No.157281

真・恋姫✝無双 悠久の追憶・第三話 ~~初陣~~

jesさん

今回は連続投稿です。 

この話では星が登場します。 

といっても、この辺は基本的に原作に近い形なので物足りないかもしれません。 (汗

2010-07-12 22:06:45 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:3429   閲覧ユーザー数:2830

第三話 ~~初陣~~

 

 

―――――――――――

 「ふぅ・・・疲れたな。」

 

一刀は自室で机に向かい、仕事に追われていた。

 

机の書簡から顔を離し、目をこする。

 

君主となって数日、今のところは小さな案件ばかりだが、まだまだ仕事には慣ていない、というより、そもそも一刀はまだこの世界の文字すら読めないのだ。

 

それでも桃香や愛紗に手伝ってもらって、やっと仕事をこなしていた。

 

 「それにしても・・・あの声は一体何だったんだ・・・?」

 

ふと、黄巾党の男に襲われた時聞こえた声の事を思い出した。

 

あれからずっと考えているのだが、どうしてもあの声に心当たりはない。

 

 「・・・まぁ、分からないことをいつまでも気にしてても仕方ないか。 そろそろ時間だし、行くか。」

 

今日はこれから会議の予定になっている。

 

部屋を出て、玉座の間へと向かった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 「ご主人様、おそ~い!」

 

玉座の間に入ると、すでにそこには桃香をはじめ全員がそろっていた。

 

桃香は頬をふくらませ、遅れて来た一刀に文句を言う。

 

 「あぁ、ごめんごめん。 ちょっと仕事のキリがつかなくてさ。」

 

 「全員揃いましたね。 では朱里、頼む。」

 

一度皆を見渡してから、愛紗は朱里に促した。

 

 「はい。 今日の議案は当面の我が軍の活動方針についてなのですが、やはり今までどおりに各地に散らばっている黄巾党を少しずつ討伐していくのが良いかと思います。」

 

 「うん。 やっぱりそれが一番妥当かな。」

 

 「そうですね。」

 

朱里の提案に、一刀と愛紗が順に頷く。

 

 「なんでそんなまどろっこしいことするのだ?いっきに本拠地を叩いちゃえばいいのだ!」

 

 「はぁ~、・・・それができたら苦労はせん。」

 

鈴々の考えなしの提案に、愛紗はあきれた様子で頭を押さえる。

 

すると雛里と朱里が続けて口を開いた。

 

 「・・・黄巾党の本拠地は、まだ見つかってないんです。 偵察の隊を出して捜索はしていますが、それだけで見つかるかどうか・・・。」

 

 「ですから少しずつ数を減らしていけば、所詮は烏合の衆です。 あせって尻尾を出すかもしれません。」

 

 「うん。 じゃあその方針で行くとして、これからどうすればいいの?」

 

 「さしあたって、公孫賛という方が黄巾党討伐のために兵を募っているそうです。 そこに私たちも援軍として参加してはどうでしょう。」

 

 「公孫賛って・・・もしかして白蓮ちゃん!?」

 

公孫賛という名を聞いたとたん、桃香の表情が明るくなった。

 

「桃香、その人知ってるの?」

 

 「うん♪昔、同じ先生のところで勉強してた子なの。 そっかー、今近くにいるんだ。」

 

 「桃香様のお知り合いならば、話もつけやすいですね。」

 

 「あぁ。 それじゃあ早速、準備ができ次第出発しよう!」

 

こうして一刀たちは、援軍として公孫賛のもとへと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――公孫賛の城にたどり着いた一刀たちは、門の前で兵士に止められたものの、桃香の名前を出すと簡単に通してくれた。

 

広間にはいると、一人の少女が笑顔で迎えてくれた。

 

 「桃香!久しぶりだなぁ。 近くの街を治めているとは聞いてたけど、元気そうだな。」

 

 「久しぶり。 白蓮ちゃんも元気そうでよかったよ♪」 

 

 「まぁな。 ・・・ところで桃香、隣の男は誰だ?」

 

公孫賛は桃香の隣に立っていた一刀に目を向ける。

 

 「この人は私たちの御主人様で、天の御遣いの北郷一刀さん♪」

 

 「天の御遣いって・・・あの占いのか!?・・・へぇ~、この男がな・・・」

 

 「あの、はじめまして、北郷一刀です。 一応天の御遣いなんて呼ばれてるけど、北郷でも一刀でも好きに呼んでくれていいよ。」

 

