No.162048

真・恋姫†無双【黄巾編】 董卓√ ~風と歩み~ 第八話 ~居場所~

GILLさん

GILL(ギル)と名乗る作者です。
前回の更新を見てみたら、二週間も経ってしまった・・・。
遅れて申し訳ないです。
今回も、1ページの文字数が異常に多いです。
飽きずに読んで頂ければ幸いです。

続きを表示

2010-07-31 01:57:56 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:6458   閲覧ユーザー数:5537

 はじめに

 

 GILL(ギル)と名乗る作者です。

 

 この作品は、真・恋姫†無双のみプレイした自分が

 

 『俺は、風が大好きなんだ!!』

 

 と、いう感じでタイトル通り【~IF~】『もし、風達と一刀が同行したら・・・』

 

 という妄想がタップリの作品です。

 

 でも、作者は風以外に目が入っていないので、もしかしたらキャラが変わっている可能性も出てきます。

 

 そして、オリジナルのキャラクターも出すかもしれません。

 

 ですから、『あ、そういう系のSSマジ勘弁』という方はお控えください。

 

 それでも、『別に良いよ』という方は是非とも読んでやってください。

 

 それでは、ご覧ください!

 風視点

 

 幾つもの砂塵が舞う砂漠の地平線。

 紅く染まった地平線は、その醜い姿を必死に隠そうとしているようでした。

 

 指示が来なくなった先行部隊は、呆気なく瓦解。

 烏合の衆と化した集団に負ける要素を持たない私達は、見事に撃退しました。

 恐らく、生き残った賊は数十人と無いでしょう。

 

 戦に勝利した私達は、お兄さんの帰りを待ってしました。

 

 ……そんな事はどうでも良いのです。

 

 風は、こんな戦の勝ち負けよりお兄さんが一番心配です。

 

 

 怪我はしてないでしょうか?

 

 辛い思いをしなかったでしょうか?

 

 ……何より、お兄さんはお兄さんでいてくれましたか?

 

 

 風はいけない女です。

 お兄さんを護ると誓ったはずなのに、お兄さんに護られてしまいました。

 変わり果てようとも、お兄さんはお兄さんです。

 

 ……それなのに、風は我侭を言ってしまいました。

 ……風は、あの時のお兄さんを恐がってしまいました。

 

 お兄さん。 こんないけない風でも、許してくれますか?

 

 

 やがて、砂塵が消えたかと思うと、無数の影が見えました。

 

 『おーい! 風ー!!』

 

 なんて、手を振りながら、叫びながら走ってくるお兄さん。

 お兄さんを見た瞬間、足から力が抜けて崩れそうになりました。

 

 この脱力感は何なのでしょうかねー?

 

 お兄さんがいつも通りだったからでしょうか? ……それとも。

 

 そんな事よりも、風は走りました。

 

 『お兄さん!』

 

 ……お兄さんの懐は、暖かかったです。

 一刀視点

 

 ……本当に、これで良かったのだろうか。

 

 『所詮は綺麗事しか言えない、臆病者なんだよ!!』

 

 違う。 俺は……そんなつもりじゃ……。

 

 『何も知らないくせに、知った風な口を聞いて、全てを解ったような気で居る!!』

 

 それでも……俺は! ……君を救いたかった……。

 

 『知ってもらう気なんてねーよ!! どうせ理解されない!!』

 

 お互いに、分かり合おうとすれば、きっと……理解できるのに。

 

 『なら……どうしろって言うんだよ……偽善者!』

 

 それは……。 俺にだって……解らないよ。

 

 

 積み重なる矛盾。 その度に沸き起こる後悔。

 「こんなはずじゃなかった」 「そんなつもりはなかった」

 幾度となく、そんな言葉が自分の中を巡る。

 

 偽善だと、それでも良いと、そう誓い……ここまで進んできた。

 しかし、進んでは振り返り、自分の行った事を見つめてしまう。

 その度に、矛盾だと知らされてしまう。 その度に、後悔で心が押し潰される。

 

 今まで、自分がした事……本当に意味があったのか、と。

 何の為に、戦ったのだろうか。

 

 

 『風が……護って、あげますから……だから』

 

