No.153845

真・恋姫†無双 恋姫総選挙、支援作

テスさん

 なかつきほづみさんのイベント企画、「恋姫総選挙のお知らせ」、その支援作になります。恋姫総選挙って何だろうと思った方は、インスパイア元の作品をご覧ください!
 支援作のつもりで書いてしまいました。
 星を応援! でも内容は……。拙い文章ですがどうぞ~

[H22.7.2]作品説明、汚かったので少し手直し

2010-06-27 22:48:15 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:13446   閲覧ユーザー数:11301

真・恋姫†無双 恋姫総選挙、支援作

 

――蜀、成都。

 

 三国同盟が結成され、慌ただしい日々の中に、皆が平穏という言葉を噛みしめていた頃、朝食を食べ終え、瓦版に目を通していた愛紗に激震が走った。

「な、なんだこれは!」

 瓦版を握り締め、弱き者達への支えとならんと、共に乱世を駆け抜けて来た盟友の部屋へと駆け込んだ。

「朱里!」

「はわわっーっ!」

 薄らと透けた布の向こう側で、ピピーンっと跳ね起きた朱里が顔を出す。

「あ、あ、ああ、愛紗さん! こんな朝早くにっ――! ととと、とにかく着替えますから、しょとでお待ちくだしっ!」

「――す、すまない!」

 さすがに失礼だったと、すぐさま扉を閉めた愛紗。朱里の部屋の前で問題の記事に目を通していると、通りかかった数人の侍女に挨拶され、いつも以上に爽やかな笑顔で、おはようを返す。

 しばらくして、着替えを済ませた朱里が部屋から出て来ると、愛紗を見上げ問う。

「それで? こんな朝早くに、どうしたんですか?」

 私、ご機嫌斜めです。っと言わんばかりに、頬を膨らませる朱里に、愛紗は問題の記事を見せる。

「今朝の瓦版だ……」

「こ、これは――!」

 主に警邏を担当する者達が軍議の間に徴集された。朝議が始まる前であり、皆不満そうな顔をしていた。

「皆に急遽集まってもらったのは他でも無い。朱里頼む」

「はい、愛紗さん。……ご存知の方も多いかとは思いますが、手元にある瓦版を見て下さい」

 皆が置かれていたものを手にし、瓦版の見出しを眺める。

「普通の瓦版みたいだけど……」

「翠、恋姫総選挙って、なんなのだー?」

「はぁ? そんなの何処に書いてあるって……、最後かよ!」

 愛紗が溜息を吐きながら頭を押さえ、朱里はあははっと笑みを浮かべる。

「えっと、何々……なんだこりゃ?」

「――紫苑、翠が教えてくれないから、教えてほしいのだ」

 怠惰な妹に見兼ねて、姉が離れた席で叱責するも、鈴々は堂々と聞き流す。

「そうね、村の皆で好きな人を決めようって、誰かが呼び掛けているのね。一言で言うとお祭りみたいなものかしら」

「お祭り!? 愛紗! お祭りするのか!?」

「――否(せん)!」

「ふふっ、どこの誰かは知らんが乙なことをする」

 面白そうに呟いた星の一言に、愛紗は言うと思ったと、呆れながら窘める。

「星、冗談にも無いことを言うな……。さて、皆も知っているように、もうすぐ三国会談が近い。このような出来事が蜀で開かれていると知れてみろ! ご主人様に恥をかかせてしまうことに。――断じて阻止せねばならん!」

 蜀の大徳、劉玄徳が一の家臣、誰もが絶対の信頼を寄せる彼女の正論に頷くも、妹である鈴々は憤慨する。

「愛紗、お姉ちゃんと三人で、お祭り一緒に見て回ろうって約束したのに!」

「り、鈴々! 確かに約束はしたが、それとこれとは話が違うぞ! 私情を持ちこむんじゃない!」

 共に戦って来た仲間であり、大切な家族でもある二人。姉と慕う愛紗は軍事、内政、様々な職を兼任し忙しさに追われる毎日を過ごし、また蜀の王である桃香もまた、日々政務に追われ、三人で過ごせる時間は皆無に等しい。

