一刀が将軍となり初めて兵を率いることになってから、数日がたった頃…
袁術の所にいっていた雪蓮から伝令が届く。
その内容は推してしかるべき、あまりに予想通りだったため思わず頭を抱えたくなったが、そんなことをしても事態は好転するわけが無い。
冥琳はすぐに皆を中庭に集めるように指示を出した。
孫呉独立のための戦い…
その狼煙を上げる戦いが今始まろうとしていた…
~呉・中庭~
冥琳「さて…雪蓮からの使いが来たのだが…」
そういった冥琳が、周りを見渡す。
この場には、冥琳を筆頭とし、祭さん・穏・一刀・晴歌・絢音が集まっている。
穏「あや~どうしたんですか~まぁだいたい想像できますけどぉ~」
冥琳「はぁ…まぁ皆が想像していることは概ね当たっているだろう…近くに来ている黄巾党を討伐せよと言うことだ。」
祭「ふむ。まぁそんなことじゃろうとは思ったが…その感じじゃとまだ何かあるな?」
冥琳「ええ…実は近くに来ている部隊は二つあり、そのうちの一つ……本隊…兵が多いほうを私達だけで討伐せよということです」
その言葉に、皆がそろって落胆の顔をしながら、ため息をついた。
袁術が馬鹿なのは皆知っているところなのだが、いくらなんでもこれはひどい。
”袁術は数の大小まで分からないのではないか?”そんなことを思ってしまうほどだった。
絢音「……えーと…冥琳様。分かっていますが…下手な期待感をなくすためにもお聞きしたいのです…それは私達だけ…そういうことでしょうか?」
冥琳「…絢音…気持ちは良く分かるわ。…でも使いのものから聞いた話しではそういうことらしいわ…」
そう言って頭を抱えため息をつきながら冥琳が答える。
その答えに皆は”やっぱり…”と思いながら頭を抱えるのだった…
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冥琳「…まぁ今更言っても始まらないので要点だけをまとめすぐ行動に移しましょう。」
穏「そうですね~ただすぐに行動と言うわけにはいきませんね~」
祭「ん?どういうことじゃ?」
冥琳「それはですね…今私達がこちらに向かっている本隊と戦うには兵力・軍資金・糧食ともども足りないのです。」
絢音「冥琳様、足りないと言うのは具体的にはどれぐらいなのですか?」
冥琳「兵数の差については策を用いて何とかするとしてもだな、軍資金・糧食についてはまったくといっていいほど足りん。」
晴歌「うえ~さすがにその二つは策でどう…って感じにはいかないからなぁ…」
晴歌の言葉に皆が口をつむる。
しかし、これは当然のことと言えるだろう…
いくら策を使って、効率よく敵を打ち破れようとも、兵たちに使う軍資金や糧食などはうまく切り詰めたとしても絶対的な量が増えない限りどうすることも出来ない。
兵は食べ物と給金があってこそ動く…これはどうしようとも覆ることの無い真実だった。
皆が黙ってしまい考えているところに、鶴の一声とでも言うのか…今まで黙っていた一刀が発言をする。
一刀「…なぁ…ちょっと思いついたんだけど、その軍資金と糧食、あとできれば兵なんかも袁術に出させるって言うのはどうかな?」
冥琳「ん?…たしかにそれが出来たら言うことは無いが…いったいどうやって出させるつもりだ?」
一刀「ああ…今の話を聞いている限りだと、袁術は俺達に本隊を討伐させたいんだろ?ならその討伐をしてやる代わりに必要なものは出せって言えばいいんじゃないかな?」
穏「でもそんな簡単にあのお馬鹿さんたちが出しますかね~」
一刀「まぁ…出さなかったら出さなかったで、俺達は兵が少ないほう…分隊って言えばいいのかな、そっちのほうを討伐してその結果を町の人たちに言えばいいんだよ。そうなると認めたくないけど俺達の主人である袁術は本隊を討伐しなくてはいけなくなると思うよ?いくら馬k…げふん…頭の回転が悪い袁術たちでも民の支持を失うわけにはいかないと思うから討伐に乗り出すだろ?」
絢音「一刀様…言い直しが意味ないです…ですが、策としては現状これしかないかもしれませんね。」
冥琳「ふむ…そうなる前にこっちの提案を受けるか…よし。それでいこう…誰かある!!」