 不意に、風の泣いている顔を思い出した。

 

 『俺は、俺が護りたいと願った人達全ての為に戦っている』

 

 そうだ。

 

 これが、俺が貫いてきた『正義(偽善)』

 例え、世界が敵に回ったとしても、信じてくれる人(彼女)がいる。

 ……だから。

 

 「おーい! 風ー!」

 「お兄さん!」

 

 君だけは、絶対に護るよ……風。

 「ウォッホン! ……兵も疲れているようだし、そろそろ天水に戻っても良いのだと思うのだがな……私は」

 

 わざとらしく、聞こえるように咳払いをする華雄。

 目を逸らしてくれるのは、彼女なりの気遣いだろう。

 

 「「……ぁ」」

 

 同時に重なった二つの声。

 しかし、声は一緒でも考えている事は違っていた。

 

 「いやぁ、ごめんごめん。 ついつい……」

 「何が、『ついつい』だ。 ……頼むから、兵に威厳を問われるような行為は慎んでくれ。私が恥ずかしいではないか!」

 

 小声で、耳元に囁く華雄。

 ……そんなに、威厳無いかなぁ? 俺。

 

 「~~~~っ!!」

 

 ボンッ! という効果音が聞こえたので、何事かと周りを見渡すと、風の頭に水蒸気が昇っていた。

 目をパッチリと、口をひし形に開いたまま、顔を真赤に染めていた風が居た。

 ……はて? 公衆の目前で、自分がデレた事がそんなに恥ずかしかったのか?

 

 それもそのはず。 今まで風は、軍師らしく冷静に、淡々と、凛とした姿勢を保ち続けていたのだ。

 そんな風が、一人の男の前で、こんなにもデレていると見られれば、恥ずかしくもなるのだ。

 

 「あ、あわ、わわ……ぅ、ぅあ、う……」

 

 口が思うように動かないのか、思考回路がショートしているのか、言語がなってない風。

 ……意外に可愛い。

 

 「はいはい、風。 なでなで」

 

 試しに撫でてみると……。

 

 「ふみゃぁ!!」

 

 耐えられなくなり、ボンッ! という効果音を再び出しながら、崩れ去った。

 

 「お、っとと」

 

 地面に落ちる前に、大事に愛でるように抱き締める。

 その様子から、いかに一刀が風を想っているのかが、手に取るように解った。

 

 ……それを、羨むかのように、人差し指で唇を押していた華雄が見ていた。

 

 「ん? 華雄? どうした?」

 「……ささ、全軍! 回れー、みみ! ……ぁ。 回れー、右!!」

 

 激しく動揺しているのか、噛んでしまった。

 それを聞いた兵は、はいはいと、言わんばかりに苦笑しながら天水へと引き返した。

 華雄視点

 

 ……私は、武人だ。 私は、武人だ。 私は、武人だ。

 

 自分の中の邪念を振り払うかのように、呪文を頭の中で繰り返す華雄。

 その呪文のオーラらしき物体が、華雄の周りを取り巻いていた。

 そのため、兵士からは遠ざけられ、一刀の苦笑いしかできなかった。

 

 ……私は、武人だ! 武人が、恋にうつつをぬかしてどうする!!

 

 ……しかし、邪念を振り払おうと必死にもがく華雄だが、頭の中で一刀の笑顔が広がっていく。

 

 な、一刀! やめろ! こっちを見るな!

 所詮、私は武人だ! 女を捨てた身なのだぞ! こんな私に魅力なんて欠片もないのだぞ!!

 

 (脳内一刀ボイス~華雄ver~)

 『そんな事ないよ。 武を振るう華雄の姿。 凛々しくて、それが魅力的だよ』

 

 そ、それは、女としてでは無く、武人としての魅力であろう!?

 

 『でも、華雄の身体って引き締まっていて綺麗だよ。 まるで、俺好みだ』

 

 そ、そうか! お前好みなら、女として生まれてきた事を、初めて感謝するよ……。

 

 『おいで、華雄……』

 

 う、うむ! 今行くぞ! 一刀!!

