No.153022

スチュアート氏の便利なメイド

一人のメイドと一匹の子猫がいる他は、誰もいないお屋敷に起きたお話

2010-06-24 22:32:31 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:372   閲覧ユーザー数:363

 

 夕方。

 ひっそりとたたずむ一軒の屋敷があった。夜の暗さが周囲をおおっていく中、屋敷の窓には明かりが一つもない。半開きになった玄関の門から見える中も真っ暗だ。

 薄ぼんやりとした明かりが玄関に見えた。ゆらゆらとするロウソクの明かりで、女性のものらしい姿が照らしださられた。女は開いていた玄関の門をゆっくりと閉めた。

 その音は、ギギギっと不気味なものではなく、軽くパタンとしたものだった。

 

 屋敷の中は真っ暗だ。

 女のもつ燭台のロウソクだけがまわりを照らしている。ぼんやりと見える年若い女の横顔は少し青白いのが気になるが、眉毛が太く濃いところやソバカスをついた少し丸みをおびた顔などが田舎娘という感じがでている。顔以外はと言えば、小さなカボチャのような形の白い帽子をのせて、栗毛の髪を後ろでくるくると編み上げてまとめてピンでとめてある。肩のところがちょっぴりと膨らんだ長袖のロングワンピースの上には、控えめな大きさのフリルつきのエプロンドレスを着込んでいる。服装で見れば女の職業は、古今東西過大な憧れ(男が)をもたれるが、現実は重労働で安給料の苦労たえまない「メイド」らしい。

 チリンチリン。そんな軽やかな鈴の音といっしょに赤い首輪をしめた白い子猫がメイドの足元に、ノド音をゴロゴロたててすりよってきた。メイドはロウソクを横において

「よしよし」胸元まで抱き上げ頭をなであげた。

 ロウソクの明かりで照らし出されたメイドの顔は、頭半分はひどく陥没し、脳みそが少したれていた。

 

 

 ロウソクで照らし出されていく屋敷の内部はホコリひとつないほどとまではいかないが、ところどころキレイに磨きあげられ、いつでも誰かが住めるようになっていた。

 ロウソク一本だけの明かりの中、メイドはなれた手つきでゾウキンをとりだし「うんしょうんしょ」と一階から二階にかけての大階段をふきだした。たれた脳みそがぶらぶらしていなければ、いい絵になることだろう。

 奥の暗がりから、鈴の音色の後にかさかさと物をひきずりながら子猫がなにかを加えてメイドのところに来た。作業をいったん止めたメイドは、子猫に優しい声をかけて頭をひとしきりなでた後に、猫がくわえてきたものを手に取った。

「なんだろう、これ? ヒモ・・・かな」

 手にとったものは青くて長い。一目見てみればヒモにしかみえないが、メイドが見知っているヒモとは全然違う。色がついているのはとにかく、きらきらと光沢があるしこすれば軽やかな音がする。第一手触りがいい。こんなものをヒモにするなんてメイドには想像ができなかった。メイドは脳みそがたれているので、頭の回転が鈍い・・・っというわけではなく猫がこのヒモを持ってきたところをみるために立ち上がった。

「門があいていたから誰か入ってきたのかな」

 そんな独り言をぼやきながら、暗がりを見てみればこれもまた変わったものがあった。

木箱かなにかのように地味な色をした大きなものだった。木箱にしては全体にのっぺりとしている。そして突っついてみれば、硬いが弾力があった。

「これ、紙なんだ!」

 メイドは目と口を大きくあけて驚いた。よく見れば、このやたら頑丈な紙のまわりには変わったものが、無造作にあちこち置いてある。メイドが今までに見たことのないまん丸なガラスの電球や、磨き上げた鉄のような光沢をもつ軽い大口をあけた四角い箱。どれもこれもメイドには初めて見て、なんなのかわからないものばかりだ。

