第十八章 「虎牢関 後編」
「曹操さま。袁紹から伝令です」
「内容は」
「ただちに出撃し虎牢関を落とせだそうです」
「そう。春蘭、一刀」
「「はっ」」
「あなたたちは今すぐ出陣して計画通り張遼と呂布を捕らえなさい」
「「はっ」」
「桂花は春蘭の補佐をしなさい」
「御意」
「一刀、風を借りるわよ」
「あぁ。いいな、風」
「いいですよ~~」
「なら、今すぐに行動開始」
「「「「御意」」」」
魏軍は虎牢関に向けて出発した。
「朱里ちゃん、雛里ちゃん大変だよ。袁紹さんが私達に、呂布を相手しなさいって言って来たよう」
「たった今愛紗さん達を呂布さんの相手しに行ってもらっていますので、大丈夫かと思いますが」
「あとは、曹操さんの軍が一刻も早く来てくれる事を待つしか」
「そんな~~。もし曹操さん達が来るのが遅かったら」
「愛紗さん達が大変危険だと言う事です」
「・・・」
「冥林。戦況はどうなっているの?」
「苦戦しているよ、雪蓮。祭殿が何とかしているが、相手は神速と呼ばれている張文遠だ。中々止められないでいるよ」
「騎馬兵は私達には不利ね。船の扱いは負けないけど」
「そうだな」
「報告します」
「なんだ!」
「後方より両夏と苟の牙門旗が接近してきます」
「冥林!!」
「各部隊に通達。ただちに両翼に移動。曹操軍に道を開けろ。我々はその内に虎牢関を叩く」
「はっ」
周瑜の命により孫策軍は両翼に移動し春蘭達に道を開けた。
「おりゃりゃりゃりゃ~~~」
ガチン
「・・・無駄」
ガチン
「ありゃ」
「鈴々。大丈夫か」
「だ、大丈夫なのだ」
「それにしても、とんだ武人だな。呂布は」
「あぁ。私と鈴々、それと星もいるのに簡単に受け流されている」
「お前ら弱い。・・・お前ら恋に勝てない。次で決める」
「愛紗よ。もしここで誰かが倒されても」
「わかっている。生き残った者が、必ず桃香様を守り続ける」
「なら、ゆくぞ」
「「はぁぁぁぁぁ」」
ガチン
「「!?」」
「・・・一刀」
「久しぶりだね、恋」
一刀は日陰で関羽のを、斬月で超雲の一撃を止めた。
「なんのようだ。北郷一刀」
「助太刀かな」
「いらん」
「いや、感謝する」
「星!」
「愛紗よ。我ら三人でも呂布にはかなわないんだ。ここは北郷殿の力を借りるべきじゃないのか」
「しかし・・・」
「愛紗。ここは星の言う通りなのだ」
「・・・わかった」
超雲と張飛の説得で関羽は渋々納得した。
「なら、ここから先は俺一人でやらせてもらおう」
「「「!?」」」
「大丈夫なのですか、相手は天下の呂布ですぞ」
「超雲さん。自分から言うのもなんだけど、俺も天下の北郷だよ」
「そうでしたな」
「なら、超雲さん達は劉備の所に戻ってくれる?」
「承知しました。行くぞ、愛紗鈴々」
超雲達は陣へと戻って行った。
「それじゃ始めようか、恋」
「(プルプル)・・・一刀と戦いたくない」
「なら、投降してくれる」
「(プルプル)・・・できない」
「恋。俺は董卓さん達を助けるつもりだ」
「!?」
「董卓さん達も了解を得ている。だから恋も」
「・・・本当?」
「嘘だったら恋が俺の首を取っていいよ」
「・・・わかった」
「よかった。なら陣へ戻るから付いてきて」
「(コクリ)」
一刀と恋は曹操軍の本隊へ戻った。
「はぁぁぁぁぁ」
ガチン
「やるな。惇ちゃん」
「お前もな。張遼」
「やっぱ強い者と戦うちゅう事はいいな」
「そうだな。なぁ張遼、お前華琳さまの所に来ないか」
「猛ちゃんの所にか?」
「そうだ。うちには一刀がいる。いつでも一刀と手合わせできるぞ」
「うわぁ、それめちゃ良い話やないか。けどウチは今董卓軍の将やからな、残念やけどお断りや」
「なら、お前を倒して華琳様の所へ連れて行くまでだ」
「出来るもんならやってみぃ」
ガチン ガチン
春蘭と霞の攻防が続く。
「はぁぁぁぁぁ」
ガチン
「うわぁ」
「私の勝ちだな、張遼」
「・・・しゃないな。ウチ、猛ちゃんの所に降るよ」
「そうか、なら・・・」
グサ
「「!?」」
春蘭の左目に矢が当たった。
「クッ!」
「あ、姉者。大丈夫か」
「大丈夫だ、秋蘭」
「誰や、誰が不意打ちしたんや」
「(ビク)」
「お前か。よくもやってくれたな」
「私はただ」