兵士「は!」
冥琳「雪蓮に伝令を出す内容は…」
一刀の案にのった冥琳は伝令を呼び、一刀が思いついた案を雪蓮に伝える。
そしてほかのもの達も一刀の案を実行するために動き出すのだった。
一刀も自分がやれることをやるために、動こうとした時に冥琳に呼び止められる。
冥琳「一刀!ちょっと話しておきたいことがある。」
一刀「ん?何?」
冥琳「ああ…今回の討伐だが、多分本隊にあたることになると思う。そこでその時にお前たちの隊を見せてもらおうと思ってな…」
一刀「えーとつまり…本番でいきなり兵を率いて戦えと?」
冥琳「まぁ…そういう事だ。本当なら演習をした後にでも運用する予定だったのだが…どうやら時間がないらしい…」
一刀「…何かあったのか?」
冥琳「あぁ…斥候の報告を聞いている限りだと、もう黄巾党が起こした乱も終りが近づいている。そうなると、次に起こるのは…分かるな?」
一刀「……なるほど。権力争いってやつか?」
冥琳「あぁ…たぶんな。前に話したと思うが霊帝の死も近い、そうなると間違いなくまた戦乱が起こるだろう…しかも今度は国同士でな…その時にいくら厳しい訓練に耐え抜いた兵たちでもいきなり練度の高い兵たちと戦わせるのは危険が大きいし、何よりお前たちもうまく指揮できなくなるかも知れない。だからそうなる前に戦いを経験させておきたいのだよ。」
一刀「わかった。何とかやってみるよ。」
冥琳「すまんな。…他の二人にも言っておいてくれ。」
一刀「わかったよ。」
そう言って一刀は冥琳の元を後にした。
一刀が見えなくなった所に、先ほどまで兵に命令を出していた祭が近くよって話しかける。
祭「うーむ…いきなり実戦か…さすがに厳しすぎるのではないかの?」
冥琳「そうかもしれません。しかし…この機を逃してしまえばこれほどの規模で戦うことは難しくなってしまうのが現実です。…先ほども一刀に言いましたが、本物の戦を経験してない状態で訓練された兵たちとは戦わせたくないですし…」
祭「そうじゃの…いくら才があるものたちとはいえ本当の戦を経験しているのとしてないとでは、まったく違ってくる。そのためにも、今回の戦。厳しくてもやらなくてはいけないということか…」
冥琳「はい…ですが乗り越えることが出来たなら兵と一刀たちは自信がつき、私達にとっても、とても頼れるものが生まれるということにもなります。」
祭「それはたしかに嬉しいのう…ま、わしらの隊も最近骨のあるやつらと戦っておらんかったから、たるんどる精神を叩きなおすのに丁度良いの。それに危なくなったらちゃんと手助けしてやるわい。お主もそうなのじゃろ?」
冥琳「フフ…無論ですよ」
そう言って二人は、笑いあう。
これから、命をかける戦場に向かうというのにその顔には恐れなどというものはまるで無い。
二人が見つめるは、ともに期待している人物たちの成長。
まだ蕾であったものたちがどんな華をさかして、私達を驚かし楽しませてくれるのか…
そのことに期待で胸が膨らむのだった。
~鍛錬場~
晴歌「お?一刀ー何やってたんだよ。もう皆準備できてるぞ?」
一刀「ああ、ちょっと冥琳に呼ばれてね…絢音。至急皆を集めてもらえるかい?」
絢音「え?…あ、はい。分かりました。」
一刀に言われて、多少疑問に思いながらも、絢音は自分たちの隊の兵を集める。
晴歌「いきなりどうしたんだよ…なんかあったのか?」
一刀「まぁね。それは皆が集まってから言うよ。」
その言葉に晴歌は、聞き出そうと思ったがすぐに兵たちが集まったため、納得は出来ないものの問いただすことをあきらめるのだった。
絢音「みんな、そろいました。」
一刀「ありがとう…では皆ちょっと聞いてほしい。」
一刀の言葉に、先ほどまでざわついていた兵たちが、姿勢をただし耳を傾ける。
一刀「今回の戦い、俺達も前に出て戦うこととなる。」
ざわ…ざわ…ざわ…
一刀の言葉に皆動揺を隠せないでいた。むろん、それは兵だけではなく隣にいた絢音も晴歌も同じだった。
だが、一刀はそんなことにも動じず話を続ける。
