はじめに
この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です
原作重視、歴史改変反対の方
ご注意ください
「行って来ます」
「どうかお身体にはお気をつけて」
「お前達もな」
「いつでも帰ってらっしゃい」
村の入り口
今日で村を出て行くという二人の新たな門出に人々は明るい笑顔で送ってくれた
まだ傷も癒えていないのだからゆっくりしていけという誘いにも
「待たせている者がいるので」
そういって二人は丁重に断った
「比呂」
桂花の父親の呼び止める声に比呂が振り向くと
「餞別だ」
手に渡されたのは一本の酒瓶
それは
かつて
この村で
彼と彼の親友が初めて飲み交わした物と同じ物
彼と彼の親友が世に出る誓いを交わした即興の席で飲んだ酒
「悠にも宜しくな」
そういって器用に片目を瞑る桂花の父親に比呂は小さく、しかし確かに頷き
「最高の土産になります」
そうはにかむ
頭を下げる二人にハハハと笑い
「大した品じゃない、だが気に入ったのなら何よりだ…飲みたくなったら…また戻って来ればいい」
その時はウチのじゃじゃ馬も連れてきてもらえると助かると肩を震わせて笑う
「それは少々骨がいりますね」
昔のように簡単には担がせてもらえないのでと比呂も苦笑した
「その時はあれだ、紐でふん縛って来てもらって構わんぞ」
釣られる様に辺りから沸き起こる笑い声に彼は腰に手を当て真面目な顔で振り返り
「村を出て以来顔も見せん親不孝者だぞ?それぐらいの事は必要だろう?」
比呂は将軍様なのだからそんな事は容易い物だろう?と笑ってくる桂花の父親に
(…将軍職をなんだと思ってるんだろう)
二人がそう抱いたのは内緒の話
「都までは三日くらいでしょうか?」
畦道をポクポクと音を鳴らして歩む馬の背から聞こえる声に手綱を引いていた比呂は視線を馬上に移し
「まあその位だな。」
前を向きのんびり行くさと続ける比呂だがその足取りは軽い
フフっと聞こえる声に再び視線を馬上に移す
「何だ?」
月の笑い声にしかめた表情の比呂
「だって…」
余程可笑しいのだろう
目尻に溜まった涙を指先で拭い
「まるで恋人との逢瀬を待ち焦がれているみたいなんですもの」
尚も肩を震わせる彼女に比呂は一瞬ポカンとした後、眉をひそめ
「俺はそっちの趣味は無いぞ?」
その言葉に今度は月が一瞬ポカンとした後
「誰も田豊さんとは言ってませんよ」
クスクスとまた笑い出す
げんなりな表情の比呂を余所に
「ああでも良かったです…半年前に翼州についたとき女官の方がそんな噂をしていたので…」
これで一安心と胸を撫で下ろす月に比呂は嘗て悠と二人で街に出ると一部妙な視線を感じていた事を思い出し
(あれはそういう事だった…のか?)
当の本人の知らぬ処で独り歩きしていた噂に眉間を抑える
「…勘弁してくれ」
首を振る比呂の様子に月はニンマリと微笑み
「あら?その方が在らぬ女性に言い寄られる心配が無い分、私としては助かりますけどね」
やはり馬上でクスクスと笑い続ける月
(強いというか怖いというか)
比呂は脱力しきった肩を更に落とし
深い溜め息をついた
官渡の戦い
大陸を代表する二つの勢力の戦いは双方合わせて十万という大軍勢が入り乱れる戦となった
戦が終結するのは七日目の朝
六日目の夜
曹操陣営に入って北のは鳥巣奇襲成功の知らせ
そして
「報告!烏巣奇襲成功!」
「報告!烏巣攻略は敵軍の罠とのことです!」
「報告!烏巣奇襲隊より増援の要請!既に取り囲まれております!」
「報告!敵本隊が陣より出撃とのこと!支援要請が将軍より出ています!」
次々となだれ込む物見からの情報に軍師達は顔を見合わし
「稟ちゃん…これは?」
「くっ!情報が錯綜してるぞ!落ち着かんか!」
予想外の出来事の連続にさしもの二人も驚愕の色を隠せない
「報告!敵本隊、此方に向けて進軍中!しかし…」
「しかし何?」
新たに天幕に入ってきた物見が一瞬躊躇をするのが華淋は続きをと促す
「はっ…」
片膝を突いていた物見は一拍の間の後に立ち上がり
「敵総大が牙門旗…半ばにて折れ曲がっているとの事です」
物見の報告に覇王は片眉を釣り上げ…辺りに目配せするものの
その場の誰もが首を横に振る
(物見の情報だけじゃ埒があかないわね)
そう判断すると天幕を出て遠方~敵陣営方面に目を見張る
陣の各所に松明が灯されてはいるものの此方へと進んでくる一団が掲げる牙門旗の状態まではこの暗がりでは伺えず
(一体…何が起こっているの?)
もはや敵陣営で何が起こったのか理解出来る者は居なかった
官渡の戦いは七日目の朝に終結を迎える
七日目の朝
一つの勢力が
大陸からその姿を消した
あとがき
ここまでお読み頂き有り難う御座います
ねこじゃらしです
先日に携帯電話を3年振りに更新!
PCビュアーの凄さに思わず…携帯から投稿という荒業を敢行!
…ちなみに
エンショウのエンが変更出来ず
泣く泣く単語ごとカット
後で修正入るかもしれませんな
さていきなりクライマックスな展開
なんじゃこりゃと思われた事でしょう(汗)
次回以降で戦の始まりから掘り下げていこうという
これまた破天荒な展開
宜しければお付き合い下さい
それでは次回の講釈で
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第42話です
カナヅチの自分に海開きなんぞ関係ない!