「新しい主人でもきたんかな」

 はじめてみる物への好奇心と不安からか、奇妙なイントレーションの言葉がでた。

 窓から入る月明かりでうっすらと白く明るい一階の廊下を、メイドはコトコトと猫をつれて歩いていた。メイドが窓のまえを通れば、メイドの体を通して窓が見える。そんな半透明で、なおかつ、頭半分陥没して脳みそが垂れていて火かき棒を両手ににぎっている。その姿は見るこっちとしては壮絶で怖いが、メイドの顔にも不安と恐怖という色が浮かんでいる。それは別に自分の姿を鏡でみたわけではない(そもそも鏡にはうつらない)。ついてくる猫も、どこか不安そうに形のよい耳をふせている。

 メイドは廊下の行き止まり近くにあるドアに手をかけた。ドアにはよく油が入っているのかスムーズにひらいた。メイドはさっと火かき棒を前に突き出しながら部屋に入り、キョロキョロと暗い部屋の中を見て回る。誰かが入ったかのように、部屋の家具とか色々が動かされたのを目にとめて、疑問の声をぶつくさとこぼしながら次の部屋に進んでいった。

 びくびくとメイドが見て回った一階の部屋は、どの部屋も何か動かされたあとが見えた。

 メイド個人の小部屋だけが普段とまったく同じだけなぐらいだった。

 

 上の階で何かが重い物が落ちたドスンという音をメイドが聞いた時、メイドはベットできれいにたたんであるシーツと毛布、形の崩れてきたメイドのお気に入りのアクセサリーを見ていた。

 火かき棒を前に突き出しヘッピリ腰で二階にあがって、おそるおそる脳みそがたれた顔だけ出して廊下をのぞけば、廊下の一番奥のドアから明かりもれていた。

 

 ごくりと生唾を飲む動作をしたメイドは決意をこめた顔で、一歩また一歩と爪先立ちで音をたてないように一番奥のドアににじりよっていった。

 ドアに手をかけようとしたら・・・

「「ひっ!くしょーぃ!!」」

 雷か大砲のような大声が聞こえた。力強く溜め込まれた「ひっ」という声だけでも屋敷中に響き渡り、後につづく言葉も負けずと長くひびいた。その声が聞こえた瞬間、メイドはバタバタと這いつくばってドアから逃げていった。その脳みそがぶらぶらする顔はなみだ目で、口は「あわわわわわ」と言葉にならない音しかでてこない。そして、子猫はどこかに逃げていた。

 

 ドアがいきなり開いて、顔らしいものが廊下をのぞくように突き出された。部屋の明かりのせいか逆光でメイド側からは見えないが(そもそも腰をぬかして匍匐全身で逃げてている最中なので見えない。)

「メイドー! こっちにくるんだ。話がある」

「はい!」

 これぞ、メイドの悲しい習性か。火かき棒をおいて、元気のよい返事と共にへっぴり腰で立ち上がり、一番奥の部屋――書斎だった――にむかっていそいそと向かっていった。

 

 

 

「メイド。君の名前はなんだ」

 書斎には本と箱があちらこちらにちらばっていた。大きな回転椅子には、これ以上ないほどいかめしい老人が足を組んで座っていた。その姿には似つかわしくない、かわいらしい丸メガネをかけている。

「はい。私はケイト・クロスビーです。その・・・旦那様」

 書斎入り口に立っているメイド――改めケイト――は、目の前に座っているパジャマ

姿の老人に緊張でもしているのか、ぎこちない愛想笑いと垂れている脳みそが小刻みに震えている。何しろ目の前の老人は、まるで悪党の親玉みたいだ。頭には毛が一本もなく、顔の目鼻のほりが濃いうえ、その奥からのぞく眼光も鋭い。また体が全体的に骨が太い。特に肩と胸は大きくはりだしている。とてもではないが、善良な老人だという姿には見えない。