 まだ幼さも残る彼女にしてみれば、平和になればと頑張って来たのに、ふたを開けてみれば以前よりも会えない日々が続く。

 ――鈴々ちゃんの機嫌も、悪くなりますよね。

 そんな事情を汲み取るが如く、いや、ただ愛紗だからという理由で、反論したいだけなのかもしれない。

「やれやれ……。愛紗、よく考えろ。民も我等も、この平和の為に戦って来たのだ。民の娯楽を我等が取り上げて良いはずが無かろう?」

 ――やはり出て来てしまいましたか。

 朱里は思った。この人が出て来ると、話はいつも平行線に終わることが多いのだと。朝議も控えているのでどうしたものかと、彼女が頭を悩ませていると、すんなり救世主は現れた。

「うわー、ねぇねぇ、ご主人様。皆気合入ってるよ?」

「そうだね」

 一刀が朱里に目配せすると、えへへっと朱里が微笑む。本当に小さな仕草だったが、朝から愛紗と激論を交わしている星は虫の居所が悪かった。普段なら詮索などしない彼女だが今日は違った。

「……そういえば、主。昨日の夜はどちらへ?」

 場が一瞬で凍りつく。わなわなと拳を震わせ、黒い霧が立ち込める愛紗の隣で、ガクガクと震えだした朱里。

 しかしここで黙っていては不利になるだけだと、一刀は今まで学んできた知識を総動員し、頬を引きつらせながらもこう告げた。

「天の国に……」

 いろいろと……ご免なさい!

 決して嘘では無いが、本質を包み隠した言い訳。一刀はすぐ後悔する羽目になる。

「ご、ご主人様! て、天の国にお戻りになられていたのですか!?」

 愛紗である。それはもう、あたふたと。翠も動揺してしまい、勢い良く立ち上がる。

「――ど、どうしてだよ! ご主人様!」

 感情的になってしまった二人を宥めつつ、場が混沌としてしまったことに。どう収集すれば良いのか悩んでいると、星が気まずそうに声を上げる。

「主、さすがにそれは、洒落になりませぬ……」

 皆が不安な表情で彼を見詰めていると、場違いな台詞が響き渡る。

「華琳様、北郷一刀は危険です。この男、皆の不安を煽って、ここにいる全員を孕ませようと考えているのです。近付いては華琳様の御身が汚れてしまいます!」

「……そのようね」

 後ろから入って来た華琳が、あからさまに一刀との距離を取る。

「ちょ、そんな嫌そうに離れるなよ!」

 フフンっとして口元を吊り上げ、視線を反らした魏の筆頭軍師である桂花。華琳が立とうとしていた場所に、すすすっと何が動く。

「……ぐぅ」

「やっほーって、元気ないわね。一刀の言葉に騙されちゃ駄目よ?」

「雪蓮の言う通りだ。これほど皆に心配されている幸せ者が、この蜀から出て行くはずがなかろう?」

 誰もが開いた口が塞がらない。三国会談を前に、各国の王が再びこの成都に集ったのだから。

「あらあら、持て成しの準備すら整っていないのに――」

 本当に困ったわと紫苑が呟いた。

「私達は予定を前倒しして蜀に来たのだから、構わないわよ。さて、目的をさっさと済ませましょう。……この瓦版、魏や呉にも配られていたわ。どんな思惑があるのか分からないけれど、魏は乗ることにしたわ」

 貴女の国はどうなのかしらと、華琳は雪蓮に視線を送る。

「呉もそうね。面白そうだし、私が決めたわ。――三国競い合ってこその同盟だし、この際、皆でやりましょうって桃香達に提案しに来たの」

「はい! と言うことで、私もご主人様と相談して、決めちゃいました!」

「……おぉ! 誰も起こしてくれないので、自分で起きてしまいました」

「おはよう、風」

「むー、兄さんはいけずさんなのですー」

 今までの苦労は一体何だったのか。朝議が始まる前から集められた将達に、疲労の顔が浮かぶ。

「あのー、華琳さん?」

「何かしら、朱里?」

「この瓦版の右下に書かれているのは――」

「風ではありませんよ?」

 会話の途中で否定する風。

「確かに。風ではないわね……」

「いえ、そういう意味では無くてですね――」

 案の定、華琳は疑われたことに難色を示す。

「魏が何か企てているのではと、そう言いたいのかしら? だとしたら心外だわ」

「――風では、ありませんよ?」

 蜀に仇なす可能性を秘めているのだ。そうやすやすと見え透いた手に乗るわけにはと、朱里が思った矢先。

「朱里の言いたいことは分からんでもない。だがそれこそが敵の目論見やもしれんぞ?」

 ――説得力がありません!

