No.164367

デペイズマン・シード 2nd season;

リリカルなのはA's後×デジモンアドベンチャー(ただし時間軸は02後:ED展開無視)八神つながり 真面目に連載第2話
ところで「でぺいずまん」て意味なんですが、平たくいうと「意表をついた組み合わせ」という意味合いです。正しくなるともっと複雑ですが。
えっとね。「ミシンと洋傘の手術台の上での不意の出会いのように美しい(マントロールの詩/ロートレテモン伯爵)」っていう感じらしいよ。っつーか意表もなにもないベタつながりじゃね?と思わないでもない。

そういえば時間軸。1stは冬の終わり(A's2ヵ月後くらい?2月)、この2ndは春先(4月前後)とのなってます。作中に書き込めよ

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2010-08-08 22:56:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3319   閲覧ユーザー数:3180

 

 

 

海鳴市駅構内。

多くの人間が途方にくれて、自分たちの頭の上にある伝言板を見上げていた。

それで広域電波傷害による電車見合わせの掲示が代わるわけでもないのだが、人間、そこまで思考が周ることもない。

比較的「動く」事に関しては馴れている八神太一と石田ヤマトの二人も、そんな茫然自失な人々の群れの中で、困ったようにその貌を見合わせた。

 

「マジかよ」

「電波傷害ってあたりがゾッとしねぇな。こっちがらみじゃねぇだろうな」

 

自分で言っておいて、振った可能性に苦いものを感じる。

こっち、というのは彼らの間でしか通じない「可能性」だ。

ソレの関係で色々振り回された数年前の夏の記憶は、彼らにとっておそらくずっと鮮明なままだ。

とはいえ、そうそうその可能性も頷けない。

笑い飛ばすのも当然の選択といえる。

 

「まさか・・・といいたい。で、どうする?それより」

「んー 頼ってみるか」

 

まだ学生の時分であるから、そう易々と泊まるとかという選択もできない。

タクシーなんて論外だ。代行のバスもおそらく心地がいいとは言えないだろう。

そんな中の太一の言葉に、ヤマトは首をかしげた。

彼らが出来るSOS相手など高が知れている。

 

「親(車)か?いつになるか」

「んにゃ。いとこに甘える」

 

平然と帰ってきた答えはヤマトの予想外のものだった。

ポチポチと携帯を弄るある意味相方と言っていい少年をあきれたように凝視してしまう。

 

「まだD3組使って向こう経由で帰る方が真っ当な気がするぜ」

「ンなことに向こういったらいろんな奴に大目玉食らわされそうだから、却下」

「知ってる」

 

 

某スーパー。

タイムセールスの混雑した隙間を縫い、華麗に特売品をゲットしていた八神はやては不意になった携帯に手を伸ばした。

ちょっと前までは、あまり持ち歩くことすらなかったくらいに鳴らなかったというのに、最近は喧しいくらい己の仕事をしてくれるそれ。

 

「はい、はやてさんの携帯やで~。あれー?どないしたん、めずらしい。

・・・え、うん。大丈夫やよ。

丁度夕飯の買い物中や。うん・・・判ら・・・んよね?今駅?

ほなもうちょいしたら迎えいくから。じゃ」

「はやてちゃん?」

 

となりでかごを引いていて、電話を待っていた忠実な家臣にして大切な家族であるシャマルの声に、彼女はにっこりと微笑んだ。

 

「シャマル。お客さんや。急いで買い物せんとなー」

「お客様?なのはちゃんたちですか?」

 

彼女が真っ先にそう思うのも無理は無い。

大概がそうだから、ただ夕食時は珍しいなと思うばかりだったが、あぁそういえばこの前のにシャマルは逢ってなかったなぁと主はのんきなものだ。

 

「わたしのいとこと、その友達や」

 

 

 

駅は混んでいた。

そりゃそうだろう。電車が止まってるからじゃぁこうしよう、と直に結論を出せる人間はそういない。

以上の無い線までのピストンバスも出ている。運べる人数はたかがしてているのだけれど。

今回の場合「何々線に異常」ではなく「この区域での異常」がそんな細かい対応しかさせてもらえない原因となっているらしい。

そんな混雑の中、だがはやてはあっさりと目的の人物を見つけることが出来た。

なぜなら。

 

「お、注目あつめとるなー」

 

どこか愁いを帯びた(単に疲れているだけ)顔で壁に寄りかかっていたいとこもその友人らしき少年も、見事に通りすがりのお嬢さん・おねーさまがたの目の保養になっていたから。

 

「男の子、ですか」

 

とはいえシャマルは少々不安げな声を上げた。

鑑賞する相手ではなく、家に上げる相手とならば、それは当然ともいえる反応であった。まだ小学生とか関係ない。

最近はそっちの方があぶなかったりしたり、勿論そんなまねさせる気はないのだがとりあえず男女7歳にシテ以下略である。が。

 