「この館を買い取ったケビン・スチュアートだ。よろしくたのむよ、幽霊のメイドさん」

 ケビンのその不機嫌極まりないといった仏頂面からでた言葉で、ケイトのぎこちない愛想笑いは凍った。そんなケイトを知って知らずか、ケビンはなにかゴソゴソと板みたいなものをとりだした。

「これはおまえだな?」

 板はずいぶんと古い写真だった。すみの方では虫食いやシミでぼろぼろだ。

 写真には何人かが集まって一緒に写っていた。老人の骨ばった手の先には、ぎこちない笑みを浮かべたケイトが写っている。

「あっ・・・えっとあの」

 その写真をみてうれしいのか声をあげるケイトは、メガネの奥からの冷ややかな視線で黙った。

「ケイト。お前のおかげでこの館では四つの家族が数ヶ月で出て行っている。他にも一ダースの泥棒、そして霊媒師が4人、その内一人の霊媒師がつれてきたテレビ局のクルー全員をこっぴどく叩きだした。そうだな」

 ケビンは手を組んだまま、ケイトを見ている。

「そうです。旦那様」

 ケイトの顔からは笑顔が消えて、無表情に強張っている。

「うん。そうか」

 あっさりとした言葉がケビンの口から出てきた。その返事でケイトの顔に入った力がぬけかけるが

「この家についての防犯がきっちとしているのがわかった。でもな、ケイト。これは最も重要なことだが、お前は料理を作れるのか。」

「はい、旦那様。私は生前こちらのお屋敷で皆様のために料理を作っていました。その時の旦那様を初めみんなが美味しいと言ってました。」

「それはお前が生きているときの話だ。お前は死んで幽霊になっている。幽霊がフライパンを持てるのか、そうだろう?」

「旦那様・・・よく見ていてください」

 そういってケイトは近くの本を手で持ち上げた。仏頂面だった老人の顔に始めて驚いたという表情が現れた。

「こういったこともできます」

 ケイトは手を組んで、何かを祈るような姿勢になった。

 老人の座っている椅子や、周囲のダンボール、本、そして本をつめた棚等などの書斎にある一切合財が宙にういた。うおおおぅと狼じみた声で驚くケビンを椅子ごとふよふよと動かしたり、宙にうかせた本を棚の中へと上から順繰りにいれていった。

「よし、わかった。これでお前が料理ができるということがわかった!」

「それでは旦那様。おろしますね」

「いや、楽しい。もう少しこのままにしろ!」

 

 そっと太陽がのぼりはじめ、うっすらとした青色に世界は包まれてた。

 長い間手入れがされていない庭園のあいだをこそこそと大きな影が動き回っている。

 大きな影は、そっと調理場の窓を覗き込んだ。調理場の明かりで館の新しい主であるケビンの、その武骨極まりない顔が照らし出された。丸メガネの奥の目はどこか不安そうにきょろきょろと調理場の中を見渡している。材料一式をカゴに抱えて、脳みそが露出したメイドが調理場の奥から出てきた。あわてて顔をひっこめる。

 気分がよっぽど良いのか口笛がとぎれとぎれに、壁を越えて聞こえてくる。

「無駄な心配だったか」

 そう、ぼそりと声が出てきた。

 

 この老人が館に住むにあたり、まず手をつけたのは調理場の改装だった。とにかく金にものを言わせて最新の物を用意さした。ガスや電気、水道周りはだいぶ前に出て行った住人が整備してあったので問題はない。調理をするメイドのケイトは幽霊だが、物をつかむことができるのが昨日わかった。だが、一晩立って

(幽霊と最新設備…あまりいい組み合わせではないな)と思った。

 さっき調理場の最新設備の使い方をそれぞれ教えて、実演として紅茶を作らしたが食堂で朝食を待っていると、いよいよ気になって仕方がないので調理場の窓から見に来たわけだ。