 肩を震わせ、くつくつと面白がっているのだから無理もない。

「それより朱里よ。主の御帰還、阻止せねばならんな」

「そ、そうですねー、あははは……」

 そして、さり気無く止めを刺され、朱里は遠い目をした。そう、彼女に弱みを握られたら最後。子猫のように弄ばれるだけなのだ……。

「ご主人様や桃香様がそう決められたのであれば、私に異論はありません……、愛紗さん」

「……はぁ、仕方あるまい」

「やたーっ! お祭なのだ! お兄ちゃんは、誰に票をいれるのだ?」

 ――鈴々、空気読んで!

 一刀は、この場から早く避難するべきだと思った。だが後ろには雪蓮と冥琳、両側に桃香と風がいて……前は虎の巣穴に飛び込むようなものだった。

「あれ~? 一刀は、私に入れてくれないのかしら~?」

 一刀の後ろから、楽しそうに挑発する雪蓮に、苦笑い浮かべる冥琳。

「あら、一刀は私に入れてくれないの?」

 寂しそうな声を出しておねだりする華琳。しどろもどろになった一刀に、桂花がぶちギレる。

「ちょっと、あんた! 何様のつもり! 華琳様に票を投じ――」

「えぇっ! 蜀の誰かじゃなくて、他の国の人に入れちゃうの? ご主人様、ひどいよ!」

 ――桃香も、空気読んでくれ!

 結果的に桃香にも裏切られ、一刀の周りが騒然となる中――

 愛紗が机を叩きつけ、勢い良く立ち上がると、煩いくらいに椅子が悲鳴を上げ、皆の視線が彼女へと釘付けになる。

 ここにいる誰もが、『ご・主・人・様~』と唸りながら、愛紗の雷が落ちると確信した。一刀も、場を収めるには仕方ないかと思いつつも、やはり愛紗は頼りになるなと思った。

 だが……

「――っ!」

 彼女は、そのまま椅子に腰を落とした。

 ――な、何故だ! 愛紗、愛紗ーっ!

「さすが愛紗……、期待を裏切らん」

「にゃ? どうしたのだ、愛紗?」

「愛紗、だめだめだな~」

「ふふっ、愛紗ちゃん、可愛いわね」

「~~~~~~!!」

「一番は華琳様だって決まってるのに……、困った奴等ね」

「あら、謙遜ね、桂花。遠慮はいらなくてよ? そうね、貴女が一番だったなら……、上から下まで、これでもってくらいに……、貴女を愛してあげるわ♪」

「ぁぁん♪ 華琳様~♪」

 突如花咲く二人に呆れつつ、冥琳が雪蓮に呉はどうするのか問う。

「え? 私が出さなくとも……、ねぇ、風?」

 先程から少しずつ一刀の傍へ近付く風に話を振る。

「……さぁ、どうでしょうねー。ちなみにお兄さん、蜀はどのようなご褒美を?」

「んー、俺にできることぐらいしか、思い付かないけど……」

 一刀の腕に持たれるように、さり気無く風が寄り添う。

「十分でしょう~。風が一番なら、お兄さんのご褒美をぜひぜひー」

 ぷるぷると震える愛紗に、すかさず星が筆を持たせると、見事に真っ二つに折れた。

 それを見た一刀は、ただただ青ざめるだけだった……。

「星ちゃん、今の愛紗ちゃんで遊ぶと危険よ?」

 そう窘めつつも、さり気無く紫苑も小筆を愛紗に持たせるのである。

 ――し、紫苑さん? 何やってるんですか!?

