晴れ渡る蒼穹の下、天を貫かんばかりに立ち並ぶ旗標。
二つの袁。曹。劉。馬。公孫。そして、孫。
数々の牙門旗が薫風を彩りながら揺れるその下、
「お~っほっほっほっほ、お~っほっほっほっほっほ!!」
とある天幕の中、無駄に高らかに響く声の主はいかにも馬力のありそうな掘削機を幾つもぶら下げ――――否、その長い金髪を螺旋状に束ねていた。
手の甲を反対側の頬に当て胸を逸らして笑うその様は、正にステレオタイプの『高飛車お嬢様』。
彼女こそ、後漢時代に四代に渡って三公を輩出した名門『袁家』の出身、自身も司隷校尉という非常に高位な役職に就いており、後に河北四州を支配するまでに勢力を拡大する、かの有名な袁紹本初。その真名を――――
「・・・・久し振りに訊いたわね、その耳障りな笑い声。・・・・麗羽」
「あら華琳さん、よく来て下さいましたわ」
「はぁ・・・・」
曹操はそんな高周波な声に実に辟易したように嘆息し、背後に控える夏候姉妹もまた諦観を決め込んでいる。
その傍らに割と長身な女性が一人、太めの眉を僅かに顰め、腕組みのまま『我関せず』と言わんばかりに立ち尽くす。
束ねられた柔らかな栗色の髪は、馬上の民と称される漢王朝の忠臣、西涼は『馬一族』の証。
錦馬超こと、馬超孟起。携える十字槍は白銀の流星と謳われる、義に篤き西涼の姫。
そして、
「あれ、まだ皆集まってないのか?」
そんな言葉と共に天幕に入って来たのは、白と桃を基調にした鎧に身を包んだ女性。
束ねられた鎧と同じ鮮やかな桃色の髪の下、深い琥珀色の優しい瞳がその人柄の良さを顕している。
公孫賛伯珪。真名を、白蓮と言う。
「あら、白蓮さん・・・・軍議をすっぽかして、一体何処に行ってたんですの?」
「まだ始まってないんだから、別にいいだろ?ただ旧交を暖めてただけさ」
「旧交?」
「ああ。そろそろ来ると思うんだけど・・・・」
公孫賛が言葉の直後、
「すいませ~ん、遅くなりました~」
間延びした声と共に天幕を訪れる人影が二つ。
劉備と諸葛亮であった。
「あら?貴女達はどなたかしら?」
「平原郡から来ました、劉備です。こちらは私の軍師の諸葛亮」
「宜しくお願いします」
「あぁ、貴女があの劉備さんでしたの。成程、門地の低い者同士、仲良しですのね」
「麗羽、お前なぁ・・・・桃香、朱里、済まんな。ああいう奴なんだ」
申し訳なさそうに頭を下げる公孫賛に劉備と諸葛亮が『別に構わない』と苦笑を浮かべているのを余所に、袁紹はその尊大な態度を崩さず天幕の中を見回し、
「さ~て、これで主要な諸侯は全員揃いまして?」
「まだなのじゃ、麗羽姉様。妾の所の孫策がまだ来ておらぬ」
「あ~ら、では孫策さんがびりっけつですのね。全く・・・・美羽さん、客将の管理はちゃんとして下さらないと困りますわよ?」
袁術の言葉に心底呆れたように袁紹がそう言い放った、その直後の事であった。
天幕の入り口の布がゆらりと動き、
表れたのは特徴的な桜色の髪。
『やっと来たか』と袁家姉妹は一つ嘆息し、
他の諸侯達もまた自然とそちらへと視線を向け、
そして、驚愕に瞼を見開いた。
孫策の背後、続いて天幕を訪れた二つの人影、その一人。
付き人らしき女性に左手を引かれながら純白の杖で足下をかつかつと鳴らすその男は、
両の瞼をしかと閉じたままであった。
『白夜。これから軍議に行くから、貴方も来なさい』
事の発端は数分前、連合軍駐屯地に着くや否や雪蓮が口にした、そんな言葉であった。
「私もですか?私の存在がばれると拙いのでは?」
