『はふぅ・・・・』

今日何度目になるかわからない溜息が妙齢な女性の口から漏れた。大きく胸元を肌蹴た服装、艶やかな髪には簪と下手をすると遊女のような印象を与えかねない外見だが内からにじみ出る凛々しさがそれを許さなかった。いや、寧ろ艶やかさを強調しつつ余分な贅肉をそぎ落とした色気さえ感じさせる。

彼女こそ誰あろう我等蜀が誇る二大熟・・・『チャキッ』い・いや二大お姉さんの厳顔（真名：桔梗）その人である。

？？？「桔梗、あなたそれで何度目の溜息？せっかくのお酒が不味くなるわよ。」と、差し向かいで飲んでる妙齢な女性が言えば

？？？「んとね～おかーさん15回目だよ～お酒を飲み始めてからだと」と、自分の指を折りながら数えていたのか母親に似て将来有望な幼子が答えた。

？？？「あらあら～璃々はお利口さんねぇ～」と、目を細めながら我が娘を褒め称えているのは誰あろう我等蜀が誇る二大熟・・・『スチャッ』い・いや二大お姉さんの黄忠（真名：紫苑）その人である。

紫苑「で・・・本当に何を悩んでいるの？他の武将（こ）達には言えなくても私にだけは打ち明けてくれてもいいんじゃないかしら？」と、そのふくよかな胸を卓に預けた形で顔を桔梗の方に近づける。

この酒席は最近（傍目で見る分には普段とは差が感じられないが）元気がない桔梗の悩みを打ち明けて貰おうと紫苑が設定したものであった。

紫苑「一緒にご主人様のモノにされた仲でもあるじゃない。隠し事はナシにしましょ。」と、娘の耳を塞ぎながら小声で桔梗に囁きかける。

璃々「おかーさん聞こえないよー。」と、頬を膨らませて抗議するが耳は防がれたままである。

桔梗は紫苑の言葉を聞いて更に一度大きな溜息をついてからその口を開き始めた。

桔梗「ワシが悩んでおるのは正にその御館様の事なんじゃよ・・・紫苑よ。我等が共に御館様のモノにして頂いた後からじゃ悩み始めたのは。」思い出しているのかほんのり頬を赤くしながら桔梗は言葉を続けた。

桔梗「ワシは御館様に相応しい人間なのじゃろうか？とな。無論女性としての魅力や武将としての能力で他の武将達に劣っているとは思ってはいない、紫苑そなたを含めての。「ならいいじゃない」いや・・・問題は年齢なのだ。」

紫苑「ご主人様は年齢や見た目で判断なさる方ではないわ・・・多分」少しだけ自信がない紫苑であった。

桔梗「御館様は優しいからのぅ、でも他人から見ればどう映るじゃろうか？親子と言っても差支えがない差はあるぞ（作者の脳内では桔梗・紫苑は３５～３７歳公式設定は知りません）。そのような年甲斐もない女性が側にいるだけで御館様に迷惑がかかる気がしてのう・・・。」と、苦々しくでも嘘偽りの無い本音を漏らした。

紫苑「それは私も含めてかしら？」ゴゴゴゴとただならぬ禍々しいオーラを出しながら問いただすと

桔梗「これはワシ個人の考えじゃ・・・それにそなたには璃々を産み育てた母性という魅力がある。今更ワシは色恋で悩むような年齢でもないと言いたいんじゃがなぁ」恥ずかしそうにそして少し悲しそうに呟いた。

桔梗「まぁ紫苑に聞いて貰ってスッキリしたわい。明日からの蜀平和祈年夏祭では見事な大輪を見せてやるわい。」と、杯に入っていた酒を一気にあおって空にすると、席を立ち自室の方へと歩きながら背中越しに

桔梗「ありがとな紫苑よ、持つべきものはやはり友じゃのう。」と一言言うとそのまま振り返らなかった。

紫苑「桔梗・・・。」友の背中を心配そうに見つめながら呟いた。

璃々「おかーさん聞こえないよー（泣）」璃々ちゃんの耳は防がれたままだった。

紫苑「と、言う訳なんですご主人様。」と、我等が御遣い北郷一刀にありのまま報告した。

一刀「そっかぁ・・・最近元気がないと思ってたのはその事を気にしてたからなんだなぁ。紫苑ありがとね。無理やり聞かせたみたいで悪かったね。」と、頭を下げながら言うと、

紫苑「御礼には及びませんわ、大事な友のことですし・・・でも悪いと思っているなら今度またゆっくり閨で・・・ウフフフ。」と妖艶な笑みを湛えつつも

紫苑「桔梗の事はよろしく頼みましたよご主人様。」と、言うとその場から立ち去った。

一刀「あぁ任せておいて。」とその背中を見ながら一人決意するかのように呟いた北郷であった。

夏祭当日の夕方、桔梗はラストを飾る打ち上げ花火の着火役（打上げ筒に向かって着火弾を発射する役、まぁ五輪の聖火台に最後矢を撃って火を点けるイメージで）として発射位置で待機していた。そして広場で楽しく過ごしている仲間達を見ながらある人物がいない事に気づいた。