一刀「今回、初めて戦場に出る者は怖いであろう。なにせ、一つ間違ってしまえば命を落してしまうかもしれない。そして自分たちで人を殺さなくてはいけない。そんな不安で頭が一杯になっていることと思う。正直を言えば今回いきなりの実戦で俺も怖い。なぜなら、自分ひとりでなく皆の命を預かっているわけだから、それを考えるとこんなこと馬鹿げていると思ってしまう。だが、考えてみてくれ何も実績の無い俺達がこの戦いで凄い成果を上げることが出来たなら、他の将達に…いや町の人たち全員を驚かすことができる!!これほど面白いことはないと思わないか?」
口元を吊り上げ、ニヤとした顔で兵士達に問いかける一刀。
その言葉か、それとも一刀の表情になのか…すこしだけ笑みがこぼれるものが出てくる。
その顔に少し笑いながら、さらに言葉を続ける。
一刀「それに…だ。…もしここでかっこいい所を見せられたなら、今まで好きだったけど声を掛けることが出来なかった人から声をかけられるかもしれないぞ?うまくいけばそのまま…ってなことになるかもしれない。…まぁ保障はできないが…」
ここで、皆から笑いが起こる。
その他にも、”そこは保障してくださいよ…”とか、”その時は手伝ってくれるんですよね?”などいろいろな言葉が飛び交っている。
隣にいる二人は、一人は大笑いをして、もう一人は何処かに意識を飛ばしているが…
一刀「そのためには、まずやらなくちゃいけないことがある。だから皆俺…いや俺達三人に命を預けてくれ。そして俺達の命も皆に預ける。…我々が行ってきた訓練は実践に勝るということを、やつらに教えてやろう。今この時より我ら北郷隊、この大陸に名乗りを挙げる!!その初戦を圧倒的な勝利を持って華々しく飾ろうではないか!!」
ウアアァァァァァ………
一刀が言い終えると同時ぐらいに、兵たちから歓声が上がる。
それは、一刀の言葉に反応してなのか…はたまた、これから戦場に向かうにあたり自らを奮い立たせるためなのか…
それはわからない。だが、兵一人一人にはもう絶望の目をしたものはおらず、皆活き活きとしていた。そんな兵たちの顔を見ながら一刀は思う。
こんな俺のために命を預けてくれて…本当なら不安で心が一杯なはずなのに…こんな無茶な命令にも従ってくれて…俺はこの兵たちと一緒に戦えて…命をかけることが出来て…幸せだ…。
みんなありがとう!!!
一刀「よし!これで俺から言いたいことは終りだ、先ほどまでやっていた作業に戻ってくれ。いいか!この準備によって、圧倒的な勝利が出来るかどうかが決まる!!皆できることはすべてやっておいてくれ!!……では解散!!」
兵士『は!!!』
一刀の言葉を聞いて、皆気持ちのいい返事をした後駆け足で先ほどまで作業していた場所へと向かう。その姿を見て、”本当にいいやつらだ…”改めてそう思う一刀であった。
晴歌・絢音『一刀(様)…』
兵たちが作業に戻った後、隣に控えていた二人が声をかけてくる。その声に一刀は二人のほうに顔を向けると、二人の顔は驚いていた。
晴歌「一刀…泣いているのか?」
そう言われ、自分の顔を触るといつの間に泣いていたのか…頬に涙が伝っていた。
一刀「あれ…おかしいな。なんで泣いてるんだ俺。…ははっ…これじゃあせっかく頑張ってくれる兵たちに申し訳がたt…」
そう言おうとしたとき、不意に視界が暗くなり気付いた時には一刀の頭は絢音に抱きしめられていた。
絢音「一刀様!!…なんで一人で抱え込もうとしているんですか!?今回のこと大体は予想がつきます。でもこれは貴方のせいじゃないんですよ!?」
一刀「でも…それでも…俺はくやしいよ…俺は皆に無理なお願いをしてその中には死んでしまうものがいるかもしれない。その現実が俺は許せない…」
絢音「たしかに、現実は私達にやさしくありません。でもその現実を少しでも良くしようと皆集まっているのです。一刀様だけじゃないんです。皆この現実を許せるわけがありません。…ですが、もしここで何もしなかったら、きっと最悪の事態…より多くの人たちが死ぬかもしれないんですよ?そうなった時一刀様は…貴方はそれを許せるんですか!?」
不意にほっぺたに雫が落ちる。良く見るとその雫の正体は絢音の涙だった。