 「ああ、私は公孫賛、字は伯珪だ。 伯珪でいい。 よろしくな、北郷。」

 

 「こちらこそよろしく、伯珪さん。」

 

 「ねぇ白蓮ちゃん、出発はいつなの?」

 

 「あぁ、明日の予定だ。」

 

 「明日!?」

 

 「ああ、だからお前たちが来てくれて助かったよ。 黄巾党討伐のために兵を募ったのはいいけど、なかなか集まらなくてな。 正直今の兵力では少し不安だったんだ。」

 

 「敵との戦力差は今どれくらいなんですか?」

 

一刀たちの後ろにいた朱里が前へ出て尋ねる。

 

 「敵は分かっているだけでおよそ一万。 こっちは集まった兵を合わせても四千ちょっとだ。」

 

 「こっちの倍以上か・・・」

 

予想以上の数の差に、一刀の表情は曇る。

 

黄巾党の数が多いのはあらかじめ分かっていたが、実際にその差をきくと、少し不安になった。

 

 「で、桃香。 お前のところの兵隊はどれくらい連れてきてくれたんだ?」

 

 「う・・・えっとね・・・五百人・・くらい?」

 

 「えぇ!?たったの五百かぁ!?」

 

まさかそんな小規模な援軍だとは思っていなかったらしく、公孫賛は驚きの声をあげた。

 

たしかに、敵と自軍との間には倍以上の差があるのだ。

 

たかだか五百の援軍など、普通に考えればあってもなくても同じようなものだと思うだろう。

 

 「あぁ、でもでもっ!そのかわりここにいる愛紗ちゃんと鈴々ちゃんはすっごく強いから安心して!それに、朱里ちゃんと雛里ちゃんもすっごく頭いいんだから!」

 

 「う~ん・・・しかしなぁ・・・」

 

 「心配は無用ですよ。 伯珪殿。」

 

 「!・・・子龍か。」

 

突然の声とともに部屋の奥から現れたのは、白い衣服に身を包んだ少女だった。

 

 「心配ないとはどういう意味だ?」

 

 「敵は一万とはいえ所詮は雑兵の寄せ集め。 訓練を積んだ兵士と比べれば、その程度の差など物の数ではない。 そうであろう、軍師殿?」

 

そう言って、子龍と呼ばれている少女は朱里の方へと目を向ける。

 

 「へ!?あ、あの・・・」

 

突然話を振られて、朱里は“はわわ”とうろたえている。

 

それをお構いなしに、少女は話をつづけた。

 

 「フフ・・・それに、先ほどの劉備殿の言葉に偽りはありませんよ。」

 

 「なに?」

 

 「そちらにいる関羽殿と張飛殿は、私と同じく一騎当千の武を持っている。 五百の兵といえども、その何倍にも匹敵する活躍をしてくれましょう。」

 

少女は自信に満ちた笑みを浮かべながら、今度は愛紗と鈴々に視線を移す。

 

 「なぜ私の名を?おぬしは何者だ?」

 

突然自分の名を呼ばれ、愛紗は警戒した様子で少女を見返す。

 

 「はっはっは!武を志す者で、武神・関雲長と燕人張飛の名を知らぬわけがあるまい。 各地の黄巾党を討伐しているそなたたちの活躍は聞いているさ。 私は趙子龍。 旅の武芸者だが、今は公孫賛殿の客将として世話になっている。」

 

 「君が・・・趙雲?」

 

趙雲という聞き覚えのある名前に、思わず一刀はつぶやいてしまった。

 

 「!・・・ほう、名乗ってもいない私の名をご存じとは・・・あなたが噂の天の御遣い殿か。」

 

いきなり自分の名を呼ばれ、趙雲は驚いたように一刀を見つめた。

 

趙雲と言えば、劉備に仕え、関羽や張飛と同等の扱いを受けたというほどの武将だ。

 

一刀からすればそれほど有名な名を知らないはずもない。

 

 「あ、あぁ・・・北郷一刀っていうんだ。 よろしく。 (やばっ、つい口に出ちゃった・・・)」

 

 「ふむ、こちらこそ。 ・・・しかしこれほどの豪傑を二人も従えるとは、相当な器をお持ちのようですな。」

 

 「いや、器だなんて・・・俺にはそんなものないよ。 俺はただ皆に力を貸してもらってるだけだから。」

 