桔梗「御館様はどこにおるのじゃろうか？見当たらんな。」と独り言のように言うと

？？？「ここにいるぞー。」と叫びながら出てきたのは蒲公英・・・ではなくて北郷一刀その人である。

桔梗「お・御館様何故このような場所に？」驚きと少しの喜びを交えながら聞くと、

一刀「確認したいことがあってね。」と言いつつ桔梗の側に座る。

桔梗「おお着火役としての準備は万端ですぞ。」と、祭の進行に関しての事かと少し残念な気持ちになりながら答えると。

一刀「まずはこれに着替えてくれるかな？桔梗勿論着替えてるとこは覗かないし周りには誰もいない。」と、言ってある包みを渡す。

桔梗「なんですかな？これは。」と、訝しげに聞くと、

一刀「まぁ、俺を信用して着替えてよ。それとも桔梗は俺を信用できない？」と少し悲しそうな微笑をしながら桔梗に促す。

桔梗「お・御館様を信用しないなんてことはありませぬぞ。わかりました着替えてきましょうぞ。」と、言って茂みに入った。そして数刻後、

桔梗「こ・これでいいのですかな？御館様。」と少し照れながら着替えてきた桔梗は一刀に言葉を投げかけた。

一刀「・・・・」と無言の一刀を見て早とちりした桔梗は。

桔梗「や・やはりこのような格好はワシには似合いませぬな。」といいつつ着替えに戻ろうとした時、

一刀「やっぱり思った通り桔梗にぴったりな柄の浴衣だったな」そう桔梗に渡した包みとは浴衣だったしかも当日まで誰にも内緒にしてた品だった。そして柄にあしらったのは朝顔の花それも色彩豊かなものばかり

桔梗「しかしこの柄はやや若者向けのような気がするのじゃが。これが確認することですかな？」と照れながら言う桔梗の両肩を真正面から押さえながら

一刀「さてと・・・もう一つ確認することがあるんだけど・・・いいかな？」と、笑顔で訊く一刀に対して

桔梗「なんなりと。」と、ほんのり頬を染めながら答えた。

一刀「あー・・うん。桔梗は誰のモノなのかな？」と最初は照れながらでも最後は真剣な表情で桔梗に質問をぶつけた。それを聞いた桔梗は「紫苑のやつめ」と思ったが両肩を押さえられ振り払うわけにもいかず。照れながら

桔梗「お・御館様のモノです。」と答えた・・だが一刀から返ってきた答えは意外なモノだった。

一刀「ぶー不正解です。なのでこれは罰」と言いながら首筋に口付けした。

桔梗「お・御館様何を？」慌てふためきながら引き離そうとするが首筋には既に一刀の刻印が

一刀「桔梗は誰のモノ？」再度同じ質問をする一刀その質問に対して桔梗が思いついたのが

桔梗「ご・ご主人様？」と上目遣いで答えた。

一刀「ぐはっ　せ・せいかゲフンゲフン半分正解だけど罰を」と言いつつ今度は耳たぶを噛んだ。

桔梗「はうっ耳は弱いのを知っておりますでしょうに。（脳内設定です。）」と答えたはいいが首筋耳たぶと刺激されて「御館の口付けを唇に欲しい・・・でも御館はくれない何故？」と心の中で考えるそうすると・・・

一刀「これが最後の確認これで正解しないと桔梗いや厳顔にはこの国から出て行ってもらう。」と一番聞きたくない言葉を聞かされて心中穏やかでなくなってしまった。「何故御館様はこんなことをするのか？もうワシはこの国にとって要らない存在なのか？」と

一刀「俺は誰で？桔梗は御遣いである俺を好きなのか、それとも俺自身を好きなのか？そして桔梗は誰のモノなの？」事ここに至って桔梗は一刀の質問の意図を汲み取った・・そして自分が落ちこんでた事の意味の無さに気づいてこう答えた

桔梗「ワシはほん・・・カズトのモノじゃ。カズトだけのモノなんじゃ。」その目には涙が浮かんでいた。そしてもしこの答えが間違っていたらこの場で自ら命を絶つ覚悟でもあった。その答えに一刀は

一刀「大正解。」と言いながら唇を重ねた。そしてそのまま影は一つになった。

二人が余韻に浸りながら抱き合っていると・・・ヒュルルルー　ドーンと、夜空に大輪の花が咲き始めた。

桔梗「あぁ花火を打上げねば。」と叫びながら起き上がろうとすると、

一刀「大丈夫、ウチにはもう一人名射手がいるからね。」と桔梗を抱き寄せながら

一刀「これからも二人きりの時は”カズト”って呼んでね。それから・・・桔梗に二度とそんな想いをさせないように貫禄をつけていくからね。そして桔梗の隣に似合う男になっていくよ。」その言葉を聞きながら桔梗は友と想い人に心から”ワシは幸せものじゃ”と呟いた。

完