「理由は三つ。一つは、貴方の勉強の為。さっき冥琳も言ってたでしょ、『経験が何より大事だ』って。それは軍議だって同じ事。これから軍師としてやっていくんだから他の諸侯達を知っておいて損は無いし、あの空気にも慣れていかなきゃ駄目。別に発言しろとは言わないから、せめてどんな物なのかを肌で感じなさい」
「・・・・はい」
「二つ目。袁術に前以て顔を見せておく事で警戒心を和らげておく為。『こういう奴が入ったのか』程度には袁術に教えておくの。下手に隠すと却って怪しまれるし、何より見た目で貴方の能力を見抜けるような娘じゃないしね。で、三つ目だけど・・・・」
そこで言葉を切り真剣な表情で黙り込む雪蓮に『何か重大な理由でもあるのか?』と白夜は僅かに身を乗り出し、
「・・・・あんな腹黒い集まりに、私が一人で行きたくないから」
ズルッ、とまるで一昔前の漫画のようにバランスを崩した。
「び、白夜様!?」
「い、いえ、大丈夫です藍里さん。ちょっと、拍子抜けしちゃいまして」
咄嗟に寄り添う藍里に礼を言いながらも、最後の一つ以外は納得のいくものであり、
「・・・・解りました、私も同行します」
「ん、宜しい。藍里も白夜に付き添ってあげてね」
「あ、はい」
言い放ち藍里が頷くのを雪蓮が確認すると、冥琳がすっと近寄り、
「・・・・珍しいな、雪蓮。てっきりいつものように私に押しつけるだろうと思っていたんだがな」
「ま、そりゃ行きたくはないんだけどね・・・・」
軽い驚きを見せる冥琳に雪蓮は少々躊躇いがちに、
「白夜がね、言ってたのよ。『こんな戦い間違ってる。だからこそ、こんな世界を変える為に、強くなりたい』って」
「・・・・成程な。北条らしい」
「私達がこんな戦いに巻き込んだのに、今でも戦場に立つだけでも辛い筈なのに、白夜は必死に前を向こうと頑張ってる。なのに、私だけ嫌な事から逃げるのはどうなんだろう、とか思っちゃったのよ。それだけ・・・・・・・・何よ?」
「ふふっ・・・・いや、何でもないさ」
言っている最中に照れ臭くなったのか仄かに赤らむ顔を背ける雪蓮に、冥琳は小さく笑みを溢す。
(あの雪蓮が、なぁ・・・・)
親が子の成長を見守るような慈愛の表情を浮かべ、
「なら、私はその間に斥候を放っておくとしよう。北条、雪蓮の手綱任せたぞ」
「は、はぁ」
「ちょ、ちょっと冥琳!?」
突然の予想外な言葉に慌てふためく雪蓮を背に、冥琳は踵を返して兵達の待機する陣地へと歩き出すのであった。
そして現在。
天幕の中、一斉に自分に注がれる驚嘆や好奇の視線に白夜は心中で嘆息した。
『やっぱりか』と。
「遅くなったわね。袁術の客将、孫伯符よ。軍議はまだ始まってないのかしら?」
「―――――え、ええ、そうでしたわね。では、最初の軍議を始めますわ。知らない顔も多いでしょうから、まずはそちらから名乗って戴けます事?」
呆けていたのだろう袁紹は雪蓮の言葉で我に返ったのか、少々焦り気味に軍議を開始する。
その声で他の諸侯達も白夜から視線を逸らし、軍議へと思考の矛先を変える。
中には未だちらちらと視線をこちらへと向ける者も居たが。
(無理も無いでしょうね。雪蓮さん達も最初はひどく驚いてましたし)
そんな事を考えていた、その時だった。
自分の左手、伝わる心拍が、僅かに早まっている事に気が付いたのは。
「・・・・藍里さん、どうかしましたか?」
小声で尋ねるが、返事は返って来ない。
不思議に思い、白夜が首を傾げると、
「平原の相、劉備です。こっちは私の軍師で『諸葛亮』」
「宜しくお願いします」
(―――――――まさか)
予想以上に幼い声。
しかし、纏う空気は確かに似ている。
直感的に理解した。
握る彼女の右手が強まる。
先程の彼女のたった11文字が僅かに震えているように感じられたのも、気のせいではないのだろう。
白夜は暫しの逡巡の後、
