No.157484

13†無双

あのさん

ただ一人となった北郷一刀が孤軍奮闘する物語。

2010-07-13 21:20:58 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2343   閲覧ユーザー数:2107

 

―――魏城中庭

 

 

今日は快晴、俺の頭はカオス!

 

 

っという訳で俺と華琳はお茶を堪能している。

 

華琳は優雅に優美に、

 

俺は宇宙の真理のごとく、

 

普通のお茶に口をつける。

 

「ねえ、一刀。お茶請けとして、あなたの昔話が聞きたいわ。

もちろん、このお茶に合うようなお話をね。」

 

「いいぜ。ただし、この世界の戦局に影響を及ぼさない程度にな。」

 

俺はしばし思考する。

さて、どのレジェンドがいいかな・・・・。

 

―――

 

――――――――

 

―――――――――――――

 

―――――――――――――――――

 

 

 

オレの名は、!・ドンキー

 

今日も背中のモーニングスターが唸りを上げる。

 

そんな俺は大手チェーンのハンバーグ屋に勤務。

今日は仕事で2人を始末してきた。

一人は及川だった。

その後、ハンバーグから変な臭いがするという、客のクレームが入ったが何のことやら。

 

・・・最近、この街が物騒なことになってやがる。

イカレた殺人鬼のせいだ。

なんでも、腰の曲がった老人ばかり狙っているらしく、犠牲者は300人を超えたとか。

 

 

ほら、周りをよく見てみろ!

本来なら杖が必要なはずの老人達が、直立でプルプル震えながら歩いているじゃないか。

 

もう、こんな不自然な光景は見てられない。

オレが、この背中のモーニングスターで殺人鬼を葬りこの街を救ってみせる。

 

俺は自分に喝を入れ、手前にいた通行人をホームランする。

 

 

 

―――深夜

 

そう、犯行は必ず深夜にのみ行われる。

 

この街では太古の頃より、老人達による集団徘徊が連綿と続いている。

深夜になると病気で日中は寝たきりの老人達もムクムクと起き上がってくる。

殺人鬼の存在などまるで意にも介さず。

 

この時間帯に出歩くたびに驚愕するが、物凄い老人の数だ。老人たちが道という道を覆っている。

ゴキブリは一匹見かけたらとか、そんなレベルじゃあねぇぞ。

まるで怒涛の川の流れのようだ。もうアスファルトすら全然見えん。

 

 

だが、これでも殺人鬼の恐怖が如実に現れている。

眼を凝らして見てみろ。

どの老人達も、背筋を伸ばし両腕を前に出しながらプルプル歩いている。

まるで歴史の教科書によく描かれている死霊のようだ。そのうち口から赤黒い臓腑とかが飛び出してくるんじゃないか。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんなことを思考しながら眺めていると、すでに赤タイマーが点滅していそうな老人が眼に入った。

 

そんな彼に限界が訪れ、腰に差した杖に手を掛けた瞬間、間髪いれず人波の中に引き込まれていった。

 

・・・・本来なら治安機構が権力を行使してでも中止させるべきなのだが、厄介なことにそこのトップを始めとするエリート幹部達も参加し、今もどこかに混ざっている。

俺の周りにも大勢の若きエリート警官達がうろついているが、さすがにこの大河に飛び込んでいく恐れ知らずの者など誰もいない。

流れの中でどんな惨劇が繰り広げられようとも、駆けつけた頃にはすでに後の祭りになっている。

だが、老人達は突然な仲間の消失にもかかわらず、顔色一つ変えず黙々と行進していく。

 

一人倒れ、また一人倒れ・・・・・まるで死での行軍。

 

だが彼らの眼は死んでも腐っても黄ばんでもいない。むしろ赤き炎をたぎらせている。

そう、今の彼らはただの老人でない。いや、老人にして不屈の闘志を抱くソルジャー達だったのだ。

例え、第三回十字軍が現世に蘇り、その鋭敏な牙を剥いたとしても、彼らを打ち負かすことは決して適わないだろう。

 

 

 

「・・・・ああ、そうだ。思い出した。」

 

 

 

このオレがなぜこれまで、

 

生物も住めぬ腐臭漂う地下深くでハンバーグの材料を調達し、

 

暗黒龍を始めとする数多の邪神と街の不良共を殲滅し、

 

自動販売機をケリ続けてきた理由が

 

――――今、分かった。

 

彼らがその胸に秘めるが如く

誇り高き崇高で一片の曇りもない

究極にして至高の魂に出会うためだ。

 