 「・・・・・・・・?」

 

サラリとそう答える一刀を、趙雲は不思議そうに見つめる。

 

 「な・・・何かおかしなこと言ったかな・・・?」

 

 「くっ・・・はっはっはっは!まさか人の上に立つお方が自ら器がないと言い切るとは・・・天の御遣いなどと言う割には随分と謙虚なお方のようだ。 そのような姿勢も良いとは思いますが、もう少し堂々としていたほうが女には好まれますぞ?」

 

趙雲は言いながら怪しげな笑みを浮かべる。

 

 「お・・・女って・・」

 

 「フフ・・・冗談です。 では私は失礼します。 関羽殿、張飛殿、戦場で共に戦えるのを楽しみにしているぞ。」

 

そう言い残して、趙雲は部屋を出て行った。

 

 「・・・なんかすごい人だったねぇ。」

 

 「はい。 つかみどころがないというか・・・」

 

 「・・・・ちょっと怖い・・かも。」

 

趙雲の独特の迫力に、桃香と朱里は目を丸くしている。

 

雛里に至っては少し怯えているほどだった。

 

 「まったく・・・あいつは少し自信過剰なところがある。」

 

趙雲が去って行った方を見ながら、公孫賛は呆れたように言う。

 

 「でもあのお姉ちゃん、ホントに強いのだ。」

 

 「あぁ、自らを一騎当千というだけの事はある。」

 

 「・・・まぁ子龍がああいうんだ、お前たちの実力は信じるよ。 とりあえず今日は疲れただろうから、ゆっくり休んでくれ。 明日の朝、準備ができ次第出発する。」

 

 「うん。 ありがとう白蓮ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――夜、一刀は与えられた部屋の寝台で天井を見上げていた。

 

 「・・・いよいよ明日、初めての戦いか。」

 

夜が明けたら、ついに黄巾党との本格的な戦いが始まる。

 

自分が生まれて初めて経験する、本物の戦争。

 

そう思うと、なかなか眠れなかった。

 

 「また・・・人が死ぬのか・・・」

 

もう何度目だろう。

 

町が襲われた時の事を思い出す。

 

あのとき一つの命を奪った感覚も。

 

しかし今度はあの時とはわけが違うのだ。

 

比べ物にならないほど多くの人が傷つき、死ぬだろう。

 

そんな光景を目にして本当に自分は耐えられるのか、それが一刀には不安だった。

 

 「やるしか・・・ないんだよな・・・・」

 

自分に言い聞かせるように呟いて、一刀は目を閉じた。

 

 

 

 

―――――――――気がつくと、一刀は見覚えのある暗闇の中にいた。

 

「ここって・・・そうだ、前に見た夢と同じ・・・」

 

   (―――――よう、天の御遣い。)

 

 「!?」

 

前の夢と同じように、暗闇の中から声が聞こえた。

 

 「おまえ・・・っ」

 

   (―――――なんとか上手くやってるみたいじゃないか。)

 

 「その声・・・そうか、あの時の声もお前だったのか。 お前は誰なんだよ!?」

 

黄巾党に襲われた時に聞こえた声と今聴いている声とが頭の中で一致した。

 

   (―――――前も言っただろう?俺は―――だよ。)

 

 「・・・・っ?」

 

前回と同じ。

 

名乗った声の名前の部分だけが、途切れたように聞き取れなかった。

 

 「・・・お前が居るってことは、ここは前と同じように外史と外史の狭間とかいうところなのか?」

 

   (―――――いや、ここはただのお前の夢の中。 正しくは精神の世界だな。)

 

 「じゃあ前会った時、俺をこの世界に連れてきたのもお前なのか?」

 

(―――――それは違う。 確かに俺はお前が来ることを望んだが、お前をここへ連れて来たのは俺の力じゃない。 お前は来るべくしてここに来ただけだよ。)

 

 「来るべくしてって・・・どういうことだ!?」

 

   (―――――悪いが今は答えられない。 とりあえずは次の戦いに集中することだ。)

 

 「次の・・・戦い・・・」

 

先ほどまで考えていた不安が再び頭をよぎる。

 

   (―――――まぁとは言っても、そんなに心配しなくていいさ。 明日の戦いはきっと勝てるから。)

 

 「・・・勝てるって・・・なんでそんなことが分かるんだよ?」

 

   (―――――どうしてって・・・・ん~~、カン・・・かな。)