そっと、ゆっくりと、その右手を握り返した。
ハッとしたように弱まり離そうとする右手。
でも、離さなかった。
決して強くはなく、しかし弱くもない。
言葉は発さない。
否、必要無い。
彼女が少しでも落ち着くまで。
この不安げな気配がほんの微かにでも和らぐまで。
やがて伝わる心拍や不安げな気配は徐々に薄れ、
ゆっくりと握り返すと同時に、ほんの僅かに体重が預けられた。
聞こえない『有難う』と一緒に。
その後、自己紹介は公孫賛、馬超と続き、
「袁術じゃ。河南を治めておる。皆の働きを期待するぞえ」
「私は袁術様の補佐をさせて戴いています、張勲と申します~」
(・・・・あの子が、袁術)
声と気配から察するに、未だ幼い少女なのだろう。
年不相応な尊大な態度は正に『名家のお嬢様』だと感じさせる。
ちらちらとこちらを窺う視線は単なる興味なのか、それとも見定めなのか。
対して張勲だが、完全にこちらを『観察』していた。
まるで毛穴まで見通すかのような視線は慣れているとはいえ少なからず不快な物であり、軽く会釈してみせると、こちらが気付かないだろうと踏んでいたのか、直ぐに視線は自分から逸らされた。
そして、
「典軍校尉の曹孟徳よ」
途端、この天幕内では一際小さかった筈の気配からは思いもよらぬほどの覇気が膨れ上がった。
各諸侯達からは徐々に警戒心の上昇が感じられ、中にはそれを露わにする者もいた。
多少の驚きを感じつつも、改めて思う。
確かに『覇王』だ、と。
「金髪と醜男は私に話しかけないように」
その言葉と共に、自分に探りを入れる為の挑発なのだろう、その膨大な覇気が向けられた。
『醜男』か。この天幕に男は自分しかいない訳だし、普通はこんな事を言われれば逆上するなりせめてもの反撃に出るなりするのだろう。
だがここでそのような行動に出てしまえば雪蓮の顔に泥を塗る羽目になってしまう上、自分が現時点で良くも悪くも目立ってしまうのはあまり戴けない。
それに・・・・幸か不幸か、正直こういった罵倒の類には慣れ切っていた。
この目を心より嫌っていた幼少時代ならばいざ知らず、今更この程度の悪口に怒りの感情など欠片も沸き立ちはしない。
『だからどうした?』その程度。
しかし、雪蓮や藍里は違ったのだろう、二人からほんの僅かではあるが『不機嫌』が感じられた。
「大丈夫ですよ。気にしてませんから」
聞こえない『有難う』を両手に籠めてそれぞれの手を机の下で握りながら、二人にしか聞こえぬような極めて小さな声で諭すと、僅かに渋さを感じさせながらも引いてくれた。
「へぇ・・・・」
その小さな声を、一体何人が聞き取れていただろうか。
籠められていたのは、ほんの僅かな『好奇心』。
おそらく、自分は試されていたのだろう。
ほんの僅か、不謹慎だと思いつつも、心が躍った。
自分は、本当にあの『三国志』の英雄達と同じ舞台に立っているのだ。
そんな実感が、今更ながらに感じられて、歓喜と恐怖の入り混じった奇妙な感情を抱いたまま、
その時は訪れた。
椅子から立ち上がる。
深く息を吸い込む。
そして、
「改めて、袁術の客将、孫策伯符よ。こっちは軍師の諸葛瑾と、軍師見習いの北条。勉強の為、今回は同席させて貰ってるわ。それと、彼は生まれつき病で目が見えないから、そこの所宜しくね」
述べられた言葉に、私はゆっくりと頭を下げた。
その後、袁紹の名乗りは適当にあしらわれて始まった軍議で決まった事や解った事は以下の四点。
『目的は董卓の討伐。しかし、その董卓の素性をここにいる全員が知らない為、逐次情報を集める事』。
『道程は街道沿い。道中汜水関、虎牢関という関所、その前後の広い土地にて大きな戦闘が予測される事』。
