思えば私もそうだった。
名も知らぬ誰かの願いによって、零から生まれ、壱となった。
その刹那はとても輝かしいもので、同時にとても儚い。
―――今、私が垣間見ていた物語は、とある壱が零に還るものだった。
いや、その工程すら記されてはいなかった。
それは、願われなくなった故の消失か、それともその外史の創造者の意図なのか―――。
示我
「萌将伝、か。」
ちなみに此処は、この外史においての私の住処。
私の書庫だ。此処には様々な外史が置いてある。
私は本の表題をまじまじと見続ける。
この世界とは違うその世界では、もう彼女は存在し得ない。
示我
「ふむ。」
勿論、それを非難するつもりはない。
外史とは元来、そう言う物で構成されているからだ。
不要になれば、消される。
私だってそうだし、この外史も例外ではない。
いずれは消される。それが何時になるかは分からぬが。
示我
「……分かってはいても、やはり辛いものだ」
そう、辛いのだ。消え逝くものは。
摂理と知っていても、抗えるのなら抗いたい。
示我
「いずれは消え逝くものならば、何故人は物語を紡ごうとするのだろうか。」
哀愁が胸に去来し、私が萌将伝を書庫に納めようとしたその時―――。
示我
「……む? これは……。ふふ、そうか、そうきたか。」
「萌将伝」のカテゴリーから派生した新たなる外史の本。
真っ白な表題だが、その創造者は、どうやらその壱を救う為に動くらしい。
創造者自身もだが、なによりそれを取り巻く周りの思念の強さに驚いた。
とても、強い強い想いが籠められているその本に私は救われた気がした。
示我
「そうか、そうだったな。 多分、これも答えの一つなのだろう。」
私は水晶に目を通す。そこには一刀と、一人の女、名は華雄。
華雄
「……? 何だ?」
一刀
「どうした? 華雄」
華雄
「…いや、誰かに見られていた気がしたのだが…」
一刀
「…誰も居ないけど?」
華雄
「…気のせいか」
一刀
「さ、早く戻ろう。今日は買出し付き合ってくれてありがとな」
華雄
「ふふ、気にするな一刀。お前の頼みなら何でも聞くぞ?」
一刀
「じゃあ…(ゴニョゴニョ)してくれるか…?」
華雄
「…!!! こ、この助平が!!!」
一刀
「ははっ」
華雄
「そ、その、か、帰ったら…な。」
微笑みあった二人の顔を見て、私は改めて決意した。
私は今日もこの外史で生きる―――。
この外史を「消させない」為に―――。
真・恋姫†無双 ~英雄再臨☆魏志和人伝~ -示我之独言- Interlude end
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※インスパイア元のyagami様の華雄愛に動かされました。
久々に創作意欲がメラメラ燃え上がりました!!
この作品は、私のブログ「やさぐれ男の空間」の方で更新している(現在停滞中)、真・恋姫†無双の二次創作小説、「英雄再臨☆魏志和人伝」のオリジナルキャラクターの「示我(じが)」が萌将伝の外史を観た感想を淡々と述べるものです。