 換気扇の低い音が耳に入ってきた。調理を始めたようだ。

「どらどら」

 またのぞき見をしようとすると、足がなにかにひっぱられる感覚があった。

 見れば白い子猫だった。赤みが入った目でケビンを見上げている。どことなく賢そうだ。

 口に微笑みをうかべ、子猫の頭をそっとなでようとした。

 その手がそのまま地面についた。

 よく見れば、子猫の首は奇妙にずれている。

「お前さんも死んでいるのかい?」

 その返事なのか、子猫はそっぷをむいて庭園の奥に消えていった。

 

「朝食のご用意ができました」

 にこやかな顔とたれた脳みそのえげつないアンバランスでメイドが食堂にやってきた。うっすらと湯気がのぼる――無人の――手押し車が後ろに続いてやってきた。手押し車からフォークとナイフを初めに色々ととりだして、てきぱきとした動作で朝食の準備が進んでいった

 その間、主人であるケビンは新聞から視線をそらさずそのままである。

 

「んんむ!」

 新聞をたたんでテーブルを見ての第一声には、驚きといったものであった。

 メインが黄色に輝くようなオムレツ。一口大に切りとった赤く熟れたトマトをそえたレタスのサラダ。玉ねぎ特有の甘さとスパイスの混ざった良い香りのオニオンスープ。

 

「ん・・・いや、これは・・・なんとも中々いい」

 オムレツを一口食べたときのケビンの出した言葉である。

 ふわふわとやわらかい理想的なオムレツであったのは勿論のところ、白身の魚とチーズでミートソースをはさんで卵で巻いてあった。

 はふはふもぐもぐと食べ物を一つ一つ口にはこべば、心のそこからうれしそうな顔になっている。こうなると、てらてらと禿げ上がった頭やはりだした胸等など老人の全てが愛嬌があるもの感じてくる。

 

「ごちそうさま、ケイト。おいしかったよ、ありがとう」

 老人はそう上機嫌極まりない顔と、心からの言葉で感謝した。

 テーブルの各皿にあった食べ物はきれいさっっぱりとない。

「ありがとうございます」

 その言葉に感動でもしたのかメイドの目には少し涙がたまっていたが、顔には老人と同じようにうれしいという表情がありありと浮かんでいた。

「あーこれこれ。これぐらいでそんな顔をするもんじゃないよ。いいかい、今日はこの館に業者が大勢くることになっているんだ。その人達のためにもね、ケイト。昼食を用意したっておくれ。あと菓子とかもは・・・できるのか、それはもう最適だ。」

 色々と今日の用事を言い終えて、片付けて去るよう言ったとき

「一つ聞きたいが」と、いつもの武骨極まりない不機嫌な顔になって聞いた。

「ケイト。君は死んでから鏡で自分を見たことはあるか?」

「いいえ。えーっと鏡には写ったことがありませんです」

「ふむ・・・ケイト。それでは君は頭半分が陥没して中身が見えていることをしらなかったのか。それを隠すすべを行わなければ。さっそく行わなければいかん。お前の顔を見て業者の連中が逃げて帰って行ってしまうからな」

 言われて知ったケイトは泣きべそをかきながら、どうにか写真に写っているような、生前のまともな顔に変えれたのが業者がやってくる2,3分程前だった。

 

 

 館全体の手入れが完全に終わり数日後の夕方。

 地平線の先には、太陽が最後の力をふりしぼるように赤く燃え上げる大きな姿となっていた。吹いてくる風は冷たいものになり、風に運ばれてくるように夜の闇がゆっくりとやってくる。

