No.163750

真・恋姫無双~災厄の御使い~ 第壱幕

reconさん

二本目の投稿です。第壱幕とかいてはありますがこの前に第零幕がありますのでそちらをお先にどうぞ~。

2010-08-06 18:43:16 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2625   閲覧ユーザー数:2255

 

「小僧、眼は覚めたかの?」

 

 まぶたを開くと、いきなりそんな声が聞こえてきた。

 

 そちらをみやると、そこにいたのはかなり美人の女性。しかしとても変な格好をしている。

 

「眼は覚めたか、と聞いておる。言葉は通じておるのか?」

 

「ああ、起きてるよ。もちろん言葉も通じてる」

 

「そうか。通じておるのならば聞かせてもらうが、小僧。儂は黄蓋という。姓が黄、名は蓋、字は公覆じゃ。お主の名は?」

 

「ちょっと待って。今字って言った?なんでそんなものがあるの?」

 

「なんでも何も、普通あるじゃろう」

 

 正直意味がわからなかった。

 

 目が覚めたらこんなところにいる理由もわからない。まあ夢であるという可能性も十二分にあるし、むしろこんな意味のわからない状況下ではそう思うほうが自然だとは思うのだが、夢にしてはやけにリアルだからか、不思議と夢という感じはしない。

 

 それ以外にも姓、名がそれぞれ一文字ずつで表せてしまいそうな中華風であることと、字なんていう三国志の話でしか聞いたことがないものがあること。それにその名前。黄蓋といえば三国志で聞いたことがある。孫呉三代に仕えた呉の宿将だ。もっとも、三国志の武将の黄蓋は女ではなく男だったが。

 

 次に、先ほど変だと思った格好。その服はよく見れば、チャイナ服に見えないこともない。

 

 この部屋もそうだ。部屋のいたるところに豪華な中華風の意匠が凝らされており、ここまで本格的なものは聖フランチェスカ学園では当たり前のように見られないし、日本でも高級な中華料理店でしか見られないだろう。

 

 それで、頭の中にひとつの馬鹿げた仮説が思い浮かぶ。

 

 俺は三国志の時代の中国、つまり漢にタイムスリップしてきてしまったのではないか、と。

 

 浮かんできてしまった仮説を必死にありえない、と否定していると、

 

「小僧。儂は名を聞いているのじゃが」

 

 混乱してしまってすっかり忘れていた質問が飛んできた。

 

「ああ、ごめん。俺は北郷一刀。姓が北郷で名が一刀だよ。字はない、と思う」

 

 長い間考え込んでしまったことに気付き、あわてながらも何とか答える。思う、なんて曖昧な答え方をしてしまったのは、字というものをよく知らないから。

 

 そんな俺の答えに、黄蓋と名乗った女性は目を丸くした。

 

「ふむ。字がないと言うか。これはやはり儂の手に余るの。少し癪だが冥林にでも任せるとしよう。ということだからついて来い、北郷」

 そう言っていきなり連れてこられたのは、より一層豪華な、一段高い所に椅子が一つだけ備え付けられている部屋。

 

 その椅子には妙齢の女性が座っていて、そのそばには数人の女性が立っている。

 

 部屋に入ってきた俺たちを認めると、眼鏡をかけた黒い長髪の女性が口を開いた。

 

「祭殿、天の御使いらしき少年というのはそちらですか?」

 

 天の御使いというのは何だろう、と思っていると黄蓋がその質問に答える。

 

「いかにも。姓は北郷、名は一刀というらしい。どういうわけか、字はないと言っておる。それで、儂の手には負えないと思い、こうして連れてきた次第じゃ」

 

 黄蓋の答えで、どうやら自分が天の御使いだとされているらしい、ということに気づく。

 

「ちょっといいかな?天の御使いっていうのは何?自分がそうだと思われてるって言うならそれがどういうものなのかくらい知っておきたいんだけど」

 

 俺の質問に、その場にいた者全員の視線がこっちに向いた。その視線の殆どに、警戒めいた色を感じるのは気のせいだろうか。

 

