No.161527

真・恋姫無双呉ルート外伝「俺と愛紗の夏休み」

海皇さん

 この作品は、一刀と愛紗が呉に行く前の話、夏休みに一刀の実家に行ったときの話です。
 この作品ではオリキャラとして一刀の爺ちゃん、両親、妹が出てきます。ではお楽しみを。

2010-07-29 09:36:37 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8852   閲覧ユーザー数:7309

 「起床おおおおおおおおおお!!!!」

 

 「うぎゃああああああああああ!!!??」

 

 な、何だ何だ人がぐっすり寝ているときに!?

 と、俺が起きると・・・。

 

 「フォッフォッフォ。起きたか一刀よ」

 

 そこには身長2m以上の筋骨隆々の老人、俺の祖父北郷玄刀がいた。

 

 「こ、こんな朝っぱら・・・、って!!まだ5時じゃねえか!!なんでこんな時間に起こすんだよ爺ちゃん!!」

 

 「フォッフォッフォ。早起きは三文の得というじゃろう?お主は三文も得をしたのじゃぞ?喜べい!」

 

 三文の得だあ?なんか滅茶苦茶嫌な予感がするぞ・・・。

 

 「・・・ちなみに、俺に早起きさせて何をしろと?爺ちゃん」

 

 「無論・・・・・修行じゃあああああああああああ!!!!」

 

 「やっぱりかあああああああああ!!!!!」

 

 その日の朝、俺の絶叫が響き渡った。

 俺と愛紗は現在、鹿児島の実家に来ている。

 

俺の大切な愛紗を、両親や爺ちゃんに見てもらいたかったからな。

 

ちなみに混乱させるとまずいので、外史云々の話は伏せておいた。

 さすがに関羽と名乗るのも拙いので、愛紗には『関 愛紗』と名乗ってもらっている。

 ちなみに聖フランチェスカでもそういう名前で登録しているので問題ない。

 

  両親と爺ちゃんに愛紗を紹介したときは皆驚いたりよろこんだりしてたな。

 俺が嫁を連れてきた、とか、ようやく俺にも春が来たんだな、とか・・・。

 

ただ俺の妹の一菜は不機嫌そうにしていたけど。

 一緒に実家に帰るときも愛紗のほうを見て舌打ちしたりしてたけど・・・。

 というか俺が愛紗と一緒にいるといつも睨み付けて来るんだよな~。

 愛紗は仲良くしたいらしいけど・・・。

 

で、愛紗を家族に紹介した後、俺は爺ちゃんと父さんに頼み事をした。

 それは、北郷流の技を伝授してもらいたい、というものだった。 

 俺の言葉を聞いた爺ちゃんと父さんは真剣な顔になって、何故、と聞き返した。

 俺は、まさか前の世界のことを話すわけにはいかなかったため、大切な人を守りたいから、と言っておいた。

  この気持ちにも嘘は無い。前の世界で、俺は大切な仲間を、愛する人達を失った。

 ひょっとしたらこことは別の世界に居るのかもしれないけれど、だからこそ俺は、

 大切な人を、愛紗を守ると誓った。その為に強くなるとも。

  俺の言葉を聞いた爺ちゃんと父さんは、承知してくれた。

 爺ちゃんは俺がいい目をするようになったと言っていた。

 

  まあそう言う訳で俺は爺ちゃんと父さんから技の修行を受けている。

  

 

 

・ ・・けど

 

 

 

 段々後悔してきた。

 

 

 

だって

 

 

「ぬりゃあああああ!!!一刀おおおおおお!!!もっと早く走らんかあああああ!!!」

 

 「無茶言うなあああああ!!!このくそ爺いいいいいい!!!」

 

 こんな死ぬ一歩手前な修行させられてるんだから。 

 今俺のやっている修行は爺ちゃんの乗ったタイヤを引きずりながらマラソンするという、サンデーで連載中の某格闘漫画に良く似た特訓なんだけど、その距離が半端じゃない。

 いつもは隣町の駅までの往復20キロ程度なんだけど・・・・。

 

 「なんで今日に限って桜島までなんだああああああ!!!!」

 

 そう、今日は桜島までの片道20キロ、往復だと約40キロはある。

 もう完全にフルマラソンだこれ!てかもうこれ特訓じゃねえよ!!ぶっちゃけ本番だから!!!