 

 一刀の顔にダイブする華雄。

 ……しかし。

 

 「―――ふぎゃ!?」

 

 一刀ではなく、木にぶつかった華雄。

 全力で飛び込んだのか、痛みと衝撃があまりにも強くて気絶してしまった。

 

 「あーあ。 仕方ない。 よっこらしょっと」

 

 気絶している華雄を見て、起きそうにないと判断した一刀は、華雄を負ぶった。

 ちょっと違う形になってしまったが、願いの少しが叶った華雄であった……。

 

 (私は、武人だ! ……でも、一刀……お前になら、女としての私を、見て欲しいな……)

 来た道を戻る俺達。

 天水から、あの道へと移動するのに、そんなに時間は掛からなかった。

 

 逆に言えば、あそこを抜かれていたら、天水……俺達の帰る所は無くなっていた、という事である。

 人間とは、危機的状況に陥ると、自らの生存本能か、何か知らぬものを開花させる。

 所謂、『背水の陣』と、いうものだ。

 

 このような、古典的戦法かつ、効くかどうか定かではないが、これだけは今回の戦いを得て、言える。

 『人は、何かを護りたいなら、強くなれる』と。

 

 家族、友人、故郷、何でもいい。

 

 マンガのような出来事だが、俺は実感した。

 ……ひょっとしたら。 賊という存在は、何か……護りたいものを失くしてしまった、そんな人達が、傷を舐め合い……互いに、少しずつ、壊れていったのかもしれない。

 

 

 ……ひょっとしたら、俺は……この時から、決意していたのかもしれない。

 『この世界を……苦しむ人達を全員、救える存在(天の御遣い)になりたい』と。

 

 

 この戦いで、犠牲になる人が出てくるかもしれないと思ったけど、華雄が頑張ってくれたお陰で、怪我人数百人で納まった。

 

 怪我をした人が出てきたのは、喜ぶ事じゃないけど、今は……無事に生き残れた事を喜び合おう。

 

 『――――お帰りなさい! 一刀さん!!』

 

 『ただいま! 月! 皆!』

 

 ―――護りたいと願った、皆と一緒に……。

 俺達が天水に戻ってから、一週間が経った。

 ようやく、一週間前に起きた慌しさと、不安やそういった感情が入り混じった緊迫した空気が徐々に解けていった。

 

 そんなある日の事だ。

 突然、月達から『明日の朝議は予定より少し、遅れて来てください』なんて、言われたのだ。

 取りあえず、言われるがままに、朝をいつも通りに起きてゆったりと時間を満喫した。

 

 「……そういえば、こんなにマッタリとした朝って、何か久しぶりな気が……」

 

 ……そうだ。

 俺が元の世界に過ごしていた時は、スズメの声を聞きながら、眠い朝を過ごしていた。

 それが、今では政務に追われ、夜明けの前に起きた事だってあった。

 

 「……これって、所謂平和ボケってやつなの……かな」

 

 目覚めたら、いきなり砂漠の上で寝ていて、風達に拾われて……人を殺して、そして……俺は生き残って……。

 大切な人を傷つけて、泣かせて、それでも……護ってくれて。

 

 「今度こそ……強くなれるって……必ず」

 

 必ず、約束する。

 

 

 

 その約束は、一体……誰に宛てられたものだろうか。

 愛した人へ? 護りたいと願った人達へ? それとも、自分自身か?

 

 哀しき歴史を駆ける野良犬は、当てもなく只管に走る。

 この世界に日輪が照らす限り、自分に風が吹く限り、潰れるまで走り続ける。

 

 『例え、滅ぶ事を知っても、走る事を止めないであろう……』

 「さて……と、そろそろ良いかな?」

 

 勢い良く布団から飛び出すと、部屋を出た。

 

 「さて……と、今日も忙しい日の始まりかなぁ……」

 

 俺は、午後の非番の予定を考えていた。

 ……そういえば、最近風と過ごす時間が無くなってきているな。

 よし! 今日は、風も非番だし、思いっきり遊ばせてもらおう!

 

 「よし、そうと決まればさっさと朝議なんて終わらせ……よう……?」

 

 あ、あれ?