「天の御使いっていうのはね、管路の占いに出てくるものなのよ。『一陣の流星とともに現れし天の御使い、この大陸に大いなる戦禍と安寧をもたらすであろう』ってね。当然私たちはそんな胡散臭い占いなんか信じてなかったんだけど、一刀を拾った状況が状況でね。信じるしかなかったってわけ」

 

 質問に答えたのは、俺に唯一好奇の視線のみを向ける椅子に座った女性だった。

 

 天の御使いというのは全く身に覚えがなかったが、周囲から向けられている警戒の理由は理解することができた。

 

「質問に答えてくれてありがとう。ええと――――」

 

「ああ、自己紹介がまだだったわね。私は孫策、字は伯符、真名が雪蓮よ」

 

 真名、という言葉に頭をひねっていると、

 

「雪蓮!真名はそんな簡単に許すものではないだろう!」

 

 先ほどの黒髪の女性がたしなめるように声を上げる。

 

「いいじゃない、冥林。私の勘がいいって告げてるのよ。ほら、冥林もあなたも自己紹介しなさ

い」

 

「まあ確かに雪蓮の勘は外れたことがないがな。そんなだと軍師の出番が減ってしまうのだが。まぁそれは後でもいい。では今は自己紹介をしようか。私の名は周瑜だ。字は公瑾だ。しかし、雪蓮が真名を許したということは私も真名を許さなければならないな。真名は冥林だ」

 

 またの知らない言葉との遭遇に頭を抱える。

 

「ごめん。さっきから質問ばかりで悪いんだけど真名っていうのは何かな?」

 

 その質問には、丸眼鏡の女性が答えた。

 

「真名っていうのはですね~。とっても大事な名前でですね~。許されていないのに呼んでしまうと、首をはねられても文句は言えない代物なんです~。ちなみに私は姓が陸、名が遜、字は伯言で、真名は穏ですよ~」

 

「つまり、今みたいに真名を教えられたら真名を許されたってこと?」

 

「そうじゃ。つまり北郷は今、策殿と冥林と穏に真名を許されているわけじゃな」

 

「ありがとう、穏、黄蓋さん」

 

 俺がそう礼を言うと、

 

「祭じゃ」

 

と、黄蓋さん――祭さんはそう言って俺に真名を許してくれた。

「さて、自己紹介も軽くすませたところで本題に戻ろうか。北郷、お前は一体どこから来た?報告によると、お前は砂漠で倒れていたらしいが」

 

 そんなことは俺が聞きたい。俺は気づいたらなぜかベッドで寝ていたのだ。

 

「どこからって言われれば日本だよ。て言ってもわからないだろうから、まずは俺に話をさせてほしいんだけど」

 

「話を聞いて、こちらに何か利益はあるのか?」

 

「わからないよ。でも話を聞いて情報を整理しない限りは、正当な裁きは下せないからね。利益があるかはわからなくても、聞く必要があるかどうかはわかる。流石に話も聞かないで殺したとあれば、民がだまってないだろう?つまり聞かないことによる不利益が生じることは確かだよ」

 

 俺がそう言うと、冥林が何故か薄ら笑いを浮かべる。これは利用価値が、とか聞こえた気がするがどういうことだろう。まあ今の状況では生き残ることだけが大切なので理解しようとは思わないが。

 

「人聞きが悪いな。私はお前を殺すとは言ってないが?」

 

「言ってないけど、このままだと殺すだろ?俺はこの大陸の事は何も知らないし、字もないし、真名に至っては知識もなかった。これだけで、真偽のほどは別にして俺は天の御使いになれる。それで、殺す理由としては十分だろう?」

 

「ほう?お前がそんな絶望的な状況に置かれていると知りながら、何を話すことがある?」

 

 そう聞いておきながら、本当は俺が何を話そうとしているのか分かっているのだろう。その口調からは、俺を試そうという思惑がうかがえる。

 

「とりあえずは俺が把握している俺の状況の説明」

 

「それだけか?」

 

「いいや。その後に少し提案をさせてもらいたい」

 