「心配せんでえぇとおもうで。おーい、太一兄~」

 

本人はのほほん、といつもの笑みで自分のいとこを呼んだ。

やはり目線に疲れていたのか、顔を上げた彼の表情には安堵すら滲んで見える。

 

「はやて!悪いな、突然」

「かまわへんよ。えっと、そっちが友達さん?」

「石田ヤマトです。すいません、突然」

 

小学生とわかる、しかも車椅子の少女に丁寧に目線を合わせて頭を下げる。

真面目な人やなと思いながら、彼女は微笑む。

 

「かまわへんていうてるのに。えっと八神やはてです。こっちが」

「八神シャマルと申します」

 

ぺこり。自分と同じ苗字を名乗っている明らかに日本人じゃない女性に再び礼。

その横で太一が「また増えた」と呟いたが幸い聞こえずすんだようだ。

 

「あ、はいよろしく。っつーか太一、オンナノコっ、女性!」

「いってなかったっけ?」

「ねぇよ!問題だろう?!さっきこの子んトコ、親いなっ。あ」

 

慌ててあげた声に、逆に慌てる。

失言を悟ったか申し訳なさそうに顔を伏せたヤマトに、あーもぅ、と太一は笑いとばす。

 

「お前変なところで真面目だな。今更だろ」

「つーか彼女らの自宅だろうが。近所さんで変な噂でも立ててみろっ」

 

どう申し立てする気だお前はーっ、と随分古風なことを主張する、どう見ても遊んでいるようにしか見えない美形さん。

ある意味のすごいアンバランスさにはやては笑うしかない。

 

「ホンマ生真面目さんやなぁ。大丈夫やよ。なぁシャマル」

「そうですね。うちで何があってもいまさらですし」

 

そのオチにはたまらなかったか、太一がつっこんできた。

 

「どんな家だ、それは。」

 

 

 

 

 

八神家まではさほど遠いというわけでもなかった。

既に夕暮れで、日差しはなりを潜め、少し肌寒い中、団地住まいからは「馬鹿広い」としか思えないその家にたどり着いたときには、世界の不平等を呪わずにはいられなかった気がした。

もっともセミオフィシャルで主婦とも言われる不運な少年、ヤマトにすれば掃除がめんどくさそうという感情も一瞬沸かないでもなかったし、あの団地にいたから、かけがえの無いものを得る機会があったのも事実だ。

どこぞの魔女ならば「すべては必然」とでもいうのかもしれないが。

閑話休題。

 

「ただいま~」

 

そこもだだっぴろい玄関(ただし車椅子用に工夫されているのを確認して直にそれが必然であったコトを悟るのだが)へと促されると、その奥からぱたぱたと赤毛の少女が駆け込んできた。ヴィータだ。

 

「お帰りー、はやて、シャマル。と、あ。」

「お」

 

見知った顔同士、一瞬軽い挨拶にもならない言葉が交わされる。

 

「ん、連絡しといたお客さん。いとこの太一兄は知っとるな、と友達のヤマト兄。

電車とまって立ち往生しとったんよ」

 

でもなんやろねぇ?といいながら彼女は器用に外用から家用の車椅子に乗り換える。

嘯くようなそれは独り言だったのだろう。

だがその答えを、不幸にもヴィータは知っていた。

知っていたから、口から滑り落ちてしまった。

 

「あぁなのはの」

 

・・・・・・・・・・・

 

「へ?」

 

シャマルが彼女には珍しいくらい間の抜けた声を上げる。

 

「ヴィーダ?」

 

太一もその流れの不思議さに(なのはというのが誰なのかはわからないが、人であることは確かだったから)なにやらとんでもない一言を聞いてしまったのかもしれないと不安顔になる。

 

「あ」

 

そして、彼女は自分の失言を、主でもあり、大切な彼女でもある彼女に囚われたことを悟り。

 

「そこんとこkwsk」

「え、あ、いやその・・・ほら、客いんだしさ、今は」

 

結果必死でごまかすわけだが、それは同時に正論でもある。

こんなところでとんでも話を交わすわけにもいかない。

かといって見逃す(聞き逃す?)わけにもいかない。困ったもんだ。

 

「あぁせやねぇ。じゃぁその辺あとでじっくり。な?」

「いえっさー」

 

 

どうも釈然としないというか混乱している一行はそれでもリビングを目指した。

そこには「いきなり出たらパニックになるから」という理由で出迎えを拒否られてほんのり拗ねていたワンコ、もとい狼が一匹。

ヤマトの心配を跳ね除ける、唯一の男性であるが、今の姿は彼らに別の印象を与えた。

 

「・・・・・・・・・・・・デジモン?」

「成熟期クラスだな」

 

