No.153917

メディック!

三日月亭さん

ある傭兵が戦場で見た夢の話

この話は傭兵の体験談風にお話が進んでいます
こういうお話が好きな方はぜひ「高部正樹」氏の著書もいかがでしょうか?

2010-06-28 04:56:41 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:888   閲覧ユーザー数:696

戦場での負傷は命取りになる、どんな小さな傷でもだ

 

そう、指に小さな刺し傷が出来ようもんなら、そこをナイフで少し切り開いて

 

きっちりと消毒して、ガーデなりなかったら傷テープなりでしっかり手当てしとかないと

 

破傷風になってしまう生活水準がある程度達してる所であれば到底考えられないことであるが

 

※ココ戦場では当たり前のことだ、正直不衛生な場所で不衛生なことをするので

 

(※の文の直接的表現は避けさせてもらいました・by三日月亭戦略諜報部広報課 益田)

 

仕方ないと言えば仕方ないが、つまり何が言いたいかといえば

 

戦場の怪我は命取りと言うことだ

 

だからと言って職業傭兵である以上職務内容は戦争だ

 

怪我するなと言う方が無茶すぎるわけだ

 

軽い怪我なら自分で何とかできようが、そうもいかない時もある

 

それが戦闘中にあう負傷、被弾による銃創、榴弾の炸裂時四散した破片による切創、等等

 

負傷の度合いも重たくなり自分一人で手が負えなくなってしまう

 

そんな時頼りになるのが、「メディック」つまりは衛生兵だ

 

だが、頼りになるがあてにはしたくない

 

メディックが呼ばれる時、それは仲間が重傷負ったときだそれだけは避けたい

 

それはメディックの方も同じだろう

 

何せ自分が手当てしなきゃいけない相手と言ったら

 

髭はモジャモジャの野郎だ、しかも怪我のショックで嘔吐してる時だってある

 

それが気管を塞ごうものなら…あとは言わなくても解るだろう

 

つまりそういう事だ

 

まぁ、今回はそんな願いも空しく重傷負った男の話をしよう

 

 

話は俺が東南アジアの内戦地域に傭兵として参戦していた頃だ、

 

俺等が小隊(と言っても1チーム四人のエントリーだが)を組んで

 

制圧地域に巡回をしていたときの事だ

 

時刻は14時、場所はジャングル

 

敵のデモリション部隊がこちらの補給物資運搬に使う鉄橋に対しサボタージュ行うつもりだったらしく

 

相手もこちらと同じ四人一組の少数部隊で潜入してきたらしい

 

こちらはそんな事とは露知らず、いつも通りの巡回ルートを愚痴りながら進んでいると

 

巡回メンバーの一人が小便に行きたいと言い出し

 

そうしたらそいつに釣られて次々と連れションへと旅立っていった

 

そうこの俺も例外なく

 

我々がトイレに選んだのは普段はほぼ素通りコースになりがちになってしまう森の中に作られた小さな橋の下の小川だった

 

そこはどちらかと言えば味方陣地よりの位置にあり交戦状態になるとは思っておらず

 

そこにいる我々銃から手を離してしまっていた(と言ってもスリングを付けて襷掛けにはしていたが)

 

皆が皆、小銃から手を離すと自分の…(検閲に引っかかりましたBy三日月亭 益田)

 

用を足していると小川の対岸の茂みの方から物音がした

 

別段気にする必要は無い…とはココでは通用しない

 

動物だったか、ですめば笑い話で済むが敵ならそうは行かない

 

各々放り出した愚息をズボンに仕舞い小銃のグリップ手をかけたそのとき出だ

 

高音を殺した低く鈍い銃声が茂みの方からこちらに向けて一斉に叫び上げた

 

抑音器付き小銃ないしは短機関銃だろう、幸いあちらも予期せぬことらしく

 

見通しの悪い場所からの攻撃だったらしく狙ったと言うより音がしたので反応した

 

と言った感じだ、恐らくこちらが無防備だったのも見えてなかったのかもしれない

 

兎にも角にも幸運のはずだった

 

視線を少し下にやると川が赤く染まっていた

 

誰か撃たれた!その考えが脳裏をよぎる

 

そして周囲を確認した

 

仲間は無事か!?負傷具合は!?川に流れる血の量に少し思考が鈍った頭に洪水のように攻め立ててくる

 

そんな俺に仲間が怒鳴るように呼びかけた

 

「大丈夫か!?」

 

一瞬意味が解らなかったが足に目をやると

 

大腿部からこの上ないほど綺麗に出血していた

 

そう撃たれたのだ!

 

負傷した俺を後ろにやろうとしたが、敵も目撃者を生かさないつもで茂みから出て今度はしっかり狙って撃ってきている

 

交戦距離はなんと50メートルも無かったと思われる(目測の為正確には解らないが)

 

通常の交戦距離が200メートル前後なのを考えると相当の接近戦だ

 

両方距離は縮められず、拮抗状態に

 

(こちらは俺が足を引っ張りあちらも何かしらの事情があるのだろう)

 

そんな、拮抗状態もこちらの銃声を聞きつけた仲間がやってきたのだ

 

一気に形勢逆転し事なきを得たのだ

 

それにしてもこれを読んでいる方の中には途中から内容が大雑把になっていないかとお思いだろうが

 

それも仕方ないのだ、俺自身交戦途中で気を失っていたそうだ

 