 

 「言ったであろう!!技の修行はさらに厳しくなると!!じゃから準備運動もさらにレベルアップさせたのじゃ!!」

 

 「もう準備運動じゃねえよこれ!!これじゃ技の修行の前に力尽きるわボケ!!」

 

 「何を言うか一刀!!クリアマインドの境地に達するのじゃ!!!そして己の限界を突破せい!!!」

 

 「俺に何をアクセルシンクロしろっつうんだこのくそ爺いいいいい!!!」

 

 結局、走りきったわけだけれど、マジで己の限界越えたため、家に着いた瞬間ぶっ倒れて動けなくなった。

 

 「ま、さすがに40キロは無理じゃったかの」

 

 てめえ、じじい、まさか知っていてやったのかよ。

 

 「いや~、ものは試しと言うじゃろうが。おお、もう朝飯の時間じゃぞ?

 早く風呂にでも入って来い」

 

 何が物は試しだ。俺死に掛けてるぞこら。あと、体動かねえからせめて風呂まで連れてけ~!!

 俺の叫びも虚しく爺ちゃんは家に入っていってしまった。

 

・・・技の修行、お願いするんじゃなかった。

 玄関先でぶっ倒れたまま、俺は心の中でそう呟いた。

愛紗side

 

 「うん、いい出来具合よ、愛紗ちゃん」

 

 「あ、ありがとうございます!!お母様!!」

 

  ご主人様のお母上である北郷由美様は、私の作った味噌汁を口にして褒めてくださった。

 それに対し私は感激してしまい、思わず声が上ずってしまった。

 

  ご主人様のお誘いでご主人様の実家に行くことになった時、最初は不安で仕方なかった。

 

ご主人様のご家族は私を受け入れてくださるのだろうか・・・。

 

私がご主人様と不釣合いだと思われないだろうか・・・。

 

そんな不安もご家族に会った瞬間に吹き飛んでしまった。

ご主人様のご家族は、お爺様もお父上もお母様も皆優しくて暖かい人達で、

私のことをご、ご主人様の、よ、よよ、嫁だと・・・・。

 

 まあそれはとにかくとして私はこの家で今現在、お母様から料理の修業を受けている。

 初めてお母様の料理を食べたとき、あまりの美味しさに声が出なかった。

 私がそのことを褒めると、お母様は、

 

 「これくらい、嫁に来た人間なら当然できますよ」

 

 と、言われて思わず固まってしまった。

 自分で言うのもなんだが私は料理があまり上手くない。

 大分ましにはなったものの、それでも自分では美味しいとはいえない状況だ。

 その為に私はお母様に弟子入りを頼んだ。

 始めはお母様も驚いていらっしゃったが私の決意を聞いたら快く承諾してくれた。

 

それから料理の修業が始まったわけだが、始めは酷かった。

 

塩と砂糖を間違えたり。

 辛子を多めに入れてしまったり

 包丁で材料をまな板ごと切ってしまったり、

 数え上げたらきりが無い。

 

 だがそれでもお母様は投げ出すことなく私を励まし、根気強く料理について教えてくれた。そして今、ようやくお母様から美味しいと言って頂けた。

 後はこれをご主人様に食べていただくだけだ。けど、もし美味しくないといわれたら・・・

 

 「大丈夫よ、愛紗ちゃん」

 

 と、お母様が私の肩に手を置いた。

 

 「一刀だってきっと美味しいって言ってくれるわ。もっと自信をもって、ね」

 

 そう言ってお母様は微笑んだ。

 そうだ、まだ食べていただいていないのに、何を悩んでいるのだ!

 ご主人様に食べていただく前から気持ちで負けていてどうするのだ!

 お母様のおっしゃる通り、もっと自信を持とう!

 

 「分かりました!ありがとうございます!お母様!」

 

 「ふふふ、どういたしまして」

 

 お母様はそう言ってにこやかに微笑んでおられた。

 さあ、朝食の時間が楽しみだ♪

一刀side

 

 「あ~、死ぬかと思った」

 

 俺はあの後5分くらいで立ち上がれるようになり、なんとか自分の体を引きずって風呂場に行き、10分くらい風呂に浸かっていたんだが、今は疲労感はほとんど無くなっていた。・・・・あそこまで走ってもう疲労感が無くなるなんてすごいな・・・。

 これも修行の成果か・・・。まあ、もう四十キロ走るのはごめんだが。

 それで風呂から出たら調度七時半ごろだったため、朝食を食べる為に、食堂に向かった。

 

 「おはよう一刀、今日は大分きつい修行をしたみたいだね」

 

 食堂に入って始めに声をかけてきたのは俺の父の北郷雷刀だった。

 優しげな顔をしているけどこう見えても家の爺ちゃん並に強い。

 

 「おはよう父さん、全く、桜島まで走らされて、死ぬかと思ったよ」

 