したり顔というわけではないが、なにやら妙にしっくりした口調の彼らに、ヴィータがまずひっかかった。

違和感といえばいいのか、もっといい表現があるのか。

そこにある目線はとても不思議な色を帯びているような。

 

「タイチ?」

「あ、いやでっかい犬だなぁと」

 

差しさわりの無い返答も気になるが、こちらもある意味スネに傷を持つ身。

ヘタに突いて「じゃぁなのはって」とか切り替えされたらどうしたら。

顔に出さず悩んでいるヴィータも全て包み込んで、「おかーさん」が言葉を紡ぐ。

 

「ザフィーラ。その子も私の家族なんやで」

「そっか(デジモンじゃねぇんだな)」

「・・・」

 

言外に呟いた言葉は幸い届かない。

ふとそれでも沈黙する相方を見て、太一は戸惑った。

 

「ヤマト?どした」

 

果たして彼は答えなかった。頭の中に降って沸いた恐らく個人的に壮大な計画に酔いしれたのか。

 

「なぁはやて。こいつブラッシングとかしていいか?」

「へ?あ、本人に聞い・・・けへんか。えっと」

 

「おい。どーしたんだよ」

「いやさ。ガルルモンの冬毛ってこんな感じかなーっと」

 

だからブラッシングしたくなった。

他の誰にもわかりゃしないだろうが、太一はある意味で正しくその言葉の意味を理解した。

郷愁のきっかけは些細なものかもしれないが、確かにそこかしこに散らばっているのだ。

 

「あぁなるほど」

「ガルルモン?」

「こいつの相棒」

「いいか?ザフィーラ」

 

そんな説明を背中に、腰をかがめ、目線を合わせて(本来の獣ならば危険な行為であるはずなのに、当人は大真面目に)丁寧に聞いてきたヤマトに、結果気圧されるようにしてザフィーラも思わず首肯してしまった。

タイミングよく、主からの念波が彼の運命をきめる。

 

(おとなしくな?)

(了解)

 

果たして数十分後。

 

「た。堪能してしまった」

「目がイってるぞ、ヤマト」

「あ、わりぃ。これも浮気になるのかな?」

「どうだろうな」

 

別にそんなつもりもなかったが「ひどいよやまとー」とか言いながらないて走り去っていくガブモンが二人の脳内ではあっさり再生できた。いや、そんなつもりじゃ。

あぁなんてあっさりと予想できる修羅場だろう。

二人で思わず笑いあってしまいそうなところでおっとりとしてはいるが有無言わせぬ声が聞こえてくる。

 

「ごはんできたでー」

 

すく、と言葉を理解してるようにザフィーラが立ち上がった。ひたすらブラッシングされたおかげでその毛並みはつやつやだ。

そして太一がぽん、と手を打つ。

 

「あぁそれで呼びに来たんだった」

「あ、やっべ、何にも手伝ってねぇ」

「オレがやっといた。お前みたいにはいかねぇけどな」

「さんきゅ」

「いくか」

「ぉう」

 

そうしてザフィーラを追うようにダイニングキッチンへ向かう。

途中わざわざ止まった先が洗面所で、手を洗えという意味と理解して驚いたりしながら。

ある程度既に夕食のしたくは先にすんでいたのだろうが、数十分での作品とは思えない豪華なそれがテーブルを彩っている。

 

「うわ、うまそうだな。わるいな、手伝ってなくて」

「お客様にしてもらうなんて逆にこっちわるいきぃするわぁ」

「お世話になります」

 

自分よりも年下であるはずのなのに、おそろしく出来た少女に素直にヤマトは頭を下げる。

 

「はいな。ゼフィーラどうだった?」

「・・・・・・・・」

 

まるで言葉がわかるように、彼女は自分の「家族」に当然のように問い、すぐににっこりと笑った。

艶やかな毛並みで判断したのかもしれないが、頷く仕草は返答を貰ったようにも客たちには見えた。

 

「ほか、ブラッシングうまいんやな、ヤマト兄ちゃん」

「褒めてもらえるとなると、嬉しいな」

 

ふふ、と笑う少女はまるで母親のような包容力をにおわせる。

そして彼女がその家の家長でもあるかのように、さらりと宣言した。

 

「さて。もう一人おるねんけど、今日はちょっと出張やねん。さ、ごはんにしよ」

「シグナムさんだっけ。出張って仕事か?」

 

太一は前にあった生真面目そうな女性を思い出す。

そういえば彼女も「家族」と言っていたが、今は見当たらない。

 

「そ。お仕事や」

「そっか。残念だな」

「せやなぁ。なぁ、折角やさかい、明日には帰ってくるから、もう一泊してみんなでごはんたべへん?」

「いや、それは悪いだろ、さすがに」

 

 

 

 

・・・・・・・・

次回からはガチ長編なのでいきなり更新率が下がるでしょう(ウェザーニュース風


 
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