「そうだ」というのも気を失っても引き金だけは引いてたそうだ

 

その間といえば、俺は夢を見ていたんだろう…

 

 

気を失っているとは知らず戦っていた俺は何とか敵の掃討に成功し

 

仲間のメディックが俺の傷の具合を見ようとしたそのときだ

 

「ちょっとお待ちなさい!」

 

と待ったをかける声がした

 

全員がその声の方向に目をやるとそこには

 

 

とんでもないくらいデカイパイオツのメディックらしき女が立っていた

 

「私に任せて!その子!!相当危ないわ!!」

 

突然の事に皆唖然としていたが、メディックだけは違った

 

「ふざけるな!!こっちは命がかかってるんだぞ!!」

 

こいつとは古い付き合いのせいか随分と世話になってきたがココまで怒鳴った姿は初めて見た

 

「そんなの解ってるわ、だからこそよ!だからこそ私の『エンジェル・キッス』の出番よ!!」

 

と女は前かがみになって胸を強調し唇を尖らせ投げキッスをしてみせた

 

普段ならお近づきになりたい所だが今は血が流れ出た分意識が朦朧としそれ所ではなかった

 

「頼めるか?」

 

興味が無かったわけじゃないが、最初にも言ったがメディックは野郎で髭もじゃでお互いに臭かったり手なんて泥だらけで汚いことこの上ない

 

だが仲間だ、信頼も信用もしているそいつがココまで言ってるのに当てにしないわけにはいかない

 

俺の言葉で他の連中もメディックの手伝いを始めた

 

二人はその場にある樹木を切り加工し即席の担架を作り

 

メディックは俺の太ももの銃創を焼けたナイフで切り広げ術野を確保し

 

損傷した血管をクリップで止め止血をし俺には手持ちの酒を飲ませた

 

(どうやら出血が酷いとモルヒネは逆に危ないらしい夢の中の事なので容赦願いたい)

 

そして何とか処置に成功し、仲間に担架運ばれる時だ

 

あの女がほほを膨らませこっちに来た

 

「どうして!あんな男より私の方がいやなの!?私だったら彼方をもっともっと気持ちよくしてあ げるのに!!」

 

何を言い出すかと思えば、その能天気な文句に俺たち一同は怒りを通り越してあきれ果てた

 

そして、俺たちはその場をあとにした

 

俺の出血が思いのほか酷いので、確りとしたと施設でもう一度手術しないとダメだそうだ

 

俺は今後のことに少し気が滅入りつつも、仲間の助けに感謝した

 

「私のエンジェルキッスで助けてあげる!」

 

またもあの女の声が聞こえる

 

俺は声のほうに目をやると、そこにはあの女と虫の息の敵兵の姿があった

 

全員その場で動きが止まった、

 

敵兵が生きていたこととあの女が無差別に人間を助けようとしていることに

 

驚きを隠せなかったからだ

 

死んでくれた方が良いそう思い

 

「お~い!そんな奴ほっといてこっちにこないか!!」

 

と仲間がそれとなく叫ぶも女は

 

舌を出してあっちに行けとジェスチャーで答えた

 

敵を生かしておけないし、俺も放っては行けない

 

仲間がどうするか思案したそのときだ

 

女がバック手を入れ何かを探し始めた

 

皆に頭にはエイドキット出すのかと思考がよぎったが

 

女のバッグから出てきたものはとても大きな注射器だった

 

そして敵兵をうつ伏せにして直径6センチはあろう注射器を勢い任せにしりの穴にねじ込んだ

 

深々と尻の穴に針を突っ込むと女は嬉しそうにそれを持ち上げ

 

オモチャの様に弄び始めた

 

その光景に、なんだか薄気味悪さと変な違和感を持った俺達は

 

まるで子どのように走って逃げていた

 

子供の頃に味わったあの無性に掻き立てられた焦燥感と恐怖に

 

俺は気がつくと後方基地の病院ベッドの上に居た

 

そう夢だった、と言っても交戦はホントであの女の事はと言う意味だが

 

医者に聞けば相当危なかったらしい

 

ココに運んでくる途中に一度心停止していたそうだ

 

そんな時もメディックの機転で何とか乗り切ったそうだ

 

かなりやばかった事には違いないが

 

傷が落ち着く頃になるとベッドの周りには薄き絶たない男達でいっぱいになった

 

仲間の傭兵たちだ

 

どういう訳かこいつ等負傷した奴のところに出向いてはからかわずにはいられないいらしい

 

勿論、俺も含めてだが

 

そして当然俺のうわごとを聞いていた奴があの夢の事を知りたがってい来たので

 

きっちりと教えてやると、一同「尻の穴が痛くなった」と感想を漏らしていた

 

メディックはというと「それが運命の別れ道だったのかもな」と

 

もしあの女についって行っていたらまず間違いなく死んでいただろう

 

あいつの「気持ちよくする」とは楽にしてやるのことだったのかもな

 

大量出血ショック状態からの心停止

 

死神が忍び寄っても可笑しくない、そんな中あいつは

 

随分と俺の名前を呼んで心臓マッサージをしてくれていたそうだ

 

もしメディックがいなかったらあの死神の甘い誘惑に乗っていたかもしれないな

 

「メディック」当てにして戦う奴は誰も居ないがいるとこの上ないほど頼りになる奴

 

今回の話はこんな所さ

 

今回はここら辺でお開きだ、じゃあな!!


 
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