 

 「カンって・・・お前、ふざけてるのかっ!」

 

   (―――――冗談だ、そんなに怒るなって・・・それについても、今は言えない。 とりあえず気は抜かないことだ。 おっと、そろそろ夜が明けるな。 じゃあな一刀。)

 

 「おい!ちょっと待っ――――」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 「ん・・・・っ、朝か・・・」

 

ゆっくりと目を覚ますと、窓から差し込む日の光に思わず目を覆う。

 

頭の中には、まだ夢の中の声が響いていた。

 

 「くそっ・・・何なんだよ、一体・・・」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 「なんだか顔色悪いよご主人様。 あんまり寝れなかったの?」

 

 「え?あぁ、ちょっとね・・・でも大丈夫だよ。」

 

夜が明けてすぐに出発の準備を終え、一刀たちは馬に乗り黄巾党のいる目的地へと向かっていた。

 

結局あの夢のせいであまり疲れは取れず、一刀の顔色はすぐれなかった。

 

そんな一刀を、隣の馬に乗りながら桃香は心配そうに見つめる。

 

 「無理をなさらず、城で待っていてもよろしかったのですよ?」

 

愛紗も同じく心配そうな顔で言う。

 

 「そうはいかないよ。 皆が戦ってるのに俺だけ寝てるわけにはいかないからね。」

 

 「ご主人様・・・。」

 

疲れた顔のままそういう一刀に、二人はもう何も言えなかった。

 

さらにしばらく進み、日もだいぶ高く昇ったころ、遠くに黄巾党がアジトにしているとい小さな城が見えてきた。

 

以前はこの辺りを治めていた領主が拠点として使っていたのだろうが、今は黄巾党に占拠され廃れている。

 

城の周囲は正面以外をぐるりと岩壁で囲われており、まるで天然の要塞のようだ。

 

 「全軍停止!!」

 

公孫賛の号令で、全軍の動きが一斉に止まる。

 

すぐにその場に陣を築き、天幕の中で軍議が開かれることになった。

 

 「さて、敵はもう目の前だ。 早速突撃・・・といきたいところだが、城の後ろと左右は見ての通り岩壁に囲まれている。 攻めるなら正面しかないが、さすがに一万もの敵と正面からぶつかるのは不利だ。」

 

 「う~ん、そうだねぇ。 朱里ちゃん、雛里ちゃん、何かいい考えある?」

 

 「はい。 正直昨日趙雲さんの言っていたように、兵の練度を考えれば正面から力押しでいってもおそらく負けることはないでしょう。 しかしそれではこちらの被害も当然大きくなりますし、何より途中で城に逃げ込まれて攻城戦になってしまったらそれこそ不利です。」

 

 「・・・ですから、ここは兵を三隊に分けて攻めるのが最良の策だと思います。」

 

 「な!?こっちはただでさえ四千しかいないのに、兵を分けたりして大丈夫なのか!?」

 

朱里と雛里の提案に、公孫賛は声を上げた。

 

確かに無茶な作戦に聞こえるが、朱里と雛里は気にせずに話を続ける。

 

 「大丈夫です。 まず、二つの隊に千人、一つの隊に二千人ずつに分けて、その隊を愛紗さんと鈴々ちゃん、それから趙雲さんに率いてもらいます。・

 

 「・・・先の二隊は城の左右にある岩壁に隠れて、残りの一隊で正面から攻め込みます。」

 

 「ただし、この隊は本気で戦わず、あくまでもこちらがごく少数だと敵に思わせるのが目的です。」

 

 「つまり、囮か・・・」

 

愛紗は険しい表情で言った。

 

朱里と雛里の考えは、まさに愛紗の言うとおりだ。

 

 「・・・はい。適当に相手を煽ったら敗走を装って隊を下げます。 そうすれば、敵は好機とみて追ってくるはずです。」

 

 「敵軍と城との距離が十分に開いたら、隠れていた二隊がすぐに敵軍の後ろに展開して退路を塞ぎます。 あとは前後の隊で挟撃すれば、敵は簡単に崩れるはずです。」

 

 「・・・なるほど。」

 

 「すごーい!さすがだね朱里ちゃん、雛里ちゃん♪」

 

 「えへへ♪」

 

 「い、いえ・・・そんな・・・」

 

 「ふむ。確かに見事な策だ。 ならばその囮の役目はこの私が務めよう。」

 

