それは突然訪れた。
何の前触れもなく、まるで急に起こった竜巻のように。竜巻はあらゆるものを吹き飛ばして破壊の限りを尽くす。
そして、その竜巻は誰にも止めることはできない。ある者は恐怖のあまり逃げまどい、ある者はなす術なく、自分の大切なものが壊されるのを眺めていることしか出来ない。
これまでとは規模が異なる黄巾賊の集団が村を襲ったのだ。
集団を率いるのは黄巾の将、波才。徐州の田舎の村では、その名前は知られていなかった。
黄巾賊の中でも知謀と残虐さで知られたその男の名前は。
村には白星が指導して警備体制が布いてあった。
村の四隅に櫓を立てて、常時二人の監視を置く。田舎の村で人口が少ない分、働き手が減るのは痛い事だが、村を外敵から守るために、そこは村人たちが協力し合うことで何とかなっている。
「何だ、こっちに何か向かってきている。あれは・・・・・黄巾賊だ!!!」
発見した村人は、すぐに黄巾賊襲来を村中に伝えた。
村で仕事をしていた人間も、若者は武器を手に集まり、女、子供、老人は村の奥に身を潜めた。
若者の先頭に白星は身を置いた。
賊が目の前に現れたら、まずはその頭と一騎打ちを申し込む。大抵の賊は、まだ青年期を脱していない白星を侮り、自分たちの強さを誇示するために一騎打ちを受け入れていた。
これまでもその展開から彼は賊に勝っていた。しかも、見事なまでに。そして、頭を倒され、白星の強さに動揺する賊の残りも、村人たちの迎撃で脆くも逃げてしまうのだ。
その日もそうなるはずだった。
賊はこれまで通り小規模の集団だった。頭目も貧弱そうな男で、白星は負けるはずがないと信じていた。この時、彼は黄巾賊を発見した村人の報告よりも、規模が明らかに小さいことに気付かなかった。無意識ではあったが、彼は驕っていたのだ。
そして、それは最悪の悲劇を招いた。
もし、ここで報告と違うことに気づいて、何か手を打っていたら、もしかしたら異なる結末を迎えていたかもしれなかったのだが。
彼は木刀を得物にしていた。
竹刀など存在していなかったため、それが一番使いやすい武器であったし、何よりも本物の剣を使って、人を殺してしまうのが怖かったのだ。
これまでも、賊を気絶させるだけにしていた。村人たちは彼の甘さを指摘していたが、彼は人を殺すことだけは拒絶した。村の救世主に等しい彼の意思は尊重された。
一騎打ちはすぐに終わった。貧弱そうな頭目は五合と打ち合わぬうちに、槍を白星に弾かれた。
頭目は木刀を向けられると、すぐに頭を地面に付け、涙を浮かべながら命乞いをした。
「殺しはしない。すぐに村から立ち去れ。」
白星はそう言い放った。
しかし、ふと視線を上にあげると、不自然なことに気が付いた。なぜ、後ろに控えている他の賊たちは、頭目が負けて、命乞いをしているのに、あんなにニヤニヤ笑っているんだ?
「はい、すぐにでも~。」
目の前で頭を地面にこすり付ける、頭目の額が上がった。
白星の目に写り込んだのは、先ほどの貧弱な男の表情ではない。
悪意に染まった死神の微笑みだった。
やばい!
本能的にそう悟った白星だったが、すでに遅かった。
彼の背後から悲鳴が聞こえた。
後ろを振り返ると、村の奥に隠れているはずだった、村長や女、子供が皆大勢の賊に追い立てられて、こちらに逃げてきている。
頭目たちが囮となって、残りの賊たちが裏から村に侵入したことにようやく気付いたのだ。
次の瞬間、後頭部に衝撃が走った。頭目が、何かで白星の頭を打ったらしい。
薄れる意識の中で彼が聞いたのは、頭目の皆殺しにしろ、という命令と賊の雄叫び、そして村人の悲鳴だった。
そして、彼は意識を失った
あとがき
はい、調子に乗って二話目の投稿になってしまいました。
一話目に続き、二話目は白星の過去の話ですね。
この頃の白星は、いわゆる普通の一般人です。
剣道を習っていたため、少し一般人よりは強いですが、
内面は一般人のそれと全く変わりません。
この事件が、彼にどのような影響を与えるのか楽しみなところです。
そういえば、萌将伝はいろいろ波乱を呼んでいるようですね。
公式のブログも大分炎上しているようで・・・。
僕はゆっくり楽しむつもりですww
はい、一人でもおもしろいと思ってもらえたら、次の話も投稿しようと思います。
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調子に乗って、第二話も投稿します。
まだ、白星の過去編です。
物語が動き出すまで、もう少しかかりそうなので、しばしお待ちください。
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