「問答無用や」
ザク
「ギャァァァァァ」
霞は春蘭に矢を射た兵を殺した。
「姉者」
「心配するな。私はこれしきでは死なん。身体髪膚これ父母にうく。モグ・・・ゴクン」
「惇ちゃん、すまんな。まさかウチの部下にあないな奴がいたとは」
「心配するな。それより早く華琳さまの所へ行くぞ、張遼」
「霞や。これからは戦友になるやさかい真名で呼んでかまわへんよ」
「なら私のことも、春蘭と呼んでくれ」
「了解や」
「・・・」
「どうしたんや、春蘭?」
「いやただ・・・」
「大丈夫だ、姉者。華琳様は傷位で嫌いになったりはしないさ」
「そうか・・・」
「もちろん、一刀もだ」
「ど、ど、そうしてそこで一刀が出てくるんだ」
「違うのか。姉者は華琳様と同じ位一刀も好きではないか」
「ふ~~ん。春蘭も以外と欲張りなんやな。猛ちゃんだけじゃなく一刀も好きなんて」
「まぁ、それは私もなんだがな」
「愛されているな、一刀は」
「・・・」
「曹操様。夏候淵様が張遼を連れてきました」
「そう、わかったわ」
秋蘭が霞を連れて華琳の前に来た。
「秋蘭。春蘭はどうしたの?」
「姉者は左目に矢を受けて、ただ今治療中です」
「なんですって!」
華琳の声が天幕に響き渡る。
「それで、容体は」
「命に別状はありません。しかし、左目はもう・・・」
「そう」
「すまんな、猛ちゃん。ウチの部下がバカなせいで」
「構わないわ。それで張遼、あなたは私の所に降ってくれるのかしら?」
「そうや。だからウチの真名を猛ちゃんに預けるは。これからは霞って呼んで」
「霞、あなたもこれから私の事を華琳と呼びなさい」
「了解や」
「それじゃ、私は少し外に出るは。桂花、あとをお願い」
「御意」
華琳は天幕を出ると急いで春蘭の所へ向かった。
「春蘭!!」
「華琳様!・・・申し訳ございません」
「いいのよ、春蘭」
「しかし、私は顔に傷が付いてしまいました」
「春蘭、あなたは私の者よ。違う?」
「はい。私は華琳様も者です」
「なら、好き嫌いも私の自由でしょう。そうね、今日の閨はあなたを呼ぶ事にするわ。もう一度、あなたが私の者だと教えてあげる」
「は、はい。よろこんで」
春蘭は華琳に今まで通り愛してもらえると知って多いに喜んだ。
華琳が春蘭に会う為に天幕を出てすぐに、一刀が恋を連れてやってきた。
「霞、久しぶりだね」
「久しぶりやな、一刀。恋も一刀に負けて連れてこられたのか?」
「(プルプル)・・・降った」
「一撃も交えず降ったのか?」
「(コクリ)」
「あちゃ~~。なんちゅう勿体無い事を」
「・・・恋、一刀と戦いたくない」
「でもな、大陸一・二の武人同士一度は真剣勝負して見たいとは思わんか?」
「(プルプル)・・・一刀だから嫌」
「俺は時と場合によるな。けど、こんど手合わせしてくれよ、恋」
「(コクリ)・・・わかった」
「それで、二人に合わせたい人がいるのだけど」
「合わせたい人?」
「?」
「うん。涼風、入ってきて」
一刀に呼ばれて涼風が入って来た。
「!?」
「か、華雄。生きてたんか」
「勝手に殺すな!」
「けど、なんでや。魏延に負けて・・・て、言うかなんで一刀が華雄の真名を知っているねん」
「それは、私が今北郷様に使えているからだ」
「な、なんやて。それはホンマか一刀」
「本当だよ、霞。だから華琳にも、真名を預けていないんだ」
「ふ~~~ん。なんで?」
「私は北郷様に降ったのだ。曹操に降った訳じゃない」
「けど、一刀は華琳部下やろ。普通なら預けるもんじゃないん?」
「普通ならばな。だが、私はお断りだ。それに稟も曹操に預けておらん」
涼風か高々と言うと、霞が一刀の傍によってきた。
「なぁ、一刀。一刀の部下って、変わり者が多いんとちゃうか」
「そんな事ないよ。皆それぞれ個性が会っていいじゃないか」
「そういうもんなん?」
「だって、人間一人ひとりなにかと個性を持っているだろ」
「そうやけど」
「俺の部下達はそれが人より少し行き過ぎているだけだよ」
「なるほどな」
霞が納得していると、兵が天幕に入って来た。
「報告があります」
「なんだ!」
「虎牢関を守っていた軍師、陳宮が白旗を持ってこちらに来ました」
「・・・ねね」
「あっちゃ~~。音々音の事すっかり忘れとったわ」