 「なっ!?趙雲殿!」

 

 「ずるいのだ!鈴々も正面から突っ込みたいのだ。」

 

自ら危険な役を務めると言いだした趙雲に、愛紗と鈴々が反論する。

 

二人とも囮の役は自分がやりたいようだった。

 

 「フフフ。 たった二千の兵で一万もの敵を相手にする・・・こんな面白い役を譲れるものか。 それに後ろから攻める二隊は、私などよりも息の合っている二人がやるべきではないか?」

 

 「し、しかし・・・」

 

 「愛紗さん、趙雲さんの言うとおりです。 この作戦は二隊の息が合っていないとうまくいきません。 囮の役は趙雲さんが適任だと思います。」

 

 「・・・うむ、朱里がそう言うのであれば仕方ない・・・」

 

 「ちぇっ、趙雲だけずるいのだ。」

 

二人ともまだ納得していない様子だが、おとなしく趙雲に譲ることにした。

 

 「ただし、囮の役は退き際を見極めなけらばなりません。 退く時期はこちらから合図を出します。 くれぐれも無理をしないようにしてください。」

 

 「うむ、承知した。」

 

 「よし、策も決まったことだし、すぐに隊を配置しよう。」

 

 「はい。ではご主人様と桃香様は、戦が終わるまで陣の中でお待ちになっていてください。」

 

 「何言ってるんだ、俺も一緒に行くよ。」

 

 「ご主人様!」

 

 「さっきも言っただろ愛紗、皆が戦っているのに俺だけ何もしなでいるわけにはいかないって。 この戦いで、きっとたくさんの人が死ぬ。 俺だって敵の命を奪う人間の一人なんだ。 剣を持って戦うことはできないけど、せめて戦場に出てその光景から目をそらさずに見続けることが俺の責任だと思うから。」

 

 「しかし・・・」

 

 「よいではないか、関羽殿。」

 

 「趙雲殿!?」

 

 「大した腕もなく剣をとって戦場へ行くというのなら確かにただの無謀だが、しかしこのお方は自分に何ができて何ができないのかをはっきりと理解してられる。 そのうえで自分なりの責任を果たそうとしているのだ。 なのにお主はその心意気を摘んでしまうつもりか?」

 

 「それは・・・分かりました。 そのかわり決して無理はせず、危なくなったら必ず逃げると約

束して下さい。」

 

趙雲の言葉に押されて、しぶしぶ愛紗は納得した。

 

 「あぁ、ありがとう愛紗。 趙雲さんもありがとう。」

 

 「なに、礼を言われるほどの事はしておりません。 しかし、やはりあなたは面白いお方だ。 ここで死なせるのは惜しい。 関羽殿の言うとおり、無理はせぬようにして下され。」

 

 「うん・・・桃香はどうする?」

 

 「ご主人様が行くって言ってるのに、私だけ大人しく残るわけないでしょ?一緒に行くよ。」

 

 「そっか・・・ありがとう。」

 

 

 

 

―――――――――――――朱里と雛里の的確な指示によって、隊を各地に配置するのにそれほど時間はかからなかった。

 

愛紗は城の左側。

 

鈴々は城の右側。

 

そして趙雲は城の正面で隊を構えている。

 

一刀たちは趙雲の率いる二千の兵たちの後ろにいた。

 

 「ではいくぞ北郷、桃香。」

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

公孫賛の声に答える前に、一刀は目を閉じた。

 

頭の中で、昨晩の声との会話を思い出す。

 

 『明日の戦いは、きっとかてるから。』

 

 「(別にあの声の言ったことを信じるわけじゃない・・・でも、負けると思って戦いに臨むわけにはいかない。 今はとにかく、愛紗たちを信じるんだ。)」

 

心の中でそう呟き、もう一度まとわりつく迷いを振り払った。

 

そしてゆっくりと閉じていた目を開けた。

 

 「・・・あぁ、行こう!」

 

 「うん!」

 

 「よし。」

 

公孫賛は腰に差していた剣を抜き、空に掲げた。

 

 「突撃ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

公孫賛の号令が、広い荒野に響き渡った。 

 

 ~~一応あとがき~~

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今回は連続投稿なので、もしよろしければ次の作品も読んでやってくださいww

 

次は愛紗たちと黄巾党との戦闘があるのですが、戦闘を文で表現するのが難しくて少しひどいことになってるかもしれません (汗


 
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