 やけに……足元がよろける。

 

 その事に気づいた瞬間……。

 

 「~~~~~~~っ!!」

 

 激しい吐き気に見舞われた。

 

 口の中から、何かを吐き出すのを堪え、すぐさま自分の部屋へと戻る。

 

 「ウェ……ゴホッ!……オェ……カハッ!……何だよ……コレ」

 

 取りあえず、その辺に置いてあった桶に逆流する『何か』をぶちまけた。

 嘔吐物は無かった。 それもそのはず、朝食はまだ食べてない。

 ……その代わり、胃液に混じった……『血』が吐き出された。

 

 「……一週間前に、頑張り過ぎた……かな?」

 

 慣れない事をして、一週間経った今になって緊張の糸が切れたのだろうか?

 ……それにしては、変だ。

 

 普通、血を吐き出すか?

 嘔吐なら、まだ解る。

 胃がストレスを感じ過ぎて~なんて、どっかのTV番組で学者が言っていたような覚えがあった。

 でも、今回は……血だ。

 あの戦いで、目立った外傷は無い。 なら、一体原因はなんだ?

 

 そんな事を考えていると……。

 

 「~~~ッ!!」

 

 今度は、激しい頭痛が起きた。

 頭を鈍器でぶん殴られたような感覚。 痛み。

 頭が裂かれても可笑しくないような、そんな痛みだ。

 

 「……やっと、退いたか」

 

 程なくして、痛みは退いた。

 

 「……考えても仕方ない。 今は、朝議に行こう」

 

 未だによろける足取りで、俺は朝議に向かった。

 「……確かに、朝議は遅らせるって言ったけど、無いとは言ってないわよね?」

 「……ハイ。 仰る通りです」

 

 只今、俺は正座で詠のキツイお説教中だ。

 説教をされる分は、俺に非があるのだから仕方が無い。

 俺としては……足の筋肉が悲鳴を上げるかどうかが心配なのだ!

 

 今日は午後が非番だから、風と一緒に過ごす予定を立てた俺が、足が痺れて無理、だなんて弱音は吐けない。

 だからこそ、詠にバレないように少しずつ体を浮かせたり、足の位置をずらしたりしている。

 

 「……で? 朝は何をしていたのかしら?」

 「……」

 

 い、言えない。

 『桶に血をぶちまけました』なんて、言えない。

 言ったとしても、『なら、今日は絶対安静』なんてオチになって風と過ごせなくなる!!

 それは、俺のプライドが許せないんだよ! ……だからこそ。

 

 「二度寝しました!!」

 「くたばりなさい」

 

 詠のローキック!

 一刀の顔面にHIT!!

 

 「フギャァア!!」

 

 即答の上に、問答無用のローキック。

 ック! キックなら、パンチラが行える絶好の機会なのに!

 計算の上でのキックか! 流石、軍師賈詡!

 

 その頃の賈詡の心

 (も、もうちょっと……高く足を上げていたら、み……見せられた(魅せられた)かしら?)

 なんて、思ってたり、思ってなかったり。

 

 「……一刀。 大丈夫?」

 「あぁ、恋か。 大丈夫だよ」

 

 そう、彼女――恋は、一週間前に俺が初陣で勝利した事を聞いて、仕事を疾風の如く終わらせ、ここ天水に一晩で走ってきたのである。

 ……この時、恋は休みもせず、馬も使わず走ってきたのだ。

 恋曰く『俺への愛の力』だそうです。

 

 「わ、悪かったわね。 でも、アンタも悪いんだらねっ!」

 「解っているって。 それじゃ 今日の朝議を始めようよ」

 

 重い腰を上げ、椅子に座る。

 今日は朝の一件以来、身体が妙に重いのだ。

 

 「あぁ、その事だけど。 実は、今日朝議なんて無いのよ」

 「……はい?」

 

 今日の朝議は実は無い……?

 なら、なんで俺はここに呼び出されたんだ?

 

 「今日は、アンタの初陣の初勝利って事で、祝う時間を設けたのよ」

 「へ……? 祝い?」

 「……一刀。 コレ」

 

 恋が、紙に包装された長細い『何か』を渡してきた。

 「これは……『方天画戟』?」

 「……(コクコク)。 一刀、武器失くしたって聞いた」

 

 あ~。 そういえば……。

 剣とぶつかった時、砕け散ったんだよねぇ……。

 あれ、お気に入りだったのに……グスン。

 

 「……にしても。 何かこれ、異常に軽くないか?」

 

 初めは、あまりの軽さに自分の感覚を疑った。

 恋の方天画戟と比べてみたけど、その差は歴然と恋の方が重かった。

 ……玩具や飾りじゃないよね?