絢音「…一刀様も知っている通り、私のいた村は賊によって教われました。そこにはこれからもっと生きれるはずだった…もっといろんな可能性を持った子供たちまでいました。そしてここにいる兵たちも皆可能性を持っているんです。そんな可能性を潰してしまう…そんな悲しみは兵を率いているものたちは…少なくともこの孫呉に居る将たちが皆持っているんです。でも…それでも前に進まなくてはいけない。ここで死んでしまうかもしれない人たちの屍を乗り越えてでも私達は少しでも多くの人が生き残れるように…そんな可能性を掴まなくてはいけないんです。でも…その辛さを一人で抱える必要は無いんですよ?…その辛さ…私達副官にも分けてください。」
晴歌「そうだぞ一刀?…それに皆が無事に生き残れるために私達が居るんじゃないのか?皆が私達の命を守ってくれるように、私達が皆の命を守る。それが将軍…人を率いる者の責任だと私は思うんだ。でも…その責任は一刀だけには背負わせない。私達も一緒に背負うよ…だから…な?そんな顔するなよ…一刀に泣き顔は似合わないぞ?一刀に似合うのは笑顔。皆の笑顔を目指しているものが、笑顔じゃなくてどうするんだ。…だいたい一刀が泣いたってかわいくないぞ?」
途中まで真剣だったのに、最後の最後でふざける。まったく晴歌は…
もちろんそれは晴歌のやさしさだというのは知っている。
知ってはいるのだが…この場面でそれはどうだろう?そう思ってしまう。
一刀(本当に…俺にはもったいない副官達だな…)
一刀「……悪い。ちょっと自分で背負い込んでしまったみたいだな。…よし。こんな戦いで死者を出すなんてもってのほかだ。全員生還させるぞ。」
晴歌「あたりまえだっての。…でも一刀覚えておくといいよ。お前が笑ってくれているだけで私達にどれだけ力になっているかをな♪」
一刀「……晴歌お前ってけっこうカッコいい事言うやつだったんだな。」
晴歌「な!////何真面目な顔をして言ってるんだ!照れるだろ!!」
一刀「いやでも…な。…そう思うだろあや…ね……」
晴歌「ん?どうしたんだ、かず…と…」
絢音に同意を求めようとするとそこで時が止まってしまった。
そんな一刀を不思議に思ったのか、まだ少し顔の赤い晴歌が一刀の見ている方向に視線を移す。そして晴歌もまた時が止まってしまった…
絢音「しゃ…しゃきまで私の胸の中に一刀しゃまが~/////しかもいつもみたいな凛々しい顔じゃにゃくて、泣き顔で~…ふ、不謹慎なのは分かってるんにゃけど…か、かわいいって思ってしまうのは仕方がにゃいですよね~…あ、あんにゃ姿見せられたら絢音はあ・や・ねはぁ~////」
一刀「なぁ…晴歌…」
晴歌「…何だ一刀」
一刀「俺さ…さっきまで絢音のことすげー感謝してたんだけど…なんかあの姿見たら、感謝の気持ち無くなりそうだ…」
絢音「一刀…その気持ち分からなくも無いけど…で、でも妄想癖のある絢音にしたら持ったほうなんだから…そこでなんとか…」
一刀「晴歌…本当にそう思ってる?」
晴歌「……ごめん…無茶なお願いだったわ…」
先ほどまでの雰囲気はどこにいったのやら…二人は何かを悟ったような顔をして、何処か遠くを見つめていた。
なるべく、妄想中の絢音を見ないように…
二人の顔には何処か哀愁が漂っていた………
絢音「お、おおおねえしゃんに、まかしぇてください一刀しゃま…私がなぐしゃめてあげましゅ!!……だから私のむ、胸の中でないてくだしゃい~」
一刀「……晴歌そろそろ止めてくれない?」
晴歌「…………その命令だけは聞けない…というか、聞きたくない」
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~荒野~
一刀たちは今黄巾党の姿が良く見える丘の上に来ていた。
そして、その数を見て改めてその多さに驚いてしまう。
その不安を感じ取ったのか、隣にいた雪蓮が話しかけてくる。
雪蓮「あら?怖いの一刀?」
一刀「ああ…多分いくら戦場を経験してもこの気持ちは変わらないんじゃないかな…」
普段ならそんなことを言うと大笑いしてからかってくる雪蓮なのだが、今回はそういったことをせず、少し笑ってこちらの顔を見てくる。