『調査によれば汜水関には華雄、虎牢関には呂布と張遼という将が配置されているらしいが連合結成前のデータなので早急に確認の必要がある事』。
そして、『総大将は袁紹である事』。
しかし、これは天地が引っ繰り返っても『袁紹がここにいる全諸侯から信頼されているから』などではなく、ただ単に『面倒だからアイツにやらせよう』という何とも下らない理由である。
本人も乗り気なのに自分からは進言せず(作者の精神的な理由で省略)、結局痺れを切らした劉備の推薦(と言う名の『いい加減にしろ』)により総大将となったのだが、その直後の台詞が、
『では、私を総大将に推した劉備さんに一つ、お願いですわ。連合軍の先頭で勇敢に戦って下さいな。勿論、その後ろには私達袁家の軍勢が控えていますから、何も危険な事はありませんわ』
そう、これが誰も彼女を推さなかった最大の理由。
本来であれば先陣は名誉ある役目。しかし、この場合はただの『捨て駒』。早い話が『肉壁』である。
正直『憐れ』とも思ったが、そこはやはり諸葛孔明である。
先陣に立つ条件として兵糧と兵士の提供を申し出たのである。
本来であれば渋る所を、袁紹は舌先三寸の説得でいとも簡単に了承してみせた。
・・・・実に扱いやすいと思ったのはここだけの秘密である。
そして、その直後彼女が発した作戦内容がこちら。
『雄々しく、勇ましく、華麗に進軍』
・・・・雪蓮達が袁家を馬鹿にしている理由が少し解った気がした白夜なのであった。
という訳。呆れ果てて何も言えなかったわ。
―――――成程な・・・・それで、先陣は?
劉備に決まったわ。まぁ『受けた』というより『受けざるを得なかった』と言う方が正確ね。・・・・でも、この状況を乗り越えれば大きくなると思うわよ。
―――――根拠は?
勘。でも、実際に確認すれば冥琳も解ると思わよ。それで、使者は?
―――――既に出してある。汜水関と虎牢関、諸侯達にも斥候を放っておいた。
了解。それじゃ、行きましょうか。
―――――北条も連れて行くのか?
勿論。折角の機会なんだから、もっと経験を積んで貰わなきゃ。
―――――藍里はどうする?
連れて行くわよ。確かに驚いたけど、白夜の時と同じ。『いつかは来るもの』だもの。
―――――・・・・確かにな。
それじゃ、後宜しくね。私は二人と行って来るから。
―――――ああ。
それは、劉備軍の陣地に入って暫く経った頃だった。
「待て!お前達は何者だ?何故我等の陣地に入って来る?」
凛とした声が、自分達の足を止めた。
近づく気配は硬く澄んでおり、警戒心を剥き出しにしていた。
「孫策よ。劉備に会いに来たわ。陣を訪れる事は先触れの使者より伝わっている筈だけど?」
「ああ、貴女が江東の麒麟児か・・・・」
「何それ?」
「雪蓮さんの事を、最近は皆がそう呼んでるんですよ。知らなかったんですか?」
「全然。へぇ、私ってそんな風に呼ばれてるんだ。中々良いじゃない♪」
「貴女の勇名は、今や大陸中に響いていますからね」
「お姉ちゃんかっくいいのだー」
女性の言葉に続き、やけに幼く無邪気な声が耳朶に届いた。
気配の大きさからして、先程の袁術並の身長だろう。
しかし、纏う空気は決定的に違った。
内から滲み出る強さ、とでも言うのだろうか、その幼く小さな器に有り余る力が溢れ出ている。
その事実が素直に凄く、そして悲しかった。
「あははっ、ありがと。・・・・でも、そういう貴女達二人の名は?」
「我が名は関羽。字は雲長」
「鈴々は張飛なのだ♪」
「貴女達が関羽ちゃんに張飛ちゃんなのね。・・・・ねぇ、劉備ちゃん居る?ちょっとお話したいから、呼んで欲しいんだけど」
(―――――え゛!?)