 ぽつぽつと館のあちこちに明かりをつけながら、メイドがとてとてと部屋を見て回っている。夕食の話をするためケビンを探し回っているのだ。

 テラスにケビンがいた。テラスの椅子に手を組んでもたれるようにして座っていた。見る分には寝ているように見える。

 起こそうとそっと近づいた。

「いや、いい」老人は止まれという風に右手をあげ、胸の方を指差した。

「まぁキティ」

 老人の胸の上には子猫がまるまって気持ちよさそうに寝ていた。子猫を老人はゆっくりとなでている。

「幽霊の猫というものも中々いいものだ。体がないからか、いくらなでても手に毛がついてこない。まぁ感触がないのが残念なんだが」

「なぁケイトや」老人は胸の子猫に目を向けながら言った。

「おまえが死んでしまったのは、猫、それともお嬢さんのどちらか守るためだったのかい」

「どうして・・・」

「おまえは、お嬢さんにおまえのかわいい子猫を抱かせたんだ。お嬢さんも子猫なんて初めて抱くから、少し力がはいりすぎたんだろうな。それで驚いた子猫は・・・」

 老人と胸の子猫はたがいに目があった。

「あぁ、すまん。子猫じゃなくてキティと呼ぶべきだったな。それで驚いたキティはお嬢さんの手をかんだのだったな。初めての痛みでお嬢さんはあわてて驚いたことだろうて。そして、場所も悪かった」

「はい・・・大階段の上でした」

「そう、その通り。キティとお嬢さんは大階段から落っこちてしまったわけだ。」

「私は受け止めようと・・・前に飛び出していきました」

「勇敢なメイドだ。だが、おまえとキティは死んでしまったわけだ」

「旦那様。アンナお嬢様は」

「死んだよ」

「神様!そんなあんまりです」

「4,50年前に老衰だった。幸せそうな良い顔で逝ったよ。孫の私が言うんだから間違いない。で、ケイトお前はお祖母ちゃんと子猫をどちらを守りたくて飛び出ていったん・・・」

 ぐしゅぐしゅと嗚咽があった。

 しまった。老人は驚きと後悔を顔が浮かんだ。

 猫は非難するようなきびしい目つきで老人を見る。

「すまんな」謝罪の言葉は、後ろの嗚咽が静まるまで待った。

「どうも昔から配慮がたりないと言われるんだ。死んだ妻にも言われていたよ」

「旦那様は…ひっぐ…ひどい人です」

「そういわないでおくれ。実はな、明日がアンナお祖母ちゃんの命日なんだ。よく可愛がってくれた良いお祖母ちゃんだった。でも、いつも気になることがあったんだ。そのひたいには大きな傷があったんだ。聞いたら、なんていったと思う?」

「・・・いえ、わかりませんよ」

「私の大切な友達が命がけで守ってくれたんだって、さ。他にも、そそっかしいとか、泣き虫、怖がりと続いていたがな」

「はい・・・お嬢様は、私に、その、よくそう言いいました」ぼろぼろと涙を吹きながら、にこやかにケイトはそう言った。

「死んで、私が幽霊になったときにはこの家には誰の姿もありませんでした。お嬢様はどうしたんだろうと、ずっと考えてきました・・・」

「お前が死んで、一年ぐらいか。父親は商売で大失敗をやらかして、家族はこの家から逃げていった。それからのお祖母ちゃんは色々と苦労していたそうだ。あぁ後記録によれば、お前が幽霊になって出てくるようになったのは、その10年ぐらいたってからだ。わかるはずもないじゃないか」

「旦那様。ありがとうございます。本当にありがとうございます」

 

 老人はふと一枚の写真を手に取った。長々と写真をながめた老人は、うれしそうにニンマリと笑い(あまり良い顔ではなかったが)

「なぁ、ケイトや。アンナお祖母ちゃんは娘さんだったとき、どういった髪の色をしていたんだい」ことさら明るい口調で話しかけた。

 ケイトはその様子に困った様子だったが

「えぇっと、そうですね・・・髪の色はきれいな、そうとてもきれいな金髪でしたよ」老人と同じように明るくした。

 ふむふむとうなずきの声をあげながら、持っていた写真を見せた。

「今度、孫達が遊びにくるんだ。孫達の一人にな、それはもうきれいな金髪の娘がいるんだ」

 ケイトは呆気にとられた目で写真をみつめ

「・・・アンナお嬢様だ」

 それは小さな、本当に小さな声だった。

 

 
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