 

 「そりゃそうよ。 鍛冶職人が軽くて硬い、新しい金属を見つけ出したんだから」

 「そして、恋さんが一刀さんの為に特注で方天画戟を作ってもらったんです」

 「へぇ、そうなのか。 ありがと、恋」

 

 そういって、俺は恋の頭を撫でる。

 

 「ん。 恋の愛が篭ってる。 天下無双!」

 

 そういって、恋は胸を張った。

 ……確かに、何か恋に守られてるような気がする。

 これなら、負ける気がしない。というか、負けるわけにはいかない!

 

 「なら、ウチはコレや! 旅先で見つけたごっつ美味い酒や!」

 

 そう、実は霞も帰ってきていたのだ。

 なんでも、「路銀が尽きた~!! 助けてぇな、月っち!!」と、泣きながら帰ってきたのだ。

 勿論、路銀が尽きたのはこの酒でもあるが……。

 

 「ありがと、霞。 ちゃんとお返しはするよ。 恋もね」

 「「おうよ!(コクコク)」」

 「えっと。 次は、私と詠ちゃんからですね」

 

 そう月が言うと、二人は俺の前に並んで。

 

 「これがボク達の贈り物『腕輪』」

 「私と、詠ちゃんの真名が刻んであります」

 

 両腕に、腕輪を付けてくれた。

 

 「ありがと、大切にするよ。 ……もしかして?手作り?」

 「そ、そうだけど」

 

 不安げに上目遣いでこちらを覗く詠。

 

 「あ、寸法が合わなかったでしょうか?」

 「いや、寧ろ丁度良い。 ちょっと、嬉しいなって」

 「そ、その分! 今まで以上に働いてもらうわよ!」

 「うーん……解った。 でも、ちゃんとお返しはさせてもらうよ」

 「それじゃあ、楽しみにしていますね。 ね?詠ちゃん」

 「え、ええ。 期待してるわよ」

 「なら、次は私の番かな」

 

 そういって、華雄は何やら白い布に被された箱らしきものを持ってきた。

 

 「わ、笑わないでくれよ? こ、コレだ」

 「こ、コレは……。 饅頭?」

 

 そう、出来立ての饅頭だ。

 水蒸気に混じって、甘い香りが空腹な胃を刺激する。

 

 「おぉ。 美味そうだなぁ、良い匂い」

 「そ、そうか? なら、ほら……食ってくれ」

 「お、そんじゃ……いただきまーす!」

 

 華雄から、饅頭を手渡しで受け取り、勢いよく口に頬張った。

 

 「……!! 美味い! 丁度良く、甘みが効いて生地がモッチリと……堪らん」

 「そ、そんなに褒めると……逆に気恥ずかしいではないか」

 

 赤面し、目を逸らす華雄。

 しかし、これは美味い……。

 

 「華雄さんってば、誰にも教わらず、一人で作ったんですよ」

 「朝議を遅らせたのも、これが理由よ」

 

 な、なん……だと!

 独学でこの美味さ……凄いぞ。

 

 「華雄。 これなら、良い嫁さんになれるって……絶対」

 「なっ! 私は……その……(お前以外の男は御免だ……バカ)」

 

 俯いて、モジモジする華雄を他の面子がからかったり、クスクス笑ったりしていた。

 俺? 俺は、華雄特製の饅頭を堪能しているよ!