・・・・どうやら人物像に関しては本格的に今迄の知識を排除した方が良さそうですね。
そんな白夜の思考を余所に返って来たのは、
「で、その孫策殿が、我等が陣営に足を運ばれて、我が主に一体どのような御用でしょうか?」
丁寧な言葉遣いとは裏腹の刺々しい言葉。警戒心はより一層高まり、疑念の視線がこちらへと向けられる。
(確か本音を隠して動くのは、雪蓮さんが一番嫌いなパターンだったような・・・・)
そう思い返した直後、
「・・・・下がれ、下郎」
『案の定か』と心中で嘆息一つ。
「我は江東の虎が建国した孫呉の王!王が貴様の主人に面会を求めているのだ。家臣である貴様はただ取り次げば良い!」
「何だとっ!我等には主を守る義務がある!例え王と言えども不信の者を桃香様に会わせられるか!」
激昂した関羽は一気に殺気を膨れ上がらせ、風を切る刃の音が鼓膜を震わせた。
「ほぉ。・・・・大言壮語だな、関羽。ならば相手になってやろう」
対する雪蓮もまた南海覇王を抜き放ち、一触即発の雰囲気を醸し出す。
しかし、その実雪蓮の纏う空気は真面目とはかけ離れており、からかっているのだと直ぐに解った。
(そろそろ止めておいた方が良いでしょうか・・・・・?)
そう思い至った、その直後だった。
「愛紗ちゃん!どうしたのっ!?」
「何事ですか~?・・・・っ!!」
「と、桃香様。朱里・・・・」
騒ぎを聞きつけ駆け寄る足音は二つ。気配も声も、先程軍議の天幕で感じたそれと同じであった。
一人は純粋な心配の声。しかしもう一人は息を呑み、少し離れた場所で立ち止まってこちらを見ていた。
隣に立つ藍里の身体が僅かに強張り、しかし、それを面に出さぬよう静かに深く息を繰り返している。
その傍ら、
「愛紗と孫策お姉ちゃんがちょっと喧嘩したのだ。でも二人とも本気じゃなかったから、心配しなくても良いのだ」
「あら?どうして私が本気じゃないって解るのかしら?」
「武器を構えたのに、殺気が無かったのだ。だから鈴々は安心して見てたのだ」
「ふーん。・・・・凄いわね、張飛ちゃん」
「お姉ちゃんもなー。愛紗、武器を収めて下がってるのだ」
「くっ・・・・解った」
のんびりと構えていた張飛が事の顛末を簡単に説明し、場を纏めてみせた。・・・・ってあれ?関羽さん、何故にちょっと焦ってるんです?ひょっとして軽く本気入ってました?
「すみません、愛紗ちゃんが御迷惑をお掛けしました」
「別に構わないわ。どうせ関羽も本気じゃ無かったでしょうし」
「・・・・・・・・」
いや、だから何故にちょっと気まずそうなんですか関羽さん!?