「こちらに通せ」
「はっ」
兵は一刀の命令で陳宮を呼びに駆け出した。
「どうしたの、一刀?」
「華琳。今までどこに・・春蘭、その左目は」
「あぁ。矢が当たってな」
「そうか・・・」
「一刀。お前泣いているのか?」
一刀の両目から涙が止まらず流れ出ていた。
「莫迦者。私がお前と華琳様と秋蘭を置いて死ぬもんか」
「・・・そうだな。三人で華琳を天下人にする約束したもんな」
一刀は涙を腕で拭き春蘭を見つめた。
「私の左目はもう無いが、私の背中を預けられるお前がいる。だから・・その・・私の背中を守ってくれ、一刀」
「なら、春蘭。俺は君の背中を必ず守る。だから俺の背中を守ってくれ」
「あぁ、いいぞ」
二人はガッチリ手を握った。
「姉者、一刀」
「なんだ、秋蘭」
「私は除け者か?」
「そんな事無いよ。俺は秋蘭も守るよ」
「なら、私は一刀と姉者を後ろから守ろう。一刀と姉者に矢を向ける敵を射抜く」
「なら・・・我はここで誓う」
「生まれた日は違えども」
「死ぬ時は、同じ日同じ時」
ここで、劉備達の桃園の誓いと違う、虎牢関の誓いだできた。
「一刀」
「なんだい、華琳」
「陳宮が来ているから、話をしても構わないかしら?」
天幕の出入り口に陳宮がいた。
「どうぞ」
「申し訳ないわね、陳宮」
「別に構いません。それより恋殿は無事なのですか?」
「・・・ねね」
「恋どの~~。大丈夫でしたか?」
「・・・大丈夫」
「それは、よかったのです~~」
「それで。投降するで、構わないのよね」
「えぇ。恋殿に霞も捕まれば、ねね達はもう負けなのです」
「なら、陳宮。あなた私に仕える気は無いかしら?」
「なんですと!」
「呂布と霞も私に下ったわ。陳宮あなたもどうかしら?」
「恋殿。それは本当ですか?」
「・・・恋。一刀に降った。恋のご主人様は一刀。ご主人様のご主人様は曹操」
「わかりました。ねねも、曹操殿に降るのです」
「なら、私の事は華琳と呼びなさい」
「ねねの真名は音々音です。これからよろしくお願いします、華琳様」
「・・・恋」
「それじゃ、一刀。この子達にあなたの計画を話してあげて」
「わかった。全員落ち着いて聞いて欲しい。俺は董卓と賈駆を助ける」
「「「!?」」」
「なんでや、一刀」
「この連合はもともと袁紹が洛陽を追い出された腹いせに出来た連合だ。最初は華琳の名を天下に轟かせる為に参加したけど。それも、汜水関を半日で落とし虎牢関も曹操軍だけで落とした事で、華琳の名は大陸中に広がったはず。だから俺は、董卓達を助ける」
「けど、どうやって助けるや。バレたら反董卓連合から反曹操連合に変わるで」
「わかっている。だから表向きには、董卓は死んでもらう」
「なるほど」
「それじゃ、俺は救出準備があるから」
「えぇ。わかったわ」
一刀と涼風は天幕を出た。
「一刀もえらい事考えるな」
「まったくよ」
華琳は深い溜息は吐いた。
第十八章 完
「第十八章終了。いやいや、大変な戦いでしたね~~~」
「それより。どうして、虎牢関の戦いは前後半と分けたんだ?」
「それはですね。書いていくとだんだん長くなったんで、これは分けた方がいいなと思いまして分けました」
「そうか」
「そうです」
「今回は早い投降ですね~~」
「そうですね。何時もなら夜ぐらいなのですが。どうしてですか?」
「目覚めがいいと。やる気って出ません?」
「それは・・・そうですが」
「なんでそこで俺を見たんだ。稟」
「そ、それは・・」
「稟ちゃんは、お兄さんにおはようと挨拶されると何時もの倍近い速さで仕事をするんですよ~~」
「ちょっ、風!!」
「へぇぇ~~。なら今度からは毎日いようかな」
「えっ!!!」
「いいですね~~。そうしたら風の仕事も回せますし」
「あの~~~。そろそろ終わりにしてもいいでしょうか?」
「いいぞ」
「いいですよ~~」
「でわ、今回はこれまでとします。皆さんまた会う日まで。BY]
「BY]
「バイ」
「・・・バイ」
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前線の袁紹、戦術の両軍が敗退し中央の軍まで来た恋と霞。このまま反董卓軍は敗退するのか???