雪蓮「一刀…その気持ちを恥じる必要はないわ。だってそれは当たり前のこと。この私でさえそう思ってしまうことが、ごくたまにあるわ。そして、これからもその気持ちを忘れないで…その気持ちがなくなってしまえば、それはもう人ではなくなり獣と同じになってしまうわ。」
一刀「雪蓮…」
雪蓮「私はいいのよ…もうそうなってしまう覚悟はあるから…でも一刀は絶対にそうなっちゃだめ。一刀が人で居てくれる限り、私…いえ多分私達になるのかもしれないけど、人に戻れるから…そのためにも、貴方は辛いかもしれないけどその気持ちを持っていてほしいの。これは私からのお願いよ。」
一刀「わかったよ。…でも獣になってしまった雪蓮達を俺一人で抱え込めないから、なるべくそうならないでほしいな…」
雪蓮「あら♪そこは男の甲斐性ってやつでなんとか…ね♪」
一刀「…何とかできるのを超えそうなんだけど…」
雪蓮「がんばれ男の子♪…それじゃあそろそろ始めるから一刀も自分たちの隊に行きなさい。出発の時みたいに遅れるのはなしよ♪」
一刀「わかってるよ。…それに遅れたのは俺のせいじゃない…絢音が暴走したせいだからな!」
実をいうと、出発前一刀の部隊は予定より少し遅れてしまったのだ。
そのことで冥琳たちに怒られる事になるのだが、絢音の暴走したという話をすると、急に怒気を収めて、皆して俺の肩を叩きながら”ご苦労様”と言ってくれた。
皆暴走した絢音を止めるのはとても大変なことを分かっているようで、その顔にはまるでおじいちゃんが孫を見ているような…そんなとても暖かな目で一刀を労った。
絢音「え!…わ、わたしまた何かやっちゃいましたか?」
周りを見ながら、慌てている絢音もまた皆から暖かな目で見られているのは、仕方が無いことなのだろう…
そしてそれはもちろん後から合流した、雪蓮にも伝わっていた。
そのことを思い出した雪蓮は、困ったような顔をしながら”…ごめんなさい”と謝るのであった。
そんなことがあって…雪蓮は一刀と分かれた後、敵である黄巾党を改めて睨み付ける。
その顔には先ほどまでとはまったく違う、王としての顔…そして獲物を見つけた虎のように獰猛な顔をしていた。
冥琳「いよいよね…」
雪蓮「ええ…ゾクゾクしちゃうわ♪」
冥琳「はぁ…言っても無駄だと思うけど言わせて…無理はしないでね雪蓮。」
雪蓮「ふふ…分かっているわよ冥琳♪」
冥琳の言葉をよそに、ずっと笑っている雪蓮。
冥琳もそれが分かっているかのように、ため息をつきながら言葉を続ける。
冥琳「貴方の分かっているほど心配なものはないわ…祭殿お願いしますね。」
祭「おう…まかされよう。ま、心配ないとは思うが…の。でも策殿、くれぐれも暴走だけはしないでくだされよ。」
雪蓮「んーわかんない♪」
そう笑いながら言う雪蓮をみて、祭もまた大きなため息をつくのだった。
穏「あやや~暴走してしまったら、後が大変なんですからやめてください~。それに私達の出番が無くなっちゃいますよ~なので祭様よろしくお願いしますね~」
雪蓮「もう…なによ皆してー!!」
そう穏の言葉にほっぺを膨らませて雪蓮が抗議すると、そこに居る皆が少し笑っていた。もちろんそこには先ほどまで心配していた冥琳もいるのだが…
冥琳「さてそろそろ行動に移しましょう。まず、圧倒的な勝利を手にするためにはただ闇雲に戦ってはいけないわ。」
雪蓮「そう?大丈夫だと思うけど?」
雪蓮のあっけらかんとした返事にため息をつきながら、まるでその意見がなかったかのように話を進める。
冥琳「はぁ~…そうね…雪蓮たちが突撃した後、機をみて本陣に火矢を打ち込みましょう。」
穏「そうですね~それがよろしいかと~」
祭「なるほどのう…一刀たちはどうするつもりじゃ?」
冥琳「彼らたちなら大丈夫でしょう…最低限火矢を使うと伝えておけば後は独自で動いてもらってかまいません。」
冥琳に無視をされていじけていた雪蓮だったが、一刀の話を聞くといじけているのをやめて会話に参加してくる。
雪蓮「あら?いいの?」
冥琳「ええ…どこかの誰かさんと違って、こちらの考えていることは分かっているはずよ。それに一刀の部隊はまだどんな部隊なのか分からないから、指示の出しようがないのも事実だし…ね。」