「えと、それで孫策さん。私に何か御用でしょうか?」
「んー・・・・取り敢えず挨拶。後、ちょっとした提案をしに」
「提案、ですか」
「そ。貴女達、先鋒にさせられたでしょ。勝てる見込み、あるかしら?」
「・・・・正直言って、解りません。愛紗ちゃんや鈴々が居たとしても、兵が絶対的に足りませんから。まともにぶつかれば、きっと負けちゃうと思います」
その言葉に雪蓮は僅かに笑みを深め、
「そうよねぇ。・・・・だったらさ、手を組まない?」
「へっ!?」
「劉備軍と私達孫呉が先鋒を取れば、兵の数も倍以上になるでしょ?そうすれば勝てる見込みも高くなるんじゃないかしら?」
雪蓮の提案に劉備は戸惑いを見せ、関羽は再び警戒し始め、張飛は首を傾げていた。
対し、諸葛亮は一歩離れた場所より静観を続けていた。
時折こちらに視線が向けられるのは恐らく藍里を気にしての反応なのだろう。
「でも・・・・そんな事して、孫策さんに何の得があるんですか?」
「あら、意外としっかりさんなのね」
「今迄色々と鍛えられてきましたから。えへへ」
表情を崩す劉備の瞳を雪蓮は瞼を細めて覗きこみ、
「・・・・・・・・良いわ。貴女を信じて、胸襟を開いて見せましょうか」
呟き、雪蓮は話し出す。
「知っての通り、今の私達は袁術の客将に甘んじてる。でも、いつまでもこのままでいる積もりは無いわ。いつか必ず領土を取り戻し、孫呉復活を遂げて見せる。その為には『外の味方』が必要なのよ。外に味方が欲しいのは、貴女達も同じでしょう?」
「それは、その通りです。・・・・でも」
「でも?」
「どうして、私なんですか?」
「貴女が義理堅そうだから。信用できそうだからってのが一番の理由。次いで二番目が、貴女と私達の勢力が、今は五分五分だからよ」
「・・・・お話は解りました。でも、私には貴女がまだ信用出来る人かどうか解りません」
「信義を見せろ、って事かしら?」
「はい」
「良いでしょう。私達孫呉の戦いぶりを、その目に焼き付けておきなさい。それで信用に足りないと判断したならば、それはそれで良し。・・・・いつか戦場を矛を交えるだけの事よ」
「・・・・解りました。では孫策さんの信義、しっかりと見させて頂きますね」
「ええ。それじゃ、一刻後に出発って事で良いわね?」
「はい」
「宜しい。それじゃこれで・・・・と、最後に一つだけ訊いていいかしら?」
踵を返し帰ろうとして、雪蓮は再び劉備の顔を見据える。
「何ですか?」
劉備は純粋な疑問からその首を傾げ、
「貴女は、どうしてこの連合に参加したの?」
たった21文字が、その場の空気を一変させた。
劉備は表情を引き締め答える。
「董卓の圧政に苦しむ人達を助ける為です」
それだけなら、良かったのかもしれない。
辺りに漂う、ほんの僅かな警戒と動揺。
それを、白夜は逃さなかった。
「・・・・そ。それじゃ、また会いましょう」
踵を返し去りゆく雪蓮の後に続き、藍里に手を引かれながら白夜は劉備軍の陣地を後にするのだった。
(続)
後書きです、ハイ。
やっと投稿出来たあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
こっちの更新は実に一ヶ月振り・・・・長かったよ、マジで。(TへT)
もう、ね・・・・リアルがヤバいんです。
家に帰っても直ぐに爆睡、夜中に起きてレポート書いての繰り返しでして・・・・出席日数ヤバいのも少々。( ;)
誰か助けてちょ・・・・
さて、ストーリーですが、今回は基本原作沿いでしたね。
次回は軍議中や劉備陣地内での各キャラの心の内を書こうと思ってます。
・・・・まぁ、あくまで予定なのでどうなるかは解りませんが。( ̄∀ ̄;)
今迄通り、どうか気長にお待ちいただけたらと思います。
で、
お気づきかと思いますが、実は今回の投稿、これだけではありません。
ここで書くより見た方が早いので、覗いてやって下さい。
それでば、次回の更新でお会いしましょう
でわでわノシ
・・・・・・・・そろそろ夜行性を治さねば。
―――――――――――流れ星?不吉ね。
全ては、一筋の流星から始まった。
舞い降りたのは、一人の青年。
その手に弦楽器を携え、首筋には痛々しく残る一文字傷。
彼は、いつも笑っていた。
「あなた・・・・喋れないの?」
『肯定』の二文字に、言葉を無くした。
「私は剣だ。剣にしかなれない。だから・・・・お前に鞘になって欲しい」
背負われた背中に、小さく呟いた。