 俺の言葉を聞いて、冥林の口元に笑みが広がる。提案が何かはわからないにしても、おそらくこの言葉を待っていたのだろう。俺たちの利害を一致させるであろう提案を。

 

「いいだろう。では話せ、北郷」

 

 冥林の口からあっさりと承諾が得られる。

「じゃあ話をさせてもらうよ」

 

 そういって、深呼吸をする。とりあえず気持ちを落ち着けなければならない。これから発する言

葉の一言一言には命がかかっているも同然だ。

 

「まずは、状況の説明をするよ。結論から言うと、俺はタイムスリップしてきたみたいだね」

 

「たいむすりっぷ?」

 

 雪蓮に問われて、そういえばカタカナで書く言葉は基本通じない、ということに気づく。

 

「ええと……要するに、俺は未来から来たっていうことだよ」

 

「ありえん」

 

 冥林に一蹴される。周りからも胡散臭いというような視線を感じる。しかしこれも当然の反応だ。俺だっていきなりこんなことを言われても信じることはできないだろう。

 

「雪蓮の妹達の名前は孫権、孫尚香だ」

 

 何か証拠となる知識を探して口をついたその言葉は雪蓮達に期待した以上の衝撃を与えたようだ。

 

 雪蓮と祭さんは感心したような声を漏らし、冥林は眉をしかめ、穏は唖然としている。

 

 しかし冥林がその表情を見せたのは一瞬。次の瞬間には表情を引き締め、俺の思惑を砕きに来たのはさすが美周朗といったところだろう。

 

「その言葉は残念ながら私たちを信じさせるには値しないな。お前がどこかの間諜で、そこで情報を手に入れていただけ、とも考えられる。むしろ状況は悪化したぞ、北郷」

 

 言われてその事実に気付いた俺は、どうすれば信じさせることができるのか考える。すると、一つの案を閃いた。

 

「じゃあ未来の技術を見せることができたら信じる?」

 

 その案とはこの時代にはない技術を見せること。

 

 実際に見せてやろうとポケットを漁るが、そこに携帯はない。考えてみれば、怪しい相手に得体のしれない道具を持たせておく道理はないだろう。

 

「俺の服に入ってたものが未来の技術で作られたものなんだけど返してもらえるかな?」

 

「それが武器である可能性は?」

 

 すかさず冥林が俺の意見の危険性を提示する。

 

 しかしその言葉は予想通りだ。

 

 だから俺はすぐに用意していた言葉を言うことができた。

 

「俺は自分が生き残るために言ってるんだ。これで何かあったら自分の命がないことくらいわかってるよ」

 

 その言葉を聞いて何を思ったのか、冥林はしばし逡巡し、兵を呼びつけて俺の携帯を持ってこさせた。

 

「持ってこさせたぞ、北郷。それで、これがなんだというのだ?」

 

 冥林の言葉には確かに警戒の色を帯びていたが、その声は確かに好奇の色も帯びていた。いくら天下の周公瑾といっても未知の技術への興味は隠しきれるものではないのだろう。

 

 そんな冥林を見て少し親近感を覚えながら説明をする。

 

「たとえば、これはカメラって言って、簡単にいえばそこにある風景を写し取る技術。たとえば、これはメールって言って、遠くにいる人に手紙みたいなものを送る技術。とはいっても、今の時代じゃ環境が整ってなくて使えないんだけどね」

 

 こんな具合に、次々と実演してみせながら説明をすると、だんだんと冥林達の表情も穏やかなものになってくる。その様子には確かな手ごたえを感じた。

 

「どう?これで信じてもらえた?」

 

「ふむ。まあ信じてもいいだろう。確かにこんな技術は大陸中どこを探してもないだろうからな」

 

 どうやら冥林達を信じさせることはできたようだ。冥林達の反応を見ていると、どちらかというと懐柔という言葉のほうが合っている気がするが気にしたら負けだろう。

「それで、北郷?とりあえずお前は私たちにお前が未来人だと認めさせることには成功したが、これでお前の置かれている状況の説明というのは終わりか?」

 