 パチンと軽い音を立てて、真っ二つに折れてしまった。

「まさに死との隣合わせ。だが……やめられん!」

 星の視線の先には……

「はわわっ、次は私の番ですか!」

 ――何やってんだよ! お前等っ!

 あからさまにほっとしている朱里に、翠と鈴々が愛紗の両側に回り込み、筆を握らせることに成功していた。

「ねぇ華琳? 風は魏の軍師だけど、一刀に褒美を求めても良いのかしら?」

「風がそれで良いなら、別に構わないわよ? 一刀も良いわよね?」

「あ、あぁ……」

「何が、『あぁ……』ですか! ご主人様!」

 両手に持った筆を圧し折った愛紗が、一刀へと近付いて来る。

「ギリギリだったのだ!」

「……っ、危ねぇ!」

「はい、ご主人様♪」

 桃香が一刀に握らせた物、それは何故か桃香の手にも握られていた……

 ――何で持ってるの!?

 桃香は愛紗との距離を計りつつ、さりげなく愛紗の前に筆を差し出す。擦れ違い様に握られたそれは、一刀の前で鈍い音を立てて圧し折れる。

「――嘘だろ!?」

「さすが桃香様……」

「お姉ちゃん、凄いのだ……」

 あの状況から愛紗へと筆を手渡した桃香に、誰もが称賛を送り……

「あーぁ、ご主人様、終わったな……」

「ご主人様、大丈夫かしら……」

 一刀を見守るのであった。

「何が、嘘ですか!? ご主人様、今日と言う今日は我慢なりません!」

 愛紗が我慢ならないと言っているのに、握った筆を真正面から差し出す一刀……

「さ、さすが、我等が主! ――は、腹がっ!」

 ――星、覚えてろ!?

「どこを見ておられるのです、ご主人様! 我が国の臣下に留まらず、他国の者にまで手を出そうなどと――」

 奪い取った筆先を一刀の胸に突き付け、一刀を壁の端へと追い付めて行く。

「申し訳ありません、桃香様。後のこと、お願い致します」

「ぜ、全然構わないよ! うん! うん!」

 その一言に頷いた愛紗は、一刀の襟ぐりを掴み、引き摺りながら軍議の間を後にした……

「……野蛮ね」

「はぁ、貴女達、もうちょっと敬ってあげなさいな……」

 呆れる桂花と、同情する華琳。

「しぇ、雪蓮! ぷぷっ……、笑っては、失礼だぞ!」

「――む、無理言わないでよ! ……もう最高!」

 腹を抱えて笑い転げる王を,笑いながら嗜める冥琳であった。

「ご、ご主人様の犠牲を無駄にしない為にも、皆! 総選挙の日まで――頑張ろう!」

 

 魏、呉に後れつつ、蜀も恋姫総選挙を制さんと、三国挙って、激しい選挙活動が繰り広げられるのであった!

 お疲れ様です! そしてここまで読んで頂き、ありがとうございます!

 今回は、なかつきほづみさんのイベント企画、「恋姫総選挙のお知らせ」、その支援作ということで、熱い選挙活動が始まるであろう蜀の突端を、短編にしてみました。

 作品では鈴々や一刀を応援したくなりますが……。テスはまだ決めかねている現状でして、今のところ――星かな?

 萌将伝では、紫苑相手に無茶しやがってと思いつつも、この作品でも愛紗相手に、命張らせてみました。――生粋の武人達の間で大流行! 名付けて、黒髪、危機一髪! 失敗すると首が飛びます。

 さて、若干シリアスになってしまいましたが、最後は笑いに持っていけたのではないかと思っています。笑いのツボが同じだと良いのですが……。少しでも恋姫総選挙が盛り上がることを願っています。

 ――そ、それではこの辺で失礼します!

 

 P.S. 私事で申し訳ないのですが、昇龍伝、非常に遅れています。十三章を前に十一章の補完作業に手間取ってしまい、後、誘惑って怖いよね! ……テスは悪い子です。本当にごめんなさい。 今回は恋姫総選挙の応援ということで、昇龍伝で頂いたコメントは、次の昇龍伝の機会のときに。

 


 
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