雪蓮「ぶー…冥琳のいじわる。…でもそこまで一刀のこと信用しているのね。」
冥琳「当たり前でしょ、あの子は私の弟子よ?これぐらいのこと簡単に分かるはずだし、それに今回彼には自分で考えて動いてほしいの…これからの為にもね。」
雪蓮「…そうね。…それじゃそろそろはじめましょうか。」
雪蓮がそう言うと、先ほどまで笑っていた者たちにも笑みは消えて真剣な顔で号令をまつ。
その顔をみて少し微笑んだ後、雪蓮は腰に下げていた南海覇王を抜くと声高々に宣言をする。
「勇敢なる孫呉の兵たちよ!!いよいよ我らの戦いを始める時が来た!!」
「新しい呉のために!!我らが悲願を果たすために!!」
「天に向かって高らかに謳おうではないか!!誇り高き我らの勇と武を!!」
「敵は無法無体にも暴れまわる黄巾党!!獣じみた賊共に孫呉の力を見せつけよ!!」
「剣を振るえっ!!矢を放てっ!!正義は我ら孫呉にあり!!」
「全軍、雄叫びと共に突撃せよ!!」
ウオオオォォォォォーーーーーーーー!!
孫呉の虎達の雄叫びと共に、今孫呉の戦いの幕が上がる。
くしくもその日、後に大陸を驚かせることとなる北郷隊の初陣の日でもあった。
後に一刀こと北郷将軍はこう語る…
「すべてはこの戦いが始まりであり、今の北郷隊があるのもこの戦いのおかげだったと…」
予告通り八月に入ってしまいました。どうも秋華です。
思春「////////////////////」
あれ?どうしました思春?
思春「萌将伝…あれはいったいなんなんだ…/////」
あれ?…あぁ…良かったじゃないですか、今回でかなりファンが増えたと思いますよ?
思春「そ、そうか♪////」
はい!…思春の機嫌が良くなった所で、少しお詫びを…
実は今回北郷隊の正体を書く予定でしたが、実はそれを書いていたら、かなりの量になってしまったため、もう少しまとめて次回に書きたいと思います。
楽しみにしてくださって皆様もう少し待ってください。
思春「ほう…結構深く考えたのか?」
そうですね…いろいろな作品を読ませていただいて、イメージを固めていたらいつの間にか…って感じですね。
思春「そうか…まぁ期待を裏切らんようにするんだな…」
頑張りますよ。
それでは次回ですが…
初戦に決着がつきます。
そこで明かされる北郷隊の秘密
それを見て将たちはなにを思うのか…
こんな感じでお送りします。
思春「私はまだでないのか?」
とりあえずはこれが終わるまで我慢してください。
ちゃんと救済はしますので…
思春「わかった…」
そんな落ち込まないでください。いまだに出てこない人もいるんですよ?それにあとがきには毎回でてるんですから…それでは今日の思春張り切っていってみましょう!!
今回は…
思春風邪をひく
こんな感じで行きましょう。
思春「ん?これ何か見た事があるような…」
気のせいです。まさか萌将伝みていいな…って思ってませんから…
思春「それ…語るに落ちているからな…」
は!…と、とにかくまた次回で、あでゅー!!
思春「//////お見舞いに来てくれたのか?…あ、ありがとう…その…実はお前に頼みたいことがあるんだ…わ、笑うなよ////その…私が寝るまで手を握っててくれないか?…べ、別に心細いからじゃないからな!!////笑うな!!////って…あ………ふふっ……お前の手…あったかいな♪しばらくこのままでいてくれ……ありがと////」
なんか、寂しいのに強がっている思春想像したらハナジが………ブブッ!!
思春「//////こんなのは、断じて私ではない!!」
いや?絶対こうなると断言できる!!
思春「なぜだ!!」
だって、思春好きな人に絶対尽くして甘えるから…
思春「!!!!!!!!!!!!///////////////」
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萌将伝終わりました…
出ていなかった人は残念だけど……でも…私は嬉しかったんだ…
だって…だって……
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