 言われて、今自分がすべきことを思い出した。自分の置かれている状況の説明と一つの提案。自分が未来人であるということの証明に熱中しすぎたようだ。

 

「うん、そうだね。とりあえず現状で分かっていることはこれくらいかな。じゃあこれから提案に移らせてもらうけどいいかな?」

 

「いいだろう。その提案をこちらが呑むかどうかは別としてな?」

 

 フッ、と笑いながらそんなことを言われるが、それも警戒が解けてきた証拠だろう。

 

「できれば呑んでもらえると助かるね。俺の人生的にも。それで提案っていうのは呉の陣営に入れてもらえないかっていうことなんだけど……」

 

「いいわよ♪」

 

 雪蓮、即答。おいおい、そんなんでいいのか。

 

 とは思いはしたものの提案を呑んでもらえるのは非常にありがたいので、とりあえず周りの考えも知るために静観を決め込む。

 

「こら、雪蓮!そんな簡単に決めるな!こいつは仮にも天の御使いだぞ。あんな噂が流れている以上、扱いが難しい」

 

「そうですね~。しかし、一刀さんは結構使えるのではないでしょうか?先ほどの舌戦などを見るに、知力はそれなりにあるようですし戦力にはなりそうですよ~?」

 

「それはわかっているが、問題は風聞だろう。災厄をもたらすとされている以上、天の御使いの存在を民が許すかどうか……いや、人柄はそれなりだが……」

 

「冥林、人柄がそれなりだって言うならそれでいいじゃない。けっこう性格はいいから天の御使いだって周りに知られちゃうと袁術ちゃんにとられちゃうでしょ?もたらすのは災厄だけじゃないんだし。なら隠しておけばいいじゃない♪」

 

「そうだな……そうか、しばらく天の御使いであるということは伏せておいて北郷の人柄に民が惹かれれば公にすればよし、惹かれなければそのまま戦力として使い続ければよし、だな。いや待て、それだけでは弱いな。よし、それでは試験を行うがいいな、北郷」

 

 いいな、とは言うがそれは質問ではなく、確認だろう。しかし、俺も命がかかっているから、あまり簡単にうなずくわけにもいかない。

 

「ちょっと待って。その試験っていうのは何をするの?」

 

「私としては、北郷がどれだけ戦えるのかを見るのが妥当だと思っているが?これだけは実際に戦わせてみないとわからないしな」

 

「じゃあ私が相手する♪」

 

 雪蓮はそう言うがそれはちょっとまずい気がする。孫策っていうのはかなり強いんじゃなかったか?

 

「却下だ。お前が相手では北郷は確実に死ぬだろう」

 

「うぅ……」

 

「冥林、それでは儂がやるかの?」

 

「祭殿ですか……そうですね、適任でしょう。力加減は北郷の実力に合わせてやってください」

 

「わかった、ありがとう。日時は?」

 

「三日後の昼時でいいだろう。それまでに何か必要なものがあったら言うように。いいな?」

 

 試験の日時が決まり、俺がそれから否を唱えることもなかったのでその日はそこで解散となった。俺はそれなりに武道をたしなんでいたが、当然のことながら実際に武器を使っての戦闘は初めてだ。

 

 しかし、俺は北郷流でじいちゃんにかなり鍛えられたこともあってそれなりに戦える気がする自分がいるのも確かだ。

 

 そんなこんなで、俺は三日後に向けて着々と準備を進めるのだった。

 

あとがきみたいな

 

 

どうだったでしょうか?

前回の第零幕はプロローグと同じ位置づけだったのでこれが初投稿といっても過言ではないでしょう、うん、ないはずです。

こんな感じで話を進めていくわけですが、どうなるんでしょう?完全に見切り発車なので自分でもこれから先どうなるかはあやふやですが、頑張る所存です。

あと、誤字脱字や意見、質問などありましたら教えていただけると助かります。

最後に、応援メッセージをくれた方がいたようなのですがちょっとまだ見習いなので返すことができないでいます。本当にすいません。

急いで三つ目を完成させますのでそしたら返せると思います。

ではでは、また次回にお会いしましょう~。

 

 
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