 「だけど……。 良いのか?」

 「……何がよ」

 

 饅頭を食い終わった俺は、改めて皆の方へ向き直った。

 

 「よくよく考えてみれば、俺って単に雇われているだけだろ? そんな俺に、こんな……贈り物なんてさ、どうかなーって」

 「……違いますよ。 一刀さん」

 「……え?」

 

 はじめに口を開き、俺の言葉を否定した月。

 

 「……何を言うのかと思えば……。 単なる武官に、ボク達がこんな事するわけ無いでしょう? もっと、ちゃんと考えなさいよ」

 「……詠」

 

 俺の言っている事に呆れ半分の詠。

 

 「そうやで! それなら、ウチはどうするんねん! ウチはロクに働きもせん、居候のようなモンやで?」

 「アンタは、居候より寄生虫じゃなの? お金を使い果たしては、吸って、使い果たしては、吸って」

 「うっわ! 酷いな、賈詡っちは! 聞いたか?一刀!」

 「……霞」

 

 霞は霞なりに、「気にするな」って励ましてくれている。

 

 「一刀はもう、恋達と一緒。 ……『家族』」

 「……恋」

 

 自分を、大切な家族として優しく微笑んでくれる恋。

 

 「いつかは離れてしまうかもしれませんが、今は……一刀さんの帰ってくる居場所はここ。 ……それで、今は充分ではないでしょうか?」

 「……月」

 

 俺に、居場所をその微笑みと共にくれた少女、月。

 

 ひょっとしたら俺は……世界をこの眼で見定める事より、今……自分が在るべき居場所を護る事が、大切なのかもしれないと、初めてそう思えた。

 例え、間違った選択をしてしまっても、此処(居場所)を護る事に繋がるなら……俺は、それで良いと、そう思えたんだ……。

 ~その日の夜~

 

 「お兄さん」

 

 部屋の扉が開き、風が入ってきた。

 

 「風。 どうしたの? 今日一日中、見なかったし。 朝議にも居なかったし」

 「朝議は無いと知らされていたのですよー。 それに、今日風は非番ですのでのんびり昼寝をしていましたー」

 

 通りで、午後一生懸命探したのに居なかったわけだ。

 

 「それよりお兄さん。 添い寝しても構わなくてー?」

 「あ、ああ。 良いよ。 おいで」

 「ではではー」

 

 そう言うと、風は閨の中に入り、隣に寝てきた。

 

 「……実は、今日の朝の一件。 詠ちゃんから聞いたのですよー」

 「……え?」

 「お兄さんがどう思っていようと、風はお兄さんの味方です。 多分、それは詠ちゃん達も同じだと思うのですー」

 

 ……そっか。

 俺が風達を想ってるように、皆も俺を想ってくれたんだ。

 

 「だから、お兄さんはお兄さんらしく、進めばいいと思うのですよー」

 「……あぁ、そうだな」

 

 大事な事を教えてもらった。 気が付いた。

 『きっと。 俺は、一人じゃない』

 そう、思えた……。

 

 「そういえば、風だけ贈り物がまだだったですねー」

 「あ、そういえば」

 「……それでは、風の贈り物は……コレです!」

 

 そう言うと、風は俺に抱き付いてきた。

 

 「……プ」

 「……ふふ」

 

 思わず、笑ってしまった。 風も、耐えられずクスクスと笑っている。

 そう、風の贈り物。 それは……『風自身』だ。

 予想外の贈り物に、少し驚き、ちょっと嬉しかった。

 

 「うん。 その贈り物……謹んでお受け取りするよ」

 「はい。 お兄さん……。 んっ―――」

 

 頬に微かな紅が染まっている風に、唇を重ねる。

 

 そして、俺達は初めて―――

              ――――その日の夜に、身体を重ねた……。

 あとがき

 

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!

 

 随分と更新が遅れましたね、ハイ。 申し訳ないです。

 中々自分にしっくりくる展開が書けなくて、苦労しました……。

 

 今回も、前回同様長かったような……特に、1ページの文字数が。

 飽きずに読んで頂ければ、嬉しいです!

 コメント頂ければ、おからが詰まった脳みそを絞った甲斐があります!w

 

 萌将伝で華雄姐御が出ないそうですよねー。

 と、いうわけで……この外史の姐御にはちょっとしたチート能力を付け加えましたww

 『料理スキルは、流琉と華琳を凌駕しますw』

 流琉+華琳<華雄 ですww

 ちょっとしたギャップです。 武人らしく一生を生きる覚悟がある男らしい姐御。

 しかし、女としての料理は全ての男を魅了する! みたいな。

 

 それでは、次の投稿まで

 See you again!!


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
34
4

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択