俺はこの街のために日々尽力しながらも、心の隅ではどこか諦観していたんだ。

このニンジンとジャガイモに塗れた汚らわしい世界に、すでにミロなんてものは存在しない夢物語なんだということを。

 

かつて無人の孤島でクラスメイト達と命を奪い合う、死のゲーム「バトルロワイヤル・ローヤルZ」で唯一生き残り絶望していた俺に、人の気高き生き様と崇高な誇りを教えてくれたのがミロだった。ココアのように甘くて美味かった。

ニンジンとジャガイモにこの味は出せまい。

思えばこのモーニングスターはその頃からの相棒だ。「鍋のフタ」をフルスイングで持ち主ごと粉砕したのは懐かしい思い出だ。

 

・・・ふん、醜いのは俺の方だったな。

彼らはミロ野朗だ。ならば、その道を守るが我が鉄の使命にして血の宿命。

 

モーニングスターを肩に掛け、そして、今まさに無形の闇に飲み込まれようとしている戦士に向かって一直線に走る。

 

「友と明日のために!!」

 

 

 

 

殺人鬼へ向かう際、モーニングスターで何人吹き飛ばしたかもう覚えていない。顔や手に赤いものがまとわり付く。

へへっ、信じられるか?

これでも殺人鬼に一撃も与えていないんだぜ。

 

戦士の肩に両足を掛け、殺人鬼に向かって力いっぱい跳躍する。後ろでドサッと何かが落ちた音がした。

恐らく便座カバーだ。

 

モーニングスターを頭が砕けるほどのヤバい勢いで振り下ろす、――――――だが、

 

殺人鬼が眼前に何かを盾のように構える、あれは・・・・・「鍋のフタ」だ!

 

しかし、俺は躊躇も動じもせずに怒りの鉄槌を放つ。

 

バキューンッ!!

 

鍋のフタが弾け砕け、殺人鬼は螺旋を描きながら一直線に多くの戦士達を巻き込み、民家の壁に激突して泡を吹いて気絶した。

 

・・・・あっ中から住民が慌てて出てきた。あっフライパンで殴った。

 

 

 

―――その後、この事件での功績が認めらた俺は、都で内閣総理大臣から「北郷一刀」という称号を賜った。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――

 

―――――――

 

―――

 

 

「って、北郷一刀って称号だったの!?あなた本当は何者なの!!?」

 

「人生のデュエリスト。」

 

「・・・それにしても、天の国って物騒ね、私が思い描いていた世界とは違いすぎるわ。」

 

「人は城、人は石垣、人はデュエリスト。」

 

「やっぱり頂に立つ者は毅然し、私情に流れてはいけないものね。そこはあなたの世界とも変わらないわ。」

 

「人という字はデュエリストとデュエリストがデュエルし合っている様子である。」

 

「でも、あなたの世界は面白いところね。あなたのような人間が育つのだから当然かしら。

全てが終わったら一度行ってみるのも悪くないわね。」

 

「敵にデュエリストを送る。」

 

「・・・それ、ただの嫌がらせだから。

そろそろ戻りましょう、空も暗くなってきたし。」

 

ボトッ・・・・ボトッ。

 

「え?一刀、老人が降ってきたわ。飛行石は持っていないみたいね?」

 

ぼとっ、ぼてゅ、どゆん、だっどっどどどっどおどっどだだッ!!

 

「きゃあああーーーーーーー!!一刀ッ、メチャクチャ落ちてくるわ!!」

 

 

 

「・・・ミロの戦士達だ。」

 

 

 

デュでゥイ駄だあっ、度々そそsどsどあdそおsっそっどーーーんッ!!!!

 

 

「もどってきた!黄泉の国から戦士達が帰ってきた」

 

――――ああ、再びこの手に栄光の日々を!この身に潜む黒き醜悪な魂に救済を!

 

 

「何言ってるの一刀ッ、もう原形なんて留めてないじゃない!!」

 

 

「さあ、続け戦士達、シシ神の元へ行こう!」

 

――――ああ、体が熱い、燃えるように熱い。だが今はそれすら心地が・・・・。

 

 

「・・・かっ一刀、その顔や腕の赤いミミズはなッ――――――!!?

 

 

 

アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

こうして魏は今日も平和だった(続)

 

 

 

 

あとがき

 

いかがだったでしょうか?

 

この物語はとにかく美しく清らかで、読み終わった後にふと心が温かくなって、いろんな誰かにやさしくなれるような、そんな暗黒物質的な世界を描きました。

 

あなたの人生の1ページにモーニングスターが刻まれれば僥倖です。

 

この物語を読んでくれた全ての皆様に幸あれ。

 


 
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