「お前は、馬鹿だな。大馬鹿だ」
傷だらけの姿に、涙を流した。
「どうして・・・・どうして何も言い返さないのよっ!?少しは怒って見せなさいよっ!!」
笑みを絶やさぬ顔に、腹が立った。
「兄ちゃんは、声が無くても喋れるんだね」
「兄様はきっと、辛かったんじゃないでしょうか?」
見上げる肩に、過去を垣間見た。
「傷は『恥』じゃなく『誇り』・・・・貴方は、そう教えてくれました」
「ええよ、任せとき。ウチと隊長が組めば百人力や!!」
「我慢する事で、逆に自由になれる、か・・・・だから隊長はいつも楽しそうなの?」
その心に、多くを学んだ。
「大丈夫!君の分まで、私が歌うから!」
「アンタの作る曲ってさ、歌ってて凄く楽しいのよね・・・・」
「どうして、音楽を諦めなかったんですか?」
奏でる音色に、本当の幸せを知った
「心の傷ってな・・・・自分で治った思ても、そうやない事が多いんやって」
交わす盃に、本当の信頼を誓った。
「どうして、貴方は笑っていられるのですか?」
「そんなの、おに~さんが可哀そう過ぎるのですよ・・・・」
その儚さに、問わずにはいられなかった。
――――――『やりたい時にやりたい事をやりたいように』それが俺の信条。
――――――何度も恨んだよ。神様も。世界も。運命も。
――――――天才なんかじゃねえよ。凡才だから、努力するしか無かったんだ。
――――――人間ってさ、大事なもん全部無くすと、色んな事がどうでもよくなっちまうんだよな。
―――――――――――もっと肩の力抜けよ。お前は、一人じゃねえんだから。
真・恋姫無双 魏√二次創作 ~沈黙の御遣い~(仮) いつか気が向いたら公開開始。
―――――――――――ほらぁ~、二人とも早く早く~!
青空の下、朗らかな声が響き渡る。
三つの人影が目指す先、落ちる流星は双筋。
一つは大きく。一つは小さく。
寄り添うように優しく瞬くその下で、立ち上がる体躯は実に長身。
真白の鞘を携えて、鬼神の如く彼は吠える。
その腕に小さな命を抱いて。
「ご主人様って、顔は怖いけどすっごく優しいよね~」
「私は、貴方の『港』になりたいんです」
「おにーちゃんというより、おじちゃんなのだ?」
「はわわ・・・・ご主人様って、お父さんみたいです」
「私に任せて下さい。全部、守ってみせますから」
「主が皆の拠り所ならば、主の拠り所は何処にあるのですか?」
「皆が笑っていられる場所・・・・私の夢は、もうここにあるんです」
「償わせてよ・・・・これは、私が招いた結果なんだから」
「ご主人様、強い。なのに、何で『弱い』って言うの?」
「どうして、もっと早く来てくれなかったのですか・・・・」
「こんな私を『必要』だと、お前は言ってくれるのか?」
「悔しいですけれど――――私の負けですわ」
「アニキだったら、話しちまっても別に良いかな」
「嬉しいんです。こんな風に、大切な人と並んで一緒にお料理するの、夢だったから・・・・」
「ご主人様はさ、もっと誰かを頼るべきだと思うんだよ」
「そりゃご主人様からすれば子供かもしれないけどさ・・・・蒲公英だって本気なんだよ?」
「御館・・・・私を、思いっきり叩きのめしてくれ!!」
「あの広い背中が、時折酷く小さく見えるのよ・・・・男の人って、どうしてこうなのかしら?」
「御館様が初めてですぞ、こんな老体を女子扱いするのは」
「ぱぱ?父様の事を、そう呼ぶのかにゃ?」
「ととしゃま~」「ちち~」「とお様~」
「まかせて、ごしゅじんさま!りりがおせわしてあげるから!」
―――――この子は優姫。俺の娘だ。
―――――人を助けるのに、理由が要るのか?
―――――俺は守る為なら、容赦しねえぞ?
―――――・・・・上等だ。やってやるよ。
―――――俺の家族に、手ぇ出すんじゃねえ!!!!
――――――――――俺はな、筋の通ってねえ事が、この世で一番でぇ嫌ぇなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
真・恋姫無双 蜀√二次創作 ~白鞘の御遣い~(仮) こちらもいつか気が向いたら公開開始。
Tweet |
|
|
81
|
12
|
追加するフォルダを選択
投稿31作品目になりました。
色々と意見や感想や質問、
『ここはこうしたらいいんじゃねえの?』的な事がありましたらコメントして頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。
続きを表示