたが天の御使いと言われる者か?」
玉座のほうから優しげな声が聞こえてきた。
俺が顔を上げると、そこには微笑みながらこちらを見つめる老人がいた。
「お前達は下がっていなさい。この者達と少し話したい。」
「し、しかし万が一のことがあっては・・・!!」
「大丈夫よ、この者達の目を見れば分かるわ。だから下がって頂戴。」
しばらく側近達は驚いていたが、老人の顔を見て頷き、その場から去っていった。
「貴女が皇帝陛下ですか・・・?」
桃香が緊張しながら聞いた。
「ええ、そうよ。この私が孝霊皇帝よ。巷では『霊帝』と呼ばれているらしいけど。」
霊帝はクスッと笑いながら言った。
「ごめんなさいね。私の側近達は何かと心配性が多くてね。こうもしないと堅苦しくて・・・」
「い、いえ!!とんでもありません陛下!!」
首をブンブンと横に振りながら桃香は言った。
その様子にまたクスリと笑いながら、俺の方へと顔を向けた。
「今回貴方達を呼んだのはね、私の夢にある女性から頼みがあったからなのよ。」
「頼み・・・ですか?」
「そう。管路という女性が私に話しかけてきたのよ。天の御使いである青年にあって欲しいとね。」
管路・・・またあの占い師か。
「それで、貴方に聞きたいことが一つあるのよ。」
「自分に聞きたいこと・・・ですか?」
霊帝はゆっくりと目を瞑りながら頷いた。
「・・・貴方は自分と仲間、それに民が危機に陥った時どうするのかしら?」
「・・・えッ?」
「三つの内、二つは救えても一つは見殺しにしか出来ないわ。・・・意地悪な質問ですまないけれど。」
霊帝の声は本気だった。
「・・・・・・。」
他の皆も俺を注目していた。
・・・どういう裏があってこういうことを聞いてきたのかは分からないけど、俺は・・・
「仲間と民を救います。」
俺は力強く言った。
その答えに霊帝は聞いてきた。
「貴方自身その二つを救うと同時に死んでしまうのよ?それでもいいのかしら?」
「はい、いいですよ?考え方を変えれば自分一人の命で仲間と民が救えるんですから、安いもんですよ。それに・・・」
「それにどうしたのかしら?」
「俺の爺ちゃんが言ってたんです。『どんなことでも仲間を見捨てるな。』って。だから他の人がなんと言おうと俺はこの考えを変えないし、変えるつもりもありません。」
俺は笑顔でそう答えた。
霊帝もその答えを聞いてニコリとした。
「それが貴方の答えなら、その思い貫き通しなさい。」
そういうと、霊帝は少し疲れたようで玉座にもたれかかるように座りなおした。
「今日はここで泊まっていきなさい。疲れもあることでしょうしね?」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えてそうさせて貰います。」
俺が再び頭を下げると、皆もそれに習って頭を下げた・・・
その日の夜・・・
彼女は寝台の上で静かに息を引き取ろうとしていた。
既にその体は結核という病魔に蝕まれており、今日まで生きてこられたのも奇跡かも知れなかった。
最早何度目かという吐血の後、薄れゆく意識の中彼女は静かに思った。
(管路・・・貴女が言いたいこととはこのことだったのかしら?・・・彼は自分の命よりも他者の命を尊ぶ・・・。何があの子をそうしたのかは知る良しもないけど・・・ああいう者こそ上に立つ者に相応しいのかもしれないわね・・・)
「陛下!!お気を確かに!!」
周りから側近の声がするがそれもだんだん遠くなってきていた。
(天の御使い・・・。貴方のその道が光り輝いていることを・・・願っています・・・・。)
霊帝が没した瞬間だった・・・
この霊帝の死は各地に衝撃を与えた。
だがこの死がきっかけで更なる戦乱を巻き起こすことになろうとは、まだ誰も予想していなかった・・・
あとがき
今回はいつもより少なめです。
最初は霊帝も美少女にしようかなと思ったんですけど、この先の展開を考えるとどーしてもお婆ちゃんキャラの方じゃ無いといけなかった・・・。
次回は今回より少し遅れるかも知れません。
まぁお盆ですし、仕方がないかと。
可能ならばいつも通りに更新したいと思います。
それではまた次回にお会いしましょう~ノシ
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第十二話です。
他の人の小説を見ていると勉強になるところも多い気がします。自分も頑張らねばッ!!