 「ははは、まあ気持ちは分かるよ。僕も経験があるから。

 でもまだ今日の修行は終わったわけじゃあないからね」

 

 「うげ・・・・」

 

 父さんの言葉に俺は思わず呻いてしまった。それに対してお父さんは大きな声で笑っていた。・・・俺にとっては笑い事じゃないけど。

 

 「おはよう、兄さん」

 

 「あ!一菜!おはよう」

 

 と、俺の妹北郷一菜が食堂に入ってきて、俺に挨拶をしたので俺も挨拶を返す。

 一菜は俺の挨拶を聞いた後、さっさと食卓についてしまった。どうしたんだ、一体。

 

 「ふぉっふぉっふぉ、若いとはいいのう」

 

 同じく食卓についている爺ちゃんが何か言っているけど、気にしないほうがいいな、多分。

俺も食卓につくと、そこには既に料理が並べられていた。

 と、食堂に母さんと愛紗が入ってきた。

 

 「あ、母さん、愛紗、おはよう!」

 

 「おはよう一刀、朝から元気そうね」

 

 「いやいや、爺ちゃんのせいで40キロマラソン走らされて、死ぬかと思ったよ」

 

 「その割にはピンピンしておるのう。うむ、その分なら技の修行も大丈夫じゃ!」

 

・・・どんだけ過酷なんだよ技の修行って。

 

 「ご、ご主人様、お、おはようございます・・・」

 

 「?ああ、おはよう」

 

 何だ?愛紗、滅茶苦茶緊張してるけど。

 

 「ところで今日の朝御飯なのですけれど、一刀、まず最初に味噌汁を飲んでくれないかしら」

 

 「?なんでさ」

 

 「いいから」

 

 まあとにかく二人が席に着いたため全員で頂きますといって、俺は母さんの言うとおり味噌汁に口をつける。それで味噌汁を飲んでみる。

 

・・・やっぱりいつもの母さんの味噌汁とは違う。

 でも、とても美味しい。このさっぱりした風味がとても味わい深い。

 

「どう?味は」

 

 そう母さんに聞かれたので、俺は正直に答えた。

 

 「うん、凄く美味しいよ。とても味わい深くて」

 

 「!?ほ、本当ですか!?」

 

 俺が感想を言った瞬間、愛紗が目を見開いてこっちに顔を近づけてきた。

 な、何なんだ一体!?

 戸惑う俺に母さんは笑いながら説明した。

 

 「一刀、そのお味噌汁ね、愛紗ちゃんが作ってくれたものなのよ」

 

 「えっ!?愛紗が!?」

 

 「ええ、あなたに美味しいって言ってもらいたいって、一生懸命頑張っていたわよ」

 

 「お、お母様!!」

 

 愛紗が母さんに抗議するが、俺は思わず感激してしまった。

 愛紗が俺の為にこんなに美味しい味噌汁を作ってくれるなんて・・・・。

 

 「愛紗・・・・」

 

 「は、はい!?ご・・・一刀様!?」

 

 俺の言葉に驚いたのか愛紗は裏返った声を上げる。あと、またご主人様って言いそうになったし。

 

 「ありがとう、この味噌汁すごく美味しかったよ。俺の為に作ってくれて、嬉しいよ、愛紗」

 

 「一刀様・・・はい、ありがとうございます///」

 

 俺の言葉に愛紗は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔はまるで女神のようで・・・。

 俺はおもわず見とれてしまった。

 

「ふぉっふぉっふぉ、一刀もいい嫁を持ったのう、雷刀よ」

 

 「ええ、僕も由美の手料理を始めて食べたときにはあんな感じでしたから」

 

 「うふふ、女は好きな男の為には一生懸命になるものなのですよ♪あなた」

 

 「ははっ、違いないね!!」

 

 (ぐぬぬ~、おのれ愛紗め~、ますます兄さんにべったりと~!!)

 

 その様子を北郷家の人々は(一人を除いて)微笑ましく見守っていた。

あとがき

 

 皆さんこんにちは、今回、呉ルートの外伝、というか過去編として

 

 一刀と愛紗の夏休みの出来事を書いてみました。

 

 ちなみに一刀の爺ちゃんのモデルはサンデーの某格闘漫画に出てくる某無敵超人です、ってもう

 

 半分答え言ってるか。

 

 恋や漢女sよりも遥かに強い上に、若いころは一刀以上に女性に持てていました。

 

 この特性は息子の雷刀、孫の一刀にも受け継がれています。

 

 つまり一刀の種馬属性は、一族の遺伝という設定です。

 

 ちなみにこの物語はまだ続きますのでお楽しみを。


 
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